高浜寛「四谷区花園町」(竹書房650円)が入荷しました。

太平洋戦争前夜、新宿でエロ雑誌「性の扉」を編集している人々を描いたコミックです。主人公は至心と書いて「よしむね」と読む若きライター。前半は、この本の帯で、映画監督の行定勲が賞賛するように「青春漫画の王道だ!”エロ”はどんな時代にも生きる勇気を与えてくれる」タッチで話は進みます。そして、彼が娼婦上がりのアキチャンに出会い、一緒になるあたりまでは、ドタバタありのほんわか青春コミックなのです。

しかし、戦争へと突き進む国は、このご時世に不謹慎との理由で、雑誌を発禁処分にしてしまいます。編集長は地下に潜り、やはり非合法と見なされているアカ系印刷会社から出版すべきかと悩みます。そんな時、アキチャンが社会主義運動に加担した容疑で逮捕。ここから物語は大きく動き出します。

編集長は、妻と子供を守るため、寝返って戦争礼賛の戦艦雑誌を立ち上げ、多くの友を失い、一方、心至のもとには、召集令状が届きます。やがて、物語は悲しみのエンディングを迎えます。悲惨なのは、この編集長の人生でした。戦後、戦犯扱いされて消えていきます。

このコミックのステキなところは、戦時中の悲しい話に留まらないエピローグにあります。

時代は一気に現代にとんで、同じ「四谷区花園町」界隈で、バーを営むアキチャンの孫娘が登場します。そこで、編集長の人生を振り返りながら、こう呟きます。

「だーれも自分の未来なんか見えなかったんだよね。ただ目の前の小さな事に決断していくうちに気付けばそんな事になっている……。」

戦争へと世の中が進んでいく様を、見事に表現しているではありませんか。

行定勲が「映画にしたいと思った」と書いているのですが、それは、アキチャンの孫が、ボーイフレンドに祖母の最後を語る、このエピローグがあったからでしょう。もうそのまま映画用の絵コンテ使用で、行定が映画に、と思うのも当然でしょうね。なお、高山寛の傑作「イエローバックス」も近日入荷予定です。

 

 

 

 

★毎年恒例になりました『ネイチャーガイド安藤誠さんの自然トーク「安藤塾」』は、10月28日(金)7時30分より開催が決定しました。(要・予約 レティシア書房までお願いします) 

★★カナダ在住で、ドールシープを撮影されている写真家、上村知さんの写真展を11月1日(火)〜13日(日)まで開催します。5日(土)夜に、上村さんによるスライドショーを予定しております。(要・予約 同じくレティシア書房までお願いします)