阿久津隆著「読書の日記」(NUMABOOKS2700円)は、5cm以上の厚さで、全1100ページにも及ぶ圧巻の読書日記です。著者の阿久津隆さんは、1985年、栃木生まれ。2014年東京に「fuzukue」をオープンさせました。このお店は、ゆっくりと本が読めて、コーヒーも食事もお酒もOKの店です。レティシア書房ご近所にある「月と六ペンス」的なお店です。

 

 

「あまりに暇で悲しくなっていった。どうやって生きてゆくのだろう。いや大丈夫だへらへらとニコニコと生きていくだけだなんの心配もいらない。たいしたことではない。」

等といった、閑散としたお店の状態がチラリ、ホラリと入ってきます。かと思えば、「野球。戦力外通告の記事が出始めた。」などというプロ野球の話がヒョイと登場する。著者はどうやら日本ハムのファンみたいです。

この分厚い本、実は全部読んでいません。けれども、拾い読みしているだけで結構面白い。のっけに、フォークナーの「八月の光」が登場します。禁酒法時代の南部アメリカを舞台にした重厚な物語かぁ〜、ちょっと私にはしんどいな、と思って早速飛ばしてみたり。

私にも納得の一冊も登場します。木村俊介著「善き書店員」(ミシマ社1944円)です。著者が、何人かの書店員の話をじっくり聞いた本ですが、その中で、広島のある書店員が、品揃えも大事だけれも、接客がさらに大事という話をされています。ちょっとした親切、微笑みで、少しの間でも救われる人がいるという話だったと思います。私も、阿久津さんの言葉通り「とてもふしぶしにぐっときて、最後ではっとした。」記憶があります。

本のこと、店のこと、日々の暮らしのことが、ぎっしりと詰まっている日記です。書評集というよりは、一人の本好きな青年が、何に刺激され、何を思ったのかが克明に記録されています。阿久津さんは映画も好きで、ジム・ジャームッシュ監督作品「パターソン」を取り上げて、「見ている間、とても幸福だった」と書いています。その気持ち、よく解るなぁ〜。

武田百合子「富士日記」を読んでいた時のこと。「食事の記述をさかのぼっていろいろ見ていたら、書いてあったかどうかは忘れたが納豆を食べたくなった、というか翌朝に納豆を食べることがたても楽しみな予定になった。」と書かれています。

 小さな幸福感が、とてもよく伝わってきます。

 

★連休のお知らせ 7月2日(月)、3日(火)

★夏の一箱古本市8月8日(水)〜19日(日)まで店内にて開催