19世紀末イギリスの裕福な家庭に生まれて、文化人に囲まれて育ち、20代後半から作家活動を始め、新しい文学の旗手となって活躍し、59歳で自殺したヴァージニア・ウルフ。彼女の魅力を丸ごと一冊にまとめたミニプレスが入荷しました。タイトルがすごい!「かわいいウルフ」(1944円)ですよ!ヴァージニア・ウルフも「かわいい」で括られるか。研究者なら卒倒しそうなタイトルですが、これ、やわな内容ではありません。面白い!!

この本を企画した小澤みゆきさんは「ヴァージニア・ウルフは、かわいい」と宣言します。

ウルフの小説は、人の意識の揺らめきを流れるようにして描く作家です。また、動植物や、町の風景を執拗なまでに描きこみます。その描写力を小澤さんは、こう語ります。

「人物の言動や意識が実にチャーミングで、人間臭く、茶目っ気にあふれているかがわかります。シリアスさと同じくらい、ユーモアを大切にしていた作家が、ヴァージニア・ウルフなのです。そのシリアスとユーモアを行き来する様子を、私は<かわいい>と形容したいと思います。」

小澤さんは、さらに長編小説の<かわいい>を四つのきり口に分けています。それは、「おままごと」「異世界転生」「かくれんぼ」「演劇」です。そして、ここからウルフの長編小説に切り込んでいきます。ウルフ作品で、最もポピュラーな「ダロウェイ夫人」を「おままごとするウルフ」へ。また、最もポップで針が振り切れて、行き着くとこまで行っちゃった「オーランドー」を「魔界転生<生/性>ラノベ作家」とした小論など、そうくるかと感心しまくりです。

海外文学好きには外せないのが「ヴァージニア・ウルフ短編集」(ちくま文庫/古書950円)を翻訳した西崎憲へのインタビューです。この短編集に入っている、たった2ページの「青と緑」は、散文詩みたいな作品ですが、これ原本を横に音読したらきっといいと思います。

小澤さんは、ウルフの小説紹介だけでなく、「灯台へ」に登場する「牛肉の赤ワイン煮込み」を調理してレポートしています。さらに、ロンドン郊外のキュー王立植物園を舞台にした作品”Kew Garden”を翻訳し、深い理解力の一端を披露してくれます。この小説の冒頭は、極めてウルフらしい滑り出しです。

後半のウルフを巡る映画の話も、オタク的感性爆発で面白く読みました。ところで、昨年観た傑作「ア・ゴースト・ストーリー」が、ウルフの短編をモチーフにしていたとは知りませんでした。

ウルフファンだけでなく、小説大好きの方にオススメの一冊です。

 

★イベントのお知らせ

6月5日(水)より「世界ひとめぐり旅路録」展をされる小幡明さんが、14日(金)19時半より、FMひらかたパーソナリティー久保有美さんと一緒に「小幡明の旅の話アレコレ」と題したトークショーを当店にて開催します。(参加費1000円/要予約)