宮沢賢治の「雨にも負けず」という詩は、皆様ご存知だと思います。

この詩には不幸な過去がありました。戦時中の「欲しがりません、勝つまでは」の世論に同調するように、この質素な暮らしこそ、お国の勝利に繋がるという解釈をされてしまったそうです。バカな(あるいは狡猾な)政治家、軍人が跋扈すると、こうなるんですね。

写真は、2014年に発行されたアーサー・ビナードの英語翻訳による「雨ニモマケズーRain Won’t」(今人舎1500円)。ちょっと表現が古くさいと感じていたこの詩が、そうか、こんなに素晴らしいものだったのか!!と、わかります。

「雨ニモマケズ 風ニモマケズ」が英訳ではこうです.

“Rain won’t stop me    Wind won’t stop me”

「私」が「雨に負けない」のではなく、「雨」は「私を止めない」になっています。つまり、自然が主語になっています。その後に続く「雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ」も

“Sweltering summer heat will only raise my determination”.

翻訳すれば「夏のうだるような暑さは,私の決意を確たるものにするに過ぎない」です。

もちろん、大自然の脅威に負けない私の意志は、きっちりと表現されています。けれど、悪戦苦闘する私の存在なんぞ、自然の前では小さなものなのです。だからこそ、雨や風、そして夏の暑さが主語になっているのです。

賢治は、この詩で、人知の及ばない自然と共生するには、我欲を捨て、進歩を望まず、ほんの少しの自然からの贈りものを大切にいただきながら暮らすことだと明言しています。

最後の詩句「サウイフモノニワタシハナリタイ」は英訳で、こう表現されています

“All this is my goal-the person I want to become”

どうです、ど真ん中剛速球で、気持ちいいですね。

そう、この英訳、音読するととても気持ちいいのです。朝一番に大きな声で読んでみてはいかがですか。

絵は、「頭山」で世界的に注目されたアニメ作家、山村浩二が、日本の自然の美しさを描いています。風の匂いや、夜の冷気を感じる絵を楽しみながら、ぜひ音読してください。