フィンランドを代表するセラミック・アーティスト、ルート・ブリュックの個展を観るために伊丹市美術館へ出掛けました。彼女の事を知ったのは、以前ブログで紹介した「はじめましてルート・ブリュック」(ブルーシープ/ 売切)を手に取った時です。詩情を湛えた美しい作品をぜひ実際にみたいと思っていました。

幼少期をストックホルムで過ごした彼女は、蝶類研究者であり、画家でもあった父親の影響で自然や美術に親しみます。会場には、キラキラ光って、今にも飛び出しそうな蝶の作品も数多く展示されていました。大好きだった父親と蝶の作品には、父への愛情が溢れています。

学生時代は建築家志望でしたが、グラフィックデザインに転向します。当時から彼女が持っていた繊細で詩的な世界観が、アラビア製陶所の目にとまり、1942年に美術部門のアーティストとして入所しました。アラビア製陶所は、スウェーデン・ロールストランド製陶所の子会社として、1873年にフィンランドのアラビア地区に設立されたのがはじまりだそうです。90年代からは、英国のアーツ・アンド・クラフツの芸術家を招いてオリジナルの食器をつくり始めていました。

全く陶芸の経験も知識もなかったブリュックは、この製陶所で技術を習得し、職人たちと共に独自の成型技術を開発し、オリジナルの陶板制作をスタートさせます。果物や鳥、建物など日常的なモチーフを描いた陶板は、どれも美しく、眺めているだけで幸せな気分にさせてくれるのです。旧約聖書にある「ノアの箱船」をモチーフにした作品は、箱船に乗った動物たちが生き生きと描かれています。

50年代後半、彼女の作風は具象から抽象表現へと流れるように変化していきます。さらに1970年代後半から、教会や市庁舎など公共建築のための大型壁画を手がけ始めます。おそろしく膨大な数のタイルを手作業で組み合わせた作品は、高度な技術力と抜群の造形力で、力強さに圧倒されます。前期と後期で大きく作風が変化している彼女の作品を、通して見ることができます。

1958年に発表された「都市」は、タイルと立方体で構成され、床に設置された大きな作品です。上から見下ろしたり、地面にしゃがみ込んで見たり、と長い時間眺めていました。できることなら太陽光線のもと展示して、太陽の移動と共に、光と影に変化を見られたら最高です。

大きなミュージアムで、膨大な作品を展示している美術展は疲れますが、伊丹市美術館のブリュックの個展は、程よい大きさで、幸せな時間を過ごせました。

因みにブルーシープからは「ルート・ブリュック 蝶の軌跡」(3240円)というタイトルで公式図録も発売しています。一度、店頭で手に取ってご覧ください。

 

 

『常日ごろ使ってもらえるような  季節になったら思い出してもらえるような  置いて和んでもらえるような  そんなものが作りたくて  日々制作しています。』

田頭さんがこう綴っておられる通り、さりげなく日常生活に馴染む使い勝手の良さそうな器が並びました。

毎年、精力的に個展を開催されているのでいつかレティシア書房で、とお話ししていたところ今夏やっと実現しました。

初夏らしいしつらえで、苔玉が涼しげに揺れています。苔玉のカバーにも使える素敵な器、スープもたっぷり入りそうな大きめのティ一カップ、なんとも可愛いい果物や気球の絵付けが施された豆皿、小さな一輪挿し、優しい色合いのぐい呑、赤い土を生かしたカップなどなど。どれも思わず手に取ってみたくなるものばかりです。

私自身も彼女のお皿を毎日のように使っていますが、控えめで、それでいてどこか愛らしい。作品にお人柄が出ていると思っています。

今も絵付けの勉強はずっと続けておられて、毎年仲間の方々と作品展をされています。今回壁に飾った大皿(写真上)には、港の風景の絵が描かれています。ここにお寿司なんか盛ったらもちろん豪華なおもてなしになりますが、ここでも田頭さんの器は堂々とした形だけれど、はにかんだような優しい藍色で控えめです。

素敵な陶器のブローチ(2700円〜)も加わりました。季節の変わり目、ぜひ新しい自分用の器を探しにお立ち寄りください。(女房)

 

「田頭由起 陶展」は6月18日(火)〜30日(日)12時〜20時 (最終日は18時まで)月曜定休日

 

 

♫トーク&ライブ決定 7月13日(土)澤口たまみ(かたり)石澤由男(ベース)

今年1月、当店で行われた「宮沢賢治愛のうた」(澤口たまみ著)出版記念イベントのお二人のトーク&ライブが決定。ゆったりとした豊かな時間の流れた前回同様、今回も期待度大です。賢治の言葉とウッドベースの響きが心地よく胸に伝わってきます。

 

 

 

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高山さんは、1991年京都府亀岡市に仲間とともに「亀岡未流窯」を設立して精力的に作陶をしておられます。レティシア書房では4回目の展覧会になりますが、いつもながらの青磁の端正な作品に加え、暖かな風合いの陶器の花器、鍋、マグカップなど 今年も新作をたくさん出品して頂きました。

壁に掛けられる花器に季節の草花を活けると、あの暑かった夏を忘れたみたいに、爽やかな空気が書店にも流れ込んできました。写真(上)の花器は赤伊羅保(釉薬・12960円)の色合いが良い塩梅で、殺風景な壁もすっかり秋の風情です。

小さな鍋は、1合分のお粥が炊けます。今年はこんなふうに、一人用の鍋やフライパンがいくつか出ているのですが、黒釉のフライパン(4320円)って、朝食一人分パパッと作りたい時などにけっこう便利かも、とちょっと心が動いています。お鍋がうれしい時期に合わせて、おおきな土鍋もありますよ。(今回は特別価格の16200円)

亀岡の工房には一度伺った事がありますが、電気だけでなく登り釜でも焼いています。その一つが、白磁器焼き〆注器(写真右)。灰が乗って深い色合いになりました。お酒を嗜む方にはこれまた良い季節。こんな酒器で一杯、贅沢な秋の夜長ですね。

毎回、陶展では壁がどうしても寂しいので、花器をたくさん掛けてもらうのですが、今年は高山さんの友人の日本画家大野忠司さんの美しい絵で飾って頂きました。大野さんは、嵯峨美術短期大学日本画専攻科卒業後、池田道夫画伯に師事して日展などで活躍されています。縦長の「バナナの木」など、ベテランの達者な筆による絵を、陶器の作品とともにお楽しみください。(女房)

★「高山正道 陶展」は10月24日(水)〜11月4日(日)

12時〜20時(ただし、10/27(土)はイベントのため18時半まで)

月曜日定休日  

 

 

 

 

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暑い毎日が続いています。京都五条通りで毎年行われる「陶器まつり」も、暑いのと突然の大雨などの影響でしょうか、今年は「さっぱりでしたわ」と、関係者の方から聞きました。

本日から始まった「器(うつわ)展」の長元宏さんも、五条陶器まつりにいつも出店しておられます。1959年京都生まれ。現在は、日吉町胡麻で作陶されています。

陶器まつりや、以前グループ展などで購入した長元さんの器は、使いやすくて我が家のごはんにはよく登場します。グレーがかった青の表情が素敵な器は(写真左上)、ガラスのようなつるっとした手触りで汚れも付きにくい(うちでも一回り小さな器を使っています)。貫入の美しいお皿(写真右)は、また違った趣で、むっくりした温かさがあり、夏野菜の素揚げでもフルーツなど、なにを盛っても美味しそうですね。今回の新作でスッキリした意匠のお皿(写真左下)も、ちょっと心魅かれています。大きな声で自己主張しないけど、はっきりした輪郭をもった器たちには、作家の人柄が出ているような気がします。

量販店などでそこそこの食器が手に入ると言われていますが、一つ一つ微妙な表情をみせる器を手に取ってみれば、ちょっと豊かな気持ちになります。終活に向けて食器の整理は課題のひとつなのですが、綺麗な片口をお酒の好きな友人のプレゼントにしようかな、と思ったりしています。

壁にかかった花器は、今回の個展で初めて見ることが出来ました。金属を思わせる質感とシャープなフォルムは、和洋を選ばず、また、花を活ける口が、正面と上方にありどちらでも使えます。小さな花でもOK。挿すだけで様になるのが私などには助かります。

さりげなくモダンな長元宏さんの器をぜひ一度ご覧いただければ、と思います。(女房)

長元宏 器(うつわ)展は8月29日(火)〜9月10日(日)まで

  月曜定休日

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高山さんの陶展は、レティシア書房では3度目。2012年秋、2014年春、に続き今年は真夏の新作展になりました。

目を引くのは、市松模様の作品です。個展の度に、必ず新しい試みをしてくれているのですが、市松模様に地の色が出るお茶碗やマグカップ、皿などは、カジュアルで普段使いができそうないい感じの食器です。壁には、いつものようにお手製の焼き板に花器をかけ、季節の野花を飾って頂いたので、蒸し暑い室内が清浄な空気に変わり、爽やかになりました。目に涼しげな工夫は、体感温度も下げるのですね。定番の青磁の花器も形を進化させて、相変わらずキリッとして滑らか。鮮やかなトルコブルーの、花器とぐい呑み、マグカップは新作ですが、夏の贈り物にいいかも。

本屋の中での陶器展っていうのが、実現出来るかどうか不安だった開店の年の秋、高山さんが引き受けてくれたおかげで、その後間口を広げることができたと感謝しています。

先月、お母さんが長い間化粧品店をしておられた家を改装して、甥っ子さんが「wakabaya」というお店を始められました。ここでは高山さんの作品が飾ってあり、いつでも手に入ります。

 

しかしまずは先日、窯から出したばかりの新作を手に取ってください。ちょうど17日は祇園祭の鉾巡行。今年は日曜日に当たり、例年以上の人出ではないかとはおもいますが、店のすぐ近く御池通りで鉾が見られますよ。なお、24日は後祭りです。京都の暑い暑い夏本番。水分補給をしっかりとってお回り下さい(女房)

高山正道 陶展は7月24日(日)まで。18日(月)は定休日。

        12時〜20時   最終日は18時まで。

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絵画、写真、版画を問わず展覧会には足を運ぶほうですが、陶芸だけはイマイチわかりませんでした。飯を喰う茶碗じゃねえか、ぐらいの認識で、自慢ではありませんがその手の展覧会には一度も行ったことがありませんでした、しかし、

京都国立近代美術館の八木一夫の図録(1500円)を観た時、強烈な面白さにのけぞりました。1918年、地元五条坂の陶芸家の家に生まれ、非実用的なオブジェ作品を制作しながら、生涯「茶碗や」を自称していた変わり者。

奔放なラインと描かれた図案の楽しさに、おっ、おっと魅き込まれました。1950年作の「二口壷」なんて、ミロと一緒に焼いたん?と聴きたくなります。本屋として見逃せないのが、書物の開いた状態を何点も陶器にしている作品群です。本のページに窓みたいな穴が空いていたり、丸眼鏡が置いてあったりと、陶芸家が楽しそうに制作している現場が見えてきそうです。

「オモロイ」、「コレイタダキ」が彼の口癖だったそうです。強く関心をひくもの、感性が見抜く様々な事象の中に内在する美的なものを、引っ張り出すのが楽しくて仕方ないという作家の本質を物語る言葉です。

もう一点、おもしろい図録が入荷しました。

「現代陶芸と原始土器土の発見」(500円)です。これは1990年滋賀県県立陶芸の森陶芸館でおこなわれた展覧会の図録ですが、タイトル通り現代陶器の作品と、縄文時代等の土器を並べた図録です。弥生後期の作品と勅使河原宏の作品が一緒に掲載されたりと、もうどれが現代でどれが古代か、ぐらい個性的な作品が並んでいます。古の人って、現代アートしてたんですね。よくわからん日本語ですが。

■1月31日のブログで紹介した奈良原一高の写真集「王国ー沈黙の薗・壁の中ー」は売り切れました。

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