沖田修一監督作品「おらおらでひとりいぐも」(京都シネマにて上映中)は、老いも若きも観てほしい映画です。一人暮らしのおばあちゃんの映画ですと言ってしまうと、なんだか暗そうなんて思うかもしれませんが、大丈夫。笑えます。でも、老人を茶化しているわけでもなく、しっかりと見つめています。

1964年東京オリンピックの年。東北生まれの桃子さんは、お見合い結婚を投げ捨て、東京へと向かいます。そこで見染めた男性と結ばれ、子供も二人授かりました。それから55年。夫に先立たれ、子供とも疎遠になり、外出するのは病院と図書館で本を借りる時ぐらい。ひとりで暮らす家は、いつも静かでした。

突然、3人の男が現れます。実は彼らは桃子さんの心の声が人の形となって現れたのです。ワイワイガヤガヤと雑談したり、家の中で踊ったりと、何かと騒がしいのですが、実際には見えない人たちなので当然なのですがふっと消えたりします。そうしてまた、静かな空間で、いつもの生活に戻ります。

映画は、この3人との交流と、桃子さんが回想する若い時の自分の姿を交互に織り交ぜながら、老いた彼女に寄り添います。「老い」と「孤独」というテーマを沖田監督は、大胆で、そして軽妙洒脱に仕上げていきます。

前作「モリのいる場所」でも、老人画家、熊谷守一を描いた沖田監督は、とんでもなくユニークな手法で、私たちが否応もなく向き合う孤独と老いを見つめ、それでも一人で自由に生きてゆくんだという心意気を描きました。映画後半、森を散歩する桃子さんが、まるで森と会話するように、ゆっくりと歩みながら、ひとりで生きてゆく心持ちを高めているところは感動的です。

桃子さんを演じた田中裕子が絶品でした。

もう、一年ぐらい前になるのでしょうか。若い男性のお客様から「ヨレヨレ」ありますか?とのお問い合せがありました。なんだ「ヨレヨレ」って??

九州にある「宅老所よりあい」が出している雑誌であることが判明。早速取り寄せました。

宅老所が出しているだけあって、老人との日々のお付き合いが細々書かれていました。正直こんなん、売れんの?という私の杞憂に反して、どんどん売れていきます。それも、若い人からお年寄りまで関係なくにです。

老いるということを、こんな風に書けるのは、実際、日々老人とのドタバタに接しているからなのでしょうね。1号の表紙が宮崎駿、2号が忌野清志郎、3号がアホの坂田の衝撃的なイラストだったこともあり、手に取ったお客様が買われていきます。

その「ヨレヨレ」を作っている鹿子裕文さんが、単行本を出版されました。題して「へろへろ」(ナナロク社1620円)。

「ぶっとばせ貧老!未来はそんなに暗くない」

と帯に書かれたこの本は、お金もコネもない人達が、あーだ、こーだと試行錯誤しなから、居場所を手に入れて、お金を集めて特別養護老人ホームを立ち上げるまでを追っかけた痛快無比の記録です。介護や、老人問題をテーマにした本ではありません。無謀で、無計画でもやります!という新しいことを始める時のほとばしる無茶なエネルギーを描いた本と思ってください。

このホームは「僕たちは<老人ホームに入らないで済むための老人ホーム>を作る」という無茶苦茶な発想からスタートします。その発想を現実のものとして定着してゆく日々のドタバタは、これから新しいことを展開する人には、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

第一章「へろへろ発動編」に「よりあい」の基本姿勢が書かれています

「一人の困ったお年寄りから始る。一人の困ったお年寄りから始る」

制度があるからでもなく、施設を作りたいからでもなく、夢を実現したいからでもない。

「目の前になんとかしないとどうにもならない人がいるからやるのだ。その必要に迫られたからやるのだ。それは理念ではない。行動のあり方だ。頭で考えるより前にとにかく身体を動かす。要するに『つべこべ言わずにちゃちゃっとやる!』のだ」

いやぁ〜「ちゃちゃっとやる!」という明太子パワーには感服しますね。

ちなみに、著者の鹿子さんは、元々はロック雑誌「ロッキンオン」の編集者。老人問題や福祉とは無縁の人です。だからこそ、「ヨレヨレ」も「ヘロヘロ」も新鮮で面白いのかもしれません。

ついに「ヨレヨレ」の第四号も発売されました。今日もお客様から「ヨレヨレ4号ありますか?」ときかれたところです。スミマセン。もう少しお待ちください!近日入荷します!!