音楽を聴きながら毎日製作しているという9cueさん。骨太なアコースティックなものが大好き。同じ趣味のレティシア店長と話が盛り上がり、本屋の壁いっぱいに9cueワールドが広がりました。お気に入りのアルバムから、想像の翼をガーンと羽ばたかせて、ユニークなヤツらが、レティシア書房に3年ぶりにやってきました。

9cueさんがチョイスしたアルバム、ミュージシャンはアメリカンロックに親しんできた人にとっては、よくご存知のものばかりですが、華やかな音楽業界から見れば、地味で渋めです。アメリカ音楽のルーツへのリスペクトと、アーテイストとしての表現力、作風でそれぞれに頑張ってきたミュージシャンばかりです。呑んだくれの音楽詩人が、深夜一人で人生の哀歌を歌い続けるトム・ウェイツ。生まれ故郷を一歩も出ずに愛する音楽を奏で、そのまま天国へ行ってしまったJJ.ケイル。女性シンガーとして時代の最先端を走り続け、独自の世界を表現してきたジョニ・ミッチェル。アメリカだけでなく、日本の多くのシンガーにも影響を与えてきたジェイムズ・テイラー。姉御肌なんだけど、キュートな魅力一杯のマリア・マルダー。ノーベル文学賞を受賞しても、ひねくれぶりとマイペースは変わらないボブ・ディラン。アメリカ南部の荒くれ魂と強い女ってこれよね、と豪快に疾走するテデスキ&トラックバンド。(写真上)そして御大ローリングストーンズ。

そんな彼らのLPアルバムの横に、9cueさんが作り上げた独自の作品がディスプレイされています。音楽への限りない愛と、そんな音楽を通してこんな作品を作れる幸せが、本屋全体に漂っています。音楽のこと知らなくても、9cueさんが作り上げたキャラクターを見ているだけで、楽しくなってきます。閉店後、店の中でヤツらが音楽に合わせて、体を揺らしているかも。

9cueさんの作品はなんだか男前でとてもカッコイイんです。ザクっザクっと直線的に切り出した木に、渋い着色を施し、蒐集している古釘やネジなどの金属や革で作った小物を組み合わせ、独特の全く見たこともないようなヒトや鳥や動物を作り上げます。彫刻でもない、人形でもない。可愛いけれど甘くない。ヤツらはしぶとくリズムを刻んで生きています。

「人生のレールは生まれる前からもう既に敷かれているように感じる部分もあれば自分の力で敷いているのだよ感じる部分もある。ー中略ーそして、レールの上を走る汽車は自分自身で動かす。乗車してくれるのはやっぱり愛する者達なのだと思う。このアルバムはやっぱり信仰心について深く考えさせられます。自分は無神論者なのですが、運命の赤い糸は信じます。何か見えない力のようなものも。」これは、ボブ・ディランのアルバム「SLOW TRAIN COMING」(写真右)につけた 9cueさんのコメントです。丁寧に生きて、創作してきた 9cueさんの世界に触れてみてください。きっと元気になりますよ。

なお、素敵なペンダント(写真下・11000円〜)も沢山作ってこられました。ぜひ手にとってみてください。(女房)

 

 

 

「暮らしのリズム」展は10月16日(水)〜27日(日)12:00〜20:00 月曜定休日(最終日は18:00まで)

 

 

 

 

 

 

ヨゼフ・スデックという写真家をご存知でしょうか。わが国でも「プラハの光」というタイトルで出版されていたことがありますが、今や高額のお値段が付いています。

スデックは、1896年チェコに生まれました。第一次世界大戦に出征し、右腕を失いますが、1920年代から写真家として活動を始めます。主に、プラハの町を撮影地として選び、光と影を巧みに使った作品を発表してきました。しかし、第二次世界大戦勃発と同時にチェコがナチス支配下に入り、撮影が制限されたことにより、自分のスタジオから眺めた作品を撮り始めます。

洋書ですが、”Josef Sudek”(900円)には、そんな写真が何枚か収録されています。静物画みたいな作品は、どれもいい雰囲気を持っています。風に煽られたカーテンが、椅子に引っかかっている作品なんて、柔らかな風と、ほのかに差し込む太陽光線の輝きを捉えて、絵画のようです。私のお気に入りは、子供用の乳母車と、そこに置かれたザルと木の箱を写した作品です。何の変哲のない、慎ましい日々の暮らしの匂いが感じられます。

室内にあるもの、窓から見えるものを、普通に撮った作品を眺めていると、不思議と心落ち着きます。写真に力がある証拠かもしれません。

もう一人、こちらは写真家の巨匠とも言えるマン・レイの図録を入荷しました。生誕100年を記念して大丸ミュージアムで開催された「マン・レイ展」の図録(3000円)です。2冊セット箱入りという豪華本です。1冊は写真を、もう1冊は、絵画、オブジェ、素描、水彩、版画等、写真以外の作品を収録してあります。前衛的な写真で知られる彼ですが、そういう作品以外の肖像写真、ファッション写真が沢山あります。

一方の絵画・オブジェの方は、楽しさ溢れる現代アート作品ばかりです。思わず吹き出したのは、りんごとネジ釘を一緒の置いたオブジェ「僕の愛するもの」です。どう面白いか、私の拙い言葉では言い表せませんので、ぜひご覧ください。この作品の下にマン・レイのこんな言葉が載っています。

「これらのイメージは、人を楽しませるものではなければならないーこれが正しい鑑賞への唯一確実な道なのだ」

現代アートは、まず楽しくなくっちゃ。観て、触って(可能ならば)、遊べる、そういうものだと思います。

 

これから開催される「美と、美と、美、資生堂のスタイル」展、公式図録(新刊/2200円)も入荷しています。資生堂が創り上げてきた美の世界を、様々な角度から照らした作品展で、現在巡回中です。京都は高島屋で開催されます。

 

 

 

 

えき美術館で開催中(14日まで)の「ショーン・タンの世界展」に行ってきました。

ショーン・タンは1974年オーストラリア生まれのイラストレーター、絵本作家です。2008年、新しい国へと旅立った男を文章を全く入れずに描いたグラフィックノベル作品「アライバル」(河出書房新社/古書1400円)で国際的に評価され、日本でも注目されました。怪奇と幻想、そしてユーモアが巧みにブレンドされた作風は、シュールなサイレント映画のような世界へと誘ってくれます。

ひずんで変な形の生物なのかロボットなのか判別できない、怖いのに可愛いキャラクターが、大挙登場します。繊細でありながら、壮大な、こんな世界あるわけないよな、と思いつつ、でもあったらいいかも、と思ってしまう不思議な作品世界です。

とりわけユニークなのが、2000年に刊行された「ロストシング」です。ある日、少年は海岸で奇妙なものに遭遇します。軟体動物と、カニと、ダルマが合体したような生き物です。少年は、この生き物が何で、どこから来たのかを探そうとします。しかし、その答えは見つかりません。やがて少年は、そんな変な生き物たちが生息している楽園を見つけて、その生き物を送っていきます。

タンは、この絵本を元にして、4人のクリエイターと8年間にも及ぶ制作期間を経て、 CG と手描きで15分のアニメーション短編映画を完成させました。本作品は、アカデミー賞短編アニメ賞を獲得しました。会場で上映されていますので、ぜひ観てください。少年とヘンテコな生き物の別れのシーンで、思わず涙が出ました。

展覧会では、大きな油彩作品も集められています。

今、店頭には、「夏のルール」(河出書房新社/新刊2200円)、「遠い町から来た話」(河出書房新社/新刊1980円)、「エリック」(河出書房新社/新刊1100円)、「鳥の王さま」(河出書房新社/新刊1980円)等と共に、展覧会の公式図録兼書籍「ショーン・タンの世界」(求流堂/新刊2750円)も販売中です。作品をパラパラ観てから美術館に行かれるも良し、その逆もまた良しです。(残念ながら古書はあまり出回っていませんので、新刊でお求めください)

 

 

 

 

写真家、エッセイストとして活躍中の植本一子が、世界に現存するフェルメール35作品すべてを観る旅に出ました。それを一冊にまとめたのが、「フェルメール」(ナナロク社/新刊2160円)です。オランダのマウリッツハウス美術館に始まり、アメリカボストンのイザベラ・スチュアート・ガードナー美術館まで、七カ国に点在するフェルメールを追いかけていきます。

本の半分は植本が撮影した写真で占められています。美術館のある街の風景、そして館内、フェルメールの作品前で撮ったものが収録されています。作品を観ている人の後ろ越しに撮影している写真などもあり、こんな所に、こんな風に飾られているんだと興味津々です。アムステルダム国立美術館をはじめ、多くの美術館では写真撮影が出来るので、来館した人が自分のiphoneで撮影しています。羨ましい……。

例えば、有名な「真珠の首飾りの少女」を持っているマウリッツハウス美術館では、「この美術館は流れている空気がゆるく、懐が広い。たくさんの名画が所狭しと飾られているのに、仰々しい雰囲気はなく、本当に人の家にお邪魔しているような感覚。人が多くないこともあり、皆リラックスしながら熱心に絵を見ている。かと思えば大きなシャッター音をさせてiphoneで写真も撮るし、絵をムービーで撮る人、絵画とセルフィーをする人まで。」ということです。

「イギリスは多くの美術館が無料だと聞いてはいたが、チケット売り場がないことに驚いてしまう。」と著者は書いています。日本では信じられない状況です。イギリスでは四つの美術館を回るのですが、「音楽の稽古」という作品を所蔵しているバッキンガム宮殿英国王室コレクションは、普段は入れません。バッキンガム宮殿は、エリザベス女王の公邸です。ここには、フェルメールだけでなく、ルーベンスなどのヨーロッパ絵画が壁を飾っています。で、この家の主である女王が夏の避暑のためここを離れる時だけ、一般に解放されています。

この本を読んで初めて知ったのですが、フェルメール作品ってアメリカの美術館が多く所蔵しているんですね。メトロポリタン美術館が5作品、ワシントン・ナショナル・ギャラリーが4作品、NYフリッツ・コレクションが3作品という具合です。因みにルーブルは2作品です。

著者は全点踏破を終えた時、「女と召使い」を前にしてこんな感想を述べています。

「大きな絵の前に3人がけのソファがあり、そこだけ座れるようになっている。『女と召使い』までは少し遠いが、座って眺めてみる。窓が描かれていないのに、いつものように左側からの光を感じ、青いテーブルクロスには光の粒がちりばめられている。ドラマのワンシーンを切り取ったかのような一瞬。肖像画にも物語にも見え、そういえばフェルメールの絵はどれもそんな感じがあった。 深呼吸をしてソファから立ち上がる。とうとう全てのフェルメール作品を見終えたのだ。」

フェルメールにはそれほど興味のない私ですが、7カ国14都市、17の美術館を巡り、絵画に集まる人達とその街を捉えて、記録した「全点踏破」の長い旅に同行していると、来年2月大阪で開催される「フェルメール展」に行きたくなりました。図録より、断然こちらが面白い一冊だとおもいます。しかし、美術館は混むだろうなぁ………。

 

日本画家さわらぎさわさんの、柔らかな日差しのような絵が、小さな本屋の壁に並びました。しっとりと秋の落ち着いた雰囲気が漂います。

「スカンクの旅」(写真上)「夜空を見上げて」という作品の前で、物語が広がりそうで楽しいとお話ししていたら、実は絵本を作るつもりだったということでした。どんな世界に連れて行ってもらえるのか、続きを見てみたいものです。日本画の絵具で描かれた絵は、可愛いモチーフを扱っていても奥行きがあります。もしかしたら、この絵の深さは印刷では上手くでないかもしれません。完成した絵本も見たいけど、原画の素晴らしさを味わっていただいたいと思います。ゆっくりほっこりした時間が過ぎていきます。

子どもを囲んで、きりん、シマウマ、ゾウ、の顔がある「ZOO」(写真左)、子どもと花が揺れている「pure pure pure」など、さらりと描かれた作品にも、優しくふく風を感じます。

今回は、立体作品も4体飾られました。ゾウに乗った少年・鳥を抱いた少女・馬に乗ってかける少女・広げた両手にうりぼうを乗せた少女。子どもたちを、見ているだけで幸せな気持ちになります。遊んで作られた分だけ、作家の優しくてちょっとヤンチャな本音が強くでているのではないかと思いました。

我々が、本屋の片側の壁をギャラリースペースにしたのは、本を読もうかなと店に来られた方が、ホンモノの絵(もちろん版画や立体もふくめて)に出会って楽しんでもらえたらいいな〜と思ったからでした。キラリとした日本画独特の輝きは、本当に素敵です。気軽に覗いてみて下さい。(女房)

 

 

さわらぎさわ「愛と子どもの世界」展は11月6日(火)〜18日(日)

12時〜20時 最終日は18時まで 月曜日定休 

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京都駅ISETAN内にある、えき美術館で開催中の「渡辺貞一」展(11月11日まで)に行ってきました。

渡辺は1917年、青森に生まれました。18歳で上京し、画家になるべく川端画学校で学びました。1941年には第16回国展で初入選を果たし、画家としての道を歩み始めますが、病に倒れ青森に帰ることに。その後兵役に就き出兵しますが、奇跡的に帰国できました。

私はこの画家については全く知りませんでしたが、会場に入った途端にその幻想的で、静謐で、陰翳の深い世界に魅了されました。故郷青森の風景に広がる北国独特の暗い空からは、冷たい雪の気配をしみじみ感じました。

一方、花が好きだった彼は、自宅周辺の散歩を楽しみ、気に入った花々を描いてきました。本展では、花をモチーフに描いた静物画がズラリと並んでいます。そこにも清い精神性みたいなものが、静かに伝わってきます。さらに、花と月と鳥と河原をテーマにした作品群。渡辺の世界を支配しているのは、暗く、もの悲しい雰囲気です。「死」と「生」が同じ重さで描かれています。来場者も少なく、ゆっくりと見ることができたせいもありますが、思わず足が止まってしまう程、絵の中に入っていきそうになります。特に、右の写真の作品の背後に広がる空の深い青には感じ入りました。

1964年、ヨーロッパへ旅したとき、そこで感じたヨーロッパの空気、堅牢な建物の背後に広がる寒空を描いた作品もありました。1979年には、日中友好美術家訪中団の一員として中国南部へと向かいます。帰国後、現地で購入した紙と墨を使って水墨画に没頭します。会場の出口近くに、晩年の水墨画がありました。これが良いのです。掛軸などに興味がなく、あまり見た事がないのですが、三点並んでいた水墨の掛軸に、魅かれました。(歳をとったせいかも)

満足度100%だったので、滅多に買わないポストカードを数枚買って帰りました。

 

 

 

共に京都精華短期大学で油絵を専攻して、卒業。それから40年あまり、それぞれの人生を歩みながら「絵」を描くことを手離さずに来られた、三人の女性による展覧会「見ることの不思議展2」が本日から始まりました。

大家好子さんは岐阜県で、シルクスクリーンを制作されています。「ハイヒール」や「鳥」という好きなものを題材にして、繰り返しの形の面白さを追求した版画が並びました。テキスタイルの柄のような洒落た作品です。実際に作品のいくつかをプリントした布で、洋服も制作されていたのだそうで、その布(端切れ・200円〜)をはじめ、色鮮やかなポストカード、ブックマーク、Tシャツも販売しています。(ポストカードは150円)

長野利喜子さんは、身近なものを材料にして制作されています。メロンの皮を干してインクをのせ、プレス機で刷った楽しい版画作品。グリーンピースを描いたやさしい木版画。そして、卵の殻(小さく穴をあけて中身は取り出した後)に小さく切った和紙を貼り、ジェッソで固めて好きな色で自由に絵を描いた「タマゴ」たち。かまぼこ板から出来た小さなボックス。台所の中から生まれた愛らしい作品には、ほっこりニッコリしてしまいます。タマゴは一個ずつ販売中(100円〜300円)何も描かれていない白色のタマゴに、自分で着色してみるのも楽しいかも。

 

高井八重子さんは、油絵一筋です。グレーを基調にして、オレンジや黄色を配した洒落た色使いが本当に美しい。部屋の何処に飾ってもきっと素敵です。今回の展覧会のために描かれた、同じ構図で色違いの二つの横長の絵「パレード」(写真最上と左下)の作品は、ピエロの楽隊が奏でるお祭りの太鼓や喇叭が聞こえてきそうで、初日から本屋の壁にすっかり溶け込んでいます。 ずーっと絵を描き続けるというのは、なんてステキなことなんだろうと、改めて思いました。何かに心動かされる柔らかな感性と、それを表現できる確かな技術。そして、どこかしら懐かしい香りのする落ち着いた雰囲気。

三人は、卒業後は特に顔を合わせる事もなく過ごしてきて、2年程前初めて一緒に展覧会をされたのだそうです。2回目は、皆さん本好きということで、こうして本屋で実現しました。さて、まだ暑い日があると言ってもようやく秋らしくなりました。ぜひベテランの描く絵画をお楽しみください。(女房)

「見ることの不思議2」展は、10月9日(火)〜21日(日)月曜日定休12時〜20時(最終日18時まで)

 

「この広い世界で、音を見つけたのはいつだったのだろう。この広い世界で音を見つけたのは誰だったのだろう。ぴんと張り伸ばされた弦を指で最初に弾いたのは誰?張り詰めた皮を撥で叩いたのは誰?草の茎に息を吹き込んで、空気を笑わせたのは誰?」

という中沢けいの「誰が見つけたの」という文章の前後に、有元利夫の作品が並んでいます。有元利夫は、1946年生まれ、39歳で亡くなった夭折の画家です。リコーダーを吹く女性を描いた「サラバンド」、紙風船のようなものが飛び交う中で、まるで指揮棒を振り上げたようなスタイルの女性を描いた「音楽の愉しみ」、赤い靴を履いて体操をしているような「夜の歌」など、有元の世界観を代表する作品を楽しめるのが「七つの音」(講談社/古書/絶版2400円)です。

中沢の文章が、そのまま有元の作品の説明になっているわけではありません。有元作品の世界に流れる音の存在が、中沢のフィルターを通して文章に仕上げられた本です。

この本のタイトル「七つの音」について、妻、有元容子は「絵のタイトルにもたくさんつけるほど、本人も音にすごくこだわりがあったから。と中沢の対談で語っています。確かに、「室内楽」「楽典」「音楽」「古曲」等、音楽をイメージさせるようなタイトルがありますが、それぞれの絵が、楽曲そのものを表現しているのではなく、一つ一つの音に込められた大切な何かを語っているように思えます。

私は「ささやかな時間」(写真右)という絵が印象に残りました。リコーダを構えた女性が赤いテーブルクロスの机の前に坐って、どこか遠くを見つめています。音が空中に溢れ出す前の、静かな一時。見ていると心が落ち着きます。

中沢は「「誰が見つけたの」の最後をこう結んでいます

「この広い世界で、魂に響く音を最初に発見したのはいつだったのだろう。それから今日まで、どれくらいの時が過ぎたのだろう。時が過ぎる間に、どれくらいたくさんの音が発見されたり、作られたしたのだろう。」

有元の絵の中から、あなたの魂に響く音を探してみてはいかがですか。

 

★レティシア書房「夏の一箱古本市」は、8月8日(水)〜19日(日)開催

ただ今ギャラリーで開催中「災害で消えた小さな命」(複製画)展の主宰者うささんが、代表をつとめる劇団Sol.星の花による「Voice in the Wind その声がきこえますか」が、京都府民ホールアルティ(上京区烏丸一条下る)で上演中。お問い合わせは劇団Sol.星の花京都公演実行委員会まで。7月10日(火)〜12日(木)

 


 

 


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 京都芸大出身の廣田美乃さんの個展が、5月8日(火)〜20日(日)ギャラリーモーニングで開催されます。廣田さんは、2012年にギャラリーモーニングさんと当店で、同時開催の個展をしています。(左の写真は当時のDM

今回の個展を記念して、彼女の作品を収録した小誌が出ました。(発行:ギャラリーモーニング800円)廣田さんは、1987年京都生まれで、京都市立芸術大学で油画を専攻し、作家活動を開始。2013年には京都美術ビエンナーレ産経新聞社賞を受賞しました。

性別を感じない若い(子供もしくは10代)人物の、ある時は淋しげな、ある時は哀しげな表情を捉えた作品が多く、この小誌には、2010年から16年までに制作された作品が収録されています

私は、登場する人物達の着ている服に白い色が多いことが、作品の世界観を表現しているように思えます。男女、老若、正邪、明暗、というように世界を二つに分けない、その間に漂っている様な透明な空気が感じられ、それが色のついていない白に通じている様に思えるのです。13年作「機密事項伝達」(写真右)は、白いシャツを着た三人の少年たちが、寄り合いひそひそ話をしている様子が描かれています。白いシャツが、彼らのピュアな連帯感めいたものを演出しています。その場を支配している空気は、静かで、清らかで、自覚のない悪意でしょうか。

 

じっとこちらを見つめているようで、もっと遠くの何かをさがしている視線や、虚ろに見えて、自分と世界の繋がりを考えているような表情のこどもたちの世界をお楽しみ下さい。

新作を並べる今回の個展のDMに、

「日常の中の些細なこと、気がつくと消えてしまう、ことばにするには難しい、その瞬間の、表情、感情、姿、空気」と書かれていました。(左は2018年・小誌には未収録の新作)

 

勝手ながらレティシア書房は、5月7日(月)〜10日(木)連休させていただきます。

よろしくお願いします。

★5月15日(火)から、沖縄在住のほんまわかさんの「紅型染めと小さな絵本 ほんまわか作品展」を開催いたします。

 

 

ヒエロニムス・ボスと聞いて、あっ、あの気色悪い絵を描く画家かと思われる方もあるかもしれませんね。

人物像はおろか、生年月日すら不明。後年、ブリューゲルやダリ、マグリットなど多くの画家に影響を与えた謎の多い画家ですが、肖像画も残っていないそうです。緻密な描写で、天国と地獄を所狭しと描いた代表作『快楽の園』に着目し、奇想天外なボスの世界を、ドキュメンタリーにした映画「謎の天才画家 ヒエロニムス・ボス」を観てきました。

「快楽の園」は、1490年から1510年の間のいずれかの時期に描かれたもので、スペインのプラド美術館に所蔵されています。

奇々怪々、グロテスクに満ちていながら(写真左上)魅力的な作品で、いつまでも魅入って佇んだり、その描写に思わず笑っている人や、あっけにとられている観客を映画は捉えています。作品を巡って美術史家、作家、哲学者、音楽家、アーティスト達がそれぞれに熱い思いを語っていきます。それにしてもです、映像で捉えられた「快楽の園」の細部をじっくりと見ていると不思議な感覚になってきます。

エロチックであったり、オカルト風であったり、スプラッタ風であったり、これはギャグか??と思わせたりと、様々な場面がぎっしり充満しています。ボスが、誰のために、何のためにこの作品を描いたのか、全く不明です。描かれている世界が天国なのか、或は地獄なのか、多くの論争を巻き起こしましたが、これもまた不明のまま。ただ、何でもありの世界をじっくりと見た人が皆、それぞれの物語を語りたくなってくるのです。

平凡なセンスを吹き飛ばすボスの作品に一度トライしてみて下さい。

映画「謎の天才画家 ヒエロニムス・ボス」の優れているなと思ったところは、監督が選んだ音楽が完璧に画面にマッチしていることです。ジャック・ブレルのシャンソン。エルヴィス・コステロの「オベロン・アンド・ティタニア」。「快楽の園」の世界をそのもののようなラナ・デル・レイの唄う「Gods&Monsters」。カール・リヒターのオルガンで、「憐れみたまえ、わが神よ!」等々、クラシックから現代のロックまで、その選曲のセンスに脱帽しました。