絵本作家、長谷川集平の絵本「夏のおわり」が復刊ドットコム(古書1400円)から、再発売されました。傑作「トリゴロス」の次に続く、長谷川23歳の時の作品です。

戦争中、ゼロ戦に乗って、日本に飛来するB29爆撃機を何機も撃ち落としたと、自慢げに話すつよし君の父親。ゼロ戦とB29に分かれて、戦争ごっこに夢中になる子供たち。飛行機の翼よろしく両手を広げて、ブーン、ブーンと走り回り、機関銃のようにダッ、ダッ、ダッ、ダッ、ダッと相手を撃ち落とそうと遊びます。長谷川は、少年たちの無邪気な表情とすばしこい動きを描いていきます。それだけを見ていれば、子どもたちの夏の遊びの一場面にしか過ぎません。

しかし、遊びの終った子どもの一人が、B29になったつもりで走り回っていた少年に、こんなセリフを口にします。

「さとる きょう、ちょっとおかしいで。ひょっとして、つよしのおとうちゃんに 戦争の話 聞かされたんちがうか。あのおっさん いっつも あれやからな。あそこは 親子そろって 戦争きちがいやなあ、ほんま。 あんなやつ ほっとけ ほっとけ。へへへ。」

絵本の中で、戦争きちがいと呼ばれているつよしの父親が、お酒を飲むと陸軍の軍歌「戦友」を歌い出すとこころがあります。でも、ゼロ戦は海軍。これについて、作者長谷川の父親は旧陸軍少尉だったので、海軍の人間が陸軍の歌を歌うはずがないという指摘をしたそうです。それに対して、「この人は嘘ついているか、妄想にとらわてるんや。子どもたちはそれを見抜いて、戦争きちがい言うねん。」と、父親に答えたと、長谷川はあとがきで書いています。大体、ゼロ戦が、巨大なB29をバッタバッタと撃墜なんて出来ません。

さとるが、田んぼのあぜ道を「ダダッ ダダッ ダダッ」と、見えない敵に向かって銃撃するように走り抜けていきます。知らないうちに忍び込んでくる、美化された戦争そのものを撃破するような少年の姿。危ない輩が、巧みな嘘で耳元で囁くご時世ですが、私たちも「ダダッ ダダッ ダダッ」と追い払わなければなりません。

 

★町田尚子ファンの皆様。彼女が2007年に発表した「小さな犬」(白水社/古書・絶版1600円)の美本が入荷しました。もう、健気すぎる内容です。「ネコヅメの夜」の猫とはまた違った魅力で、泣けます!

★レティシア書房第5回「女子の古本市」2/21(水)〜3/4(日)

みやこしあきこの絵本「よるのかえりみち」(偕成社/古書/1050円)を読んだとき、不覚にも泣けてきました。人間の幸福を、こんなに温かく描いてみせたことに対して深く心動かされたためです。

とある商店街。そこには多くの生活があります。夕闇迫る頃、遊び疲れた兎の子どもが、お母さんに抱かれて帰る道すがら、家々には灯りがついて、電話をかけている山羊さんや、オーブンで料理中の羊さん、一人でいるものもいれば、楽しそうなパーティの真っ最中のものもいます。迎えにきたお父さん兎に抱かれてベットに入る子兎。

夜も更けて、パーティに来ていた熊さんや、鹿さんが帰るところ、歯磨きをする洗面所の山羊さん、お風呂で今日の疲れを取る馬さんや、うたた寝しているカモシカさん、灯りを消してお休みタイムに入った熊さん等々の様子が、描かれていきます。

その頃には、子兎はぐっすり寝ています。どこかで足音が聞こえてくるのは、人気のない夜の街を抜け、最終列車に乗るネズミさんです。誰もいないホームに佇むネズミさん。遠い町へ向かう列車の窓からは家々の灯りが見えてきます。静かに深けてゆく街を走る列車を俯瞰でみて、絵本は終わります。

やわらかな灯りに包まれた家のぬくもりを、あますことなく描きだしています。表紙と裏表紙の見返しには、夜のしじまに浮き上がるアパートの窓が描かれています。部屋に灯った温かな光の中に、慎ましい生活が見えます。幸福って、こういうところにあるんじゃないの?と、この街の動物達は教えてくれます。これ以上、素敵な絵本はないと、今は思っています。

因みに本書は2016年ボローニャ・ラガッツ賞フィクション部門優秀賞、2017年 ニューヨークタイムズ・ニューヨーク公共図書館絵本賞を受賞しています。

 

あけましておめでとうございます。本日よりレティシア書房通常営業いたします。本年もなにとぞよろしくお願いいたします。

2018年ギャラリーは、町田尚子「ネコヅメのよる」原画展で幕開けです。

ある夜、古い家に住んでいるネコが、「ん?もしかして今夜か?」と気づくところから始まります。一体何が起こるのか?

あちこちの露地から、ネコたちがぞろぞろと出てきて、お互い「いよいよですね。」などと挨拶しながら、ある場所に集まっていきます。そこで大勢の猫たちが楽しみにしていたのは、何年かに一度夜空に上がる「月」だったのです。人は全く登場しません。ネコたちだけで成り立っている、ネコだけが知っている世界。

初めてこの絵本をみたとき、表紙のなんとも不敵な面構えに私はぞくっとしました。素敵!!!カワイイ猫は巷に溢れていますが、こういう、昔の映画に出て来る悪役のような、味のある顔にはなかなかお目にかかりません。この猫様を原画で観ることが出来たら、という願いが叶いました。本屋で原画展を巡回中の、WAVE出版さんからお話があり、町田尚子さんと親しいギャラリーnowakiさんのお口添えで、わがレティシア書房で開催されることになったのです。こいつぁ、春から縁起がいいわい!!

インパクトのある構図で様々な姿が描かれています。原画で見ると、夜の空気感や、細かいタッチ、深い微妙な色彩にみとれます。

 

町田さんは、8才のネコを引き取りました。「白木」という名前のネコがこの物語の主人公だと、絵本のあとがきに書かれています。そして、保護猫の活動にも参加されている様です。年末から販売中の町田さんの猫カレンダー「CharityCalendar2018」の売上げの一部も、動物保護活動に当てられています。

原画展開催を記念して、”ご当地サイン”入りの絵本「ネコヅメのよる」(WAVE出版1512円)、「CharityCalendar2018」(500円)、「手ぬぐい」(1300円)、「ポストカード」(2種類各162円)、「シール」(302円)など販売しています。(数量に限りがありますので、お早めに)

このブログを書いている最中に、町田さんのTwitterで知ったという図書館司書のお客様が来店されて「きっと関西でも原画展が開かれると楽しみにしていました。」と言って頂きました。本当に幸せなことです。「この絵本を子供たちに読聞かせしたら、すっごい喜ぶのですよ。」とも。ミステリー調に話して、怖い物語かと思っていると、最後に楽しいところで終るのがとってもいいのだそうです。

町田さんの猫世界にぜひ浸ってみて下さい。(女房)

 

 

 

レベッカ・ボンド作「森のおくから」(ゴブリン書房1200円)は、サブタイトルに「むかし、カナダであった ほんとうのはなし」と付いています。著者の祖父、アントニオ・ウィリー・ジローが100年ほど前に経験したことを絵本にしています。

1914年のこと。アントニオは深い森に囲まれたゴーガンダという小さな町に住んでいました。両親は、林業に従事する人、鉱石を取る人などの、長期間森で働く人々のためにホテルを経営していました。幼いアントニオは、大人たちの話を聴くのが大好きでした。そして時には、一人で森に入っては遊んでいました。彼が5才の時、山火事が起こります。火の勢いは激しく、住民もホテルの客もみんなゴーガンダ湖へと逃げ出し、鎮火するのを待っていました。すると、そこへ森の奥から、熊や鹿など多くの動物も湖へ逃げてきて、人々と一緒に山火事を見つめるという出来事が起きます。やがて、火は弱まり、動物達も人間達もやれやれという表情で、なんのトラブルも起こさずに、それぞれの住処へと戻っていきました。

 

ペンと水彩で細かく描き込まれた森や、動物たちの表情、ホテルの様子など奥行きのある絵が美しい。そして、俯瞰で捉えた湖に動物と人々が一緒にいる画面が、次のページでは、さらに近寄り、アントニオの周りにカモシカや狐が集まってきます。動物達も同じ森に住む生きるものとして、住人と静かに佇んでいるなんともステキな画面です。

さて、もう一冊絵本を紹介します。優れた児童文学者でありながら、幻想味たっぷりの怪奇小説で日本でも人気の高いウォルター・デ・ラ・メアが詩をつけて、カロリーナ・ラベイが絵を描いた「おぼろ月のおさんぽ」(岩崎書店1200円)です。

夜空のお月様が、地上に降りてきて、身体は猫になって散歩するというメルヘンです。静寂が支配する森の中を、月光で周りを照らしながら歩いてゆくお月さまの姿が可愛らしく描かれています。

デ・ラ・メアと言えば、橋本治の翻訳した「まぼろしの顔」が傑作ですが、創元推理文庫の収められた「死者の誘い」もいいです。前者は美本なら高額で取引されています。後者は絶版ですがそう高くはありません。(近日入荷します!)

 

 

 

 

★安藤誠ネイチャートークショー「安藤塾」今年も開催決定しました。

北海道のネイチャーガイドで、釧路ヒッコリー・ウインドオーナー安藤誠さん(写真右・愛犬キャンディと)のトークショーを10月25日(水)19時30分より開催します。(要・予約 レティシア書房までお願いします) 

 

 

 

「都市と野生の思考」(インターナショナル新書400円)は、京都大学総長の山極寿一と、京都市立芸術大学学長の鷲田清一との対談集です。

二人の知識人が、様々なテーマで縦横無尽に語り合います。大学の存在意義、老いと成熟を学ぶ場としての京都、これからの家族の在り方、アートの起源、自由の根源、ファッションに隠された意味、食の変化がもたらすもの、教養とは何か、AI 時代の身体性まで語り尽くします。優れた知識人の話が、読者の知的好奇心を膨らますというのは、こういう本のことですね。私は1章づつ、電車の中で読みました。

ところで、東京生まれで生粋の京都人ではない山極先生は、京都をこう語っています。

「京都ではいまだに、衣食住にかかわるしきたりがきちんと保たれている。これが根っこを共有する意義でしょう。これは表に現れないからこそ大切なものだった。そんな根っこを日本の多くの地域は失ったんですね。」

へえ、そうなの?と思わないこともないんですが……..。

山極寿一は、ご存知のように霊長類の研究者として、研究発表、執筆など様々な活動をされています。その中の一冊「ゴリラの森に暮す」(NTT出版/絶版1400円)はお薦め。アフリカのザイールで野生のゴリラを追い求めてジャングルを駆け巡った日々を中心に書かれた本ですが、文章が平易で、専門用語が少ないので誰でもスルリと読めます。第一章の「原生林の世界」だけでもお読み下さい。ジャングルで道に迷い野宿をしたその夜、すぐ側に何頭ものゴリラたちが集まっていた時のことなど、小説みたいに面白く読めます。

山極寿一が原生林を歩きはじめたのは、数十年前。日本でサルを観察するために、各地で餌付けが始まり、成果は大いにあったみたいです(京都なら嵐山のサルが有名)。しかし、その一方、これで本当に野生に生きるサルの生態が解るのだろうか、と、人間からエサをもらうために道路沿いにズラ〜ッと並んで待ち続ける彼らを見て、疑問に思い始めます。それで日本各地を巡り、最後に屋久島に行き着きました。

屋久島に棲息するサルたちの生態を追って、彼らの社会を描いたのが「サルと歩いた屋久島」(山と渓谷社1200円)です。当時、大学院生だった著者は、各地で餌付けされて、やけに人間に親しいサルたちに違和感を抱いていました。ところが、屋久島のサルたちは、まるで人間なんて存在しないかのように振る舞っていました。そんな野生のサルに引込まれてゆく姿が描かれたネイチャーエッセイです。

笑い顔が素敵な著者の研究の原点を読むような二冊のサル本です。

 

 

 

 

★安藤誠ネイチャートークショー「安藤塾」今年も開催決定しました。

北海道のネイチャーガイドで、釧路ヒッコリー・ウインドオーナー安藤誠さん(写真右・愛犬キャンディと)のトークショーを10月25日(水)19時30分より開催します。(要・予約 レティシア書房までお願いします) 

 

 

2014年「ふたりのねこ」で絵本作家としてデビューしたヒグチユウコは、グロテスクさと可愛らしさをブレンドしつつ、奇妙な世界を、これでもかという過剰な描きっぷりで人気急上昇です。

しかし、奇抜な発想と画力だけではないとう事が、今回入荷した3冊の絵本を通してわかりました。2015年に発表された「せかいいちのねこ」(白泉社1512円)は、深く心に染み込む物語です。

本物の猫になりたいと願う、ぬいぐるみニャンコと、旅先で出会う本物の猫との交流を描くハートウォーミングな絵物語。登場する猫たちは、当然細かいところまで描き込まれていますが、ぬいぐるみニャンコが見せる様々な表情は、擬人化されたようなものではなく、ヒグチの猫だから出せる独特の魅力があります。そして、ニャンコをいじめる、一見イヤミな猫が、実はそうではなかったことが明らかになる所は、この絵本のクライマックスで、映画なら儲け役と呼べるキャラ。

 

「おれたちねこは、人間より寿命が短いからたいてい先になくなるんだ。でも、おまえはずっといっしょにいられるじゃないか」と、本物の猫になろうとするぬいぐるみ猫を説得して、泣かせます。

その翌年、発表した「ギュスターブくん」(白泉社1512円)は、作家の奇抜な発想力満開の一冊です。上半身は猫で下半身は、ヘビのような、蛸のような、グロテスク極まりない奴なのですが、猫の無邪気な可愛らしさと、底知れない不気味さを持ち合わせて、実にチャーミング。その他の奇妙な動物も、ここまで書き込まれるとアートですね。

そして同年出版された「すきになったら」(白泉社1512円)には、猫は登場しません。少女とワニの恋愛物語です。ワニは極めてリアルに描かれているのですが、とても優しい感情が伝わってきます。このワニ、前作の「ギュスターブくん」にも登場していますが、今回は少女と愛し合う二枚目の主役でした。とても素敵な恋する絵本です。

摩訶不思議な世界に遊ばせてくれるヒグチユウコは、これからも目の離せない作家の一人でしょう。

 

★8月9日(水)〜20日(日)「レティシア書房 夏の古本市」を店内で開催します。

個性的な28店のよりすぐりの古本が大集合です!(14日は休み)


 

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6月28日のブログで、マイケル・D・ヴィットの絵本「レッドタートル」の事を書きましたが、スタジオジブリで映画化されたDVDを購入してやっと見ることができました。全編、台詞、音楽なしの実験的なつくり方で、心に残る良い作品でした。

海で遭難した男が、南海の孤島に辿り着きます。孤独な生活から逃れようと何度も脱出を試みるのですが失敗。そうしているうちに、彼に恋したウミガメの化身の女性と暮らしはじめ、男は幸せを得て、子どもを育てます。やがて成長した子どもは、島を出て、大きな世界へ旅だってゆき、男は年をとります。男の最期を看取った女性はウミガメに戻る、というストーリー。

スタジオジブリ初の、海外共同制作映画として公開され、フランスのカンヌ国際映画祭では、作家性の高い作品に与えられる「ある視点」部門特別賞を受賞しました。でも、決して小難しい映画ではありません。余計な欲望をはぎ取った究極の状況で生きること、死ぬことの意味を描いています。秀逸なのはラストシーンです。年老いて亡くなってゆく男を見つめる女性。満点の星の下で、彼は一生を終えますが、翌朝、ウミガメに戻った女性はゆっくりと島を去っていきます。聞こえるのは波の音だけ。静かな、静かな幕切れです。

私たちの人生は、この惑星の大きな何かに見守られているのかもしれないという想いに涙せずにはいられません。

マイケルが、「レッドタートル」以前に作った傑作短編アニメ「岸辺のふたり」の絵本(くもん出版/絶版950円)が入荷しました。幼い娘を置いてボートに乗り込み、戻ってくることの無かった父。その面影を求めて岸辺に通い続ける娘。やがて、娘は大きくなり、伴侶を得て、子どもを育て、老いてゆく。そして、ある日、彼女は、あの日戻ってこなかった父と再会する。ここでも、死ぬ事と生きることは一体であることが描かれています。

娘をおいて、水平線の彼方に向かう父をシルエットで描いたカットや、眩しい青春時代を送りながらも、父のことがふと頭をかすめる彼女の背後に、影を落とす林を描いたカットに、マイケルの人間の生と死への思いが込められています。ラスト、再会した二人の横に広がる影の長さに、読む者はそれぞれ、いろんな想いを重ねるかもしれません。

「レッドタートル」のDVDは、おそらくレンタルショップで見つかると思いますが、気に入ったら買われることをお薦めします。この先、多くの死に立ち会わざるを得ない時、きっと支えてくれることでしょう。

 

古いフランス映画(1956年)に「赤い風船」という作品があります。少年と風船の友情を詩情豊かに描いた短編映画です。後年、いわさきちひろが絵本化を熱望し、68年に「あかいふうせん」として出版されました。

同じタイトルの絵本、イエラ・マリ作「あかいふうせん」(ホルプ出版850円)が入荷しました。この絵本には、全く言葉がありません。少年が膨らましていたチューインガムが、大きくなり赤いふうせんになり、フワリと大空へ旅立ちます。やがて、その赤いふうせんは、リンゴに形を変えて、地上に落ち、今度は赤い蝶々になり、可愛らしい赤い花へと変身していきます。赤い花は、にわかに曇ってきた空から落ちて来た雨粒に対して、赤い傘へ。その傘をさして雨の中を行く、最初に登場した少年の姿を真上から捉えたシーンで絵本は幕を閉じます。

極めてシンプルな絵本ですが、デザインのセンスが冴えています。「きょうのおやつは」や「かがみのサーカス」等の絵本で注目の作家、わたなべちなつは、この本への思いをこう書いています。

「グラフィックデザインを学んでいた学生時代に、書店で初めてこの絵本を手に取りました。文字がなく、絵のみで表現された潔い画面に、目が釘付けになりました。ページをめくりながら、心臓がどきどきしたのを覚えています。絵本は大人をも魅了する造形であると確信した一冊です」

風船がどんどんとフォルムを変えてゆくという場面転換には、確かにドキドキする楽しさがあります。それに、流れるように展開する一つ一つの絵が、とても素晴らしく、赤い傘を持った少年を上から捉えた絵は、そのまま”FIN”という文字が出る洒落たフランス映画のラストシーンみたいです。

イエラ・マリは、この本以外にも、文字のない絵本として「りんごとちょう」など多くの作品を残しています。当店には「にわとりとたまご」がありましたが、現在は売切です。

 

スタジオジブリのプロデューサー、鈴木敏夫の「ジブリの文学」(岩波書店1400円)は、著者の文学体験や、映画製作者としての人生が満喫できる一冊ですが、その中に、作家と縦横無尽にトークする企画があります。登場するのは、朝井リョウ、中村文則、又吉直樹等の話題の作家ばかりです。その一人として、マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットというアニメ作家と池澤夏樹が著者と語り合う企画がありました。マイケルは、スタジオジブリ制作の長編アニメ「レッド・タートル」を監督した人物です。

著者はマイケルの絵を気に入り、絵本にならないかと思案し、ファンだった池澤に構成と文章を頼みました。その絵本が出来上がるまでを三人が楽しそうに語りあいます。映画は全く台詞のない作品で、そのままでは絵本にならないので、池澤が、登場人物達が過ごす「島」がこの男と女について語るという構成を思いつきます。マイケル監督は、映画では「沈黙の美しさ、そういったものを表現したかったんです」と発言しています。池澤は、監督のその思いを見事に絵本にしました。

「レッドタートル」(岩波書店1400円)は、切なく、美しい物語です。無人島に辿り着いた男が、島に育てられ、海の彼方からやって来た女性(ウミガメの化身)と共に暮らし、子供が生まれます。その子供は大きくなった時、文明世界を見たいと島を離れます。やがて、年老いた男は島で亡くなり、女はウミガメに戻って海にかえります。ラストの島の台詞です。

「女は伴侶を看取った後、ウミガメの姿に戻って、海に帰っていった。

残された私はまた無人島、ただため息をつくしかなかった。」

著者が惚れ込んだ絵は、宮崎駿曰く、日本のアニメの影響を全く受けていないオリジナルなもので、極めて美しいものです。海の深いブルーが目に焼き付きます。女がウミガメに戻って大海原に戻ってゆくラストショットに込められた、生きることへの切なさをたった一枚の絵と、短い文章で表現しています。優れた表現者同士のコラボレーションを見せてもらいました。

マイケルは絵本としては、傑作「岸辺のふたり」を出しています。あぁ〜、あの本かと思われた方もおられるかもしれません。

残念なことに、私はこの映画を見ていません。しかし、既にDVD化されている!これは即買い!とワンクリック。楽しみです。

 

 

 

 

 

 

絵本作家の村上浩子さんは、2015年1月にレティシア書房で、「新作絵本の原画と雑貨デザイン展」をして頂きました。独自のキャラクター「メルシーにゃん」はパリの二人展をはじめ、イタリア、イギリス、フロリダのディズニーランドなどで発表されています。自作の絵本を精力的に作り続けている一方、絵本作りの教室を主宰されて20年以上になります。

前回の個展の際には、いくつもの教室を抱えて大忙しの最中だったようですが、ここ2年の間にお仕事を整理されて「えほん作家養成教室」に力を注がれています。今回、その教室の修了生5人のデビュー展になりました。

教室は6ヶ月で1冊作り上げます。絵本を作るって、スゴく楽しそうですが、何も描かれていない真白の紙に、お話を立ち上げていくのは、口で言うほど簡単なことではないでしょう。生徒さんの中には、デザインの仕事をしていても、筆を使って絵を描くのは何十年ぶり、と言う方もおられました。絵は苦手だけれど何か表現してみたいという方や、描くのはやめて造形物を手づくりの万華鏡で、写真を撮って一冊に仕上げられた方など、個性的な原画と、手づくり絵本が並んでいます。本という形になった自分の絵を手にする喜びは、もの凄く大きいと思います。教室では、次期受講生を募集されています。

マリリン・モンローが好きで、そこからイメージした卵が主人公というユニークな『みみみちゃん』(写真右上・たにゆかりさん)、上手い絵と美しいレイアウトの『すてきなブラウス』(写真左上・かなたにななさん)、達者な筆使いで躍動的な絵と本音のお話が面白い『ロボかいじゅう』(写真左中・かわいみゆきさん)、可愛いアリの生活を丹念に描く『ありさん』(写真左下・ふじむらまりこさん)、万華鏡の面白い世界『まんげきょうえほん なにかな』(写真右中・かわばたひでとさん)など、どれも世界でたった一冊の宝物のような絵本です。村上浩子さんの絵本原画(写真右下)、手づくりグッズも生徒さんの作品とともに展示しております。(女房)

 

村上浩子のえほん作家養成教室京都2期修了生の『えほん展』は7月2日(日)まで

 最終日は17時半まで。月曜日定休

 

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