はしだのりひこという名前を聞いて、「帰ってきたヨッパライ」を歌っていたフォークシンガーと即答できる方は、50代より上の世代ですね。1945年京都生まれ、北山修、加藤和彦らとフォーククルセイダーズを組み、一世を風靡したバンドのシンガーソングライターです。彼が、主夫業に奮戦した日々を描いた「お父さんゴハンまーだ」(半月舎出品/教育史料出版会500円)は、まだ「主夫」なんて言葉のなかった時代のお父さんの姿がユーモアたっぷりに描かれています。

「子どもの成長によって親が成長する”育ちあい”  いまからでも遅くない。お父さんたちよ、家に帰ろう! そして、家庭にあっても、父親としての企業努力にめざめよう!」

という言葉は、時代を先取りしていましたが、残念ながら2017年にこの世を去りました。

オモロイ個展の図録やなぁ、と思ったのが「ザ・タワー都市と塔のものがたり」(古書柳出品/大阪歴史博物館2500円)です。この展覧会は、2012年2月〜5月に東京都江戸東京博物館で、同年5月〜7月に大阪歴史博物館で開催されました。19世紀から20世紀にかけて、三つの都市パリ、東京、大阪に誕生した塔を中心に、各地の塔と都市がどう結びつき、発展していったのかを考察するものです。パリのエッフェル塔、東京の凌雲閣そして、大阪が誇る通天閣が、写真、絵画、図面等の資料を駆使して丹念に論じられてます。昭和18年に近隣の火災のために、通天閣も延焼し鉄骨が歪み、解体されて300トンの鉄の塊になった通天閣は、軍に鉄骨として供出されますが、利用されることなく明石の浜で風雨に晒されていたそうです。

東京タワーの特集で「たそがれの東京タワー」というタイトルの映画ポスターが登場します。大映のメロドラマ。主題歌はフランク永井「たそがれのテレビ塔」って知ってる人いらっしゃいますか?

萩尾望都が、「残酷な神が支配する」「あぶない丘の家」を雑誌連載していた超忙しい90年代前半に、角川書店の雑誌「The Sneaker Special」に書いたSF小説4作品を単行本にした「ピアリス」(本は人生のおやつです出品/河出書房新社700円)はファンなら見逃せません。発表当時は、「木下司」というペンネームで発表していました。残念ながら、この雑誌は4号で廃刊になり、小説もそこでストップしてしまいました。この単行本には、40点のイラストが収録されています。

 

 

 

 

★「夏の古本市」は18日(日)まで開催しています。(12日(月)は定休日。)

その後19日(月)〜23日(金)まで休業いたします

 

 

回は、コミックをまとめてご紹介。

昭和58年、コミック雑誌デュオ別冊で出た「大島弓子の世界」。カセットテープのインデックスやらミニトランプなどのオマケまで付いています。大島があれば、萩尾望都もあります。小学館文庫3冊セットの「ポーの一族」、同じく文庫で「イグアナの娘」、「銀の船と青い海」とまだ探せばどこかの箱に隠れているかも。

コミックの目玉は、ますむらひろしの「アンダルシア姫」(全3巻)です。言わずと知れた宮沢賢治の諸作のコミック化で、人気の作家です。スペインのアンダルシアに来た画家青年「時蔵」と、古城に暮らす不思議な力を持つ少女「オリベ姫」の物語です。嫉妬、裏切りなど人間の闇の面に焦点を当てた作品です。

もうひとり、さがみゆきの作品が3冊。え、誰?それ??おそらくご存知の方は少ないはず。「呪われたふたつの顔」、「怪談ふたりお岩さま」、「ミイラ狂女」の三作。極めてマイナーなコミックです。猛暑に、ぴったりのコミックとしていかかでしょうか。

これをコミックと称していいのかどうかは別として、グレゴリ青山「ナマの京都」は笑わせてくれる京都本です。アルバイトに行った料亭で出会う「京いけずの章」は爆笑もん。もちろん、笑わせてくれるだけだなく、「京都における<王将>の存在」というエッセイで、そこそこの値段で持ち帰れる王将が「中華料理のおかず屋さん」として京都に定着したという見解は成る程納得。

中でも、一番そうそう、と笑わせてくれたのは、地元放送局の近畿放送TVで流れていた「もっさいCM」。ここでは「岩田呉服店」、「西村のエイセイボーロ」、「お墓の忠兵衛」、「山田木材経営団地」が取り上げられていますが、そのもっささが逆に強烈な印象を残すコマーシャルでした。地元の方なら知ってますよね、「そいつぁ岩田だよ、 そいつぁ岩田だよ〜」というあの呉服店ソング。

        

★本日の紹介本一覧 (「書名」/出版社/価格/出品店)

「大島弓子の世界」(朝日ソノラマ/1200円/古書柳)「イグアナの夜」(小学館文庫/400円/らむだ書店)  「ポーの一族」(小学館文庫/500円/ヴィオラ書房) 「銀の船と青い海』(河出文庫/400円/Think) 「アンダルシア姫」(学研/1600円/徒然舎) 「呪われたふたつの顔」(ひばり書房/400円/ちのり文庫) 「ナマの京都」(メディアファクトリー/500円/ヒトノホン)

 

★レティシア書房 夏の一箱古本市は8月20日(土)まで開催中 

 

(最終日は18時まで。15日(月)は定休日。)

 

★レティシア書房 夏休みのお知らせ 8月21(日)〜25(木)

 

 

 

 

3.11を埼玉で経験した萩尾望都は、何も手につかず、茫然とした日々を送っていたそうです。そんな時、知人から

「68年チェルノブイリで原子力発電所が爆発する事故が起こり、土壌が放射性物質で汚染された。それで、土壌をきれいにするために、なのはなや麦を植えている。」と、聞いたのです。

その話に触発された彼女は、花が咲く話を書こう、それが希望になればいいと思ったのです。

「なのはな」はこうしてできました。舞台は震災後の福島。おばあちゃんを津波にさらわれた少女ナホちゃんが主人公です。マンガのストーリーを書いてしまうなんて野暮な真似はしませんが、ラスト、ナホちゃんはチェルノブイリにいるもう一人のナホちゃんに会います。それが、何を意味するのかは読者の想像力におまかせします。

単行本化するに当たり、書き下ろし「なのはなー幻想『銀河鉄道の夜』」が収録されています。賢治の「銀河鉄道の夜」と「ひかりの素足」をアレンジしながら、ナホちゃんとおばあちゃんの最後の出会いを描いています。さらに、放射性物質を”擬人化”した「プルート夫人」、「雨の夜」、「サロメ20××」もこの本で読むことができます。萩尾望都と言えば。個人的には70年代に出した「百億の昼と千億の夜」や「スタートレッド」等のSF作品に魅かれて読んでいました。放射性物質を擬人化して描くなどどいう離れ業をやってのけたのは、SF作家としての資質からなのでしょうね。

今回、「なのはな」(小学館900円)と一緒に、彼女の代表作も入荷しました。SF傑作選「AA’」(小学館900円)、「トーマの心臓」(小学館業書900円)、「モザイクラセン」(秋田書店650円)、「訪問者」(小学館800円)そして、「スターレッド」(小学館1300円)等、絶版になっている大型版が揃いました。ハードSF「バルバラ異界」も3巻セットの文庫で入荷しました。2002年、50歳を過ぎて描いた大作で、そのイマジネーションの豊富さに、こちらが追いつけない力作でした。

今回、ちょっと珍しい彼女の本も入荷しました。77年から79年まで「奇想天外」に連載された短篇小説を集めた「音楽の在りて」(イーストプレス1400円)です。こんな本が出ていたなんて知りませんでした。