イラストレーターのユカワアツコは、主に鳥を描く作家です。それも、古い箪笥の引き出しに鳥の絵を描きます。着物をしまう引き出しに、飛び立っていくかもしれない鳥の姿があるのはなんとも神秘的。

描かれているのは特に珍しいというのではない馴染みの鳥(例えばカケスやハシブトカラスやメジロなど)で、そこに梨木香歩が文章を寄せ、写真家長島有里枝が撮影するという「草木鳥鳥文様(くさきとりどりもんよう)」(福音館/新刊3100円)は、どこまでも心落ち着く一冊です。作品は室内のテーブルの上、洗面台や本棚、小さな納戸の奥などに置かれ、「鳥の潜む風景」になりました。

バードウォッチャーとしても有名な梨木は、鳥の生態を簡潔に紹介しながら、その鳥とともに描かれている草木のことも的確に解説しています。「アオバズク」では「深夜になりベッドに入ると、コウコウ、コウコウ、というアオバズクの声が聞こえてくる。ああ、もう渡ってきたのか、と夢うつつで思う。それは毎年繰り返される、初夏の始まりの知らせ」という、物語の始まりを予想させるような文章に続いて、

「京都にももちろん、御池通に見事なケヤキの並木があって、その景観が大好きだったが、ケヤキにはやはり、坂東武者というような素朴でまっすぐなイメージが、いつの季節にもある。昏く燃えるような紅葉の秋、骨組み(?)だけになる凛とした姿の冬、誰も気づかない質素な花とともに芽吹く春、そして初夏、、瑞々しい新緑に身を隠すようにして、アオバズクがこちらを覗くのだ。」

アオバズクの引き出しは、漱石や藤村の古めかしい本が詰まっている本棚に置かれていて、今にもこちらに向かって飛び出しそうです。

年数を経た引き出しに描かれた鳥たちは、美しく輝いていて、梨木は「長島有里枝さんは、気配の滲み出てくるような独特の世界の捉え方で『鳥の潜む風景』を撮られました。」と、あとがきに書いています。風が流れ込んでくるような家のあちこちから、鳥たちのさえずりが聞こえてきそうです。三人の才能ある女性が、見事にコラボした美しい本です。

長島有里枝さんの著書「『僕ら」の『女の子写真』からわたしたちのガーリーフォトへ」(大福書林/新刊3630円)も取り扱っています。