イタリアを代表する作家、イタロ・カルヴィーノは、50年代半ばに全国を巡って200編の民話を集め、「イタリア民話集」という本を出版しました。その中に「梨といっしょに売られた女の子」という一編がありました。そのお話に魅せられたのが、絵本作家の酒井駒子でした。そして関口英子の翻訳、酒井駒子の絵で発売されたのが「梨の子ペリーナ」(BL出版/新刊1760円)です。

梨の木に守られた女の子ペリーナの冒険物語。勇敢で、かしこいペリーナは、王の命じた難題に立ち向かいます。満月の下、彼女が梨の木の上に寝ている絵がそれはそれは美しい。旅先でペリーナの前に現れる不思議なおばあさんのおかげで、様々な難関を突破していきます。彼女が助けた人や犬たちが、手を差し伸べてくれる描写も素敵です。酒井駒子さんの優しく繊細なタッチの絵が、ペリーナの優しさを際立たせています。酒井駒子ファンは、持っていてほしい作品です。

もう一つ。以前ヒメネス作「プラテーロとぼく」という、ロバのプラテーロと少年の物語をご紹介しましたが、ヒメネスの物語から28点を選んで、山本容子が銅版画で描いた「プラテーロとわたし」(理論社/古書1600円)もとても美しい本です。

山本は、銅版をオレンジ色の絵の具を塗布したキャンパスに刷っていて、「オレンジ色のベースは、ヒメネスとプラテーロの素肌のあたたかさと、太陽があたためた大地の色、信頼関係の色。」と書いています。

確かにプラテーロの背中や、顔がとても優しい。切なく、もの哀しい世界が広がってゆく一冊です。なお、ギター演奏と朗読による「プラテーロとわたし」というCDも発売されています。

 

★ARKの犬猫カレンダーも販売中!(大・1000円 小・800円 税込)こちらは売り上げをARKに寄付いたします。(壁掛けタイプが少なくなってきました)

 

 

アニタ・ローベルは、1934年ポーランド、クラクフに生まれ。ユダヤ人の絵本作家です。ナチスのポーランド侵攻で10歳の時に拘束され、強制収用所に送られます。なんとか生き延びて、戦後、スウェーデンの診療所で心身に受けた傷の回復に努めます。そして両親と再会。1952年にアメリカへ移住し、ブルックリンでデザインを学び、テキスタイルデザイナーとして活動を開始します。その後、「ふくろうくん」や「ふたりはともだち」でお馴染みの絵本作家アーノルド・ローベルと結婚し、絵本の仕事を始めました。

彼女の絵本「ニニのゆめのたび」(評論社/古書1150円)を入荷しました。都会に住むご主人の家で気楽に暮らしていた猫のニニが、ある日、無理やりカバンに入れられ、どこかへ連れて行かれます。その道中、カバンの中で眠りに落ちたニニは、夢を見ました。気球に乗ったり、ヨットで大海原に出かけたり、インドで象にまたがったり。そうして、やがて着いた新しい場所は、今までの都会と違い、自然の中に建っている家でした。草の香り、虫の鳴き声。新しいともだちの白い犬とも仲良くなりました。

絵が上手い。都会の様子、田舎の風景、特に家の前に広がる森林のシーンの描写、猫の表情など素晴らしい。(猫好きはたまらん!)風のそよぎ、花が咲き虫たちが飛び跳ねている風景。それは、戦争で極めて辛い体験をしたアニタが、最も希望していた平和の風景なのかもしれません。思春期をナチスの暴力でズタズタにされた彼女の、求めていた世界がここにはあるのかもしれません。裏表紙の、白い犬とニニが寄り添って夕日を眺めている絵を見ていると幸せな気分になってきます。いい絵本です。

★発売決定!町田尚子さんのおなじみ猫のチャリティーカレンダーを、10月中旬より販売いたします。価格は550円(税込)です。今年のテーマは日本映画です。

ARK(アニマルレフュージ関西)の2021年度カレンダーを入荷しました。

・大きいサイズは1000円(撮影は児玉小枝さん)・卓上サイズは800円(ARKスタッフ撮影)

売り上げは全てARKに寄付します。ぜひ店頭で手に取ってください。

 

以前、町田尚子さんの「ネコヅメのよる」(WAVE出版/古書1150円)発行記念の原画展を、していただいたことがありました。待望の町田さんの新作「ねこはるすばん」(ほるぷ出版/新刊1650円)が入荷しました。

相変わらず、ふてぶてしい面構えのねこが主人公です。飼い主が出かけた後、留守番をするのですが、大人しくじっとしているわけはない!ということで、物語は始まります。

洋服タンスの中を通り抜けて、ネコだけの世界へとトリップします。お茶したり、本屋に立ち寄ったり、散髪屋で毛を整えて、映画館で映画を見て、寿司屋に入って、「ちゅうトロさび抜きでね」などと注文するのです。帰りには腹ごなしにバッティングセンターに出向き、「カッキーン」と大きな当たりをかっ飛ばす。そして疲れた体を休めるために、銭湯でリラックス。

「さて、そろそろかえるとするか」と、またタンスの奥からこの世へ戻っていきます。ご主人が帰宅すると、何事もなかったような顔でお出迎え。ねこを飼っている人なら、ありそうな話だと納得されると思います。おしぼり片手に、ちゅうトロを注文する表情や、バットを思い切りスウィングする仕草など何度見ても、笑ってしまいます。

町田さんは、人間のことをなめてかかっている面白い猫の話を描く一方で、「なまえのないねこ」(小峰書店/新刊1650円)では、とても切ない物語を描いています。また、世界名作絵本シリーズ「ひきだしのなかの名作」のなかのアンデルセンの「マッチうりのしょうじょ」(フレーベル館/新刊1380円)も担当、彼女らしいタッチで、悲しい物語を美しく仕上げています。

 

 

 

 

星野道夫の一枚の写真から、一冊の絵本が生まれました。「あるヘラジカの物語」(原案/星野道夫 絵と文/鈴木まもる 発行:あすなろ書房1650円)です。

あるヘラジカの群れに、見知らぬオスが侵入してきます。当然、リーダーであるオスは追い出そうと戦いを挑みます。激しい争いで二頭は傷つき、とうとうお互いのツノが絡まったまま動けなくなってしまいました。そのまま動けないヘラジカに、オオカミの一団がやって来て襲い掛かります。さらにはヒグマも匂いを嗅ぎつけてやって来ます。熊やオオカミといった生態系のトップにいる動物たちが去ると、今度はキツネやコヨーテがやって来て、ヘラジカに食らいつきます。さらに鳥たちが肉をつつき、骨だけになったヘラジカ。マイナス50度の冬のアラスカで、カンジキウサギが、その骨を噛みます。ウサギにとっては、真冬の大事な栄養源です。

やがて春が訪れます。巨大な二頭のヘラジカの頭の骨のみが残っています。そこにアメリカタヒバリがやって来て、骨の影に巣を作り卵を産みました。

アラスカに暮らす星野が、河原で、二頭の大きなヘラジカの角が絡み合ったままの頭蓋骨を発見します。それを撮影した作品に出会った鈴木まもるが、絵本を作ろうと思い立ち、出来上がったのがこの絵本です。生態系の中で、脈々と続く生と死の連鎖を描かれています。

「偶然ある日、星野道夫君と出会いました。年が同じということもあるし、アラスカと日本の山ではスケールが違いますが、ふたりとも自然の中で暮らし、動物が好きだということもあり。すぐ仲良くなりました。」

とあとがきに書かれています。鈴木は伊豆の山の中で暮らしながら、鳥の巣の研究、収集、巣の展覧会を続けています。

二人の出会いはとても素敵なものだったみたいです。ヘラジカに食らいつくヒグマの様子を描いた絵など、星野が生きていたら、きっと喜んだことでしょう。絵本の最後のページは「アメリカタヒバリのすのなかでは、4わのひながげんきにそだっている。」という素敵なシーンで終わっています。

アラスカの風を感じる絵本です。

 

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今江祥智/作、片山健/絵による「でんでんだいこ いのち」(童心社/古書900円)は、夏に読むのにピッタリの絵本です。

「あとひとけずりで おれのたいこのばちができあがる。この八月で十七になる、おれの手ェいっぱいのふとさのものだ。あとは、まっ白いふんどししめて、ぶたいにあがり、大だいこをうつだけだ。

心をしずめるために、目をつむる。と、おれの耳のおくから、みっつの音がゆっくりときこえてる…..。」

今、まさに祭りの舞台に上がろうとする少年の心に、遠い日の三つの音が蘇ります。一つ目は、北の海で漁師をしていたじいちゃんにまつわる音。じいちゃんは、入江に迷い込んだマッコウクジラを村人総出で解体します。その祝いの踊りの場で、持っていたクジラの骨を打ち鳴らします。

片山健が、迫力あるクジラたちの姿を力強いタッチで描いていきます。海岸から飛び上がるクジラの音が聞こえてきそうです。そのクジラたちに負けじとじいちゃんは骨を叩いているのです。

二つ目はとうちゃんの音です。花火職人だったとうちゃんは、戦争中、花火は打ち上げることはできません。繰り返される爆撃で、街は炎上します。その様にキレたとうちゃんは、爆弾が落ちてくる夜空に向かって、ありったけの花火を打ち上げました。とうちゃんなりの戦争への抵抗だったのかもしれません。その大花火の音が二つ目の音です。

三つ目の音は、でんでん太鼓の音です。6人兄弟の末っ子に生まれた、主人公の少年は、なかなかおもちゃも買ってもらえませんでしたが、ある夏祭りの日、そんな少年の手に、誰かがでんでんだいこを握らせたのです。

「でんでんだいこ、いのちーとおもうて、だいじにだいじにしとったもんな。いまも、ちゃあんともっとるとも。」

それら三つの音に背中を押されて、少年は舞台に上がります。

「ばちが、しあがった。ふんどしもしめおわった。ぶたいのまん中の大だいこだけが、あかりに、てらされてかがやいとる。」青年になった彼の凛々しい横顔。

絵本の最後を飾るのは、ふんどしを締めた少年が、今まさに大太鼓を叩こうとする後ろ姿です。クジラの音、花火の音、でんでん太鼓の音が重なり合って胸おどる音楽が聞こえてきます。みんなかっこいいです。大太鼓の音の高揚感を味わってください。

ところで、主人公にでんでん太鼓を渡したのは誰か? 胸がキュンとなりますよ。

★お知らせ 8月17日(月)〜20日(木)休業いたします。

ミュージシャンの原マスミが、イラストや絵本の世界に進出してきたのは、いつからだっただろうか。気がついたら吉本ばなな作品のフロントカバーの作品を描いていました。落語家の柳家三三著「王子のきつね」(あかね書房/古書1200円)は、彼女の大胆にデフォルメされた絵が、内容にぴったりはまった面白い絵本です。

原マスミの絵が楽しい、石津ちひろ作「南の島で」(偕成社/古書1500円)をご紹介します。南の島に行ってみたくなる絵本です。

主人公の少年ワタル君は、ある夏休み、お父さんの妹ももさんが住んでいる南の島でホームスティすることになり、初めて一人で飛行機に乗りました。ちょっと引っ込み思案で、ものおじする性格の少年は、ももさんに会ってもうつむき加減です。

「島についてその日のうちに、ももさんは、僕を浜辺につれていってくれた。ぜんぜんおよげなかったぼくは、海にいっても、あんまりうれしくなかった。」

おそるおそるみずに足を入れるワタル君。

ももさん曰く「きょうは、ここの海に<はじめまして>のあいさつができれば、それで十分」

それから毎日、ももさんと海に出かけ、流れてゆく雲や、鳥をみたりして過ごします。ベジタリアンのももさんの美味しいごはんを食べ、少しづつ島の暮らしに慣れてゆきます。

ある日、海からの帰り道、土砂降りの雨に出会います。

「ももさんは、たちどまって空をあおいでいた。そしてそのまま、両手をひろげてくるくる回り出した。ももさんが『ワタルくんもほら!』とさけぶ。

おもいきって、ぼくもおなじようにやってみたら、からだのおくから、自然にわらいがこみあげてきた。」

ふたりが天をあおいで、雨を喜んでいるシーンの絵に、こちらも雨の中に飛び出したくなります。

島で過ごす最後の日。ももさんが「耳を水のなかにつけているとね、ふとしたひょうしに、”ぽこぽこ “という音が聞こえてくるの」と言うので、ワタル君がおもいきって浮き輪を外すと体が浮きました。

「海のなかにしずんでしまうのがこわい、という気もちは、いつのまにかきえていた。」

そして、彼の耳元にも”ぽこぽこ “という音が聞こえてきます。

「青くすみきった空しかみえない。ひろい空をひとりじめしているよろこびと、世界のはてに、おきざりにされてしまったようなさびしさ。ぼくは、そのままずっと海にねころんで、耳の奥にひびいてくる、そのあたたかな音をきいていた。」

自然体で心豊かに生きる人間に出会った少年の夏の思い出は宝物です。絵本は、「それからしばらくして、ももさんは、その島をでた。島でであった人といっしょに、外国でくらすことになったんだ」ということを伝えて終わります。

最後のページには、大きくなって父親になったワタルくんが、自分の家族と一緒に海に浮かんでいます。彼らの満ち足りた幸福をおすそ分けしてもらいましょう。

 

 

 

新刊書店員時代の最後の年だったと思います。入荷してきた絵本を何気なく手に取り読み出して、最後のページで、思わず泣いてしまいました。その現場を児童書担当の女性スタッフに見られてしまいました。「店長って絵本で泣くような人じゃないのに、何か家庭であったみたい」「会社でいじめられたのかも」とか、休憩室で噂になったらしいです。

その絵本が、越智典子(文)・沢田としき(絵)による「ピリカ、おかあさんへの旅」(福音館書店/古書1100円)。越智典子は、東京大学理学部生物学科を卒業後、絵本作家になりました。沢田としきは、1996年「アフリカの音」で日本絵本賞を受賞した絵本作家です。

主人公のピリカは、シャケです。大きくなって外海にいます。ある日「だれかのよぶ声がして、ピリカは目をさまし、空を見上げました」でも誰もいません。しかし、ピリカはお母さんの声を聞いた気がしました。

「ほかのさけたちも。空を見上げるようになりました。『誰かがぼくらをよんでいるよ』むれは、呼び声にこたえて泳ぎだしました」

シャケたちは、故郷の川を目指して泳ぎ始めたのです。広大な海を泳ぎきり、懐かしい匂いのする川へと戻ってきました。

「なつかしい匂いのする水は、あとからあとから流れてきます。それは、しょっぱくない、真水でした。ピリカは急に体が重たくなって、くるしくて、パシッと自らはねました。」

「お母さんが近くにいる!」河口付近で跳ね上がるピリカの姿。やがて、ピリカは自分の体に多くのタマゴを宿していることを知ります。産卵までの時間が瑞々しいタッチの絵で描かれていきます。産卵を終えたピリカは、静かに自分の生を終えました。体を横たえたピリカの横には、おかあさん、そのおかあさん、さらにその前のおかあさんもいるのです。『「おかえり……おかえり…….ピリカは光につつまれました」』

最後のページにはこう書かれています

「やがてピリカの体は、もう一つの旅に出るでしょう。キタキツネにたべられて、キタキツネになったなら、春には子ギツネをうむかもしれません。

オジロワシにつつかれて、オジロワシになったら、空を飛ぶかもしれません。

それでもいつかは、土になり、木になり、森になり、ゆたかな川の水になるでしょう。」

一匹のシャケの一生を描きながら、命の循環をわかりやすく描いた素敵な絵本です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

子供の本専門店メリーゴーランド京都の店長鈴木潤さんの、二冊目の著書が出ました。「物語を売る小さな本屋の物語」(晶文社/新刊1815円)です。

「私が生まれた四日市の少し郊外の松本という町にメリーゴーランドができたのが1976年。私が4歳の頃のことだ。当時周りは田んぼだらけでそこにポツンと三階建てのビルが建った。その一階が子ども本専門店メリーゴーランドだった。」

彼女はこの店に入り浸りになり、絵本や児童文学の世界にはまっていきます。そして青春時代、世界を見たいという欲求に動かされていきます。当時、憧れの存在だった筑紫哲也(高校生にしては渋い趣味)がポスターに出ていたピースボートを見た瞬間、東京へ飛び出します。広い世界を見て、今度は就職活動もせずにアメリカへと旅立っていきます。絵本好きの少女は、ストレートに絵本専門店で働き出したのではないのです。この、彼女の疾風怒濤の時代が本の前半に描かれています。

動き出したら一気にいくという資質は、この時代にできたものなのか、先天的に当たって砕けろ精神があったのかは知りませんが、その後の絵本屋人生で大きな力となっていきます。

1996年、彼女は四日市のメリーゴーランドでアルバイトとして働き出します。私が、ここを立ち上げた増田社長の声を初めて聞いた時、どこのヤクザや?と思ったほどドスのある声でした。とても、絵本専門店の社長には見えませんでした。個性的な社長と鈴木さんが、お互いの言い分をぶつけて喧嘩をしながら、絵本書店の運営の面白さにのめり込んでいきます。この二人のやり取りが方々に出てきますが、似た者同士のように思います。

「ある日増田さんが『京都に店出すぞ。潤、京都に行くやろ」と言い出しました。」

そして、京都へ。物件探し、住まい探し、開店準備と慌ただしく時間は過ぎていきます。後半は、京都出店までのスリルに満ちた日々、そして結婚、出産を通じて彼女が考えていることが綴られています。

「ムーミンママの『誰だって秘密の一つや二つ持つ権利があるものよ』というセリフは本当にその通りだと思う。子どもだからといって何でもかんでも親に話す必要なんてないのだ。私は子供が秘密を持ったとき、そのことをそれとなく感じながら見守れたらいいなと思っている。秘密が人を成長させることだってあると思うから。」

二人目の男の子を出産して、子どもを抱きかかえて店に出ておられた時の彼女の姿を覚えています。鈴木さんとは、当店の開店以来仲良くさせてもらっています。

「本が『さあ、面白いから手に取って』と本棚を眺める人たち語りかけてくるような場所でありたい」と本書で書かれていますが、メリーゴーランドはいつ行ってもそんな場所になっていると、私は思っています。

2018年8月6日、ひだまり舎は出版社としてスタートしました。

「ひだまり舎の本のテーマは、平和、いのち、幸せ。大切なことを、しずかに伝えていきたい。本をひらく時間が、ひだまりのようにあたたかいものでありますように。」

と、本と共に送られてきたポップに書かれていました。出されている本は4点です。

先ずご紹介したいのは、2003年ボローニャ国際絵本原画展入選後、フランスで出版された作品の凱旋出版となった「マルをさがして」(新刊/1980円ポストカード付き)です。著者の山本久美子は、多摩美術大学デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。飼犬マルとタケル少年の夏のある1日を描いた作品です。とにかく、絵が素晴らしい。表紙の昼寝しているタケルの家の畳の雰囲気だけで、その巧みさがわかります。

そして、田島征三(絵)・国広和毅(文)による絵本「ちきゅうがわれた!」(新刊/1760円)も面白い一冊です。おっちょこちょいのワニが巻き起こす大騒動の物語。田島征三の絵にさすがに力があって、読者をぐんぐん引っ張っていきます。昼寝をしていたワニの耳元で、大きな音がします。それをワニは、すわ!地球が壊れた!と勘違いして、他の多くの動物たちを連れて逃げ出すのですが……..。ワニの表情が、なんとも愛嬌があります。

3冊目はイラストブックで、おかべてつろう「17歳 光と陰の季節」(新刊/1540円/ポストカード付き)です。これから17歳になろうとする人、あるいは、かつて17歳だった自分を、優しく励ましてくれます。17歳、まぶしく輝いているようだけれど、実は闇を抱えて迷いの中にうずくまる、そんな若い頃を、猫たちがそっと見つめます。プレゼントに最適です。

最後にご紹介するのは、「地球の仲間たち スリランカ/ニジェール」(新刊/1760円)。

編者の「開発教育を考える会」は、青年海外協力隊に参加し、帰国後教育に携わってきたメンバーたち。スリランカ、ニジェールの現地の子どもたちの日常生活の写真を通して、私たちと似ているところや、全く異なっているところを取り上げて、世界の広さを知ってもらうために企画された写真絵本です。今後、『地球の仲間たち』シリーズとして刊行される予定です。

ところで、スリランカから、日本にココナッツの実が輸入されていますが、その実の繊維からタワシが作られていることを、この本で初めて知りました

個性的なひだまり舎の本を、是非一度手に取ってみてください。

 

今年4月、東京立川にオープンする美術館の開館記念展が「エリック・カール 遊ぶための本」です。その記念図録がブルーシープ社から発売されました(新刊/2200円)。

図録の帯に記載されていますが、これはエリック・カールの全てがわかる立派な書籍です。カールといえば、「はらぺこあおむし」が有名な、色彩を巧みに操る魔術師みたいな絵本作家。

本書で序文を書いている、今人気の絵本作家tupera tuperaは、カールの世界をこう表現しています。 「画面を隅々まで眺めてから、今度は、顕微鏡でも覗くかのように、ぐっと絵に顔を近づける。すると、まるで色鮮やかな銀河や惑星をみているような光景が目の前に広がる。エリック・カールによって生み出された紙の宇宙だ。」

カールの作品では、アメリカの童歌を元に、カールが描いた動物たちが登場する「月ようびはなにたべる?アメリカのわらべうた」(1993)が大好きです。ここに登場するヤマアラシの美しい姿に目を奪われました。「ごきげんななめのてんとうむし」(1977)に登場するサイや、「えをかくかくかく」(2011)に出てくる馬なども、今にも画面を蹴破って飛び出しそうです。

そんな楽しい本と遊ぶ子供達を、人気の写真家長島有里枝が撮影して、子供達の素敵な表情が収録されています。さらに マサチューセッツにあるカールのアトリエや、カール美術館の訪問記や、カールのこれまでの歴史、そして書影入りの作品リストが網羅されています。グラフイックデザイナー時代の作品を初めて見ることができました。永久保存版として持っておいても損はないと思います。