今年4月、東京立川にオープンする美術館の開館記念展が「エリック・カール 遊ぶための本」です。その記念図録がブルーシープ社から発売されました(新刊/2200円)。

図録の帯に記載されていますが、これはエリック・カールの全てがわかる立派な書籍です。カールといえば、「はらぺこあおむし」が有名な、色彩を巧みに操る魔術師みたいな絵本作家。

本書で序文を書いている、今人気の絵本作家tupera tuperaは、カールの世界をこう表現しています。 「画面を隅々まで眺めてから、今度は、顕微鏡でも覗くかのように、ぐっと絵に顔を近づける。すると、まるで色鮮やかな銀河や惑星をみているような光景が目の前に広がる。エリック・カールによって生み出された紙の宇宙だ。」

カールの作品では、アメリカの童歌を元に、カールが描いた動物たちが登場する「月ようびはなにたべる?アメリカのわらべうた」(1993)が大好きです。ここに登場するヤマアラシの美しい姿に目を奪われました。「ごきげんななめのてんとうむし」(1977)に登場するサイや、「えをかくかくかく」(2011)に出てくる馬なども、今にも画面を蹴破って飛び出しそうです。

そんな楽しい本と遊ぶ子供達を、人気の写真家長島有里枝が撮影して、子供達の素敵な表情が収録されています。さらに マサチューセッツにあるカールのアトリエや、カール美術館の訪問記や、カールのこれまでの歴史、そして書影入りの作品リストが網羅されています。グラフイックデザイナー時代の作品を初めて見ることができました。永久保存版として持っておいても損はないと思います。

 

神田日勝は、1937年東京に生まれました。4歳の時、日本は太平洋戦争に突入します。そして、45年3月東京大空襲、この年の8月戦災者集団帰農計画に基づく拓北農兵隊に応募して、北海道へと入植します。ここから、一農業従事者としての苦難の道が始まります。趣味として絵を描いていたものの、青年期の彼は農業こそ自分の生きる道だと思っていました。が、19歳の時に描いた「痩馬」という作品が注目を浴び、画家への道が開いていきます。

私が彼の作品を知ったのは、TVの「日曜美術館」でした。その時に見た馬の作品は力強さに満ちていて、記憶に残りました。

北海道新聞社発行の「神田日勝 北辺のリアリスト」(古書1100円)を入荷しましたのでご紹介します。彼が生涯描き続けた馬が何点か収録されています。道産子らしい太い足と優しそうな目の馬の作品と共に、1965年に発表した「死馬」という、個人的に傑作だと思っている作品も収録されています。体を丸めて永遠の眠りについた一頭の馬。人間の過酷な労働の手助けをしてきたのでしょうか、足元には太い鎖が見えます。共に生きた馬への哀悼が感じられる作品です。

一方で、厳しい自然に抗うように生きる人たちの姿を静謐に描いた「飯場の風景」のような作品も見逃せません。そんな彼が、魅入られたように色をふんだんに使い鮮やかに描いた「画室」(1966年)なんて作品のポップな感覚は、重く沈み込む馬の作品群とは全く正反対です。

 

 

しかし、1970年の夏、神田は32歳の短い生涯を終えました。死の少し前、彼はこんな言葉を残しています。

「結局、どう云う作品が生まれるのかは、どういう生き方をするかにかかっている」

生きることと描くことが同次元にある、リアリストならではの力が作品の隅々にまで行き届いているからこそ、私たちは感動するのだと思いました。

余談ですが、昨年末個展をしていただいた北海道在住のあかしのぶこさんにもらった、お土産のクッキーは、神田日勝の絶筆である「半分欠けた馬」のデザインでした。北海道の人々に愛されているんですね。

 

★連休のお知らせ 1/20(月) 1/21(火)連休いたします

★1/22(水)〜2/2(日) レティシア書房冬の古本市プレ企画「こんな本が揃いました」展

★2/3(月)2/4(火)古本市準備のため連休いたします

★2/5(水)〜2/16(日) 恒例となりました女性店主による『冬の古本市』を開催します。今年も神戸・大阪・岐阜・東京・御殿場・京都などの女性店主の選書です。ぜひお立ち寄りください。


 

 

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新年最初の読書は、マガジンハウスで、数々の雑誌の編集に携わってきた編集者岡本仁の「続々果てしのない本の話」(オークラ出版/古書1200円)でした。同社の「&Premium」に連載されていた読書エッセイ40編をまとめたもので、誠光社の堀部篤史さんと共作した「古本18哩」も収録してあるという本好きにはたまらん一冊なのです。ところが読みだした最初は、ケッ!アートに詳しい編集者が、クールに自分の好きな作家をエッセイ風に描いた東京人好みの本ね…….みたいな感じで、プリプリしながら読んでいました。(なら読むな!)

が、そういう扁壺なおじさんの気持ちを、ゆっくりと柔らかにしてくれて、結局最後まで一気に読みきりました。そのキッカケになったのが、こんな文章でした。

「幸せな結婚というのは『いま、ここ』がいちばん尊いと知るきっかけであると同時に、『いま、ここ』がいかに儚いものなのかを悟るきっかけでもあるのじゃないか。ミランダ・ジュライの『あなたが選んでくれるもの』で、彼女が自分の結婚について触れている部分を読んでいるうちにそんな気持ちになり、庄野潤三の『夕べの雲』を思い出した。」

ミランダ・ジュライ→庄野潤三へと流れてゆく文章が、チャーミングです。本書では、ひとりの作家、あるいは著作から、岡本が思い浮かべた作品が次々と果てしなく並べられていきます。もちろん、私の知らない作家や、アーテイストや写真家がどんどん登場してきますが、決して上から目線にならずに、ねえ、こんな面白い人いるよ、みたいな感覚なのです。程々にクールでベタベタせずに描かれているので、心地よく読めます。

岡田温司著「モランディとその時代」という美術の本から「この本は自分自身の考えと信じていることが、もしかしたらただの紋切り型になっていないかと疑ってみることの大事さを教えてくれる。見ているようで見ていない、聞いているようで聞いていない、考えているようで考えていないことが、自分のまわりにまだまだたくさんあるような気がしてきた。」

本の内容を紹介しつつ、最後に自分の言葉で、その本から受けた思想をきちんと伝えることは、なかなか出来ません。(ブログを書きながら日々痛感しています)

一方で、著者は、少年のような瑞々しい感性をひょいと出すことがあります。京都の細見美術館で見た「永遠の少年、ラルティーグ」展の感想をこんな文章で綴っています。

「いまこの瞬間の興奮と幸せを永遠のものにしたいという、ラルティーグの無邪気さが観る者を自然に笑顔にしてしまうような写真、涙が出そうになるほど素敵だった。」

なんだか写真展で、顔をクシャクシャにして楽しんでいる著者の姿が想像できます。

それにしても方々の美術館に出かけていますねぇ〜。本当に好きなんだ。

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京都国立近代美術館で開催中の「丸山応挙から近代京都画壇へ」が15日で終わるので、散歩がてら行ってきました。ヘェ〜結構人が入っているんだ〜と感心しながら、鑑賞しました。

18世紀の京都。円山応挙は、実物写生に基づいた写生画というジャンルを切り開きました。精緻に描かれた応挙の写生画は、爆発的な人気を博し、円山派を形成します。私のような日本画に馴染みのないものにも圧倒的美しさで迫ってきます。小さく描かれた雀は、今にも屏風を突き破って飛び出しそうだし、「保津川図」に描かれた水の勢いは、4K、8Kの最新の映像技術の表現に負けない凄みがありました。

明治期の京都画壇を代表する一人、岸竹堂の「猛虎図」の虎なんて、咆哮が聞こえてきそうなぐらい臨場感に溢れていました。久々に来て良かったなぁ〜と思いながら、4Fのコレクションギャラリーに向かいました。

 

 

そこでは写真家野島康三の作品がズラリと展示されていました。かなり前でしたが、この写真家の作品を見て以来、特に女性のポートレイト作品に強く惹かれました。

野島康三(1889–1964)は、絵画を意識させる写真作品を数多く残しています。野島初期の「ピクトリアリズム」と呼ばれる写真は、ぼかしなどの技法を用いない「ストレートフォトグラフィ」が主流となると、絵画の模倣だとして批判の対象となり、下火になっていきます。しかし、独特の質感をもつ世界観を作品に投入した野島は、1930年代のドイツ新興写真に影響を受けながら、新しい作品を発表してきました。今回の展示には、モダンガールの素顔を捉えた「女の顔」も展示されていて、素敵な再会を果たしました。

ちょっと攻撃的で、アンニュイな視線をこちらに向ける女性を、ややローアングル気味で捉えた作品に、初めて出会った時は、そのクールな作品の佇まいに魅入ってしまいました。このまま、今のファッション雑誌にも使えそうな斬新な感覚だと思います。応挙の作品を見にきたはずが、野島の作品で頭がいっぱいになった帰り道でしたが、久々の近代美術館はやっぱり行って良かったです。

 

 

●大阪の動物保護団体ARKの来年度カレンダー発売中です。

壁掛けタイプ1000円(少なくなってきました) 机上タイプ800円です。売上は、全てARKにお渡しいたします。当施設に保護されている動物たちのために使われます。

 

 

音楽を聴きながら毎日製作しているという9cueさん。骨太なアコースティックなものが大好き。同じ趣味のレティシア店長と話が盛り上がり、本屋の壁いっぱいに9cueワールドが広がりました。お気に入りのアルバムから、想像の翼をガーンと羽ばたかせて、ユニークなヤツらが、レティシア書房に3年ぶりにやってきました。

9cueさんがチョイスしたアルバム、ミュージシャンはアメリカンロックに親しんできた人にとっては、よくご存知のものばかりですが、華やかな音楽業界から見れば、地味で渋めです。アメリカ音楽のルーツへのリスペクトと、アーテイストとしての表現力、作風でそれぞれに頑張ってきたミュージシャンばかりです。呑んだくれの音楽詩人が、深夜一人で人生の哀歌を歌い続けるトム・ウェイツ。生まれ故郷を一歩も出ずに愛する音楽を奏で、そのまま天国へ行ってしまったJJ.ケイル。女性シンガーとして時代の最先端を走り続け、独自の世界を表現してきたジョニ・ミッチェル。アメリカだけでなく、日本の多くのシンガーにも影響を与えてきたジェイムズ・テイラー。姉御肌なんだけど、キュートな魅力一杯のマリア・マルダー。ノーベル文学賞を受賞しても、ひねくれぶりとマイペースは変わらないボブ・ディラン。アメリカ南部の荒くれ魂と強い女ってこれよね、と豪快に疾走するテデスキ&トラックバンド。(写真上)そして御大ローリングストーンズ。

そんな彼らのLPアルバムの横に、9cueさんが作り上げた独自の作品がディスプレイされています。音楽への限りない愛と、そんな音楽を通してこんな作品を作れる幸せが、本屋全体に漂っています。音楽のこと知らなくても、9cueさんが作り上げたキャラクターを見ているだけで、楽しくなってきます。閉店後、店の中でヤツらが音楽に合わせて、体を揺らしているかも。

9cueさんの作品はなんだか男前でとてもカッコイイんです。ザクっザクっと直線的に切り出した木に、渋い着色を施し、蒐集している古釘やネジなどの金属や革で作った小物を組み合わせ、独特の全く見たこともないようなヒトや鳥や動物を作り上げます。彫刻でもない、人形でもない。可愛いけれど甘くない。ヤツらはしぶとくリズムを刻んで生きています。

「人生のレールは生まれる前からもう既に敷かれているように感じる部分もあれば自分の力で敷いているのだよ感じる部分もある。ー中略ーそして、レールの上を走る汽車は自分自身で動かす。乗車してくれるのはやっぱり愛する者達なのだと思う。このアルバムはやっぱり信仰心について深く考えさせられます。自分は無神論者なのですが、運命の赤い糸は信じます。何か見えない力のようなものも。」これは、ボブ・ディランのアルバム「SLOW TRAIN COMING」(写真右)につけた 9cueさんのコメントです。丁寧に生きて、創作してきた 9cueさんの世界に触れてみてください。きっと元気になりますよ。

なお、素敵なペンダント(写真下・11000円〜)も沢山作ってこられました。ぜひ手にとってみてください。(女房)

 

 

 

「暮らしのリズム」展は10月16日(水)〜27日(日)12:00〜20:00 月曜定休日(最終日は18:00まで)

 

 

 

 

 

 

ヨゼフ・スデックという写真家をご存知でしょうか。わが国でも「プラハの光」というタイトルで出版されていたことがありますが、今や高額のお値段が付いています。

スデックは、1896年チェコに生まれました。第一次世界大戦に出征し、右腕を失いますが、1920年代から写真家として活動を始めます。主に、プラハの町を撮影地として選び、光と影を巧みに使った作品を発表してきました。しかし、第二次世界大戦勃発と同時にチェコがナチス支配下に入り、撮影が制限されたことにより、自分のスタジオから眺めた作品を撮り始めます。

洋書ですが、”Josef Sudek”(900円)には、そんな写真が何枚か収録されています。静物画みたいな作品は、どれもいい雰囲気を持っています。風に煽られたカーテンが、椅子に引っかかっている作品なんて、柔らかな風と、ほのかに差し込む太陽光線の輝きを捉えて、絵画のようです。私のお気に入りは、子供用の乳母車と、そこに置かれたザルと木の箱を写した作品です。何の変哲のない、慎ましい日々の暮らしの匂いが感じられます。

室内にあるもの、窓から見えるものを、普通に撮った作品を眺めていると、不思議と心落ち着きます。写真に力がある証拠かもしれません。

もう一人、こちらは写真家の巨匠とも言えるマン・レイの図録を入荷しました。生誕100年を記念して大丸ミュージアムで開催された「マン・レイ展」の図録(3000円)です。2冊セット箱入りという豪華本です。1冊は写真を、もう1冊は、絵画、オブジェ、素描、水彩、版画等、写真以外の作品を収録してあります。前衛的な写真で知られる彼ですが、そういう作品以外の肖像写真、ファッション写真が沢山あります。

一方の絵画・オブジェの方は、楽しさ溢れる現代アート作品ばかりです。思わず吹き出したのは、りんごとネジ釘を一緒の置いたオブジェ「僕の愛するもの」です。どう面白いか、私の拙い言葉では言い表せませんので、ぜひご覧ください。この作品の下にマン・レイのこんな言葉が載っています。

「これらのイメージは、人を楽しませるものではなければならないーこれが正しい鑑賞への唯一確実な道なのだ」

現代アートは、まず楽しくなくっちゃ。観て、触って(可能ならば)、遊べる、そういうものだと思います。

 

これから開催される「美と、美と、美、資生堂のスタイル」展、公式図録(新刊/2200円)も入荷しています。資生堂が創り上げてきた美の世界を、様々な角度から照らした作品展で、現在巡回中です。京都は高島屋で開催されます。

 

 

 

 

えき美術館で開催中(14日まで)の「ショーン・タンの世界展」に行ってきました。

ショーン・タンは1974年オーストラリア生まれのイラストレーター、絵本作家です。2008年、新しい国へと旅立った男を文章を全く入れずに描いたグラフィックノベル作品「アライバル」(河出書房新社/古書1400円)で国際的に評価され、日本でも注目されました。怪奇と幻想、そしてユーモアが巧みにブレンドされた作風は、シュールなサイレント映画のような世界へと誘ってくれます。

ひずんで変な形の生物なのかロボットなのか判別できない、怖いのに可愛いキャラクターが、大挙登場します。繊細でありながら、壮大な、こんな世界あるわけないよな、と思いつつ、でもあったらいいかも、と思ってしまう不思議な作品世界です。

とりわけユニークなのが、2000年に刊行された「ロストシング」です。ある日、少年は海岸で奇妙なものに遭遇します。軟体動物と、カニと、ダルマが合体したような生き物です。少年は、この生き物が何で、どこから来たのかを探そうとします。しかし、その答えは見つかりません。やがて少年は、そんな変な生き物たちが生息している楽園を見つけて、その生き物を送っていきます。

タンは、この絵本を元にして、4人のクリエイターと8年間にも及ぶ制作期間を経て、 CG と手描きで15分のアニメーション短編映画を完成させました。本作品は、アカデミー賞短編アニメ賞を獲得しました。会場で上映されていますので、ぜひ観てください。少年とヘンテコな生き物の別れのシーンで、思わず涙が出ました。

展覧会では、大きな油彩作品も集められています。

今、店頭には、「夏のルール」(河出書房新社/新刊2200円)、「遠い町から来た話」(河出書房新社/新刊1980円)、「エリック」(河出書房新社/新刊1100円)、「鳥の王さま」(河出書房新社/新刊1980円)等と共に、展覧会の公式図録兼書籍「ショーン・タンの世界」(求流堂/新刊2750円)も販売中です。作品をパラパラ観てから美術館に行かれるも良し、その逆もまた良しです。(残念ながら古書はあまり出回っていませんので、新刊でお求めください)

 

 

 

 

写真家、エッセイストとして活躍中の植本一子が、世界に現存するフェルメール35作品すべてを観る旅に出ました。それを一冊にまとめたのが、「フェルメール」(ナナロク社/新刊2160円)です。オランダのマウリッツハウス美術館に始まり、アメリカボストンのイザベラ・スチュアート・ガードナー美術館まで、七カ国に点在するフェルメールを追いかけていきます。

本の半分は植本が撮影した写真で占められています。美術館のある街の風景、そして館内、フェルメールの作品前で撮ったものが収録されています。作品を観ている人の後ろ越しに撮影している写真などもあり、こんな所に、こんな風に飾られているんだと興味津々です。アムステルダム国立美術館をはじめ、多くの美術館では写真撮影が出来るので、来館した人が自分のiphoneで撮影しています。羨ましい……。

例えば、有名な「真珠の首飾りの少女」を持っているマウリッツハウス美術館では、「この美術館は流れている空気がゆるく、懐が広い。たくさんの名画が所狭しと飾られているのに、仰々しい雰囲気はなく、本当に人の家にお邪魔しているような感覚。人が多くないこともあり、皆リラックスしながら熱心に絵を見ている。かと思えば大きなシャッター音をさせてiphoneで写真も撮るし、絵をムービーで撮る人、絵画とセルフィーをする人まで。」ということです。

「イギリスは多くの美術館が無料だと聞いてはいたが、チケット売り場がないことに驚いてしまう。」と著者は書いています。日本では信じられない状況です。イギリスでは四つの美術館を回るのですが、「音楽の稽古」という作品を所蔵しているバッキンガム宮殿英国王室コレクションは、普段は入れません。バッキンガム宮殿は、エリザベス女王の公邸です。ここには、フェルメールだけでなく、ルーベンスなどのヨーロッパ絵画が壁を飾っています。で、この家の主である女王が夏の避暑のためここを離れる時だけ、一般に解放されています。

この本を読んで初めて知ったのですが、フェルメール作品ってアメリカの美術館が多く所蔵しているんですね。メトロポリタン美術館が5作品、ワシントン・ナショナル・ギャラリーが4作品、NYフリッツ・コレクションが3作品という具合です。因みにルーブルは2作品です。

著者は全点踏破を終えた時、「女と召使い」を前にしてこんな感想を述べています。

「大きな絵の前に3人がけのソファがあり、そこだけ座れるようになっている。『女と召使い』までは少し遠いが、座って眺めてみる。窓が描かれていないのに、いつものように左側からの光を感じ、青いテーブルクロスには光の粒がちりばめられている。ドラマのワンシーンを切り取ったかのような一瞬。肖像画にも物語にも見え、そういえばフェルメールの絵はどれもそんな感じがあった。 深呼吸をしてソファから立ち上がる。とうとう全てのフェルメール作品を見終えたのだ。」

フェルメールにはそれほど興味のない私ですが、7カ国14都市、17の美術館を巡り、絵画に集まる人達とその街を捉えて、記録した「全点踏破」の長い旅に同行していると、来年2月大阪で開催される「フェルメール展」に行きたくなりました。図録より、断然こちらが面白い一冊だとおもいます。しかし、美術館は混むだろうなぁ………。

 

日本画家さわらぎさわさんの、柔らかな日差しのような絵が、小さな本屋の壁に並びました。しっとりと秋の落ち着いた雰囲気が漂います。

「スカンクの旅」(写真上)「夜空を見上げて」という作品の前で、物語が広がりそうで楽しいとお話ししていたら、実は絵本を作るつもりだったということでした。どんな世界に連れて行ってもらえるのか、続きを見てみたいものです。日本画の絵具で描かれた絵は、可愛いモチーフを扱っていても奥行きがあります。もしかしたら、この絵の深さは印刷では上手くでないかもしれません。完成した絵本も見たいけど、原画の素晴らしさを味わっていただいたいと思います。ゆっくりほっこりした時間が過ぎていきます。

子どもを囲んで、きりん、シマウマ、ゾウ、の顔がある「ZOO」(写真左)、子どもと花が揺れている「pure pure pure」など、さらりと描かれた作品にも、優しくふく風を感じます。

今回は、立体作品も4体飾られました。ゾウに乗った少年・鳥を抱いた少女・馬に乗ってかける少女・広げた両手にうりぼうを乗せた少女。子どもたちを、見ているだけで幸せな気持ちになります。遊んで作られた分だけ、作家の優しくてちょっとヤンチャな本音が強くでているのではないかと思いました。

我々が、本屋の片側の壁をギャラリースペースにしたのは、本を読もうかなと店に来られた方が、ホンモノの絵(もちろん版画や立体もふくめて)に出会って楽しんでもらえたらいいな〜と思ったからでした。キラリとした日本画独特の輝きは、本当に素敵です。気軽に覗いてみて下さい。(女房)

 

 

さわらぎさわ「愛と子どもの世界」展は11月6日(火)〜18日(日)

12時〜20時 最終日は18時まで 月曜日定休 

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京都駅ISETAN内にある、えき美術館で開催中の「渡辺貞一」展(11月11日まで)に行ってきました。

渡辺は1917年、青森に生まれました。18歳で上京し、画家になるべく川端画学校で学びました。1941年には第16回国展で初入選を果たし、画家としての道を歩み始めますが、病に倒れ青森に帰ることに。その後兵役に就き出兵しますが、奇跡的に帰国できました。

私はこの画家については全く知りませんでしたが、会場に入った途端にその幻想的で、静謐で、陰翳の深い世界に魅了されました。故郷青森の風景に広がる北国独特の暗い空からは、冷たい雪の気配をしみじみ感じました。

一方、花が好きだった彼は、自宅周辺の散歩を楽しみ、気に入った花々を描いてきました。本展では、花をモチーフに描いた静物画がズラリと並んでいます。そこにも清い精神性みたいなものが、静かに伝わってきます。さらに、花と月と鳥と河原をテーマにした作品群。渡辺の世界を支配しているのは、暗く、もの悲しい雰囲気です。「死」と「生」が同じ重さで描かれています。来場者も少なく、ゆっくりと見ることができたせいもありますが、思わず足が止まってしまう程、絵の中に入っていきそうになります。特に、右の写真の作品の背後に広がる空の深い青には感じ入りました。

1964年、ヨーロッパへ旅したとき、そこで感じたヨーロッパの空気、堅牢な建物の背後に広がる寒空を描いた作品もありました。1979年には、日中友好美術家訪中団の一員として中国南部へと向かいます。帰国後、現地で購入した紙と墨を使って水墨画に没頭します。会場の出口近くに、晩年の水墨画がありました。これが良いのです。掛軸などに興味がなく、あまり見た事がないのですが、三点並んでいた水墨の掛軸に、魅かれました。(歳をとったせいかも)

満足度100%だったので、滅多に買わないポストカードを数枚買って帰りました。