洋書ですが、ベン・シャーンの画集が出ています。1906年移民としてアメリカに渡ってきたベン・シャーンは、 NYブルックリンで石版画職人として生計を立て、肉体労働者や失業者など当時のアメリカ社会の底辺にいる人々と接し、彼らに共感を持つようになっていました。やがて、社会の現実を描くリアリズム画家として戦争、貧困、差別、失業などをテーマにした絵画を描き始めました。悲惨な境遇の中で、しぶとく生きる人たちを力強いタッチで描いていて、個人的に大好きな画家です。

“Ben Shahn by james.T.Soby”(3000円/出品・花森書林)にも、多くの作品が収録されています。1939年に描かれた"Handball"は、ジャズのアルバムジャケットにもなった人気の一枚です。

リチャード・フラナガンの大作「奥のほそ道」(白水社900円/出品・Viola書房)は、映画「戦場に架ける橋」でも知られている泰麺鉄道建設に従事した一人のオーストリア兵が主人公です。第二次世界大戦の最中、日本軍はビルマ、タイ間を結ぶ鉄道建設に多くの捕虜を投入していました。捕虜の扱いを決めた国際条約を無視した軍部は、捕虜たちを容赦のない突貫工事に従事させ、多くの人間が惨死していきました。著者の父親アーサーは、その地獄から奇跡的に生還した一人でした。父親の実体験を元に、過酷な日々の中に浮き上がる生命の重みを400ページの長編にまとめあげたのが本書です。戦場の悲惨な日々をただ描いたのではなく、多くの登場人物の視線の交差を通して、変遷する世界の多様性を描いたという評価ゆえに傑作になったのでしょう。

日本美術を鑑賞する上で欠かせないテキストが赤瀬川原平の「日本美術観察隊」(講談社二冊セット3000円/出品・旅猫雑貨店)です。「この本では日本の美術作品を観察している。美術というものは本来鑑賞するものだけど、古典的な日本美術になると、素直に鑑賞しにくいものがあり、まずは観察するということになる。」と赤瀬川は、本書のスタンスを書いています。親しみにくいと思われる古典的美術を取り上げて、赤瀬川らしい観察で作品を解体していきます。山本芳翠の「浦島図」(二巻に掲載)を見て、「変な絵である。はじめて見て、うわっ、と思った。何だこの絵は。」という第一印象は私も一緒です。そんな一般人的感性で展開してゆくところが面白いところです。

「この本は、日本美術への近づき方のテキストだと思っている。近づいてしまえば、日本美術をどうつかまえるかは、各人の興味と力量にかかわってくることだろう。」

ぜひ、それぞれの近づき方を学んでください。

★女性店主による『冬の古本市』は2/5(水)〜2/16(日)です。月曜日定休。12:00〜20:00

最終日は18:00まで。神戸・大阪・岐阜・東京・御殿場・神奈川・京都などから女性店主の選書が集まっています。ぜひお立ち寄りください.

勝手ながら2/17(月)〜2/20(木)まで連休させていただきます。