2014年にスタートした出版社「共和国editoral republica」は、出す本出す本が刺激的で渋い本が多く、新刊は全て注文しています。この出版社の主なコンセプトは「『文化批判』です。文学、批評、思想、音楽、映画、美術、精神分析、コミックをはじめとするジャンルを超えた『文化的なもの』を通して、この現代社会と横断的/歴史的/批判的に向き合って参ります。」とHPに書かれています。

この出版社の本で、最初に動いたのは、藤原辰史の「ナチスのキッチン」(2970円)でした。ファシズム体制下で人間と食との関係に起きた歪みを通して、「台所」という空間が持つファシズムについて検証した画期的な一冊です。のちの食文化論に影響を与えたと同時に、藤原辰史の名前が脚光を浴びた記念碑的な本でした。藤原は「食べること考えること」(2640円)もこの出版社から出しています。

以前ブログでも紹介しましたが、芥川仁「羽音に聴く」(2640円)は、全国39箇所の養蜂場を訪れ、ミツバチの世界を見つめ、彼らと生きる人々の姿を撮った写真集です。

これは面白い、読もうと思っていた矢先に売れてしまったのが川島昭夫の「植物園の世紀 イギリス帝国の植物政策」(3080円)でした。1789年、英国の戦艦バウンティ号で反乱が起きます。この事件は、映画や小説になっていて有名なのですが、この戦艦がパンノキという植物を、南太平洋のタヒチからアメリカの南にある西インド諸島まで運ぶ命令を受けていました。何故そんな遠方まで運んでいたのか?英国植民地政策を担った植物学者たちの姿を通して、「植物園」の起源を掘り起こした労作です。

日本でも有名な「愛犬ダーシェンカ」の著者カレル・チャペックの弟ヨゼフは、反ナチスの一コマ漫画や風刺画を描き続けましたが、逮捕され強制収容所に送られ、そこで生涯を閉じました。「独裁者のブーツ イラストは抵抗する」(2750円)は、その彼の作品を集めたものです。

最新作は、武田麟太郎「蔓延する東京」(3850円)です。明治37年生まれの小説家で、「日本三文オペラ」、「井原西鶴」などの著作がありますが、ご存知の方は少ないかもしれません。1930年代の東京。戦争の時代へと入ってゆく帝都東京の底辺に生きる人々の姿をあぶり出し、蔓延するファシズムに対峙した作品です。1929年、文藝春秋に発表した「暴力」は、政府から発禁処分になりますが、川端康成が高い評価をした作品で、初めての収録されました。

地味ながら、知的刺激を与えてくれる作品ばかりで、新作だけでなく、既刊本も少しずつ揃えていきます。

 

 

昨日紹介した養蜂家のドキュメンタリー「ハニーランド」に引き続いて、蜂に関する本をご紹介。

芥川仁の写真集「羽音に聴く」(共和国/新刊2640円)です。藤原辰史が「芥川仁の写真はどれも、言葉になる寸前の空気の溜めと震えが映っている」と帯に書いています。ミツバチの羽音が聞こえるような写真を見ていると、藤原がいうことがわかる世界が広がっていきます。

「蜜蜂の言葉は『羽音』だ。小さな命の声に耳を澄ませてみよう」芥川仁の言葉です。

健気に働く蜂たちの姿。そして、その蜂たちを大事に育てる養蜂家の人たちの姿。ここまで養蜂家の仕事ぶりを収めた写真集って、多分なかったのではないでしょうか。

「蜜蜂は、自然界の変化に影響を受けやすい小さい命だ。花のない冬季を人間の世話なくして生き抜くことはできない。自然界の天敵スズメバチの来襲から守るもの養蜂家だ。」

という文章と共に、日本各地の養蜂家が登場します。「働き蜂が一生働いて、一万回飛んで、スプーン一杯の蜂蜜って言わすもんね。ちゃんとした蜜蜂の一生を終わらせてやりたいという思いはあっとですたい」とは、熊本の養蜂家、中村邦博さんの言葉です。

北海道歌志内市で養蜂をしている川端優子さんは、日本では珍しい女性養蜂家です。寒い北国でも越冬できる蜂を育てています。

「雪溶けの季節になったら、天気の良い日に(蜜蜂を)飛ばしてあげるんです。雪よけのワラやコンパネを取り除いて巣箱の蓋を開けると、元気で生きてて、みんな並んでこっちを見てて、なんとも言えないんですよ。あの顔、いやーっ、生きててくれたって」

彼女の笑顔と、そのときの蜜蜂の顔(もちろん向き合ったことはないですが)を思い浮かべました。養蜂家を通して、自然と共に生きる人たちの暮らしを捉えた素晴らしい写真集だと思います。