絵本もたくさん出ています。

まずは、姫路の絵本専門店「おひさまゆうびん舎」の箱から、二点ご紹介。福音館が発行している「月間たくさんのふしぎ」は、こんな作家が、へぇ〜、こんな画家が参加しているんだと、驚かされる号がよくあります。1982年10月号「宇宙のつくりかた」(おひさまゆうびん舎出品/400円)は、文は池澤夏樹、絵は佐々木マキ担当という豪華布陣です。これは、ほんとに面白い!

続いて、長谷川集平の「あなに」(おひさまゆうびん舎出品/解放出版社/600円)。1976年、長谷川が「はせがわくんきらいや」を発表した時に、出版された谷川俊太郎(作)・和田誠(絵)のコンビで発表された絵本「あな」。この本へのオマージュとして2015年に出されたのが、「あなに」です。「集平さん、素敵な返球ありがとう!穴に埋められた40年の年月が、絵本の中で今日の青空に溶けていきます」と、帯に谷川が書いています。素敵なラストに、込められた思いを知るためにも、谷川の本も読みたくなります。

なんとゲーテ作「ファウスト」(徒然舎出品/西村書店800円)も絵本になっていた!戯曲「ファウスト」は、ご存時の通り、悪魔と契約し自分の魂と引き換えに、やりたい事を好き勝手にやった男の物語です。ファウスト博士、悪魔メフィストが繰り広げる人生の悲喜劇を、細密なウラウス・エンジカートが描いた、大人が楽しめる絵本です。
これを絵本と呼んでいいのかわかりませんが、ジャン・コクトーの「おかしな家族」(古書ダンデライオン出品/講談社800円)は、コクトー唯一のファンタジー作品として有名な作品です。彼が59歳の時に書いたこの本には、太陽と月の夫婦、悪ガキ達、ユーモアいっぱいの犬の家庭教師が登場して、ナンセンスで、不思議な物語を展開していきます。コクトーの卓越したセンスで描かれたデッサンが洒落ています。

エリック・カールの「カンガルーの子どもにも、かあさんいるの」(にゃん湖堂 出品/偕成社500円)は、さすがに魅力的な色彩が素敵。デフォルメされて描かれた動物たちが独特の躍動感を与えていて、楽しくなります。翻訳は佐野洋子です。

★「夏の古本市」は18日(日)まで開催しています。(12日(月)は定休日。)

その後19日(月)〜23日(金)まで休業いたします

 

 

70年代のアメリカ映画や小説の匂いを持った絵本を、先ず紹介します。ラスカル文、ルイ・ジョス絵のコンビニよる「オレゴンの旅」(セーラー出版/古書1250円)です。

アメリカ映画には、ロードムービーというジャンルがあります。男二人(男とは限りませんが)が、アメリカ大陸を横断しながら、友情を温め合うというものです。この絵本は、まさにそんな映画のような絵本です。

サーカス団で、熊のオレゴンに出会った曲芸師のデュークは、森に帰りたいというオレゴンの希望を果たしてやるために旅に出ます。ピッツバーグからシカゴ、アイオワを経てロッキー山脈の向こうにある森を目指して、モーテルに泊まったり、ヒッチハイクをしたりしながら、二人の旅は続きます。彼らを助けるのは、肌の色も、職種も違う人達です。そして、熊のオレゴンを、オレゴン州にある大きな森に送り届けたデュークは、「明日の朝、空が白くなり始めたら、今度はぼくの旅に出よう、なんにも考えず、心を軽くして」と決心し、旅立つところで物語は終わりです。今まで顔にくっつけたままだった道化の赤い鼻を捨てて。

自らの新しい生き方を求めて歩き出すラストがいいですね。アメリカの田舎の情景を、生き生きとした線と暖かな色彩で描いたルイ・ジョスの絵もこの物語にぴったりです。

もう一点は、中国の絵本作家チェン・ジャンホンによる「ウェン王子とトラ」(徳間書店/新刊2052円)です。小学校3年の教科書に登場する物語だそうですが、大人も泣けてきます。

自分の子供を人間に殺されたトラは憎しみから人を襲い続けます。その凶暴さに手を焼いた国王は、怒りを鎮めるためにとうとう自分の子供を差し出します。その子供を咥えた瞬間、トラの母性が蘇ります。ここから、この子供はトラを母として育っていきます。宮崎のアニメ「もののけ姫」のヒロインのような設定です。絵本の表紙が凄い!まさに子供を飲みこもうとする瞬間のトラの迫力ある顔の表情。しかし、よく見ると、愛情が憎しみを超えてゆく瞬間を描いているのです。この子供は、その後数奇な運命を辿るのですが、何度も読みたくなる絵本です。

中国古代王朝の青銅器から着想を得たお話だそうですが、水墨画の手法で描かれた絵の巧みさが説得力を持っています。絵巻物語を読んでいるみたいです。

 

 

★連休のご案内  8月5日(月))6日(火)は恒例「レティシア書房 夏の古本市」(8/7〜8/18 参加27店舗)の準備のためにお休みさせていただきます。

 

1940年、アメリカに生まれた絵本作家、M.B.ゴフスタインは、様々な手法で絵本を製作してきました。今回入荷した「おばあちゃんのはこぶね」(現代企画室/新刊1620円)は、ほとんど線だけで描いたモノクロームの世界ですが、心に染み込みます。

おばあちゃんが子供だった時に、お父さんが、ノアの方舟と動物たちを木で作ってくれました。大きくなるにつれて、お父さんは動物たちを増やしてくれました。彼女はそれらを心から愛します。

「いまでは ぬりもすっかりはげている」

おばあちゃんは今も方舟をそばに置いて見つめています。父母はとうに亡く、自身も結婚し子供を育て、そして「みんないなくなってしまったいま、はこぶねはおもいででいっぱい」とベッドに横たわりながら回想します。

「よろこびとかなしみはにじのよう、それがわたしをあたためてくれる おひさまのように。」

おばあちゃんが、自分の長い人生を肯定するところで絵本は幕を閉じます。巻末に、亡くなる直前の彼女の言葉が載っています。

「ねえ、私、良い人生を生きたと思うの。素晴らしい、人生を。12月20日には77になるのよ。死ぬことは構わない。まったく。別れたくない大切な人たちはいる、もちろん。でも….死は私の友達。死と、希望。希望。」

彼女は77歳の誕生日にこの世を去ります。生きて、死ぬことを簡潔に描いた傑作絵本です。

表紙の絵。窓の外、雨を見つめる後ろ姿のおばあちゃんは、何を思っているのでしょう?90才になった短いような長い時間に思いを寄せているのかもしれません。
 谷川俊太郎は、ゴフスタインの「ぶるっキーのひつじ」「ふたりの雪だるま」「生きとし生けるもの」等の作品も翻訳していますが、本作でも静けさと淋しさと喜びをシンプルな文章で日本語にしています。詩人ならではと思います。 

 

 

★地味だけど、渋い大人向けの絵本を10冊程入荷しました。(すべて新刊)

おいおい紹介していきますが、全冊表紙を見せて店内で展示していますので、ぜひ手に取ってご覧ください。

 

 

 

 

店内で開催中のnakabanさんの「ことばの生まれる景色」原画展(14日まで)には、暑い中多くの方にご来店いただいております。

誠光社でも「nakabanの旅するブックシェルフ誠光社編〜もうひとつの『ことばの生まれる景色』」(15日まで)が開催中で、どちらも行かれている方が多いようです。どちらの書店にもnakabanさんデザインのスタンプを設置しておりますので、記念に栞に押していってください。

そんな折も折、ミシマ社から出来たばかりの新作絵本「ランベルコーヒー店」(2376円)が届きました。京都の老舗喫茶店「六曜社」のマスター、オクノ修さんが詩を書き、nakabanさんが絵を付けたもので、コーヒー好きな方には持っていただきたい一冊です。

夜が明け、人々が眠りから覚めて、仕事に向かうとき、そこに一杯のコーヒーがある。変わらない毎日の小さな幸せが、短い詩と、絵で描かれています。表紙の絵から淹れたてのコーヒーの香りが、立ち上ります。どこか架空の街、ランベルマイユ。

「ランベルマイユの コーヒー屋さんから 朝の香りがたちこめて 夢みていた 人たちが 今日の仕事を 始めるとき 来る日も来る日も また次の日も おなじ香りの コーヒーいっ杯 夢みていた 人たちに ふかい香りの コーヒーいっ杯」

nakabanさんの温かな眼差しが、まだ暗い夜明けから、やがて明るい朝に人々が動き出す情景を静かに見つめます。静かな幸せ感。「おなじ香りの コーヒーいっ杯」という詩に、きっと何年もこの街で毎朝コーヒーを入れてきた喫茶店のマスターが登場します。美味しそうな香りの立ち込める中、人々の声や新聞をめくる音が聞こえてきそうです。

詩を書いたオクノ修さんさんはシンガーソングライターとしても、音楽好きの間では人気の方です。「ランベルマイユコーヒー店」は、ランベルマイユというオクノさんの心の中の街の、コーヒーの香る朝の風景を歌っています。この作品に絵をつけることに対してnakabanさんは、「ミシマ社の本屋さんショップ」でこう語っています。

「長い人生のうちで一日の始まりがつらい日も多い。でも一杯のコーヒーのその香りに包まれているうちに、いつの間にかそのつらさから救われてしまっている、ということはないだろうか。僕にはある。それに、どこかで同じようにコーヒーをすすっているひとがいると想像すれば、不思議と呼吸は深くゆっくりになる。きっとこの歌は、そのようなことを歌っている。オクノさんは謙遜するに決まっているけれど、世界中のかけがえのない朝に贈る、これはとても大切な歌なのだ。 絵本版の「ランベルマイユコーヒー店」はそのようなことを思いながら制作しました。 だれかの朝からだれかの朝への贈り物になったら嬉しいです。 」

「だれかの朝への贈り物」という言葉がグッときます。

 

★明日13日は、ライブイベントのため、18時にて閉店いたします。ご了承ください。レティシア書房店主

 

当店絵本人気No.1「ネコヅメのよる」(WAVE出版1512円)の著者、町田尚子さんの新作、「なまえのないねこ」(小峰書店1620円)入ってきました。

文は、竹下文子さんが書いています。主人公は、のらねこです。

「ぼくは ねこ。なまえのない ねこ。だれにも なまえを つけてもらったことが ない。 ちいさいときは ただの『こねこ』だった。 おおきくなってからは ただの『ねこ』だ。」

彼の周りの猫は、みんな名前を持っています。

本屋さんの猫は「げんた」という白黒のねこです。八百屋さんの猫は、どこがチビというぐらいの大猫(これ笑います)。町の多くのお店に猫がいるようです。お店ばかりか、お寺には「じゅげむ」という名前をつけてもらった猫までいます。

自分も何とかして名前が欲しい。そんなある日、雨宿りしていたベンチの下を小さな女の子が覗いて、「きみ、きれいな メロンいろの めを しているね」と声をかけられた彼は、気づきます。「そうだ。わかった。ほしかったのは、なまえじゃないんだ。」

じっと女の子を見上げる猫の横顔に、思わず泣いてしまいました。そうです。のらねこは、名前を呼んでくれる人が、愛してくれる人が欲しかったんです。町田さんの丁寧な絵に心を掴まれ、とっても幸せな気持ちになります。猫好きなあなた!必見です。

「ネコヅメのよる」も再入荷しました。ふてぶてしい猫が魅力的なこちらもお楽しみください。

 

 ♫トーク&ライブ決定 7月13日(土)澤口たまみ(かたり)石澤由男(ベース)

今年1月、当店で行われた「宮沢賢治愛のうた」(澤口たまみ著)出版記念イベントのお二人のトーク&ライブが決定。ゆったり、そして豊かな時間の流れた前回同様、今回も期待度大です。賢治の言葉とウッドベースの響きが心地よく胸に伝わってくること間違いなしです。

 

 

世界を変える美しい本」(売切)、「フェルメール」(2160円)、「はじめまして、ルート・ブリュック」(2160円)などアート系の良質の本を出しているブルーシープが、新刊を出しました。なんと、スヌーピーです。正式のタイトルは「スヌーピーミュージアム展図録」(3024円)。

これは、2016年から18年まで期間限定でオープンしたスヌーピーミュージアムで、5回にわたって開催された企画展を凝縮した一冊と、「THE BEST OF PEANUTS」と題されたスヌーピーコミックのベストを二冊組みにしたものです。世界一有名なビーグル犬スヌーピーは、50年も連載を続けていました。

スヌーピーにたいして興味のない私でも、この図録は、思わず読んでしまいました。コミックはもちろん、グッズ、本、ペナント、おもちゃなどあらゆるものが集められています。登場人物の詳細な紹介に、かなりのページを使っていて、著者はここまで描き分けていたのかと、驚きました。最後に作者チャールズ・ M・シュルツの未亡人ジーン・シュルツ(シュルツ美術館理事長)と、日本で翻訳を担当してきた谷川俊太郎の対談まで用意されています。その中で、谷川が、スヌーピーのコミックについて「まずは品がいい。露骨な笑いではないのです。」と語り、そのユーモアのセンスは井伏鱒二に通じるものがあると話しています。資料としても価値があります。

さて、独特の文章と、モノクローム線画でユニークな作品を発表してきたエドワード・ゴーリー。柴田元幸によって数多くの作品が翻訳されて日本でも人気の作家になり、2016年には大規模な巡回展がありました。そのゴーリーの「ぼくたちが越してきた日から そいつはそこにいた』(河出書房新社/古書1150円)は、従来のゴーリーのイメージと違い、モノクロームではなくカラーです。

とある一家が、新居に引っ越してきた時、庭に大きな犬がいたのです、そのセントバーナードみたいなムク犬は、家族が近づこうが、雨が降ろうが、ただ黙ってそこにいるだけなのです。柴田曰く「はじめから終わりまで名前さえない そもそもこの犬の正しい名前は何なのか?が物語のテーマなのだ」

「ゴーリー自身、ほろっと泣かせるような物語なんて間違っても書かない」という柴田の指摘通り、子供と犬の涙の感動物語ではありません。しかし、ゴーリーと組んだことのある作者ローダ・レヴィーンの、じっと止まる大きな犬と、それに名前をつけようとする少年の物語は、少しだけ感傷的な味わいがあり、ゴーリーの中では珍しいと思います。

「いつかはきっと、正しい名前が見つかるとぼくは思う。ぼくはいまもしっかり取り組んでいる。犬は待っている。ぼくは考えている。ぼくたちはどちらも、がんばっている。」という少年のセリフで物語は幕を閉じます。二人、いや一人と一匹に、頑張れと声をかけたくなるラスト。ゴーリーファン必読です!

 

福井さとこさんは、京都嵯峨芸術大学デザイン科卒業後、手描きのアニメーション制作をしていました。その後、世界的絵本作家ドゥシャン・カーライに魅了され、一発奮起、スロバキアのブラチスラバ芸術大学に留学してカーライ氏のもとで版画と絵本の挿絵を学びました。

今回は日本デビュー作「スロバキアのともだち・はなとゆろ おるすばんのぼうけん」(JULA出版局)の原画展を開催します。この本は、2017年ブラチスラバ芸術大学版画学科大学院の卒業制作ですが、スロバキアの最も美しい絵本賞(学生部門)を受賞しました。

お留守番中のゆろとはなの兄妹が、想像の世界で様々な冒険をするお話です。お母さんがお出かけした後、寂しがる妹はなを、お兄ちゃんのゆろが、想像という魔法で、はなにステキな世界の扉を開けてくれます。身の回りのものを、何かほかのものに見立てるのは、子どもたちが得意な遊びですよね。二人は椅子の馬やはさみの鳥たち、くつ下のうさぎ、本のフクロウなどと出会い、テントウムシを救い出します。テントウムシはスロバキアでは神様のお使いとして幸せをもたらすと言われているのだそうです。

福井さんがスロバキアで学んだのは、西洋木版。木版画には板目木版と小口木版があり、我々がよく知っている日本の浮世絵などは、板目木版画。小口木版は銅版画のような細かい表現が可能な手法です。ヨーロッパでは、聖書の絵として発達した細かい描写はこの小口木版画や銅版画を駆使したものになります。刷る技法も日本ではバレンで刷り取りますが、西洋木版はプレス機を使います。版木、紙、インクの素材にも違いはあります。福井さんの今回の絵本の原画は、板目木版で、プレス機もバレンも使い、ウィーンで入手した水性インクによる落ちついた色合いで、シンプルで伸びやかな作品に仕上がりました。

絵本の中で、スロバキアのわらべうたが出て来ます。現地で時々ベビーシッターをしていて、小さな子どもたちと接する中でできあがったお話だそうです。勢いのある構図、繊細な色使い、和紙を使って刷った絵には、日本で培ったものとスロバキアで学んだことが、お話の中だけではなく、絵の表現にも混ざり合い、福井さんならではの独特の世界が広がっているように思います。瑞々しい絵本作家の楽しい原画をお楽しみ頂けたら幸いです。ぜひお出かけ下さいませ。(女房)

福井さとこ絵本原画展『スロバキアのともだち・はなとゆろ おるすばんのぼうけん』は1月22日(火)〜2月3日(日) 12時〜20時 月曜日定休  なお、最終日2月3日(日)18時から福井さんによるスロバキアのお話会を行います。参加ご希望の方はレティシア書房までお申し込み下さい。(075−212−1772)

 

これはタイトル通り、北半球に生きる動物達を描いたイラスト絵本(洋書5000円)です。著者はDieter Braun。動物のイラストとなると、可愛らしいものが大半ですが、これは全く違います。動物達が持っている野性的な姿を、木版画のような手法で色彩豊かに描いてあります。表紙の狼からして、俺たちは荒野で生きているという気合いが漲っています。

第一章は北米大陸で、先ず登場するのはPuma(ピューマ)です。ブラウン系の色を巧みに組み合わせたピューマの横顔(写真右下)。解説(英語)にこうあります。

The Light puma goes by many names:the silver lion,the mountain lion,or the cougar.Measuring up to 1.4meters in Length,it’s one of the Largest big cats in North America.

ピューマは別名を幾つか持っていて、北米大陸では、最も大きいネコ科の動物の一種だということが分かります。てっきりピューマはアフリカだけだと思っていました。(そんなに難しくない英語ですので読めます)

ページを捲ると、Bald Eagle(白頭鷲)、polar Bear(北極グマ)などお馴染みの動物が、大胆にデフォルメされたり、眩しいくらいの色で彩られ、ビビッドな姿を楽しむのと同時に、英語でこの動物はこう呼ぶのかということが解り、思わず発音したくなったりします。

Peregrine Falcon,

Great Spotted Woodpecker,

Hedgehog

Puffin

Mandarian Duck

なんの動物かわかりましたか?

Japanese Macaqueは、日本のお猿さんで、雪深い森にありそうな温泉につかっているところが描かれています。流れる様な白い模様が美しいEuropean Badger(アナグマ)や、赤い嘴をシンボリックに使ったWhite Stork(コウノトリ)等、どれも大胆でシャープなデザインの美しさに驚かされます。

個人的には、Snow Leopard(ユキヒョウ)のイラストが一番好きです。写真左のカッコいいフォルムの次のページには、こちらを睨みながらソロリと向かって来るユキヒョウの、威厳がありながらどこかユーモラスな正面の顔が掲載されています。作者は、たぶん意識的に動物を正面から捉えた顔を多く製作していると思います。真っ直ぐにこちらを見つめる顔はとても魅力的で、自然界に生きる彼らの美しい姿が集約されてる一冊です。

 

★イベントのお知らせ「宮沢賢治 愛のうた 百年の謎解き」

2019年1月18日(金)19時より、「新叛宮沢賢治 愛のうた」を出された澤口たまみさんとベーシスト石澤由男さんをお迎えしてトーク&ライブを行います。ご予約受付中(1500円)

 

 

 

 

mikihouseが出している宮沢賢治絵本シリーズは、とても素敵なセレクトです。スズキコージ「注文の多い料理店」、黒井健「水仙月の四日」、田島征三「どんぐりと山猫」、あべ弘士「なめとこ山の熊」など、数え上げたら限りがありません。今回ご紹介する「氷河鼠の毛皮」(古書/1100円)は、賢治の小説の中でも、それほど有名な物語ではないかもしれません。

「十二月の二十六日の夜八時ベーリング行の列車に乗ってイーハトヴを発った人たちが、どんな眼にあったのか、きっとどなたも知りたいでしょう。これはそのおはなしです。」

猛吹雪の中、出発した列車にはひとくせもふたくせもありそうな男たちが乗車していました。「毛皮を一杯に着込んで、二人前の席をとり、アラスカ金の大きな指輪をはめ、十連発のぴかぴかする素敵な鉄砲を持っていかにも元気そう」な紳士が登場します。おいおい、列車内に銃器持ち込んでいいの?と思うのですが、物語は進みます。賢治の登場人物の描写力が冴えています。

「痩せた赤ひげの人が北極狐のようにきょとんとすまして腰を掛け、こちらの斜かいの窓のそばにはかたい帆布の上着を着て愉快そうに自分にだけ聞こえるような微かな口笛を吹いている若い船乗りらしい男が乗っていました。」

この二人の人物が後半の物語の主人公です。かなりサスペンスに満ちた展開になっていくので、ここではこれ以上書きません。読んでのお楽しみ。

で、この物語の絵を担当しているのが堀川理万子さんです。寒い駅で、たき火にあたって列車の出発を待つ男たちの背中を描いたページに魅かれました。吹雪の寒さとたき火の暖かさが見事に表現されています。次に、毛皮を一杯に着込んだ紳士を、ローアングル気味でやや誇張し、どうもこの人物が良からぬ奴らしいと読者に思わせます。そして、今度は俯瞰気味に列車内を捉え、痩せた赤ひげの人の人を目立たないように描き、前方にはかたい帆布の上着を着た若者を描いています。

彼の着ているコートの色が黄色なんですが、この色がラスト近くで強烈な印象を残すことになります。「俄に窓のとこに居た俯瞰の上着の青年がまるで天井にぶつかる位のろしのように飛びあがりました」という場面で、カメラを下に置いて、その上を飛び越えてゆくような黄色いコートがダイナミックに翻ります。映画的な作風だと感心しました。賢治作品にしては、最後にスパイまで登場する荒唐無稽さもあるのですが、この不思議な物語を躍動感ある構図で描いています

 

先日、堀川理万子さんに偶然お会いする機会を得ました。メリーゴーランド京都店のギャラリーで個展をされていたのです。(左の写真はその時展示されていた作品です)その会場におられたので、いろいろとお話を伺い楽しい一時を過ごさせてもらいました。堀川さん、ありがとうございました。

 

★10月27日(土)の安藤誠トークショーは満席になりました。お申し込みありがとうございました。狭い店内のため、締め切らせていただきます。

ささめやゆきの絵本「椅子」(BL出版/古書1650円) は、様々な人生を「椅子」になぞらえて絵と文章で綴った大人向け絵本です。

絵本は「ぼくたちには座る椅子が用意されている。しあわせの分量も かなしみの分量も きまっているんだ。」と誰も座っていない椅子の絵から始まります。その後、様々な国の色々な職業の、お年寄りや子どもと、その人が座る椅子が登場します。

画家は立てかけたキャンパスに向い、ボクサーは、3分間闘っては1分間パイプ椅子に腰をおとし、映画監督は自分の名前の入った椅子にどっしりと座って、演出を始める。どんな人にも、座る椅子が用意されています。その人の人生になくてはならない椅子の物語があります。

表紙は、編み物をするおばあさんが座っている椅子。「祖母の座った藤の椅子、母の座った藤の椅子、おばあさんになった私が座る。祖母のくらしたこの家に、母のくらしたこの家に、おばあさんになった私がくらす。椅子もテーブルも壷までもそのままで、ただ人だけがかわってゆく。祖母がしたように母もしたように。」

学校の椅子、会社の椅子、行きつけのバーのいつもの椅子、そして自宅で寛ぐ時の椅子と、人生に寄り添う椅子が誰にも用意されていることに気づきます。

「西14丁目狼通り38番地 ステージの音をかき消す大笑いの酔っぱらい。それでもピアノにむかう人。汗まみれのYシャツの襟もと、曇ったままのメガネのレンズ。だれがきこうがきくまいがその音色には気品があって、この人は、ここを愛している。自分の場所だというように椅子をぐっとひきよせた。」

これは、ピアノに立ち向かうジャズマンですが、流れるようなサウンドが聞こえてきそうな絵は、レコードジャケットのよう。

もう一点、椅子を主人公にした素敵な絵本があります。池谷剛一「椅子」(パロル舎/古本900円)です。レストランに置かれた椅子が、何故だが誰も座ってくれず、その事に腹をたてたレストランのオーナーは、この椅子を路地裏に捨ててしまいます。誰も通らない路地で椅子は孤独な時間を過ごします。しかし、ある雨の夜、ずぶ濡れの猫がやってきます。「 猫はゆっくりと僕の下にもぐると まるで暖かい毛布でも見つけたかのように 気持ちよさそうにくるまり 降り続く雨空をときどき見上げながら 冷たく濡れた身体を休め いつしか深い眠りにつくのでした。」

その後、この椅子には猫が集まり座るようになりました。「僕は椅子。座ってもらうことが幸せです」という文章でこの絵本は幕を閉じます。優しいタッチの絵が魅力です。

秋の夜長、いつもの椅子に座ってこんな絵本を読みたいものです。

 

 

★釧路ヒッコリーハウスオーナー安藤誠の「ネイチャートーク」が決定しました。10月27日(土)19時スタートです。参加費は2000円です(要予約)