先ず、ご紹介するのは雪村いづみ(1937年〜)。元祖三人娘と言われた日本を代表する歌手、美空ひばり・江利チエミ・雪村いづみですが、その中でも最も英語の発音がよく、海外の曲を歌わせれば、抜群の歌唱力を発揮したシンガーです。

彼女が、フランスの民族音楽ミュゼットを歌ったコンサートが1994年にありました。その様子を収録した「ミュゼットを唄う」(絶盤1700円)を入荷しました。音楽家の父と映画会社を経営する母をもつ雪村には、モダンなセンスが早くから身についていました。このライブには、ミュゼット界の大物アコーディオン奏者も参加して、フランスの下町の雰囲気一杯のコンサートに仕上げています。小粋で、ちょっとセンチで、ハートウォーミンな雪村の歌声を聞いていると、心が解放されてゆくようです。ベースはシャンソンなんだけれども、陽気で、明るく、ちょっと哀愁のある曲をのびのびと歌っていて、アコーデイオンが奏でるキラキラした音色とまるでダンスを踊っているような感じが素敵です。ジャケットデザインは和田誠。このCDの楽しさが伝わります。

さてもう一人ご紹介します。ズバリ美空ひばりです。今回入荷したのは1955年から1966年にかけて録音された膨大な曲の中から、ジャズスタンダードと、ポピュラー音楽の名曲をセレクトした2枚組「ラブ!ミソラ ヒバリ」(2500円)。エリントンの名曲「A列車で行こう」は、ドラムの音だけで列車が走り出す雰囲気を作るイントロで始まり、ベースとピアノが絡んで美空が登場。日本語で歌い出して、途中で英語にチェンジ。後半はスキャットでスイングします。この人の音楽力の大きさを知る一曲です。コール・ポータの”Just one of those things”では、フルオーケストラバックに、これもまた日本語でシャウトしていますが、ジャズと歌謡曲の微妙なライン上で巧みに歌う芸当を見せてくれます。

彼女の歌は、感情が過剰になりすぎることがあります。アイルランドの民謡で誰でも知っている「ダニーボーイ」も後半、そうなるのですが、そこですっと引く歌い方で、曲に深みを与えています。ライナーノーツも充実していて全曲歌詞(訳詞)付きです。