「カラスの『カ』は喉のおくにひっかかって出てこない。」

吃音があって、学校でうまく話すことができず、辛い毎日を過ごしていた少年。

そんな息子を川に連れて行ったお父さんが、肩を抱き寄せて言います。

「ほら、川の水を見てみろ。あれが、お前の話し方だ。」見ると………川は泡立って波をうち渦を巻いて砕けていました。

ジョーダン・スコット(文)シドニー・スミス(絵)による「ぼくは川のように話す」(偕成社/新刊1760円)は、とても素敵な絵本です。

少年は、川を見つめます。泡だったり、波打ったり、渦を巻いたりしています。「川だってどもっている。 ぼくとおなじように。」そして、彼は大いなる川の流れに支えられ、顔を上げて一歩を踏み出していきます。

流れる川とそこにキラキラと反射する光、堂々と流れる水の音までをあますところなく描いたシドニー・スミスの美しい絵は、少年の心情を映し、最後まで読む者を捉えて離しません。心の中に染み込んでくる絵本です。大人にこそ読んでほしいと思いました。

滑らかに話すことを求められる世界にいる吃音の子供達の怯え、悲しみを、波立ち、渦巻きながら流れてゆく川の力が解き放ってゆく物語でありながら、あらゆる人の人生がいつも流れるように進まないことを暗示しているように思えます。

「朝、目をさますと、まわりは、言葉の音であふれている。ぼくは学校へ行き、みんなのまえにでて、世界でいちばんすきな場所のことを話す。 そう、あの川のことを…….」

少年の自立への第一歩を川は微笑んで見守っているようです。

 

 

 

本日より、週末22日(日)まで、「児童文学&絵本フェア」を開催しています。

児童文学の目玉はこれ。リチャード・チャーチ著「地下の洞穴の冒険」(1971年岩波書店/古書2000円)です。映画「スタンド・バイ・ミー」のように、いつの時代も少年たちは冒険に出かけます。そんな夏の終わりの少年たちを描いた傑作児童文学。地下に空いた洞穴を探検する物語です。71年に発行された初版本。函も付いていて綺麗です。

もう一点、メアリー・ノートン著「床下の小人たち」(昭和43年岩波少年文庫112/重版/函入り/口絵カラー挿絵1葉/古書1000円)。アニメ化もされて、よくご存知の物語です。今、販売されている判型とは違い新書サイズで、しかも函入り。今の版に付いているかどうかは分かりませんが、表紙を開けるとカラーの挿絵が一枚付いていてクラシカルな雰囲気です。

他にも1975年版の「クローディアの秘密」(岩波少年文庫2077/古書100円)、「トムは真夜中の庭で」(岩波少年文庫2079/古書100円)など。また、岩波少年文庫の歴史をまとめた若菜晃子著「岩波少年文庫の歩み1950〜2020」(岩波書店/新刊1100円)は、必読の案内書です。

そして、和田誠、みやこしあきこ、町田尚子、荒井良二などの傑作絵本を並べました。最近入荷した、きくちちき「いろいろかえる」(偕成社/新刊1500円)もあります。「もみじのてがみ」でプラチスラバ世界絵本原画展で「金のりんご賞」を獲得した作家です。かえるたちを、カラフルな色合いと伸びやかなタッチで描いた絵本は、見ているだけで楽しくなります。

おススメは、林木林(文)&岡田千晶(絵)コンビによる「ひだまり」(光村教育図書/古書1200円)。トラビスは、乱暴者で自由奔放な猫でした。しかし、優しいミケーレという猫に出会い、今までに感じたことのない幸福を感じます。ところが、ミケーレを失い、元のすさんだ生活に戻ってしまいます。そんなトラビスが絶望の底から、再び希望の光を見出すまでを描いた作品です。淡く優しいタッチで描かれ、涙を誘います。

100円絵本コーナーや、格安児童文学コーナーもあります。掘り出し物を見つけてください。

 

 

私が出演するZOOMミーティング「フライデーブックナイト」の第1回が、今月20日に決定しました。ご興味のある方は下記アドレスまで

https://ccacademy.stores.jp/items/60fd4e1bbc1e6422b5501a4b

 

絵本作家、堀川理万子の新作「海のアトリエ」(偕成社/新刊1540円)は、うだるような暑い今、涼しい部屋で読んでほしいと思う一冊です。

「わたしは、おばあちゃんの部屋が好き、なんだか、いごこちがいいんだ。」と、いつもおばあちゃんの部屋に入り浸っている「わたし」。部屋の壁に「ぱっちりひらいた目が、まっすぐこっちを向いている女の子」の絵が飾ってありました。

だれこの子?

実は、「わたし」と同じくらいの時のおばあちゃんでした。

「その絵を描いてくれた人のこと、話してあげようか」

おばあちゃんの、ちょっぴり辛く、そして楽しく、懐かしい時代の物語が始まります。おばあちゃんは、かつては登校拒否の子供だったのです。そんな彼女を見かねた、海のそばに住んでいる絵描きさんが、一人で遊びにおいでと誘ってくれました。絵描きさんはお母さんの友達でした。

海の見えるアトリエで、ゆっくりした時間が流れていきます。手作りの晩御飯を食べた後は、読書タイム。このワンカットが素敵です。あぁ、こんな場所で本を読んでみたいと思いました。

それから、絵描きさんと二人だけの暮らしが始まります。「朝の浜辺は、とても静かだった」というダイアローグ通り、静かで美しい浜辺が広がり、パチャパチャと泳ぐ音だけが聞こえて来そうです。

それから彼女は、絵描きさんと一緒に絵を描き始めます。自由に心のままに絵を描いたり、近くの美術館に連れて行ってもらったり、お料理を作ったりと楽しい日は流れていきます。最後の日、二人は浜辺で沖を眺めました。このシーン、本当に海の風を感じる素敵な場面です。

おばあちゃんのお話は終わりました。そんな絵描きさんに会ってみたかったな、という「わたし」におばあちゃんはこう言います。

「そうね、でも、あなたはこれから、あなたのだいじな人にであうのよ。このことをずっとおぼえていたいって。そんな日が、きっとあなたをまっているわ」

著者は、子供の頃、近所の女性画家から絵を習っていました。画家は一人アトリエで暮らしていたそうです。

「わたしにとってはじめての、子どもを子どもあつかいしない『おとな』でした」とあとがきで書かれています。

浜辺の香り、涼しい風、そして静かに過ぎ行く時間が、程よくブレンドされた傑作絵本です。

蛇足ながら、6月に東京の書店「title」で原画展やってたみたいです。行きたかったなあ…..。

1971年ソウル生まれの絵本作家ペク・ヒナは、「あめだま」で第24回日本絵本賞の翻訳絵本賞と読者賞をダブル受賞し、今、最も注目されている絵本作家です。

大阪生まれの絵本作家長谷川義史が、彼女とタッグを組み、何作品も翻訳を担当しています。今回ご紹介するのは、本年翻訳出版された「お月さんのシャーベット」(ブロンズ新社/新刊1540円)です。

「それは それは ねぐるしい なつの ばんやった。あつくて あつくて ねるどころか どうしようも あらへん。」

大阪弁の翻訳が、関西人にはしっくりきます。狐のような、狼のような動物が住むアパートが舞台です。みんな、なんとか寝ようとしています。そんな時です。ポタポタ、と雫が天から落ちてきます。しっかり者のおばあちゃん。どうやらこのアパートの班長さんらしい。

「あれまぁ えらいこっちゃ。えらいこっちゃ。お月さん とけてはるがな」

おばあちゃんは、落ちてきた雫を溜めて、シャーベットを作ってしまいます。その夜、クーラーの過剰使用で、ついにアパートの電気がパンク。真っ暗な中、お月さん色に満ちたおばあちゃんの部屋に住人が集まってきました。おばあちゃんはみんなにシャーベットをおすそ分けします。

「なんでやろ。お月さんのシャーベット たべたら あついのが すうーっと とんでいった」

その夜は、みんなクーラーなしで深い眠りについたのです。その様子がリアルであり、またおかしくもあり、とてもいい感じです。

やれやれと思ったおばあちゃん。眠りにつこうとすると、ドアを叩く音が。なんと、「お月さん きえてしもて すむところが なくなったん」と月のウサギたちが訪ねてきたのです。さて、どうなることやら…….。

寝苦しい夜には最適の一冊となるかも。

ペク・ヒナの作風はユニークです。実際のセットを組み、小道具を制作し、そこにストップ・モーション・アニメ(一コマ撮りのアニメ)の手法で、キャラクターを動かしています。リアルとファンタジーが巧みにブレンドされた世界です。

 

ミシマ社から出た網代幸介「手紙がきたな きしししし」(新刊/1980円)は、子供が読んでも、大人が読んでも、ヒヤヒヤ、ワクワク、そしてハハハッと声を出してしまいそうな絵本です。

古い謎の洋館。そこに手紙を届ける郵便配達のおじさんは、なんか嫌だなぁ〜と思いながら、館内に入っていきます。「きししし」という不気味な音、この洋館に住むお化けたちがぞろぞろと出てきます。手紙がきたことに喜ぶお化けたちは盛り上がり、ついに手紙は最上階に住む主人のところに届くのですが……..。

奥行きと重厚感のある絵は、ファンタジーに説得力を持たせ、おどろおどろしさと、可愛らしさと、はちゃめちゃ感が絶妙にブレンドされています。夢から醒めたようなラストの展開も洒落ています。

雑誌「美術手帖」に、「網代幸介は1980年生まれ。古代文明やヨーロッパ中世に描かれた遺物や神話、寓話などから影響を受け、想像上の人や動物を描いた絵画を中心に、独自の物語を題材とした立体作品やアニメーションなどを制作。作品のなかに経年劣化による物の存在感や朽ち果てていくはかなさを投影し、幻想とリアリティのあいだを表現している。東京を拠点に活動し、これまで国内外で作品を発表。アートワークの提供や装画、演劇のヴィジュアルなども手がけている。」と横顔が紹介されていました。

トホホな表情の郵便配達人と、ドラキュラ伯爵が住んでいそうな、朽ち果てる一歩手前の洋館。次から次へと登場する妖怪たちは、手紙がきた!と舞台で踊りまくり、それにやんややんやと拍手を送る観客のお化けたち。手紙が飛び交い、郵便配達人まで、舞台に引っ張りあげられてしまいます。

子供の時、ちょっと怖いけど、スクリーンに見入っていた暗い映画館の雰囲気を思い出します。

三条京阪近くのギャラリーnowakiさんで、現在この原画を中心にした作品展が始まっています。私も観にいきましたが、やはり原画の迫力は違いますよ!! ぜひ!(7月5日まで)

 

京都御所の南西、梅林の中に立つ大きな榎の木は、見事な枝ぶりです。

これが、くさはらさんの絵本「おおきなきと であったら」(福音館書店・ちいさなかがくのとも/427円)の主人公。広く張った根は、まるで生き物のようで、初めてこの木と出会った女の子はぐるっと周り、枝を見上げて、その豊かさに感激するのです。

巨木の堂々とした絵は、小さな草花を描いてきた画家くさはらさん自身が目にした感激をそのまま写しとっているよう。色鉛筆を塗り重ねて、丁寧に描かれる木肌の表情、高い枝葉。一度でも、木のスケッチをしたことのある人なら、枝の複雑な形や葉っぱに四苦八苦したことを覚えていらっしゃると思います。何度も何度も通って、時間をかけて描きこまれた労作です。特にこだわって作ってきたという深い緑色の美しさ。個展のタイトル「緑と歩こう」に込められた思いです。

2019年12月、当ギャラリーで開催したあかしのぶこさんの絵本の原画展にくさはらさんが来廊された折、この絵本のことを知りました。

京都御所は、私の毎朝の散歩コース。地元で原画展をぜひ開きたいと思い、今年実現しました。
福音館書店の絵本シリーズの先輩であるあかしさんと、くさはらさんの出会いが、ご縁を繋いでくれました。

くさはらかなさんは、兵庫県生まれ。京都精華大学芸術部造形学科日本画分野卒業。今回の個展では、やはり色鉛筆の繊細なタッチで、新作絵本「ふゆのぺたんこぐさ」(福音館書店・ちいさなかがくのとも/440円)の原画も並びました。

こちらは、地面に張り付いたように咲くロゼット(地面に放射線状に葉を広げる植物)たちが主人公です。冬の間、ぺたんこになって春を待つ植物を1年かけて探して、そしてスケッチ、作画と3年かけて作られた絵本です。温かな土の色合い、見落としてしまいそうな草花の佇まいに、作者の自然に対する愛情を感じます。

二冊の絵本と、小さな手作り絵本「だれのあたま?」(1100円)も販売しています。他に、美しい草花のポストカード(165円)が10種類ありますので手にとってみてください。

蒸し暑い日が続きますが、くさはらさんの「大きな木」に会いに来てください。お帰りには、ぜひ京都御所へ。歩いて10分ほどです。(女房)

✳️くさはらかな「緑と歩こう」は6月23日(水)〜7月4日(日)

 13:00〜19:00  月火定休日

極地探検で知られる写真家石川直樹が文を書き、イラストレーターの梨木羊が絵を書いた絵本「シェルパのポルパ エベレストにのぼる」(岩波書店/新刊1800円)。

ヒマラヤの麓で生まれた少年ポルパが、シェルパへと成長する姿を描いています。標高5300メートルのところにベースキャンプを置き、そこから四つのキャンプを設置して、8749メートルの頂上を目指す登坂ルートも、書き込まれています。

「エベレストの麓に広がるクンブー地方は、山岳民族であるシェルパたちの生活の場です。彼らはチベットからヒラヤマ山脈を超えてやってきた人々の末裔で、田畑を耕し、ヤクなどの家畜を飼育し、春と秋の登山シーズンには、観光客を受け入れて生活しています。」

と、後書きで石川は解説しています。石川自身、ヒマラヤで多くのシェルパの友人を作ったので、彼らのことを知って欲しくて絵本を製作したようです。

シェルパを目指す少年ポルパは、ベテランのテンジンおじさんに連れられて初の登山に挑戦します。その途中でポルパが見たもの、経験したものが描かれています。山頂近くで、ポルパは鳥の大群に出会います。

「あれはなに?」

「かぜのとりさ。かぜにさからうのではなく、かぜといっしょにとんでいる。チベットから、ヒマラヤのやまをこえて、あたたかいインドでふゆをこすんだ。」

厳冬の時期にエベレストを越えてゆく鳥がいるんだ、と語るクライマーの小説を以前読んだ記憶があります。見開きページ一杯に描かれた、頂上を極めた瞬間のポルパの顔が実にいいですね。

石川直樹の写真集「POLAR」(古書絶版/2600円)も入荷しました。

石川がほぼ10年にもわたって旅してきた北極圏の、今の姿を捉えた写真集です。この地に生きる人々の表情、暮らしを取り込み、北極の真っ白な世界のイメージを覆すような作品がならんでいます。素顔の北極圏が見えてきます。

五十嵐大介といえば、「海獣の子供」、「魔女」でお馴染みの漫画家です。「海獣の子供」は劇場用アニメとして2019年に公開されましたので、ご覧になった方も多いと思います。

自然に生きる動物、風景を緻密に描き込んだ画風で、自然界を舞台にした幻想的な物語を送り出してきました。

「ディザインズ」(講談社/古書1〜3巻各300円)では、遺伝子操作で誕生したヒトと動物のハイブリッド種HA(ヒューマナイズド・アニマル)が、戦闘用にデザインされて、紛争地帯の投入される姿が描かれています。(全5巻)

ディストピア風の未来を描いてきた五十嵐の絵本「バスザウルス」(亜紀書房/新刊1760円)は、不思議な優しさに満ち溢れています。

森の中に棄てられたバスが、朽ち果ててボロボロになっています。ある夜、オンボロバスに手が生え、足が生え、尻尾が出てきます。怪獣バスザウルスの誕生です。町の中を歩きまわりますが、ちょっと疲れて、バス停で一服していました。

すると、「バスがいて助かった」と一人のおばあさんが乗ってきます。バスザウルスは動き出します。おばあさんは、「ここでおります。どうもありがとう」と言っておりました。それから、不思議なことに毎日おばあさんが乗ってくるようになったのです。夜の街をギシギシとバスザウルはおばあさんを乗せて動きました。

しかし、ある日を境にピタリとおばあさんは来なくなります。バスザウルスは待ち続けます。そして1000日。ついにバスザウルスは、お婆さんを諦めて街を出て行きます………。

棄てられたバスが歩き始めるユーモア、誰もいない夜の町のちょっと不気味な雰囲気、そしておばあさんとのほのぼのとした交流と永遠の別れ。

おばあさんは、この世の最後を、不思議な乗り物のような海獣のようなバスザウルスに乗って楽しんだのか、あるいは天に召された後、自分の故郷に未練があって、もう一度見たいと思って、バスザウルスの力を頼って戻ってきたのか、などと様々な想像を巡らせました。温かみのある水彩画のタッチ、色も、動きを感じる構図もとても魅力的です。

 

 

Tagged with:
 

マイク=セイラー作/ロバートグロスマン絵、翻訳を今江祥智が担当した「ぼちぼちいこか」(偕成社/古書700円)。主人公のカバは関西弁です。原作者が関西弁で書いた可能性はないので、大阪出身の今江が、地元言葉で翻訳したのでしょうが、これがドンピシャ。いろんな職業にトライしてもダメなカバ君。まあちょっと一休みということで、ハンモックで寝てしまいます。「ま、ぼちぼちいこかーと、いうことや」。脱力系絵本と言うか、肩の力が自然と抜けてゆく絵本です。こういう時に出てくる関西弁って強力で魅力的。

 

まつむらまさこ絵と文「うまのおいのり」(至光社/古書

1200円)は、新しい飼い主になった少年へ、馬が送った手紙。馬だけでなく、犬でも、猫でも、およそ命あるものを飼う時にはどう付き合ってゆくか、こうあって欲しい作家の祈りが込められています。

「わたしの いちばんの おねがいは さいごまで あなたの ともだちで いることです」という馬の言葉が胸に染み入ります。パステル画の優しいタッチに癒されます。

 

 

 

谷内六郎を叔父に持つ谷内こうたの作品が二作入りました。一つは、「にちようび」(至光社/古書900円)。「にちようび よく はれた あさです」から始まり、そのあとは温かな色の美しい絵だけで、平和で穏やかな室内を描いています。

敷物の上で眠る猫。そのそばをトコトコ過ぎ行く木製の列車。取り立てて何も用事のないのんびりした日曜日の朝の嬉しさが漂っています。

もう一点は、谷内が翻訳したエリック・バトゥー作「めぐる月日に」(講談社/古書1400円)です。「1月、まっている…….」から、「12月、わたしは、ゆめをみる……」まで、一年を通して、人の暮らしのすぐそばにある自然の中で生きるものたちを優しく見つめた作品です。日本語の上には、オリジナルのフランス語も載っています。

最後にもう一冊、絵本ではありませんが、別冊太陽の「初山滋 線と色彩の詩人」(古書/1100円)もおすすめです。きっと誰もがどこかで目にしたことのある作品をたくさん世に送り出してきた、初山滋の特集です。武井武雄らと日本童画家協会を設立し、童画の普及に務めた第一人者です。彼が装丁した童話本や、小学校の国語の教科書の表紙絵も掲載されていて、貴重な作品の書影を見ることができます。

 

 

 

 

 

 

イタリアを代表する作家、イタロ・カルヴィーノは、50年代半ばに全国を巡って200編の民話を集め、「イタリア民話集」という本を出版しました。その中に「梨といっしょに売られた女の子」という一編がありました。そのお話に魅せられたのが、絵本作家の酒井駒子でした。そして関口英子の翻訳、酒井駒子の絵で発売されたのが「梨の子ペリーナ」(BL出版/新刊1760円)です。

梨の木に守られた女の子ペリーナの冒険物語。勇敢で、かしこいペリーナは、王の命じた難題に立ち向かいます。満月の下、彼女が梨の木の上に寝ている絵がそれはそれは美しい。旅先でペリーナの前に現れる不思議なおばあさんのおかげで、様々な難関を突破していきます。彼女が助けた人や犬たちが、手を差し伸べてくれる描写も素敵です。酒井駒子さんの優しく繊細なタッチの絵が、ペリーナの優しさを際立たせています。酒井駒子ファンは、持っていてほしい作品です。

もう一つ。以前ヒメネス作「プラテーロとぼく」という、ロバのプラテーロと少年の物語をご紹介しましたが、ヒメネスの物語から28点を選んで、山本容子が銅版画で描いた「プラテーロとわたし」(理論社/古書1600円)もとても美しい本です。

山本は、銅版をオレンジ色の絵の具を塗布したキャンパスに刷っていて、「オレンジ色のベースは、ヒメネスとプラテーロの素肌のあたたかさと、太陽があたためた大地の色、信頼関係の色。」と書いています。

確かにプラテーロの背中や、顔がとても優しい。切なく、もの哀しい世界が広がってゆく一冊です。なお、ギター演奏と朗読による「プラテーロとわたし」というCDも発売されています。

 

★ARKの犬猫カレンダーも販売中!(大・1000円 小・800円 税込)こちらは売り上げをARKに寄付いたします。(壁掛けタイプが少なくなってきました)