女三人とは、与謝野晶子、宮本百合子、林芙美子のことです。まだ、女性が一人で海外へ出かけることが少なかった時代に、この女性作家たちの大胆なシベリア鉄道の旅をルポルタージュしたのが、森まゆみ「女三人のシベリア鉄道」(集英社絶版/900円)です。

与謝野晶子は、先に船でパリに渡った夫の後を追いかけて、1912年(明治45年)5月、日本を立ちウラジオストック経由、シベリア鉄道を使ってパリまで、外国語が全く話せないのに、たった一人で向かいました。

「かにかくシベリアの汽車にして、一人旅をいたさんとするにて候へ暴挙に近きことごとは自らもおもひ居り申候」

と本人も認めている大胆さです。

15年後の1927年、今度は宮本百合子(当時は中條百合子)がロシア語の研究家で数才年上の湯浅芳子とシベリア鉄道を経由してロシアへ向かいます。当時のロシアは社会主義革命十年後で、新しい国造り真っ最中でした。理想の国家みたさに、百合子はロシアに飛び込みます。そして、帰国後、日本共産党に入党、そこで宮本顕治と結婚して、活動を始めます。

そして、百合子より4年後の1931年、林芙美子は、夫を内地に残して、パリにいる恋人のもとへと旅立ちます。やはりシベリア鉄道経由で。彼女の代表作「放浪記」の冒頭は「私は宿命的に放浪者」で始っています。

著者の森まゆみは、三人への深いシンパシーとリスペクトを大事にしながら、ウラジオストックへと向かいます。今は崩壊した社会主義国家の大国の横顔と、モスクワ、ミンスク、ベルリンを経由してパリまで突き進むシベリア鉄道の魅力が描かれます。車窓から、かつてこの地を旅した女性達の面影を探し求めるように。

シベリア鉄道といえば、五木寛之の「青年は荒野を目指す」が強く印象に残っています。日本を捨てる青年の虚無感にぴったりだったと思います。そして、大瀧詠一のアルバム「ロングバケイション」に収録されている名曲「さらばシベリア鉄道」ですね。

「この鉄道の向うに何があるの 雪に迷うトナカイの哀しい瞳 答えを出さない人に 連いてゆくのに疲れて 行き先さえ無い明日に飛び乗ったの」

松本隆の乙女ちっくな歌詞と、大瀧の哀愁溢れるメロディーを太田裕美が歌って、大ヒットしたこの曲のイメージが、私のシベリア鉄道です。

池澤夏樹編集の「日本文学全集」(河出書房)を毎月買っています。ちょっとした時間を利用して、ポツリポツリと読み続け、樋口一葉「たけくらべ」、夏目漱石「三四郎」、森鴎外「青年」、堀辰雄「かげろうの日記」」「ほととぎす」、中村真一郎「雲のゆき来」と読破しました。

漱石は「吾輩は猫である」ぐらいしか読んだ事ありませんし、鴎外にいたっては全く読んでいません。この巨匠の長編小説を読んで、久方ぶりに文学と格闘したような気分です。

「三四郎」は、地方から東京に出てきた大学生三四郎の日々のうつろいを描いた長編小説ですが、導入部分が見事です。東京に向かう列車で一緒になった女性と、ひょんな事から宿で合部屋になり、いい寄られるも逃げてしまう主人公の優柔不断な姿から始まります。そして、東京での生活でも、魅惑的な女性に翻弄されてゆく様が描かれていきます。小説の中に「迷羊/ストレイシープ」という言葉が繰り返し出てきます。これは三四郎の事を仄めかしているのですが、変貌する明治の東京と、押し寄せる海外文化、そして都市生活者の女性に振り回される一青年の、いわば「自分探し」ですね。その手合いの本を読むぐらいなら、「三四郎」を読む方が利する事大なのは明白です。小説の最後はこんな文書で終了します。

「三四郎は何とも答えなかった。ただ口に内で、迷羊、迷羊と繰返した。」

さて、一気に近代化、西洋化してゆく日本で、三四郎は迷羊を脱して、自らの進むべき道を見つけるのか、それはどんな道なのか見てみたいと思うところで幕切れです。

この「三四郎」の発表から数年して出版された鴎外の「青年」は、読むのに苦労しました。おそらく、鴎外は「三四郎」を読んでいたのでしょう。構成はそっくり同じなのです。主人公、小泉純一の上京物語で、東京で同郷の作家を訪ねる導入部も「三四郎」と一緒です。そして二人共、現れた女性に引き起こされる恋愛的なもの、性的なものに怯えてしまいます。特に純一の悩みは深そうです。

「なぜ真の生活を求めようとしないのか。なぜ猛烈な恋愛を求めようとしないか。己はいくじなしだと自らを恥じた。」

そこまで悩まなくたって…とは思いますが。

ただ、編者の池澤夏樹が指摘しているのですが、鴎外の「性欲」にてついての考え方です。

「鴎外は軍医森林太郎として兵士の性欲のことを考えた。はっきり言えば性欲の『処理』のことである(これは従軍慰安婦問題にまで繋がるむずかしい問題だ)。鴎外は留学先のドイツでこの問題を周囲の同僚たちのことも含めて体験的に考え、自分に振り返ってそれこそ自然主義的に、しかし露悪ではなく科学者の観察の姿勢で『キタセクスアリス』を書いた。『性的人生』という意味だが、これは発禁になった」

厳格な軍医だった鴎外らしい姿です。

さて、次に挑戦するは南方熊楠、柳田國男、折口信夫、宮本常一の四人をまとめた民俗学の登竜門みたいな分厚い一冊です。そして、その次が丸ごと吉田健一と格闘は続きます。

★臨時休業のお知らせ

勝手ながら5月11日(月)〜13日(水)まで臨時休業いたします

 

◉14日(木)〜24日(日)ギャラリーは、

緑を愛する設計事務所「もじゃハウスプロダクツ製作ノート展」です。

お楽しみに!

 

 

 

アルゼンチンを代表するボルヘスの小説「砂の本」の一節に

「砂と同じくその本にも はじめもなければ終りもない、というわけです」とあります。

この「砂の本」に深くインスパイアされて、迷宮的世界を版画にして、一連の作品に仕上げられたハセガワアキコさんの「バベルの書室」展が始まりました。

ボルヘスは、その生涯一度も長編小説を書いていません。ほんの数ページの作品も沢山あります。削ぎきった簡潔な文章で、異常な世界を描いてゆく作家です。麻薬的な恐怖みたいな世界へと誘われる、アブナイ作家の一人です。ハセガワさんがモチーフにした「砂の本」は、無限のページを持つ一冊の本が登場します。その世界を元に製作された版画も、不思議な魅力に溢れた作品です。暗黒の空間に浮遊するオブジェ。いかん、この世界にのめり込むと、戻れなくなるかも。でも、ゆっくりと漂っていたいと思わせる作品です。

他にも、11世紀のペルシャの詩人ハイヤームの四行詩を集めた「ルパイヤート」からは「一滴の水だったものは海に注ぐ。一握の塵ちりだったものは土にかえる。この世に来てまた立ち去るお前の姿は一匹の蠅はえ――風とともに来て風とともに去る。」を作品化されています。また、レイチェル・カーソンの名著「沈黙の春」の一節を作品化したものもあります。

「生きている集団、押したり押し戻されたるする力関係、波のうねりのような高まりと引きーこのような世界を私たちは相手にしている」を版画にした作品なんて見たくなってくるでしょう?

神秘的で、幻想的な世界が誘われて、作家の内部に流れる音楽を奏でる魔笛が聴こえてきそうです。小さな本屋の壁に静謐な世界が広がりました。

版画作品と、作家さんが製作されたミニ本も展示販売しています。また、影響を受けた愛読書を装幀した本も展示(非売)しています。

 

 

 

ハセガワアキコ 「バベルの書室」展 

4月28日(火)〜10日(日) 5月4日(月)は定休日

★4月28日、29日、5月2日、3日、10日に在廊予定です。

 

 

 

みすず書房が発行している「大人の本棚」シリーズは、ぜひ自分の本棚に揃えて、ゆっくりと読んでいきたいと思わせる素敵な本ばかりです。

その中の一冊、野呂邦暢の「愛についてのデッサン」(1900円)は、以前何気なく古本屋の棚から抜き取って、ページを捲ったことがありました。その中の詩。

「ぼくはふと街の片ほとりで逢ふた 雨のなかを傘もささずに立ちつくしている ポオル・マリィ・ヴェルレエヌ 仏蘭西の古い都にふる雨はひとりの詩人の目を濡らし ひとりの詩人は世界中を濡らす どうやらその雨はぼくがたどりついたばかりの若い沙漠をも少し。」

この本は、古書店の若き店主、佐古啓介が、古本の中にひっそりと息づく謎を解きほぐしてゆくのがストーリーです。そして、この詩は1900年代中期の詩人、安西均の詩集から抜粋されたものです。

野呂は、短い文章をきっちりと重ねあわせて、美しい世界を創りあげてきた作家で、再読する毎に、味わいが増してきます。そんな彼の文章と、取り上げられた古書が織りなす、それぞれの事情。本の帯に「古本青春小説」とありますが、まさにその通りの中身です。サブタイトルが「佐古啓介の旅」となっていますが、古書店主が、古書を通して成熟してゆく姿を描いていて、本を愛する人にぜひ読んでいただきたい一冊です。

全部で五編の短篇が収録されていますが、やはりタイトルになった「愛についてのデッサン」が秀逸だと思います。60を越えたおっさんが言うのもなんですが、青春の苦みを実感させる作品です。特にラスト、啓介が夜行列車に乗って旅に出るシーンは、往年のフランス映画を観ている気分です。

巷には癒しの本が大量に出回っています。しかし本当に読者の心に寄り添い、言葉がその人の中に入り込み、安らぎを与えるのは、こんな本かもしれません。

心筋梗塞により、1980年42歳で急死しました。毎年5月最終日曜日には、野呂を偲び、小説に登場する長崎県諌早市上山公園の文学碑の前で菖蒲忌が行われています。

 

 

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岡山出身の小説家で、「耳学問」等でファンの多い木山捷平の紀行文学「日本の旅あちこち」(永田書房・初版3000円)が、今回、講談社文芸文庫から「新編 日本の旅あちこち」というタイトルで文庫化されました。

木山が訪れた北海道、東北、上毛・武蔵、甲斐、伊豆・三河、大和・紀伊、三陽、そして九州の各地を描いた紀行文学の優れた一冊です。まるでNHKの旅のドキュメントを読んでいるかのような的確な表現は、作家と一緒にその街を歩きまわっている錯覚に陥ります。今どき、こんな書き方をする人はないだろうと思うのは、その土地の人と交わした問答をそのまま、載せている部分です。

例えば、北海道の美国町の役場の人との問答はこんな感じ。

「私。シャコタンというのはもともとアイヌ語なのでしょうか。

係長。アイヌ語です。シャコは夏、コタンには部落とか村とかいう意味があります」

なんて具合に話が進みます。

木山が、この紀行文を書き出したのは昭和30年代後半。彼は晩年に差し掛かっていました。大げさな文章や、華美な表現は全くありませんが、暮れ行く街の淋しさ、穏やかな温泉の暮しなどが綴られて、列島改造で国土も人もズタズタにされてしまう前の、この国の美しかった断面を見ることができます。

ハードカバー版の表紙をめくると、トレンチコートに傘を持った、ニコニコ顔の作家自身のイラストが載っています。きっと、こんな楽しそうな雰囲気で日本全国を旅してたのでしょうね。

文庫本の解説を岡崎武志さんが書いています。

「元版の単行本は今や希少で、古書通販サイト『日本の古本屋』でも二冊しかヒットしない。古書価は五千円と八千円とけっこうな値段。」

でも、当店では3000円です。(カバー一部破損しています)ただし、文庫化された方には未収録の旅の随筆も収録されているので、お買い得かもしれません。

 

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東北発のミニプレス「てくり」を発行している「まちの編集室」から、「芹沢銈介を読む」(702円)が発売されました。これ、東北福祉大学芹沢銈介美術工芸館所蔵の作品から一点ずつ取り上げ、同大学ホームページ上で紹介されていたものから25点を選び本にしたものです。

芹沢銈介の代表作ばかり並んでいますが、私は「縄のれん文のれん」が好みきです。

著者はこう解説しています。

「縄のれんは十四本の縄のかたまりと十五本の縄に分けて結ばれ、紺地の『のれん』の中に垂れさがっています。『のれん』がさらに別の『のれん』の中に収まるという二重性が実にユニークな発想です。縄のれんの質感や重さまでも感じられる傑作です。」

どっしりと重たいのれんをくぐり抜けたら、どんな世界が待ち受けているのかワクワクする作品です。版画家の池田満寿夫は、この作品をNYで観た時、思わず笑い、そして深い感動が上がってきたと書いています。

もうひとつ、猛暑の夏を快適に過ごせそうな「御瀧図のれん」もいいですね。濃い藍色地に、白色の瀧が一直線に滝壺に流れ込んでいるシンプルな構図の作品ですが、ザァーと落ちる水音が聴こえてきそうです。著者は、水原秋桜子のこんな俳句を添えています。

「瀧落ちて、群青世界とどろけり」

店では、芹沢銈介+杉浦康平による「芹沢銈介の文字絵」(里文出版・初版2500円)を在庫しています。これは、芹沢の表現力豊かな文字の作品を集めた本です。「踊る文字」とでも言いたくなるような楽しさに満ちていて、幸せな気分になります。「ようこそようこそ」と書かれた作品は、まさに、よく来てくれたねと笑顔で迎える亭主の顔が見えてきます。文字が翔び、踊り、豊かな生命力を見せてくれます。

 

 

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昭和47年、新潮社から全10巻で「新潮少年文庫」が刊行されました。20cm×14cmの文芸書サイズで、きちんと函に入っています。

そのラインナップは、こうです。

「めっちゃ医者伝」吉村昭 「花は来年も咲くけれど」阿部光子 「蛙よ、木からおりてこい」水上勉 「遠い岬の物語」伊藤桂一 「つぶやき岩の秘密」新田次郎 「古城の歌」田中澄江 「ユタとふしぎな仲間たち」三浦哲郎 「進化への航路」戸川幸夫 「だれも知らない国で」星新一 「ものぐさ太郎の恋と冒険」結城昌治の全10冊です。

残念ながら「ものぐさ太郎の恋と冒険」結城昌治のみ欠けています。函は、画家の香月 泰男が画業の傍らに、身の回りの針金、空き缶などを再利用して製作した小さな人形たちで、楽しい装幀になっています。

「第一線作家が、とっておきの話を、伸びゆく世代にむけて書き下ろした夢あふれる競作シリーズ。冒険あり、人間愛や歴史の物語あり、推理小説あり、色とりどりのたのしい新鮮な小説の王国の誕生」というもので、当時の有名作家が、子供向けに書いたものです。

第一回目の配本は、星新一「だれも知らない国で」。彼の長編ファンタジーって珍しいなぁ〜とパラパラめくっていると、どこかで読んだ記憶が。これ、「ブランコの向うで」というタイトルで文庫化されているもののオリジナルだったんですね。

吉村昭の「めっちゃ医師伝」は幕末に種痘の普及に尽力した医師・笠原良策の苦闘を描いた力作です。当時、天然痘は恐るべき伝染病で、感染した者は全身に吹き出物ができ、死に至ることさえありました。幸い、一命を取り留めた者も、顔一面があばただらけで生涯を過ごすことになる。そんな人達のことを「めっちゃ」と陰口をたたいたそうです。それがタイトルになっています。吉村らしいドキュンタリー風の文章でぐいぐい押していく物語で、大人が読んでも十分楽しめます。こちらも文庫では「雪の花」と改名されています。

この9人の作家の中で、阿部光子は知りませんでした。キリスト教伝導の活動に従事しながら小説を発表していた作家でした。因みに父は、徳富蘇峰と共に国民新聞を創設した阿部充家だそうです。

どの本も、話の面白さに吸い込まれていきそうで、放課後の図書室で日暮れまで、読んでいたあの頃を思いださせてくれます。

中にはネットで数千円の価格がついているのも見受けますが、当店ではすべて1500円です(初版・帯なし)

                                                                     

 

 

 

 

東京自由が丘で立ち上げた小さな出版社「ミシマ社」が、京都へ来て数年。当書房から、そう遠くない川端丸太町にオフィスを構えて、独自の流通方式で良書を届けています。最近出版された井川直子「シェフを『続ける』ということ」(1944円)は、イタリアで修行した15人のシェフにインタビューして、彼等なりの「継続は力なり」を読者に届けてくれます。

そのミシマ社から、全国365人の本屋さんが中高生に心から推す「この一冊」をコンセプトにして、「The Books green」(1620円)が刊行されました。京都からは、新刊書店、古書店など22店舗が参加。私も声をかけていただき、一冊推挙いたしました。「中高生に」という企画ですが、大人が読んでも面白い本ばかりです。大江健三郎「新しい人よ目覚めよ」、ポール・オースター「ムーン・パレス」、「萩原朔太郎詩集」など、お〜っ、これを推挙するかぁ〜と、思って、推挙の理由を読むと成る程と納得したりします。

その本のここを読め!みたいな推薦者の手描きポップと、「次の一冊」というさらなる一冊のお薦め本の紹介、そして紹介された方のお名前、勤務先と住所までが記載されています。気になる本屋さんを訪ねてみるのも楽しいかもしれません。

私がパラパラと読んだ中では、西原理恵子の「この世でいちばん大事な『かね』の話」を紹介されていました。ごもっとも!、高校生にも、大人にも読んでもらいたい本ですね。

因みに私が選んだのは、池澤夏樹「アトミック・ボックス」

「少女は知恵と度胸で危機を突破する」がポップです。推薦理由?、それは、この本をお買い求めください。(本日入荷予定)

ミシマ社からは同時に、甲野善紀著「今までにない職業をつくる」(1728円)という、これまた読んでみたい本が出ました。武術研究者として35年のキャリアを誇る甲野先生が「自分の感覚を育て、現在の我々が置かれている状況をよく観察し、自分自身がより納得できる生き方をするために、自分の仕事を選ぼうという若い方の参考に」と書かれたものです。

 

共同企画、と言っても私が勝手に商品を揃えただけですが、4月2日より京都駅ISETAN内「美術館『えき』KYOTO」で、「今森光彦 自然と暮らす切り紙の世界」展が始まります。滋賀県在住の写真家、今森さんは、「里山」という概念で人と自然を見つめてきました。当店でも人気のある写真家ですし、彼の本を集めました。

初の切り絵作品集「魔法のはさみ」(学研1400円)はお薦めです。え?これ本物じゃないのと勘違いする見事な色彩の昆虫、黒一色で製作されたユーモラスなカメレオン等々、会場に行く前の予習(?)にいかがでしょうか。

詩人の工藤直子とのコラボ「クヌギおやじの百万年」(朝日出版社700円)は、彼女の詩と今森さんの写真をコラージュした一冊です。笑ったのは、開花した花びらに偶然乗ったチョウチョとカエルの写真の横の言葉が「哲学する」でした。まぁ、そんな風にも見えますが……..。

「しとしとと 林に雨が ふりそそぐ しずかな しずかな 夕暮れでした 葉っぱのかげで 小さなテントウムシが しずかに 命をとじました 風から知らせをうけた クヌギおやじ そっと咳をして 夕方のニュース えー本日は雨なり雨なり ただいまかわいい命が旅立ちました 涙のような雨に抱かれ 背中の水玉模様が にじんで揺れました」

詩が伝える森の生と死をいっぱいつめ込んだ本です。きっと、里山に出かけたくなります。

工芸村オークヴィレッジ代表、稲本正編集の「森を創る、森と語る」(岩波書店/絶版950円)では、「資源としてではなく、生態のからくりとして森を見る」と題して、話をされています。

「私は、人里近くで身を寄せあうように散在する、渋色に包まれた冬の雑木林を散策するのが好きである。」という素敵な文章で(私はこの文章で気持ちよく、一気に読ませてもらいました)始まる「里山の少年」(新潮文庫/絶版450円)もあります。そのほか、雑木林を購入した彼が、そこで見た爆発する生命の姿を文章と写真で描いた「萌木の国」(世界文化社/絶版1400円)。

珍しいところでは、海外で撮影された「川をのぼって森の中へ ボルネオ島マハカム川の旅」(偕成社1200円)、「たくさんのふしぎ傑作集アマゾンアマゾン」(福音館/絶版800円)も揃えました。

美術館『えき』KYOTO展の割引券も置いてありますので、ご利用下さい。

 

 

★3月30(月)31(火)連休させていただきます。

4月1日(水)〜12日(日)「古書善行堂ワンコイン古書市」開催します。銀閣寺の善行堂さんがレティシア書房で、500円均一大放出セールです。

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3月中旬、デザイナーの金子國義が亡くなりました。彼の作品は加藤和彦の一連のCDジャケットデザインで知りました。「ベルエキセントリック」(紙ジャケ仕様2000円)のモダンで、どこか退廃的なアートワークは目に焼き付いています。

36年埼玉出身の彼は日大芸術学部在学中に、歌舞伎舞台美術の長坂元弘に師事しています。66年「O嬢の物語」翻訳中の澁澤龍彦の依頼で同作の挿絵を手がけ、翌年、初個展「花咲く乙女たち」で画壇デビューしました。その後、世紀末的で、エロスの香り溢れる画風で幅広い活動を繰り広げました。多くの書物の挿画を担当されたので、店にもあるかなと探してみると、あるもんです。

翻訳と挿画を担当した「不思議の国のアリス」(メディアファクトリー・初版/絶版3000円)。ちょっと生意気そうなアリスの表情と、本人自身が語っているように「甘くて美味しい出来上がり」で上等のケーキを平らげた感じになる絵本です。矢川澄子翻訳による同書(新潮文庫300円)でもカラー挿画を提供していますが、翻訳が変わると雰囲気も変わります。

 

 

 

画壇に彼を紹介した澁澤の本では、「城=カステロフィリア」(白水社1200円)の表紙を飾る孔雀の鮮やかな作品が素敵です。これは、昭和50年代後半に、「日本風景論」の一冊として出版されたものに、金子が絵を付けて新たに刊行されたものです。

彼は77年スタートした海外の性愛文学、官能小説を紹介する富士見ロマン文庫の表題画を担当しています。その一冊、ブライアン・デニスンの「乱れたベッド」(絶版300円)を飾る女性達はその典型です。もう一冊、「エロティシズム12幻想」(エニックス700円)という日本の作家によるオムニバス集の表紙もいいですね。暗闇に浮かぶ男と女。女は鏡を手に持ち、男はケースを膝に置いて前を見据えているだけの構図。二人はどんな会話を交わしているのでしょうか。

蛇足ながら、この本に京都出身の菅浩江が「和服継承」という短篇を出しています。京都、和服だけでエロチックな妄想はち切れる傑作??です。

他にもあるかもしれません。お時間があれば探しに来て下さい。

★勝手ながら3月30(月)31(火)連休させていただきます。