東京国際映画祭を始めとして、多くの映画祭で絶賛された映画「メランコリック」。劇場で見逃したものをDVDでやっと観ることが出来ました。監督、脚本、編集の田中征爾の才能に、もう拍手、拍手です。長編第1作で、東京国際映画祭監督賞受賞ですからね。

ストーリーだけ聞くと、血だらけスプラッタムービーみたいですが、そんなことはありません。

東大卒業後、アルバイトばっかりして、うだつの上がらない生活をしている和彦という青年が主人公です。たまたま行った銭湯で、アルバイト募集のチラシを見た和彦は、その銭湯で働くことを決めます。ある夜、銭湯は終わった時刻なのに、店内の照明が付いているのを見て不審に思った和彦は、とんでもない現場を目撃してしまいます。風呂場で、殺人が行われ、死体をボイラーに放り込んでいるのです。そして同僚は、実はヤクザに雇われた殺し屋だったのです。

そんな風呂屋のサイドビジネスになんとなく参加した和彦は、それから巻き込まれていくのですが、驚くべきことに映画のラストは大ハッピーエンドなんです。信じられます?

やばい事をやっているのに、どうしたことか登場人物全てが、極端なまでに淡白で危機感もなく、粛々とやっている感じ。むしろ脱力感があります。和彦の家族も、これまた飄々としていて、食事シーンなんか小津映画みたいな雰囲気です。

脇役として多くの作品に出ている村田雄浩が「いつの間にか登場人物に心を奪われている。最後には登場人物のその後が気になってしょうがなかった」と絶賛の文章を寄せています。和彦、和彦の恋人、同僚の殺し屋、風呂屋の親父、和彦の両親が、どうなってゆくのか私も心配してしまいます。こういう映画はどう考えても、最後は血みどろの悲惨な幕切れが待っているものですが、幸せ感いっぱいのエンディングなのです。それにしても風呂屋で飲むビールって美味しそう!

見終わってわかったのですが、映画が語っていたのは幸福って何だという事です。奇想天外な物語から、青春映画の眩しさを作り出した監督には脱帽しました。

本作品は、監督と二人の男性の三人のチームで製作され、クラウドファンディングで資金が集められて出来上がりました。なんとかして面白い映画作るぞぉ〜という熱意が作り上げた賜物ですね。ホント面白いし、めちゃ笑ってしまいました。オススメです。