お客様のご注文に応じて、1本づつ作られるオーダーメイド傘が人気のイイダ傘店。その物作りの真摯な姿勢を紹介する「イイダ傘店のデザイン」(パイインターナショナル・新刊書1814円)が入荷しました。

2004年の新作は、手元が動物の作りになった日傘です。「リスは大好物のどんぐり柄で二重張り、ネコには魚の骨でも刺繍で豪華に、ペンギンの流氷は藍染めのロウケツ染め、パグは無骨にモノトーンのツートーン、ブタに真珠は光沢感のある水玉模様、ラッコはぜいたくにいろんな貝殻をたくさん」とそれぞれの動物に合わせた個性的なテキスタイルの傘ばかりです。こんな傘なら雨の日も結構楽しいかも。

このパイインターナショナルから、暮らしに楽しさをプラスしてくれそうな書籍が同時入荷です。

紙、布、絵具等でアンティークっぽさを出すDIYテクニックを解説したコラージュ制作のための「コラージュのおくりもの」(井上陽子1728円)、刺繍で雑貨をつくるための「ひみつのステッチ」(神尾茉莉1728円)、一冊丸ごと、ふろしきをそのデザインから紹介する「ふろしき」(3024円)、映画の衣裳デザインもするファッションクリエイター伊藤佐智子さんが、日本各地の伝承されている染と織を網羅した「日本の染と織」(3024円)

そして、食欲の減退しそうな猛暑の日々の食欲を増すようなレシピ「はじめてのスパイスカレー」、「はじめてのスパイスおかず」(どちらも永野仁舗著1728円)

そうそう、橋とか工場等の建築大好き女子に人気の写真集「美しい土木・建設中」(西山芳一2052円)もこの出版社です。そして、犬派、ネコ派からの支持が高い「パンといっぴき」、「パンといっぴき2」(桑原奈津子・1296円)も、好調です。

新刊書ですが、小さくても、本作りの楽しさと愛情に溢れた出版社を、今後もどしどし紹介していきます。

吸血鬼なら、この本というのが入荷しました。種村季弘編集による「ドラキュラ・ドラキュラ」(薔薇十字社・初版2800円)です。編者いわく

「数年前薔薇十字社から『吸血鬼幻想』と題するエッセイを公けにして以来、私は折りがあれば、血の糸につながれた真珠のように純白な吸血鬼の歯牙にも譬えられるような吸血鬼小説のミニチュアール・アンソロジーを編んでみようと考えていた。」

その本がこれです。15人の作家の短篇が収録されています。なんせ、編者が異端文学、魔術や錬金術、果ては神秘思想の研究者だけあって、選ばれている作品は彼の審美眼に叶ったものばかりがセレクトされています。その中に、空想科学小説の第一人者、ジュールヌ・ベルヌの作品が入っていました。ベルヌは、ほぼ全部、小学校の時に全集で読み、「海底二万哩」は。数回も愛読した作家でしたが、吸血鬼が登場する話は記憶にありません。読んでみると、長編「カルパチアの城」の一部を採録したものでした。しかも、ここには吸血鬼が血を吸うシーンなんてありません。何故ここに?

「メスメリスム(催眠術)は古来吸血鬼伝説の不可欠の要素である。また吸血鬼信仰の本場カルパチア地方に取材した一事からしても、作者が吸血鬼小説のユニークな変種を作ろうとしている意図は疑いを容れない」

と収録した理由を明らかにしています。催眠術が古来吸血鬼伝説には不可欠というのが、正しいのかどうかは浅学の私に解りませんが、種村季弘らしいセレクトですね。

性的エクスタシーと、背徳と、反キリスト的立場が混じりあって、深い闇の中で苦悩する彼には、独特の美が立ち上ってきて、それは魅力的な存在です。まぁ中には、ロマン・ポランスキーの映画「吸血鬼」の主人公みたいに、処女ではない女の血を吸ったために、のたうち回るという諧謔に満ちた人物もいますが、この本をきっかけに、ヨーロッパ幻想文学の一翼を担う吸血鬼文学の魅力に踏み込むのも面白いかも。

店内には、本家本元のブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」(創元推理文庫600円)もあります。全500ページにも及ぶ大長編。後半、ペンシルバニアから、血を求めてロンドンに出てくるのですが、霧深い夜のロンドンって、まさに絶好の舞台です。ドイツの奇才ヴェルナー・ヘルツウォーク監督の「ノスフェラトゥ」は、最もこの原作に近い美意識で作られた傑作だと思いますが、主演のイザベラ・アジャーニがもう綺麗で、ドラキュラじゃなくても噛みつきたくなりますよ、きっと。

 

 

 

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上田秋成が江戸時代後期に書いた「雨月物語」。こんな難しい漢字の多い本に、手を出したくはありませんでした。しかしその昔、現代語訳付きの文庫本を読もうなんぞと思ったのは、ご承知のように、溝口健二の映画「雨月物語」の影響です。

映画「雨月物語」は5回観ても、やはりその都度発見のある映画です。現在500円の低価格で発売されているみたいですから、5回楽しむと1回たった100円です!?

一度目は、完璧な出来具合に驚き、二度目は、能面を冠ったような京マチ子の妖艶さに、ま、こんな女性なら亡霊でも抱かれるわなぁ〜と納得し、三度目には、美術の美しさと白黒撮影技術に惚れ惚れし、四度目は、こんなスゴい映画の原作に興味を持ち、五度目は、劇中で奏でられる音楽の多様性に驚嘆したという具合です。

音楽は早坂文雄。宮城県出身の音楽家です。「七人の侍」など黒澤明監督の一連の音楽で有名ですが、溝口作品でも活躍しました。「雨月物語」の音楽の秀逸さは、巧みな楽器の使い方です。観て、聴いて頂くのが一番ですが、京マチ子扮する亡霊が、屋敷で初めて登場するシーンでは、能の舞台で、幕開きに、まるで彼方の亡霊を呼ぶように鳴り響く横笛のメロディーが使われ、彼女も能役者の如く、すり足で登場します。

そうして、私は原作に手を出したのですが、脱落しました。原作には9編の怪異小説が収録されていますが、映画版は原作の「浅茅が宿」と「蛇性の婬」の2編を川口松太郎と依田義賢が脚色したものでした。これを全部読むのは、難しかった記憶があります。確か、角川文庫で読んだと思うのですが、放り投げた瞬間に、もう捨ててしまいました。今この歳になって、もう一度挑戦してもいいかなぁ〜と思っています。

 

 

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滋賀県知事の嘉田由紀子さんが、次の知事選に立候補せずに引退されるという報道を目にしました。南草津の書店で勤務していた頃に、ご来店され「滋賀県の本売ってください」と和やかにお話をされていた頃を思いだします。

その嘉田さんが書かれた本が店に一冊あります。「水辺ぐらしの環境学」(昭和堂01年発行・初版900円)です。本の初めにこう書かれています。

「文化論、生活論に基づく環境と人間のかかわりを、『水辺』という場に焦点をあてて、読み解いたものである。」

琵琶湖の汚染を憂慮されていた嘉田さんが、世界の湖とその地で暮らす人々を見つめた本で、アフリカのマラウィ湖、中国の太湖等、現地でフィールドワークをして理解したことと、お膝元の琵琶湖を比較しながら、人と湖の複雑な関係を読み解いていきます。

生物進化が独自に起きるぐらい寿命の長い湖を「古代湖」と呼びますが、琵琶湖もその一つです。そして、この地に人が住みついたのが新石器時代。彼らの食料源は、湖の魚介類。しかし、淡水魚は腐敗しやすく、保存食が発達しました。

「飴だきや、フナズシに代表されるナレズシがその典型だが、飴だきは江戸時代以降であるのにくらべ、ナレズシは延喜式にも記載されており、少なくとも平安時代には存在していたのである。」

成る程、あの独特の味のフナズシは歴史ある食材だったんですね。丸ごと一冊「琵琶湖学」の勉強に相応しい書物です。

琵琶湖に関しては、滋賀在住写真家、今森光彦の「おじいちゃんは水のにおいがした」(偕成社06年・初版950円)という児童向けの写真集があります。この写真集に収録されている、琵琶湖で60年も漁をしている老人の日々を切り取った作品は、老人が湖と一緒に生きてきた長い時間と、誇りを見事に表現しています。

「水辺ぐらしの環境学」は、嘉田さんが知人に差し上げられたのでしょうか、サインが入っていました。脱ダム、卒原発でご苦労された思いますが、知事、お疲れ様でした。

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先日、京都市内にお住まいのS氏が、自作の豆本を持って来店されました。装丁のそれぞれ異なった作品、全部で11種類でした。

森鴎外が翻訳したリルケ作「老人」は7.5cm×7.5cmの正方形の本に製本されています。最後のページを見ると、「一番暗い隅に腰を掛けて、クリストフが拾ってきた花をそれに差すのを見ている」という文章で終わります。そして、その横のページには花びらが貼りつけてあります。(税込み1404円)。左側の写真で豆本と、森鴎外の文庫本の大きさを比較してください。

1800年代に活躍した歌人、橘曙覧(たちばな の あけみ)の歌を編集した「独楽吟」は、判型が11cm×7cm。外箱を開けると、「たのしみは」で始まる歌がバラバラと出てきます。知りませんでしたが、アメリカ大統領ビル・クリントンは、天皇の訪米時に、この中に入っている歌「たのしみは朝おきいでて昨日まで無かりし花の咲ける見る時」を引用してスピーチしたんですってね。(税込み2700円)

正岡子規の随筆もあります。大きさは9cm×7cm。外カバーを外すと、美しい和紙の本が出てきます。この本には、子規が西鶴の文体を真似て書いた廓の体験談「旅」その他が収録されています。(税込み1944円)また、芥川龍之介の遺書なんて本もあります。判型は8cm×6cm。昭和2年服毒自殺でこの世を去った芥川最後の文章です。こちらも和綴じの装丁で、表紙の渋い色合いに魅かれます、(税込み1404円)

国内の作家ものばかりの中で、一点だけ「マーク・トウェインの箴言」というアメリカの作家ものがありましたが、在庫が1冊のみで売り切れてしまいました。

すべてに、製作者の本への、文学への愛おしさが溢れた作品ばかりです。一度手に取ってご覧下さい。

 

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血が騒ぐ、これ程血が騒ぐ本も珍しいですよ。

春日太一「あかんやつらー東映京都撮影所血風録」(文藝春秋1300円)。「血風録」とサブタイトルからして、カッーと来そうでしょ。時代劇、その後のヤクザ映画には関心なくても、太秦の東映撮影所は皆さんご存知のはず。その撮影所で、戦後から今日まで繰り広げられた怒濤の映画製作の日々。もう無茶苦茶なスケジュールに翻弄される現場スタッフ。しかし、それをものともせずに乗り越える職人気質の男たち。ノンフィクションですが、小説より面白い一冊です。

例えば、東映時代劇全盛の頃、タイトなスケジュールのために徹夜続きの現場。

「看護婦がやって来る。『疲れた人』その掛け声を合図に看護婦の前に一列に並ぶと、看護婦は次々とヒロポンを打っていく。これで頭をスッキリさせ、朝まで仕事をやり遂げるのだった。」

ヒロポンは頭を覚醒させる薬で、戦時中から使用されていた薬ですが、過剰摂取は中毒になる、いわば危ない薬。それを打ちながらの映画製作なんて、全世界でも東映だけでしょう。

さらに驚くべきことも書かれています。映画の善し悪しを決定するのは脚本ですが、その脚本をめくると、急にこんなことが書かれてあったとか。

「ここはラブシーンよろしく」、「ここで殺陣よろしく」

あるいは、細かい心理描写の場所では、細かく書き込むのがフツーですが何故か東映はほとんど擬音です。

「ギクッーとする」「キッと振り返る」「ヌッと表れる」「サッと退く」「ヒタヒタと迫る」

これ決定稿の台本ですよ。貴方が映画監督なら???よくも、まぁこれで映画作っていたものです。しかし、スター中心の量産時代劇は、あまりに同じ内容のために、やがて観客離れを起こし、当然終わりを迎えます。そして、今度は任侠映画、実録映画へと突き進んでいきます。しかし、相変わらずの命がけの現場。ひたすら出来のいいものを作ろうなんてものではなく、ギリギリの予算とスケジュールに間に合わせるためだったはずが、逆に新しい美学を作ってしまったという希有な世界です。

ここまで現場を駆り立てたものは何だったんでしょうか?

「柳の下にはドジョウは二匹でも三匹でもおるわい」という無茶苦茶な論理で猛進したプロデューサー、照明技師、脚本家、殺陣師達。不幸だったのか、それとも幸せだったのか。こんな世界に入れと言われたら、私なんぞ一日で根を上げてしまいそうですが、何だか羨ましさを感じてしまいます。

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瀬戸内海の島に編集室を構えるサウダージブックスの出版物を、本日より取り扱い始めました。この出版社はこんな考えに沿って本を出しています

 瀬戸内海の島に編集室をかまえ、手仕事の温もりを大切にしつつ、文芸書、人文書、アートや人びとの生活文化にかかわる本を日々作っています。また、瀬戸内という地域で大切につたえられてきた「暮らしの物語」や「生活の知恵」を書物としてデザインし、世界にむけてそのすばらしさを発信したいという想いをもっています。

本を愛するみなさまの心のなかで、かけがえのない一冊との出会いから、豊かな旅の物語がはじまることを、わたしたちは願っています。」

良質の本を作り出そうとする姿勢100%で出版された素敵な本の数々。

「瀬戸内海のスケッチ 黒島伝治作品集」(2160円)は、若くして逝ったプロレタリア文学作家の作品を集めたものです。作品の選択、解説は「古書善行堂」の山本さん。この作家の本は読んだことがなかったので、まず解説から読みました。プロレタリア文学というジャンルに捕われることなく、素晴らしい小説家として紹介したいので、選ぶのに苦労された模様です。

「『一人』のうらに尾崎放哉の島へ」(西川勝著 2160円)は、小豆島でその生涯を閉じた俳人、尾崎放哉を、元看護師にして臨床哲学者の著者が追いかけたエッセイです。興味深いエピソードを見つけました。俳優渥美清が、ドラマで放哉役を是非演じてみたいと熱望していたというのです。放哉と同じく、結核で苦しんでいた渥美には、その苦しみがよく分かり、自身、放哉と同じ様な句を作っていました。残念ながら、ドラマは橋爪功で製作されたそうです。

文芸書だけでなく、「感謝からはじまる漢方の教え」(1512円)、「焚火かこんで、ごはんかこんで」(1620円)も入ってきました。この二冊は、暮らしを見つめて、生きることの根本を、それぞれの立場から教えてくれる本です。焚火を囲んで、ごはんを食べるなんて、そんな幸せって、そうそうありませんよね。

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梨木香歩の最新作「海うそ」(2014年発行岩波書店1100円)が入いってきました。もちろん、店頭に出す前に読ませてもらいました。

傑作です。私の中で、梨木さんのベスト1は「からくりからくさ」(新潮文庫350円)でしたが、これはそれ以上でした。

舞台は南九州の小さな島。戦前に、この島の調査をした地理学者秋野がむせ返る島の自然と、海の香り、そして照りつける太陽の元で、自分の魂の奥深い所へ下降してゆく旅の話です。

修験僧の霊山があった島を調査する彼の前に、様々な表情を見せる南海の島。その奥深い森の中で、彼が体験する恐れと哀しみ。彼の心の中に解決できない何かが積もっていきますが、島での生活は終わりを迎え、去ります。

そして、戦後50年を経て、再度この島にやって来ることになった秋野が見つめる、魂のさすらいと決着。

「それは老年を生きることの恩寵のようなものだと思う。若い頃は感激や昂奮が自分を貫き駆け抜けていくようであった。今は静かな感慨となって自分の内部に折り畳まれていく。そしてそれが観察できる。若い頃も意識こそしなかったものの、激する気持ちは自分のなかに痕跡くらい残したのだろうが、今は少なくともそのことを自覚して静かに見守ることができる。」

巧みな文章と言葉で、読者をこの島に誘い込み、幻惑に満ちた旅を楽しませてくれる一級品の小説です。

「長い長い、うそ越えをしている。 越えた涯は、まだ、名づけのない場所である。」

旅はまだ続きます。

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最近、何やら安倍首相の顔が醜くなってきている気がします。ま、だいたい総理大臣になったら、途端にその権力の座の重圧と、素人には理解不能なプレッシャーで、顔の表情が「壊れていく」のかもしれません。民主党の野田さんも、ひどかったですね。小泉さんみたいに、全くそのままという無邪気さも如何なものか?と思いますが…….。

お疲れの大臣に、ぜひお読み頂きたいのが、田中優子+辻信一の「降りる思想〜江戸・ブータンに学ぶ」(大月書店1300円)です。田中さんは、江戸時代の専門家にして、「カムイ伝講義」(小学館950円)という白土三平のコミックを通して、江戸時代を論じた傑作があります。辻信一さんは、文化人類学者という肩書きの一方で、「ナマケ者倶楽部」世話人としてスローライフに関わる提言をされています。当店にもいくつか彼の本があります。

その二人がタッグを組んだ本がこれです。こう書かれています。

「本書は『下降』をテーマとしている。思えば、これまでこのテーマに感心を寄せる人はほとんどいなかった。人々がはるかに強い関心を示すのは、いつも『上昇』のほうだった。でも、考えてみれば、これは不思議なことだ。」

いかにして、降りてゆくかを、江戸時代、そしてブーダンを参考にして二人が討論していきます。3.11以降の世界を振り返ることから始まり、右肩上がりの世界の幻想から脱却して、降りる場所の創造に至るまでの果てしない、しかし、これしかもう私たちは未来に生きることができないことを論じていきます。

「ぼくたちは『さがる』のでもなく、『おちる』のでもなく、『おりる』のである。豊かさという幻想から、グローバル経済システムから、人間の本性へと、自然へと、いのちへと、愉しげに降りてゆきたい。」

なんて言葉、疲労蓄積気味の安倍さんの耳元に誰か囁いてみては如何でしょか? ま、効果ないか。

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ルイス・キャロルの「アリス」関係の本が色々と入荷してきました。一度は手にする「アリス」ですが、ポピュラーなのは新潮文庫から出ている、矢川澄子訳、金子国義絵の「不思議の国」、「鏡の国」(こちらは在庫あります220円)でしょう。もう一点、柳瀬尚紀訳の「不思議の国のアリス」(ちくま文庫500円)もあります。こちらは涙無くしては読めません。特にペットを飼った経験のある人なら。

初めて、この本を手に取った時、どういうわけか「訳者あとがき」から読んでしまいました。訳者の元にはトリケと名付けられた捨て猫がいました。しかし、三才の時、病にかかり天国へと旅立ちます。こう書かれています

「臨終の白鳥が歌う『白鳥の歌』というのは聞いたことがないが、トリケは一晩中、それを歌った。つきっきりで、胸をかきむしられる歌を受け止めながら、トリケはもうだめなのだと覚悟した瞬間、訳者は声に出していった。

「よーし、トリケ、『不思議国』に残してやるからな」

そして「金色にきらめく昼下がりを」で始まる、巻頭の詩にトリケは甦ります。(詳しくは、あとがきをお読みください)そこから一気に翻訳を遂行します。続いて「鏡の国のアリス」の翻訳も仕上げます。曰く、「どうやらトリケの残していったエネルギーがそうさせるらしい」と。勢いと流れにのった言葉使いで、この訳は私には読みやすかった。

この翻訳者の名前は、ボルヘスの「幻獣辞典」で知りましたが、あれも、よくぞ日本語に直したものだと感心しました。彼の翻訳では「もつれっ話」(れんが書房900円)も入いりました。タイトル通り「もつれにもつれたお話」です。

さらに人気の一冊、金子国義絵・翻訳「不思議の国のアリス」(メディアファクトリー・初版3000円)もあります。これは、アリス関係本では、最も美しい本の一冊でしょうね。一時、高価で取引されてました。

同時に、洋書の「Alice」(1500円)の大型本も入荷してきました。白黒のイラストが、アリスの世界にぴったりの一冊です。そしてもうひとつ「少女への手紙」(新書館1300円)。書簡集なのですが、全編短篇童話です。

ほぼ同時に、数冊入ってくるのも、何かの縁なんでしょうかね?

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