2020年10月、日本の誇る作曲家筒美京平が80年の生涯を閉じました。普段音楽を聞かない人でも、この人の曲に接したことのない人はいないと思います。いしだあゆみ「ブルーライト・ヨコハマ」、尾崎紀世彦「また逢う日まで」、太田裕美「木綿のハンカチーフ」などカラオケで歌った方も多いのでは。シングル総売上7560万枚!前人未到の記録です。その中には「サザエさん」の主題曲も入っています。

筒美とも交流のあった音楽家、近田春夫が迫る「筒美京平大ヒットメーカーの秘密」(文春新書/古書600円)は、この作曲家の大きさを再認識するにはピッタリの一冊です。

本書はエディターの下井草秀が、1966年から2020年までの筒美の活躍を近田と語り合うという構成を取っていて、とても読みやすい。

尾崎紀世彦「また逢う日まで」は、グループ・サウンズ全盛期にいたズーニーブーがリリースした「ひとりの悲しみ」の歌詞(作曲は筒美)を書き直して大ヒットしたなんて知りませんでした。

筒美の快進撃は、昭和四十六年にデヴューした南沙織の「17歳」と、その翌年の郷ひろみ「男の子女の子」からスタートし、やがて、アイドル歌謡曲の王者へと登りつめていきます。

「京平さんの楽曲は、基本的にゼロから生まれるものではなく、何かにインスパイアされるところから始まることが多い。70年代の外国の楽曲には、換骨奪胎して歌謡曲に置き換えたくなるような魅力的な作品がいっぱいあったんだよ。」

と近田が語るように、筒美は多くの外国の曲を学び、取り込んでいきます。そして70年代に勃興してきたニュー・ミュージックやフォークを見ながら、「木綿のハンカチーフ」のような新しい楽曲を作り出します。桑名正博「セクシャルバイオレットNo1」というロック寄りの曲まで作曲しているのです。

本書後半に、興味深い対談が三つ掲載されています。一つ目は筒美の実弟で音楽プロデューサーの渡部忠孝と。次はブルーコメッツの「ブルーシャドウ」やザ・タイガースの「モナリザの微笑み」の作詞家で、「ブルーライト・ヨコハマ」で筒美と組んだ橋本淳。そして、「真夏の出来事」の大ヒットで知られる歌手平山みき。いや〜どれも現場を知る人の対談だけに、とても面白い!あの当時の音楽業界の雰囲気が伝わってきます。

実弟の渡部忠孝との対談で、興味ある話がありました。渡辺家で二人がまだ幼かった頃の話です。

「僕(忠孝)が歌舞伎好きだったのに対して、兄は宝塚が好きでした。歌舞伎に行くのは祖母と一緒で、宝塚に行くのは母と一緒。兄は宝塚となると目を輝かせながら舞台を見つめてましたね。やっぱり、歌舞伎と違って宝塚は西洋の音楽を使ってるからかな。」

こんな本を読んでいると、筒美サウンドをまた聴きたくなってきます!

⭐️本の紹介をZOOMにてさせたいただく「フライデーブックナイト」。次回は9月17日(金)です。

⭐️北海道のネイチャーガイド安藤誠さんのトークショーを今年も開催します。

10月24日(日)19時スタート(2000円)要予約