外出もままならず、ちょっとギスギスした気分にもしもなっていたら、こういう映画はいかがでしょうか。ロバート・レッドフォード主演の野球映画「ナチュラル」。弱小プロ野球チームが、一人の選手の加入によって、優勝争いにまで加わるという作品なのですが、いわゆるスポ根ものではありませんし、友情ものでも伝記映画でもありません。野球界を舞台にした大人のおとぎ話です。レッドフォードという俳優は、この作品のために役者になったと思えるほどピッタリの役柄で、おそらく他の俳優では、きっと彼のような素敵な笑顔は作り出せません。

天才的な野球センスに恵まれたロイ・ハブは、シカゴのメジャーリーグに入団するために故郷を後にしますが、その途中で列車で出会った謎の女性と不祥事を起こし、球界にデビューすることなく消え去ってしまいます。。そして16年後、35歳になったロイは新人選手として万年最下位のポンコツチームに入団します。最初は、年寄り選手と馬鹿にされてたのですが、優れたバッティングで、球団を活気付かせます。時代は1930年代。映画はその時代を見事に再現し、クラシカルな画調と演出で進んでいきます。

ところが、賭博で大金を動かす球団オーナーが主人公に立ちはだかってきます。彼の配下にいる美女にメロメロになったロイは、またまた迷走し始めます。フラフラと美女に振り回されるモテ男という役柄に、レッドフォードはなぜかピッタリなのですね。しかし、彼の窮地を救ったのも、女性でした。故郷に残してきたた恋人との再会です。やれやれまた女かいな、と思うのですが、恋人を演じたグレン・クローズとレッドフォードの出会いのロマンチックなこと。クラシックな映画の楽しさいっぱいです。(グレン・クローズの抑えた演技が見事です)

もう一人重要な人物がいます。それはチームに属するバット・ボーイのサヴォイです。最終試合で、ロイが使い続けてきた大切なバットが折れるのですが、その時サボイが渡したのは、手製のバット「サヴォイ・スペシャル」。ロイに教わったやり方で作ったバットを手渡すシーンは、何度見てもホロリときます。
優勝をかけた試合の9回裏、ランナー1、3塁でカウント2-2。そこで彼が打った打球は……。もう素敵なおとぎ話です。

一人の青年が、右往左往しながらも、やっと自分の人生を見つける映画ですが、それをおとぎ話みたいに、めでたしめでたしで描いたのが秀逸です。問題作でも、大作でもありません。職人肌の監督が丁寧に作り上げたハリウッド映画の中の一本です。でも、これほどまでにホッとさせてくれる、気分を和らげてくれる映画も、そう多くはないはずです。

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「アカシヤの大連」で1970年の芥川賞を受賞した詩人、小説家の清岡卓行。詩情溢れる文体で詩と散文を構築した作家です。彼の死後、「猫の客」を書いた平出隆によって「純粋を貫いた詩家」と評されました。古い屋敷にやってきた猫の軌跡を、独特の感性で描いた「猫の客」で、平出に注目してから、この作家が高い評価をする清岡卓行も読んでみようかなと思いつつ、中々小説には手が出ませんでした。しかし、作家との出会いってあるんですね。

パリで、堂々たる景観を堪能して帰国した清岡が、帰国後、よく使う西武遊園地駅に降り立った時、こんな感想を漏らしています

「夕闇の中で降り立った西武遊園地駅が、実に鄙びて、可憐なほど小さく、つつましく見えたのである。東京の片隅のこの駅はこんなにも美しかったのか、と私は驚いた。すると、そのため新鮮なものにされた懐かしさが、心と体にしみとおってきた。この駅にはパリのどんな壮大な建物にも負けない魅力がある、と私は思った。」

この「郊外の小さな駅」が収録されている同タイトルのエッセイ、「郊外の小さな駅」(朝日新聞社600円)を読んだのが最初。この本は、新聞その他に掲載されていたエッセイをまとめたもので、多くの文芸批評、音楽批評があるかと思えば、東京ドームのオープニングゲーム「巨人阪神戦」を書いています。

「現在の先端技術の粋を集めて人口性の一極点を示しているといわれるこの建築は、外側の自然の雨や風などに対抗して、びくともしない晴朗を内側に秘めてこそ実地に冴えるわけである」と、詩人らしい文章で、東京ドームを讃えています。

清水が平出と会食するシーンが面白いです。最初は、彼の詩集に関する批評がメインテーマだっだのですが、だんだんと野球の話題へとシフトしていきます。草野球チームを持つ程の平出。東大在学中の1949年に、プロ野球の日本野球連盟に就職し、連盟分裂後はそのままセリーグ事務局に勤務して試合の日程編成を担当した清水も、当然のことながら、猛烈な野球ファン。二人の詩人による野球トークが、抜群です。因みに「猛打賞」を発案したのは清水です。

詩人として現代詩壇に登場してきた頃から、平出を認めていた清岡。新たな抒情を世界を作りあげた作家として清水岡を高く評価していた平出。詩を、文学を、そして野球を語り合うことができた素敵な仲間だったのかもしれません。

★レティシア書房 年末年始休業のお知らせ

12月29日〜2017年1月4日まで休業いたします。新年は1月5日から平常通り営業いたします。