2018年8月6日、ひだまり舎は出版社としてスタートしました。

「ひだまり舎の本のテーマは、平和、いのち、幸せ。大切なことを、しずかに伝えていきたい。本をひらく時間が、ひだまりのようにあたたかいものでありますように。」

と、本と共に送られてきたポップに書かれていました。出されている本は4点です。

先ずご紹介したいのは、2003年ボローニャ国際絵本原画展入選後、フランスで出版された作品の凱旋出版となった「マルをさがして」(新刊/1980円ポストカード付き)です。著者の山本久美子は、多摩美術大学デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。飼犬マルとタケル少年の夏のある1日を描いた作品です。とにかく、絵が素晴らしい。表紙の昼寝しているタケルの家の畳の雰囲気だけで、その巧みさがわかります。

そして、田島征三(絵)・国広和毅(文)による絵本「ちきゅうがわれた!」(新刊/1760円)も面白い一冊です。おっちょこちょいのワニが巻き起こす大騒動の物語。田島征三の絵にさすがに力があって、読者をぐんぐん引っ張っていきます。昼寝をしていたワニの耳元で、大きな音がします。それをワニは、すわ!地球が壊れた!と勘違いして、他の多くの動物たちを連れて逃げ出すのですが……..。ワニの表情が、なんとも愛嬌があります。

3冊目はイラストブックで、おかべてつろう「17歳 光と陰の季節」(新刊/1540円/ポストカード付き)です。これから17歳になろうとする人、あるいは、かつて17歳だった自分を、優しく励ましてくれます。17歳、まぶしく輝いているようだけれど、実は闇を抱えて迷いの中にうずくまる、そんな若い頃を、猫たちがそっと見つめます。プレゼントに最適です。

最後にご紹介するのは、「地球の仲間たち スリランカ/ニジェール」(新刊/1760円)。

編者の「開発教育を考える会」は、青年海外協力隊に参加し、帰国後教育に携わってきたメンバーたち。スリランカ、ニジェールの現地の子どもたちの日常生活の写真を通して、私たちと似ているところや、全く異なっているところを取り上げて、世界の広さを知ってもらうために企画された写真絵本です。今後、『地球の仲間たち』シリーズとして刊行される予定です。

ところで、スリランカから、日本にココナッツの実が輸入されていますが、その実の繊維からタワシが作られていることを、この本で初めて知りました

個性的なひだまり舎の本を、是非一度手に取ってみてください。

 

今年4月、東京立川にオープンする美術館の開館記念展が「エリック・カール 遊ぶための本」です。その記念図録がブルーシープ社から発売されました(新刊/2200円)。

図録の帯に記載されていますが、これはエリック・カールの全てがわかる立派な書籍です。カールといえば、「はらぺこあおむし」が有名な、色彩を巧みに操る魔術師みたいな絵本作家。

本書で序文を書いている、今人気の絵本作家tupera tuperaは、カールの世界をこう表現しています。 「画面を隅々まで眺めてから、今度は、顕微鏡でも覗くかのように、ぐっと絵に顔を近づける。すると、まるで色鮮やかな銀河や惑星をみているような光景が目の前に広がる。エリック・カールによって生み出された紙の宇宙だ。」

カールの作品では、アメリカの童歌を元に、カールが描いた動物たちが登場する「月ようびはなにたべる?アメリカのわらべうた」(1993)が大好きです。ここに登場するヤマアラシの美しい姿に目を奪われました。「ごきげんななめのてんとうむし」(1977)に登場するサイや、「えをかくかくかく」(2011)に出てくる馬なども、今にも画面を蹴破って飛び出しそうです。

そんな楽しい本と遊ぶ子供達を、人気の写真家長島有里枝が撮影して、子供達の素敵な表情が収録されています。さらに マサチューセッツにあるカールのアトリエや、カール美術館の訪問記や、カールのこれまでの歴史、そして書影入りの作品リストが網羅されています。グラフイックデザイナー時代の作品を初めて見ることができました。永久保存版として持っておいても損はないと思います。

 

「ちょっとしんどいことを『いつものこと』と思って流したり、日々大切にしている『いつもやっていること』があったり、そんな私の日々のなかに、つくることはあり、ただ、それだけのものを展示しています。ゆるくご覧になってください。」

すずむらのどかさんが個展に際して書かれた一文です。

絵本を自主制作されてきたすずむらさんの最新作「いつものこと」の原画展が今日から始まりました。彼女の近くにいる人たちの営みや、愛してやまない犬との生活が描かれています。描かれたディテールがなんとも懐かしい、昭和の香りに満ちています。

お正月やお盆やお祭りなどの決まりごとが、折折に、当たり前のように家の行事としてあり、おじいちゃんやおばあちゃんと一緒に過ごして来られたのだと、見ていると温かな気持ちになります。きっと彼女は優しい人たちに囲まれて、幸せな時間をいっぱい持つことができた人なんだと思いました。

私としては、昨年死んだうちのわんこマロンにそっくりなシバ犬の背中の絵に抱きつきたくなりました。すずむらさんの絵からは、匂いとか手触りとかがリアルに伝わってくるのです。彼女の初めての絵本「ぼっとんべんじょ」なんて、ホント、笑えてくるほど臭ってきますよ。

彼女は兵庫県たつの市出身。成安造形大学イラストレーションクラスを卒業後、しばらく奈良の就労支援施設「たんぽぽの家」アートセンターHANAのアトリエで、障害者の方達の絵を描くサポートの仕事をされていましたが、2年前から地元に戻り、制作に専念しています。今回は、原画とともに、手ぬぐい・カバン・Tシャツ・ポーチなど、すずむらさんの生み出すおおらかなキャラクターのグッズが、たくさん並びました。ぜひお立ち寄りくださいませ。(女房)

すずむらのどか「いつものこと」は3月15日(日)まで 12:00〜20:00

 

 

チュニジア生まれの作家ナセル・ケミルと、北京生まれの画家エムル・オルンが組んだ絵本「歌う悪霊」(小峰書店/古書600円)を読んだ感想が、このブログのタイトルです。

北アフリカサエル地方の昔話から作った物語で、貧しい男が決心して「悪霊の荒れ野」を開拓します。草を刈り、石を拾い、土を耕していると、悪霊たちが現れて「おまえは、そこで、なにをしている?」と尋ねてきます。この地を開拓すると答えると、悪霊たちが手伝ってくれます。翌日、石ころを拾っていると、今度は10人の悪霊が出てきて、手伝ってくれます。男は、日々この地に出かけて作業をすると、どこから湧いてくるのか多くの悪霊たちが手伝ってくれます。麦を蒔こうとした日には、その数なんと40人の悪霊。

とめどなく出てくる悪霊の姿が不気味です。インドかアフリカっぽい帽子をかぶった彼らの目線が怖い!もう、この時点で、子供はアウトじゃないかな。本を投げ出すでしょう…….。

さて、男は自分の息子に麦畑が鳥に襲われないように見張りに向かわせますが、これが命取りになってしまいます。悪霊に魅入られたこの男と一家の最後は悲惨です。息子は、25600人の悪霊に打たれ続け、クレープより薄くなってしまい、妻は51200人の悪霊に髪の毛を毟り取られてしまう。オカルト話なんですが、これが滅法面白い。この絵をそのまま短編アニメに仕立てあげたら、きっとゾッとする作品になるでしょう。

悪霊の「まて、てつだってやる!」という言葉が、後ろから追いかけてきそうです。知らない人の親切に注意というような教訓なのか? それにしても怖い!

★本日の京都新聞書評に、ブログで紹介した小暮夕紀子「タイガー理髪店心中」が載っています。まだ在庫はございますので、良ければどうぞ。

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2003年、アメリカを中心にした連合軍がイラクに侵攻。連日猛爆撃を行いました。その時、イラクの文化的中心都市バスラにあった図書館に勤務するアリアという女性が、爆撃から約3万冊の本を守りました。図書館は爆撃で破壊されましたが、アリアのおかげで、本は無事でした。アリアも戦火をくぐり抜けて生きています。

このアリアの活躍を描いた絵本が、ジャネット・ウインターの「バスラの図書館員」(晶文社/古書900円)です。戦争が近づいていることを察知した彼女は、政府に本を安全のため移動するように頼みましたが、却下されました。そこで彼女が取った行動を、こんな風に絵本は語ります。

「アリアさんは、みずから行動をおこすことにしました。毎晩毎晩、図書館が閉まったあとに、アリアさんは、図書館の本を自分の車にはこびいれました。」

爆撃が激しくなり、図書館にいた人たちも逃げ出しました。彼女は友人に残りの本を運び出す手伝いを要請し、図書館の隣にある彼のレストランに本を運び込んだのです。やがて、爆撃は終わります。

しかし、

「やっと戦争というけだものは、町をでてゆきました。町が静かになっても、アリアさんは安心しませんでした。もし、本が無事だとわかったら、戦争というけだものは、きっと町にもどってきます」

その後、避難させた本を自宅と友人の家に分散させたのです。

今なお、中東には平和は訪れていません。でも、彼女はいつか平和が来ると信じて、本とともにその日を待っているのです。奇跡のような物語ですが、事実です。絵本化したジャネット・ウインターは、画家ジョージア・オキーフの生涯を絵本にした「私。ジョージア」で知られる人です。その時に翻訳のタッグを組んだ詩人の長田弘が、今回も担当しています。

2003年、NYタイムズとのインタビューでアリアさんは、言いました。

「コーランのなかで、神が、最初にムハンマドに言ったことは、『読みなさい』ということでした」と。

(注)ムハンマドは570年頃 生まれのイスラム教の開祖で、軍事指導者、政治家。

 

 

「1964年のことだった。それまで輝かしい演奏家として名を馳せていたカナダのピアニストのグレン・グールドは、コンサート活動から完全に身をひいてしまった。1982年に死去するまで、その後はレコード録音、ラジオおよびテレビ番組、彼自身の音楽へのアプローチを論じる文書を書くなどの仕事以外はやらなかった。」

というのは、ミシェル・シュネデール著「グレン・グールド孤独のアリア」(筑摩書房/古書850円)の始まりです。クラシック界の異端児であり、ある種オタクだったグールドは、それゆえに誰にも到達できない美しいピアノの音色を響かせてくれました。クラシックファンだけでなく、ロック、ジャズを聴く人にもファンが多いというのも異色です。

彼のピアノが、ガブリエル・バンサンの「アンジュール」の短編映画のサントラ(CD国内盤/中古900円)として起用されています。絵本「アンジュール」は、理不尽に捨てられた犬のアンジュールが、孤独と失望の旅の果てに、新しい飼い主と出会うまでを、全く台詞なしで描き通した傑作で、犬を飼っている人には涙なしでは読めません。この作品にグールドのピアノ、いい選択です。

ノルウェイーを代表する作曲家グリークの「ピアノ・ソナタホ短調作品7」という地味な作品で幕を開けます。いかにもグールド、みたいな選曲ではなく、あくまでドラマに寄り添った選曲が続きます。で、本作のメインテーマにはバッハ/グノーの名曲「アヴェ・マリア」に、宮本笑里のヴァイオリンを重ねて録音したものが使われています。冬の夜明けの美しさを想像させるような、数分の曲ですが、何度聴いても素晴らしさに心震えます。

原作の「アンジュール」( BL出版/古書1050円)も在庫していますので、セットでグールドの繊細極まりない音楽に耳を傾けるのも一興です。グールドの名演奏21曲を集めた”The Sound of Gould”(US盤/中古1800円)もございます。何かと騒がしい年末のTVを消して浸ってみてください。

あかしのぶこさんは京都生まれ京都育ち。二十年以上前に北海道に渡り、現在は知床の斜里町在住で、福音館書店「こどものとも」「ちいさなかがくのとも」などの絵本を描いていらっしゃいます。レティシア書房では2回目の個展になりました。

新作「ふぶきがやんだら」を見せていただいた時、これは北海道の厳しい寒さを知っている人だからこそ出来上がった絵本だと思いました。吹雪の間、人も動物も動き回らずに風雪をしのぎます。あかしさんは絵本の折り込みで、「この吹雪をどうにかやり過ごそうとしている森の動物たちも、私も、吹雪の前では同じ一匹の生き物なのだ」と書かれています。京都に住む私には想像しても追いつかないような自然の厳しさを、あかしさんの絵から感じます。そして嵐が止むと、みんなほっとして大喜びで出てくるのですが、その幸せが、また絵本から溢れます。

「じーっとじっと」という絵本は、お母さんウサギが出かけている間、じっと待っているウサギのきょうだいのお話。その草むらの生き生きとした植物や動物や子供達の表情などが、優しく暖かなタッチで描かれています。

原画は他に「もりのみんなのやまぶどう」「ねむたいねむたいももんがたち」が並んでいます。どれもあかしさんの身近な世界が、素朴で、可愛く力強い絵で表現されています。絵本もいくつか販売していますので手にとってみてください。他にポストカード(100円)エコバッグ(550円)などもあります。初日は知床のパン屋さん「メーメーベーカリー」からパンとシュトーレンが届きました。

あかしさんは、絵本の原画展としては北海道の図書館などで行われていたようですが、京都で彼女の原画を見る機会はあまりないと思いますので、ぜひこの機会にご覧いただきたいと思います。レティシア書房の今年最後のギャラリー企画展になります。(女房)

あかしのぶこ「えほんのえ展」は、12月11日(水)〜28日(土)12:00〜20:00月曜定休日

レティシア書房は、28日が今年最後の営業日です。

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イギリス生まれの絵本作家、スーザン・バーレイが、1984年に発表した「わすれられないおくりもの」(評論社/古書850円)は世界的に注目され、今も売れ続けています。

森に住む老いたアナグマは、森の仲間たちに慕われていました。しかし、「長いトンネルの 向こうに行くよ さようなら アナグマより」という手紙を残して、天国へと旅立っていきます。悲しみにくれる仲間たち。けれど、冬が去り春が訪れる頃、みんなは彼が残していった豊かさを心の中に残すことで、少しづつ悲しみを癒していきます。肉体は滅んでも、彼の言葉や教えてもらったことは永遠に残ると悟った友達のモグラは春の大空に向かって、「ありがとう、アナグマさん」と呼びかけます。

「モグラは、なんだか、そばでアナグマが、聞いてくれるような気がしました。そうですね……きっとアナグマに…..聞こえたにちがいありませんよね。」

ラストの春の大空に向かって声を出すモグラのシーンがとても素敵で、愛したものの魂は、いつでもそばにいるよ、という感じが良く表されていると思います。

三木卓は「鶸」で芥川賞、「路地」で 谷崎潤一郎を受賞した文学者です。三木が物語を作り、スーザン・バーレイが日本語を英語の翻訳し、絵を描いた作品「りんご」(かまくら春秋社/古書900円)を入荷しました。海外の作家のものを、文学者が日本語に翻訳したものは沢山ありますが、その逆のパターンは珍しいと思います。       

話は山の中に捨てていたりんごの芯を、森の動物たちが育てるというものです。左ページに日本語と英語、右ページに絵が配置されています。

「春になって 木は はじめて 白い花を いっぱいにさかせました。」

“Spring came  For the first time the tree was full of white flowers”

難しい英語ではありません。なんとなく音読したくなってきます。体の中に言葉がすっと入ってくる感じです。こういう文章を英語の勉強に使えばいいのに…….。

ところで、三木卓の新刊(?)が、新しく立ち上がった出版社、水窓出版から出ました。「ミッドワイフの家」(新刊1980円)という短編集です。昭和48年に一度講談社から出版されtものを復刻したものです。三つの短編が収められていますが、「炎に追われて」は童貞であることに苦悩する若者が、童貞を捨てる様を描いた物語です。

「わたしは和子の歯を舌で愛撫し、口を開いてくれることを望んだ」なんていう、古色蒼然として文章に出会うと、なんだかなぁ〜と思いますが、雑誌に発表されたのが昭和48年。あの時代では、こんな物語を書く人は少なかったのでしょうか。

三木卓の違った側面を知った気分です。

 

 

 

 

予告

12月11日(水)から始まる知床在住の絵本作家あかしのぶこさんの絵本展に、知床のパン屋さん「メーメーベーカリー」からパンが届きます。シュトレンも含めて20個ほどのパンは、初日のみの販売になりますのでお見逃しなく。

 

 

 

 

 

 

 

「植物は楽しい」をテーマに掲げたミニプレス「ideallife with  plants」(660円)最新号(8号)の特集は「しょくぶつのえほん」です。

絵本専門店のオーナーが推薦する植物関係の絵本紹介と、インタビューが楽しいです。その中には、京都の絵本専門店「メリーゴーランド京都」の鈴木店長も登場します。彼女が推薦しているのは石井桃子作、初山滋絵の「おそばのくさはなぜあかい」です。

「冒頭『むかしむかしおおむかし、くさやきが、まだくちをきいていたころのおはなしです。』と始まります。そうか、昔はみんなしゃべっていたんだ!って、そう思わせるくらいのい説得力があります。」

そう言われると読んでみたくなるのですが、続いて絵本の価値をズバリと指摘しています。それは、

「子どもが本を読むってそういうことだと思うんです。開いた途端に自分の知らない世界に自然に入ってしまう」と。

これ、絵本が持っている魅力ですね。大人になっても、絵本を開いて、おおっ!と叫んでしまう時がありますよね。

また、横須賀で「うみべのえほんや ツバメ号」を運営されている伊藤さんは、私も好きだったバーバラ・クーニーの「ルピナスさん」を推薦しています。「子どものころからおばあちゃんになるまでのルピナスさんの人生をつづりながら、女性の行き方とルピナスの花をかさねて描いた本です。」本の中に出てくる「世の中をうつくしくする」という台詞は大人にも、子どもに響いてきます。

連載の「植物の和菓子特集」秋編は、イネ科の植物です。「花は地味で注目されないが、平行な筋状の葉脈を持つ、細長い線状の葉の姿が美しい」という言葉通りに、イネの形を盛り込んだ和菓子がズラリ。京都からは鶴屋吉信の「嵯峨野」が選ばれてますが、地味な稲やススキのお菓子は、抑えた色合いや風味が秋を感じる大人の雰囲気です。

「ideallife with  plants」はバックナンバーも販売しています。本好きには、ニンマリのミニプレスです。

なお、メリーゴーランドの鈴木店長が書かれた「絵本といっしょにまっすぐまっすぐ」(アノニマスタジオ/古書1300円)も在庫しています。

 

 

えき美術館で開催中(14日まで)の「ショーン・タンの世界展」に行ってきました。

ショーン・タンは1974年オーストラリア生まれのイラストレーター、絵本作家です。2008年、新しい国へと旅立った男を文章を全く入れずに描いたグラフィックノベル作品「アライバル」(河出書房新社/古書1400円)で国際的に評価され、日本でも注目されました。怪奇と幻想、そしてユーモアが巧みにブレンドされた作風は、シュールなサイレント映画のような世界へと誘ってくれます。

ひずんで変な形の生物なのかロボットなのか判別できない、怖いのに可愛いキャラクターが、大挙登場します。繊細でありながら、壮大な、こんな世界あるわけないよな、と思いつつ、でもあったらいいかも、と思ってしまう不思議な作品世界です。

とりわけユニークなのが、2000年に刊行された「ロストシング」です。ある日、少年は海岸で奇妙なものに遭遇します。軟体動物と、カニと、ダルマが合体したような生き物です。少年は、この生き物が何で、どこから来たのかを探そうとします。しかし、その答えは見つかりません。やがて少年は、そんな変な生き物たちが生息している楽園を見つけて、その生き物を送っていきます。

タンは、この絵本を元にして、4人のクリエイターと8年間にも及ぶ制作期間を経て、 CG と手描きで15分のアニメーション短編映画を完成させました。本作品は、アカデミー賞短編アニメ賞を獲得しました。会場で上映されていますので、ぜひ観てください。少年とヘンテコな生き物の別れのシーンで、思わず涙が出ました。

展覧会では、大きな油彩作品も集められています。

今、店頭には、「夏のルール」(河出書房新社/新刊2200円)、「遠い町から来た話」(河出書房新社/新刊1980円)、「エリック」(河出書房新社/新刊1100円)、「鳥の王さま」(河出書房新社/新刊1980円)等と共に、展覧会の公式図録兼書籍「ショーン・タンの世界」(求流堂/新刊2750円)も販売中です。作品をパラパラ観てから美術館に行かれるも良し、その逆もまた良しです。(残念ながら古書はあまり出回っていませんので、新刊でお求めください)