金子兜太と、いとうせいこうが選んだ「平和の俳句」(小学館/古書850円)は、ずるずると危険な時代へと向かう今だからこそ、読んで欲しい一冊です。

読者の投稿した平和をテーマにした俳句が、東京新聞・中日新聞・北陸中日新聞・日刊県民福井のが朝刊1面に、15年1月1日から12月31日まで、毎日1句掲載されました。投稿された句は1年間で57000通以上。本書は、毎朝1面を飾った俳句を1月〜12月まで日にち順にまとめました。

2月15日はこんな作品です。

「暴言を はかないことが 平和へと」

これ小学六年生に作品ですよ。いとうせいこうは「暴言だらけの世の中では、足元の平和もおぼつかない。話し合いの習慣がやがて外交にも通ずる。」と評価しています。そのままトランプさんに進呈したい作品です。

3月5日には「平和ぼけ結構なこと縁温し」

「『ぼけ』は『ぼけ』でも、『平和ぼけ』とは結構なことですぞ。縁側で日なたぼっこ。幸せなことですよ。」金子のユーモアたっぷりの評です。

5月31日 「立ち止まり 犬と平和の 風を嗅ぐ」

これはいいなぁ。私も犬と散歩に出かけていたので、この気分よく分かります。

8月29日の一句、是非アベさんにお送りたい。

「改憲という声 開戦に聞こゆ」

いとうせいこうは「素直な一句と見えて、奥に潜む怒りやおそれや皮肉は複雑である」と評しています。この大バカ野郎と言いたい気分を、明解な作品に乗せたのかもしれません。

思わず笑ってしまい、ベスト1だと思ったのはこれ。 「平和とは 水中に見る カバの顔」

水にゆがんで映るカバの顔を平和の象徴にしています。

全く俳句を詠んだことはないのですが、数少ない言葉でここまで大きな表現ができるのかと驚きました。

私のアメリカでの小さな体験ですが、とあるカフェに入って、カウンターでランチを金髪のウェイトレスに注文したところ、「私、今休憩中。だから注文受けられへん」と、カウンター内で珈琲を飲み始めたのです。こんなこと、日本でやったら、客が烈火の如く怒り始めます。しかし、その時私は、ふ〜ん、そうなんだ、アメリカってこういう国なんだ、って思いました。

「千の扉」(中央公論新社/古書1000円)で、古い団地を描いた柴崎友香が、世界各地から作家や詩人が集まるIWP(International Writing Program)に参加して、作家の視点から見つめたアメリカの姿を捉えたのが「公園に行かないか?火曜日に」(新潮社/古書1300円)です。本の帯には「不得意な英語で話し合い、街を歩き、アメリカ大統領選挙を目撃した三ヶ月を描く小説集」と書かれていますが、彼女が感じたアメリカと、そこの集まる世界の人々を描く紀行文です。

ホテルに宿泊した夜、奇妙な物音で彼女は目覚めます。それはけたたましく鳴る非常ベルでした。しかし、アナウンスもなにもなく、皆勝手に避難しています。ベルが鳴り止んだ後、ホテルのスタッフに聞いても、さぁ?という答えのみ。こんな対応あり得ないと参加していた作家は嘆きますが、著者は「うん、アメリカやな、とわたしは思った。ここはアメリカ」この感情はきっと、私が注文を拒否されたカフェで感じたものとほぼ一緒です。

様々な会合に出席し、対話をし、またアメリカの街を歩きながら、作家らしく言葉について深く考えていきます。

「英語を頭の中で日本語にして理解するとき(だんだん英語のまま受け取って返すことができるようになっていったが最初の頃はとくに置き換えて考えていた)、それはなんとなく大阪弁になっていた。会話だから、というのも大きかったと思う。そして、日本語が話せない毎日の中で、自分が話したいと思うのは、話したいと体の奥から湧き出てくるのも、いつも、大阪の言葉だった。」

大阪生まれの著者は、だからこの本の方々で、アメリカの人達との会話を大阪弁で書いています。

彼女が参加したワークショップで取上げられていた言語は、英語、フランス語、スペイン語といったメジャー言語です。しかし、世界中から集まってきた作家の中には、マイナーな言語を駆使して活動をしている人も多数います。その一方で、アメリカは、世界中のマイノリティ文学を英語に翻訳し、そのスタイルや表現技法を自分たちの文学に取り込んでいます。英語に、アメリカに取り込まれている現状を知ります。小説家が見つめた英語とアメリカの風土を描いた一冊です。

 

 

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