2018年、下半期の読書と映画を振り返ります。

面白い小説が沢山ありました。雪深い町に都会から逃げてきた女性がひっそりと暮らす、木村紅美「夜の隅のアトリエ」は、哀しさが印象に残る作品です。ラブホテルのオヤジとか、古びた家でひっそりと散髪屋を営む青年など、魅力的なキャラが登場します。地味な仕上がりになるかもしれませんが、映画にしてほしいものです。

河川敷に集まるホームレスを主人公にした、木村祐介「野良ビトたちの燃え上がる肖像」は、少し先の日本を舞台にして格差、貧困、差別を描いています。悲劇が待ち受けているのですが、暗澹たる気持ちで本を閉じることのないエンディングが用意されています。作家星野智幸が「路上文学の傑作」と評価していますが、その通りです。

第一線で活躍している辻原登「枯葉の中の青い空」、岩崎保子「世間知らず」、上村亮平「みずうみのほうへ」、山本昌代「手紙」、滝口悠生「死んでいない者」など、表現や内容に優れた作品に数多く出会いましたが、藤野千夜「編集ども集まれ」の面白さは格別でした。80年代の漫画業界に生きる主人公を描いています。二つの物語が同時進行しながら、一つに収縮してゆく流れが見事だと思いました。

尊敬する書店主が書いた2冊は刺激的でした。誠光社店主、堀部篤史「90年代のこと」、Title店主、辻山良雄「言葉の生まれる景色」は、それぞれ個性的な世界観が、見事に文章の中に息づいていました。彼らの存在は、同業者としてとても心強いです。

なお、2019年7月上旬に、「言葉の生まれる景色」の絵を担当したnakabanさんの原画展を行う予定です。ご期待下さい。

映画は、上半期に続いて、野尻克乙「鈴木家のウソ」、サミュエル・マオズ「踊る運命」、ジアド・ドゥエィリ「判決ふたつの希望」、そしてオフィル・ラウル・グレィツァ「彼が愛したケーキ職人」等々、忘れられない作品に巡り会いました。「彼が愛したケーキ職人」のラスト、ヒロインの微笑みは、映画がくれた最高のプレゼントでした。

さて、今年の営業は本日で終了いたします。2018年もレティシア書房のギャラリーコーナーを飾って頂いた皆様に、この場を借りてお礼申し上げます。

町田尚子さんの「ネコヅメのよる」原画展から始まり、季刊「コトノネ」さん、高原啓吾さん、長野県ゴロンドリーナ工房さん、ミシマ社さん、原田京子さん、沖縄からほんまわかさん、東京甘夏書店さん、梅田香織さん、村上浩子主宰「えほん作家養成教室展」、「災害で消えた小さな命展」、ハセガワアキコさん、いまがわゆいさん、すずきみさきさん、ARK写真展、白崎和雄さん、高井八重子さん・長野利喜子さん・大屋好子さん、高山正道さん、さわらぎさわさん、やまなかさおりさん、神保明子さん、ZUS加藤ますみさん。ステキな作品展を本当にありがとうございました。2月と8月の「古本市」にご参加頂いた皆様にも心よりお礼申し上げます。こうして振り返ってみると、本の関係の展覧会をたくさん開催出来ました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。良いお年をお迎え下さいませ。(店長&女房)

★イベントのお知らせ「宮沢賢治 愛のうた 百年の謎解き」

2019年1月18日(金)19時より、「新叛宮沢賢治 愛のうた」を出された澤口たまみさんとベーシスト石澤由男さんをお迎えしてトーク&ライブを行います。予約受付中(1500円)レティシア書房075−212−1772(ただし、来年1月7日まで休業いたしますので、電話はつながりません。よろしくお願いします。)