数年前に発行された「詩人なんて呼ばれて」(新潮社/古書1700円)を、入荷しました。これは、文芸ジャーナリストの尾崎真理子が聞き手となった3年越しのロングインタビューと、選ばれた詩20編プラス書き下ろし1編をカップリングした本です。第4章では、かつて結婚していた佐野洋子との生活のことが書かれています。

「僕の考える女性性と佐野さんの考えてた『女』はずいぶん違ってるけど。僕自身、男性的というより女性的で、それで喧嘩にならなかったし、暴力とは無縁だし。自分とは異質な者も受け入れるようとする。それは僕の中の女性性じゃないかなあ。」

と彼女との生活から、谷川は自分の心の中の女性性にまで立ち入っています。谷川ファン必読の本です。

こんなコラボしてたんだ、と思ったのが、「たくさんのふしぎ」等で活躍する絵本作家岡本よしろうと組んだ「生きる」(福音館書店/古書950円)です。

「生きているということ いま生きているということ それはのどがかわくということ」で始まる「生きる」という有名な詩に、岡本が絵を描いたものをまとめた本です。

「生きているということ いま生きているということ それはミニスカート それはプラネタリウム  それはヨハン・シュトラウス それはピカソ それはアルプス」という詩句には、夏休み中の女の子が熱心にクレヨンで絵を書いている様子が描かれています。ページをめくると、庭で水を撒いているおじいさんと少年が、撒いた水から生まれた虹を見つめていて、「すべての美しいものに出会うということ」で結ばれています。

「いま」を生きるということが子供達の何気ない素ぶりや、彼らが生きている街の様子を描いた作品と巧みにシンクロしながら進んでいきます。詩には平和という文字は一言も登場しませんが、二人の共同作業から立ち上ってくるのは、平和な今を生きる、ということです。

もう一点、「詩ってなんだろう」(筑摩書房/古書1100円)をご紹介します。

「長いあいだ詩にかかわってきた経験を通じて、自分なりのおおざっぱな詩の見取り図を書けるのではないかと思いました。ですからこれはいわゆるアンソロジーとはちょっと違います。私は自分の考え方の道筋にそって詩を集め、選び、配列し、詩とは何かを考えるおおもとのところを捉えたいと願ったのです。」と、あとがきにあるように、谷川が選んだ詩にコメントを加えた、いわば詩を楽しむための第一歩的な本です。

「詩は、もじがうまれるまえからあった。」では、「ホホホホ ヘヘヘ ヘイヤ ヘイヤ」で始まるナバホ族の「よるのうた」や、「あはれ あなおもしろし あなたのし あなさやけ をけ」という古事記の一文が取り上げられていて、

「おまじないやいのりだったり、はたらくときのこえをそろえてうたううただったり、おどるときのはやしことばだったり、おうさまのものがたりだったりもした。」と結んでいます。

詩という世界の、大きな広がりが理解できると思います。

 

 

 

★2/3(月)2/4(火)古本市準備のため連休いたします

★2/5(水)〜2/16(日) 恒例となりました女性店主による『冬の古本市』を開催します。今年も神戸・大阪・岐阜・東京・御殿場・京都などの女性店主の選書です。ぜひお立ち寄りください。

 

1940年、アメリカに生まれた絵本作家、M.B.ゴフスタインは、様々な手法で絵本を製作してきました。今回入荷した「おばあちゃんのはこぶね」(現代企画室/新刊1620円)は、ほとんど線だけで描いたモノクロームの世界ですが、心に染み込みます。

おばあちゃんが子供だった時に、お父さんが、ノアの方舟と動物たちを木で作ってくれました。大きくなるにつれて、お父さんは動物たちを増やしてくれました。彼女はそれらを心から愛します。

「いまでは ぬりもすっかりはげている」

おばあちゃんは今も方舟をそばに置いて見つめています。父母はとうに亡く、自身も結婚し子供を育て、そして「みんないなくなってしまったいま、はこぶねはおもいででいっぱい」とベッドに横たわりながら回想します。

「よろこびとかなしみはにじのよう、それがわたしをあたためてくれる おひさまのように。」

おばあちゃんが、自分の長い人生を肯定するところで絵本は幕を閉じます。巻末に、亡くなる直前の彼女の言葉が載っています。

「ねえ、私、良い人生を生きたと思うの。素晴らしい、人生を。12月20日には77になるのよ。死ぬことは構わない。まったく。別れたくない大切な人たちはいる、もちろん。でも….死は私の友達。死と、希望。希望。」

彼女は77歳の誕生日にこの世を去ります。生きて、死ぬことを簡潔に描いた傑作絵本です。

表紙の絵。窓の外、雨を見つめる後ろ姿のおばあちゃんは、何を思っているのでしょう?90才になった短いような長い時間に思いを寄せているのかもしれません。
 谷川俊太郎は、ゴフスタインの「ぶるっキーのひつじ」「ふたりの雪だるま」「生きとし生けるもの」等の作品も翻訳していますが、本作でも静けさと淋しさと喜びをシンプルな文章で日本語にしています。詩人ならではと思います。 

 

 

★地味だけど、渋い大人向けの絵本を10冊程入荷しました。(すべて新刊)

おいおい紹介していきますが、全冊表紙を見せて店内で展示していますので、ぜひ手に取ってご覧ください。

 

 

 

 

古書でそれほど高価ではなく、店に置いておきたいと思って仕入れしている画家が何人かいます。香月泰男、松本竣介、小村雪岱、熊谷守一などです。しかし、どの作家も人気が高く、価格も高騰しています。そんな中、今回「香月泰男画文集<私の地球>」(3000円)、「夫の右手」(2200円)と一緒に「香月泰男のおもちゃ箱」(新潮社/古書2200円)が入りました。

これは、香月泰男の立体作品というか、手作り玩具を野外に持ち出し大森忠が撮影をし、そこに谷川俊太郎が詩を添えたコラボ作品集です。

「絵はどこまで描いても満足とは言えぬが、玩具では威張りたい」とは画家の言葉ですが、木やブリキで制作した人形や、動物が、もう生き生きとしています。ブリキの牛が草叢にいる所を撮影した作品には、谷川のこんな詩が付いています。

「ヒトだけだ 不平に不満に不幸 自分を不の字で飾り立てるのは」

雑草を見つめる牛の口元から、静かなため息が聞こえてきそうです。木やブリキで作られた人形たちの様々なスタイルを写した「散歩に行く」の中で、帰ってきた一対の人形とそれを迎える一体に「帰れるのは幸せだ どんな小さな部屋にでも 誰ひとり待っていなくても たとえ土の下 雲の上でも 帰れるのは 幸せだ」という詩が添えられています。人形たちも楽しそうです。

また、「『おもちゃ』の思い出」と題した、香月と妻婦美子さんそれぞれのエッセイも入っています。「この部屋は私たち夫婦が晩年を過そうと思い設計した仕事場に接した四畳半の室であるが、昨今は物置の様相を呈している」と画家は書いてますが、いやいや、この部屋がまたなかなかいいのです。夫婦の愛情が感じられる、いつまでも座っていたくなるような場所。こんな場所から、人形たちが生まれているのを見ると、彼らが幸せそうなのも納得できます。

兵庫県出身のイラストレーター&画家の下田昌克に初めて接したのは、雑誌「Coyote」最新号(スイッチパブリッシング700円)でした。特集は「アフリカの南」で、この中に彼のアフリカ滞在日記「SOUTHER   AFRICAN DIARY」が載っています。

「アフリカのずーつと下 雲のない空 波のない川」と書かれた最初のページのアフリカ象のイラストに目を奪われました。大草原を行く象が、子供の絵のような無邪気さで描かれています。ページを捲ってゆくと、彼がジンバブエ、ボツワナで出会った人達のスケッチに出会います。これが、いいんですね。やわらかいクレパスのタッチで、アフリカらしい眩しさと、おだやかで滋味深い表情で描かれた人たち。中でも、丸太を削ってカヌーを作っている男性のポートレイトが好きです。

「WILDLIFE野生動物の教え」では、アフリカの動物たちのスケッチが、ペンでさらりと描かれています。この作家の作品は、特集だけで終わりでしたので、面白い作品集ないかなと探していたら、いいのがありました。

谷川俊太郎とコラボした「恐竜がいた」(スイッチパブリッシング/新刊1728円)です。真っ黒な表紙に、描かれた恐竜のユーモラスな姿だけで、この本、面白い!と思ってしまいます。

「ほりだされたほねから なんぜんまんねんまえのほねから すがたかたちをえがくことはできる でもきょうりゅうのこころはみえない かんじることがあったのだろうか かんがえることがあったのだろうか うまれたばかりのこどもをみて だまってかがやくほしぞらをみて それともにんげんだけのものなのだろうか かなしみもおそれもあこがれも」

という谷川の詩と共に、下田の恐竜が闊歩します。ユニークなのは、自作の恐竜の骨のかぶり物を冠って、作品とコラボし、同じ空間で戯れているところです。ユーモラスで、躍動感のある画面になっています。ラストページでは、始祖鳥と人間の大合唱が聞えてきそうな楽しさです。

「女子の古本市」では、絵本専門店も参加されていることもあり、夏の古本市に比べて多くの絵本が出ています。大人向け、子ども向け様々な絵本の中から数点ご紹介いたします。

「雪のひとひら」で我が国でも知られるポール・ギャリコの文章に、アンジェラ・バレットが絵を描いた「スノーグース」(あすなろ書房600円)は、第二次世界大戦中のイギリスの人気のない海岸に住む青年画家と傷ついたスノーグースを抱えてきた少女のお話です。静謐で、孤独な影に満ちたタッチの絵にギャリコのストーリーがピッタリなのですが、戦争がすべてをぶち壊すラストは辛い…..。

「走れウサギ」、「カップルズ」等の小説でファンも多い作家ジョン・アップダイクが12ヶ月を詩で表現し、長田弘が翻訳した「十月はハロウィーンの月」(みすず書房600円)は詩と絵(ナンシー・エクホート・バーカート)のコラボによる不思議な絵本です。2月の詩は「ちょき ちょき ハサミの音がする ハートのかたちを 紙から みんなが 切りぬいているのだ ヴァレンタイン・ディのために」で終ります。それぞれの月に登場する子どもたちの絵がステキです。6月の「太陽がいっぱい。よろこびもいっぱい。金の時間に 銀の日々。」の詩には、海辺で遊ぶ少年と少女が描かれていますが、開放感のあるページで、初夏の太陽の眩しさがいっぱい

一度は読んだことのある船乗りシンドバッドの物語は、ペルシャやアラビアの古いお話を集めた「千一夜物語」の一部分ですが、ルドミラ・ゼーマンが絵本にしたのは「シンドバッドのさいごの航海」(岩波書店700円)。この本は先ず、その細密な絵を楽しんでいただきたい絵本です。象の表情なんか実に見事です。ルドミラ・ゼーマンはチェコ出身の絵本作家で、シンドバッドの奇想天外なお話を三冊の絵本にしています。後、二冊も探してみたくなりました。

谷川俊太郎が翻訳した本は二冊出ています。マーガレット・ワイズ・ブラウン(作)、レナード・ワイスガード(絵)のコンビによる「しずかでにぎやかなほん」(童話館出版500円)と「あかいひかり みどりのひかり」(童話館出版500円)です。どちらも、色使いとデザインがかっこいいのですが、特に「しずかでにぎやかなほん」の画面のモダンな感覚は上手いと思いました。谷川の翻訳も自由奔放な構成で絵本に溶け込んでいます。

最後に絵本ではないですが、一点。数年前になくなったイラストレーター、フジモトマサルが表紙の絵を書いている「創作市場研究所01羊のスケッチ」(マリア書房700円)は羊毛やフェルトに関心のある方のために編集された本ですが、フジモトファンは見逃せない一冊です。

「女子の古本市」は19日(日)まで。最終日は18時で閉店いたします。 

 

版画家山本容子が、谷川俊太郎の詩を16作選び、谷川賢作が曲を付け、出来上がった曲を声楽家の波多野睦美、シンガー&ソングライターの村上ゆき、そして大御所石川セリ達が歌い、俊太郎自身が朗読する。さらに、その音楽に触発された容子さんが、なんと三十数点の絵を描きました。

これ、ライブペインティングではありません。CD付きの本「あのひとが来て」(マガジンハウス1800円)です。本のタイトルになっている「あのひとが来て」には、こんなフレーズがあります。

「あのひとはいつかいなくなる/私も私の大切な友人たちもいつかいなくなる/でもあの木はいなくならない/木の下の石ころも土もいなくならない」

これ、波多野睦美がどう歌っているのか、聴きたい!しかし、CDが入っているケースは未開封。さらに、この本もとても綺麗で、新品みたいです。定価は5452円が、なんと1800円!もうお買い得としか言いようがありません。

何点か山本容子の本が入荷しています。

見て楽しいのは、「わたしの時間旅行」(マガジンハウス1500円著者のサイン入り)。これは、2001年表参道のビル工事現場の工事用仮囲いに、一年間365日、新しい絵を加え一年後に全貌を表すという野外アートの実験に使用された絵を集めてあります。どこから見てもOK。机の横にでも置いて、好きな場所を開けて、楽しそうな登場人物たちとちょっと会話をして閉じる。それを365日繰り返す。そんな見方などいかが?

じっくり読むなら「アリスの国の鏡」(講談社950円)。ルイス・キャロルの「鏡の国のアリス」に潜む数々の謎を調べてゆく、物語りの奥にあるものを読み込んでゆく楽しさを満喫できる一冊です。原作の重要なモチーフであるチェスの解説から始まります。物語とチェスの棋譜を検証しながら、この不思議な世界に入ってみてはどうですか。さて、チェックメイトまで辿りつくか?

もう一点、読み物をご紹介。「山本容子の食べた物語り」(清流出版1050円)タイトル通り、食べ物に関するエッセイと絵が一杯の楽しい一冊ですが、やっぱ大阪、と拍手したのが、ホテルニューオータニ大阪のルームサービスにはたこ焼きとお好み焼きがあるというお話。ちょっと飲んで帰ってきて、深夜小腹がへった時に、これは重宝するみたいです。一度試してみては?

「こどもと こどもは せんそうしない けんかは するけど せんそうはしない」

という極めて全うな詩句で構成された谷川俊太郎(詩)、江頭路子(絵)による「せんそうしない」は、読んでおきたい、そして誰かにプレゼントしたい絵本です。

海辺で楽しく遊ぶこどもたちに「せんそうするのは おとなと おとな じぶんの くにを まもる ため じぶんの こども まもる ため でも せんそうすれば ころされる てきの こどもが ころされる 」という言葉が心にジンと響きます。

こどもを主人公にした絵本をもう一点。中山千夏(文)、和田誠(絵)の「どんなかんじかなあ」。登場するのは、耳が聞えない、目が見えない、歩けないといった障害を持つ子供と、阪神淡路大震災で親を亡くした子供。そんな風に書くと、なんかつらそうな感じですが、これメチャ明るい絵本。和田誠の色彩がお見事としか言いようがありません。

酒井駒子ファンの方なら、川上弘美のファンタジー「七夜物語」(上)(下)はいかがでしょう。ハードカバー版には、裏表紙、目次のページにまで、多くの絵が散りばめられています。定価で買えば4000円ほどするところですが、1700円と半額以下に。このチャンスをお見逃しなく。

児童文学作家、阿部夏丸の「オグリの子」。これは泣けてきますね。競馬界屈指の名馬オグリキャップの子供オグリダービーと、その疾走する姿に引込まれる3人の少年たちを描いた小説です。少年が、初めてオグリの姿に感動して、騎手に名前を聞くところの描写は、極めて映画的です。馬と少年の交流話はよくありますが、これも名作と呼んでいいと思います。

もう一点、絵本を紹介します。手塚治の「もえよドラゴン」。こんな絵本も書いていたんですね。短篇を集めた一冊ですが、このお姫様のために獅子奮迅の活躍をする龍が面白い。手塚らしいダイナミックな動きのある絵が楽しめます。

★本日の紹介本一覧(書名/出版社/価格/出品店)

「せんそうしない」(講談社/700円/おひさまゆうびんしゃ)

「どんなかんじかなあ」(自由国民社/300円/おひさまゆうびんしゃ)

「七夜物語」(朝日新聞/1700円/原子心母)「オグリの子」(ブロンズ新社/300円/Mt.Book)「もえよドラゴン」(河出書房新社/300円/マヤルカ古書店)

 

★レティシア書房 夏の一箱古本市は8月20日(土)まで開催中 

(最終日は18時まで。15日(月)は定休日。)

★レティシア書房 夏休みのお知らせ 8月21(日)〜25(木)

 

昨日のブログで、知床の絵本作家あかしのぶこさんの個展をご紹介しましたが、彼女の描いた風格のあるクマの作品に続いて、同時に入荷してきた絵本をご紹介します。

谷川俊太郎(詩)和田誠(絵)の二人による「もりのくまとテディベア」(金の星社1050円)は、生と死を描いて、おじさんの私には、辛くもあり、また、ぐっとくる傑作でした。

玩具のテディベアは、生き物ではありませんので、老いも無関係です。ただ、じっとそこに佇んでいるだけです。生もなければ死もなく、廃棄されるまで窓辺にじっとしています。

一方、森に生きるクマは子供を生み、育て、やがて老いていきます。その両者が、交互に現れてきます。森のくまの最後はこうです

「はるなつあきふゆ ごねんじゅうねん あしもよわって めもかすむ もりのくまは しんでゆく めをつむり おちばのうえによこたわり しずかなためいき ひとつして」

という谷川の詩に対して、和田は、静かな森の落葉が一杯の土の上で、まるで眠るように死んでいるクマを描きます。俯瞰気味の構図には孤独で、切ない姿ながら、自然に抱かれて土に還っていく死というものの深淵さが表現されています。一方、アンティークショップの片隅に座るテディベアはこう表現されています。

「アンティークショップの テディベアは いつまでたっても めをつむれない ガラスのめだまに よのなかをうつして」

和田誠は、そんな状況にいてもテディベアを悲しそうには描きません。ただ、外を見つめているだけの姿です。テディベアも森のクマも擬人化することなく、感情過多になることも避けています。何も語らない両者のポツンとした真っ黒な目が、絵本全体に抑制をかけています。生きているということ、死んでゆくことを見事に浮き上がらせた作品です。

あかしさんの個展に登場するクマを見た後は、こちらもご覧いただくのもいいかもしれません。

お詫び 昨日ブログで紹介したメーメーベーカリーのパンはすべて売切ました。焼き菓子はあと少しあります。

もしかしたら追加で斜里町から届くかもしれません。(ただ今連絡待ちです)

★1月15日(金)19時30分よりあかしさんのトークショーあります。(私の出会った知床の動物たち)(要予約)

 

 

 

ヨレヨレ第4号、お待ちのお客様、大変お待たせいたしました。なんと4ページ増量で発売です(500円)。

ヨレヨレは、福岡の「宅老所よりあい」でお年寄りたちとのドタバタな日々を綴ったミニプレス。1号から3号まで、入荷の度に売り切れてゆく、今年当店で最も動いた雑誌です。(今なら在庫すべてあります)

「ごぶさた第4号 うちら陽気な絶滅危惧種」と表紙から、相変わらず笑わせてくれる最新号の特集の一つは「死んだらどうする詩人対談 伊藤比呂美×谷川俊太郎」。詩人の伊藤さんは、70過ぎたら寂聴の跡目をついで「ポスト寂聴」になりたいなんて話も飛び出します。子供を産むこと、子育て、夫婦のこと、詩を書くこと、介護のこと、そして死ぬこと、同じ地続きで、全く深刻になることなく、語り合われます。

そしてこの号で、下村恵美子さんの退職が書かれています。え?下村さんって?誰それ?という方には、先ずこの文章をお読み下さい。

「世の中には、もらっていいお金と、もらっちゃいかんお金がある!」珍しく激しい口調だった。「そんなものを利用して集めたお金は、自分たちで集めたお金とは言わない。自分たちで集めたと胸を張って言えないなら、そんなお金にはなんの意味もない。意味のないお金でどんなに立派な建物を建てたって、そんな建物にはなんの意味もない!」そして下村恵美子は「そこを間違ったら、私たちは間違う」と言った。

これは、「宅老所よりあい」建設と雑誌「ヨレヨレ」創設までの獅子奮迅の、当事者はもう死にものぐるいでも、読者は大爆笑すること間違いなしの鹿子裕文著「へろへろ」(ナナロク社1620円)の一部分です。「よりあい」を建設するために、3億もの資金集めに奔走するスタッフの前に、マスコミから取材やら原稿依頼が舞い込み、その原稿料を建築費に回すという案が出た時に、その中心にいた下村恵美子さんの言葉です。

どんな難関も、「ケセラセラ〜、なるようになる」と笑い飛ばしながら、ぶち壊してゆく下村さんの圧倒的行動力に釘付けになります。彼女を中心に、著者も含めて巻き込まれていった、多くのスタッフの開所までの日々を追っかけたこの本は、単に宅老所の開設の記録ではなく、自分の立ち位置を確認しながら、生きてゆくことを教えてくれます。その彼女も62歳。ついに「よりあい」を去る日が来ます。4号で初めて、彼女が被曝二世だったこと、そして後遺症に苦しんで死んだ母のこと、若い時に、やはり資金を集めて国連に出向き、被曝者家族として堂々とスピーチをしたこと等々が語られます。そして最後にこう言ってお別れです。

「一人一人が、この世で起きているいろんなことに、どうか敏感であって欲しいと私は願っています」

貴方をきっと元気にするのが、「ヨレヨレ」であり「へろへろ」だ!と、この際言い切ります。