木版画家、川瀬巴水。

大正五年、木版処女作「塩原おかね路」を発表の後、日本各地を取材して”風景版画シリーズ”を刊行し、知名度を上げます。500点にも及ぶ風景版画を残し、昭和31年、74歳で亡くなりました。叙情性と日本的風情から「昭和の広重」とも称されました。

巴水の版画集「夕暮れ巴水」(講談社/絶版3800円)が入荷しました。林望が、各作品に、文章或は詩を付けて、巴水的世界を言葉で表現しています。かつて、どこかで見た風景、とでも言えばいいのでしょうか。限り無い郷愁を思い起こさせる作品がズラリと並んでいます。真青な空、美しい浜辺、そして夕暮れ…….。その一方で、夜の闇に建つ二棟の蔵の間から不思議な白い光が出ている作品「夜の新川」があり、林はこう評価しています。

「この光には、ただ無為の『詩』、一瞬に存在して次の刹那には消え去る『時』のなつかしさが描き取られている」と

寂寥感、という言葉だけでは当てはまらない、深い豊かさと哀しみを漂わせています。雨にけむる橋の上に佇む人力車を描いた「新大橋」、雨上がりの港で沖の船を見つめる犬を描いた「明石町の雨後」などの作品にそのテイストが滲んでいます。寂しげな風景なのですが、どこかに幸福感もある不思議な世界です。

細い雨が降る露天風呂を描いた「修繕時の雨」に林はこんな詩を付けています。

「ぼくが温泉を愛するのは 風景があたたかいからです そこでは なにもかも湯気のなかに霞んでいて 空気がはるばるとしているからです (中略) ただじっと湯に浸かって むかしのことを思っていよう それで 涙が出たら 温泉のお湯で洗い流して 空でも見ていようさ ほうほうと湯気 ほう ほう ほ ほ 」

なんて幸福感に満ちた詩でしょう!

作品集には絶筆となった「平泉金色堂」も収められています。雪が降り積もる金色堂に向かう、一人の僧の後姿を捉えています。人生の最後を予感される作品ですが、豊かな人生を生ききった作家の最終に相応しい作品です。

「かぎりあるみちは いつかきっとおわる そう、こころにねんじて きしきし ゆきふみしめてあるく」

林が巴水の画業を讃えた最後の詩です。

 

Tagged with:
 

内外で高い評価を受けている映画監督、是枝裕和。「そして父になる」「海街ダイアリー」「海よりもまだ深く」などご覧になった方も多いと思います。

是枝監督が、これまでの表現活動を語った「映画を撮りながら考えたこと」(ミシマ社2592円)は、面白い一冊でした。映画監督の本ですが、細かい技術論や、抽象的な映画表現論ではありません。彼はTVドキュメンタリーの出身なので、自分が育ったTV界に言及している部分が多く、日頃何気なく見ているTVのバックステージのことも描かれています。

今、恐ろしく保守化しているこの業界ですが、60〜70年代にかけては、かなりアナーキーな状況でした。是枝は、当時の少年の人気ナンバーワン番組だった「ウルトラマン」シリーズで脚本を書いていた佐々木守を取り上げていました。佐々木は、積極的に戦わないウルトラマンを書いています。「戦いの根拠になる正義がない」というスタンスでこのヒーローを描いていたのが、少年だった是枝には新鮮だったと回想しています。その後、TVは、新しい表現を求めない場所へとシフトしていきます。

吉田秋生のコミック「海街diary1/蝉時雨のやむ頃」を映画化した「海街diary」は素敵な作品でした。鎌倉に住む四人の女性の日々の細やかな感情にゆらめきを描いているのですが、彼が参考にしていたのは、何度も映画化された谷崎潤一郎の「細雪」だったことも、この本で知りました。

一人の表現者が、TV映像にしろ、劇場映画にしろ、業界の悪しき慣習や、体制に抗いながら己の世界を創り上げてゆく物語として、一気に読める本でした。

さて、是枝を育んだTV界に、創成期から今日に至るまで包括的に楽しく読ませてくれるのが、荒俣宏の「TV博物誌」(小学館900円)です。

1961年から69年まで続いた刑事ドラマ「七人の刑事」は、今日の刑事ものの原点とも言える作品ですが、この番組を演出した今野勉とのインタビューも掲載されていて、「月光仮面」「鉄腕アトム」等々を見ながら大きくなった僕たちテレビっ子には、興味のある話ばかりです。一方、大阪局で、東京発の番組とは全く世界の違う高視聴率を稼いだ「番頭はんと丁稚どん」「スチャラカ社員」「てなもんや三度笠」を製作した澤田隆治を通して、何故、関西発の番組はこうも異質なのかを論じています。「アタリ前田のクラッカー」なんて、ある年齢以上でないと全く通じないでしょうが、毎週楽しみでした。

 

 

小学館が、松本清張原作の映画を「解説本+DVD」で10本出していました。

この10本の中で、大傑作は「張込み」(1958年松竹/モノクロ 中古2100円)です。個人的には、大好きな日本映画50本に入れたい程、惚れ込んでいます。清張の原作は僅か30ページ程の短篇です。殺人犯逮捕のために、犯人の昔の恋人の自宅前で張込みを続ける二人の刑事の緊迫の日々を描いたサスペンスですが、映画は116分の長編に仕立て上げました。

何がスゴイと言っても、アバンギャルドな映像表現でしょう。

先ずタイトルが中々出てこない。横浜駅を出る桜島行夜行に飛び乗る二人の男。季節は夏、冷房のない車内はうだる様な暑さ。あの時代、東京から九州に行くのに一昼夜かかりました。その道中を、なんの説明もないまま描いていきます。二人は佐賀で下車して、とある家の前の宿に入る。そして、若い男の独白で「さぁ、張込みだ」という台詞と、睨みつける様な視線のアップの映像に「張込み」のタイトルがかぶさる。ここで、初めて二人の男は刑事だったことがわかります。初めて観た時は、その格好良さにしびれました。絶対に小説ではできない。

そんなシーンを取り上げていったら切りがありませんが、後半、犯人が乗っているバスを空撮で捉えるシーン。刑事のアップから一気に映像は空高く舞い上がり、俯瞰で田舎道をゆくバスを捉えます。こういう視点の切り替えに出会えることこそ、映画の醍醐味の一つですね。音楽を担当しているのは黛 敏郎で、サスペンスを盛り上げる見事な音楽を作り出しています。

解説本も充実しています。全10作の解説は川本三郎。同じく連載で松本清張記念館館長、藤井康栄が松本の実像に迫っていきます。川本は「松本清張の犯罪小説の特質は、犯罪を犯す人間の側にある悲しさ、無念、疎外感を描いたことにあるが、映画『張込み』も東京に出て、犯罪に走らざるをえなくなった出郷者と、彼を愛した女性の悲しみを浮き上がらせたところに、感動がある」と書いていますが、その通りです。

映画は「砂の器」の名コンビ野村芳太郎(監督)と橋本忍(脚本)。出演は大木実、宮口精二、田村高広そして高峰秀子と、これまた見事なキャストで、当時の役者の層の熱さを感じます。TVでは何度もドラマ化されていますが、高峰の役を大竹しのぶが演じたフジテレビ版、ビートたけしが刑事を演じたテレビ朝日版が印象に残っています。

 

Tagged with:
 

お恥ずかしい話を一つ。レティシア書房開店前、少しは古書業界を知っておこうと、古書に関する本を乱読しました。その中で、野呂邦暢とか上林暁とか木山 捷平とか小山清とか、今まで読んだ事のない作家が、しばしば登場してきました。これは、拙い!と思い読み始めました。

古くさいなぁ〜、退屈〜と感じた作品もありましたが、野呂の「鳥たちの河口」を読んだ時は、唸りました。37年長崎生まれで、諫早で育った彼が73年に「文学界」に発表した小説です。会社の労働争議で辞職を受け入れざるを得なかった男が、百日間河口に通い、鳥の観察をするだけの話です。

当時、野呂が住んでいた家の裏を流れる本明川を、河口まで歩くのが本人の日課でした。毎日の散歩で見た風景を見事に小説に組み込み、自然描写の素晴らしさで読者を誘い込みます。主人公の置かれた状況が状況なんで、晴々とした風景が登場することはありません。なんせ、「空は暗い」で始まりますから。

主人公は河口で死んだカモメも見つけます。

「のどから腹にかけてひきむしったように皮が裂け、肉がえぐられている。はみだした暗紫色の内臓に鼻を近づけた。」

こんな導入部で、小説はシンボリックに、生きる恐れ、よるべなき明日、忍び寄る不安を描いていきます。河口の風景と、主人公が助けた渡り鳥にだけ描写を絞った分だけ、ぐっと凝縮された世界が押し寄せてきます。文学の強靭な力とは、こういう作品の事でしょうね。

ラスト、この渡り鳥を大空に放つところで終わるのですが、決して開放的ではなく、重く、苦いものが残ります。白黒映画黄金時代のフランス映画みたいです。

この小説を含めた「野呂邦暢集大成」(文遊社)の1巻「棕櫚の葉を風にそよがせよ」、2巻「日が沈むのを」が入りました(どちらも2400円)。2013年に刊行が始まった本シリーズは、装幀、字体、デザイン等隅々まで入念に作られていてお薦めです。持った感触も良く、現在、7巻まで刊行されています。いずれは全巻揃えておきたいものです。

木版で漫画を描くか……..?と、ページを捲って先ず思ってしまいます。

「魂を削るようにして木版に向かった」先に出来上がった一コマ、一コマは、もうアートです。とにかく今年最も驚かされ、引込まれた一冊が、藤宮史「黒猫堂商店の一夜」(青林虹工藝舎1100円)。

主人公は猫です。彼が営む「黒猫堂商店」が舞台ですが、ストーリーはあるようなないような、長編の詩を読んでいるような感覚です。主人公の猫が、首尾一貫静謐で、哲学者のような、詩人のような表情が、モノクロ画面に染み込んでいきます。

第三話「星のはじまりの話」は、宮沢賢治の世界を彷彿とさせます。

「星をけずって 薄荷水を溶かし 星のインクをつくってみる 夜空の星を 眺める と星は<わたし>が思うように輝き そして 消え入りもする ー羽ペンの先に 星のインクをつけてみる」

というモノローグと共に、ペンを走らせる彼の穏やかな表情を見つめているだけで、落ち着いた気持ちになります。

第四話「夜をゆく」は、萩原朔太郎的な世界。「月のない深夜 誰とも 往きあわない 町へ出て 水晶の眼鏡で 町を眺めてみると あちらこちらにキラキラした言葉が浮かんでいる」

楽しさに微笑む彼が、全く異次元の空間へとトリップしてしまう幻想的世界が展開します。マンホールを下りたら駅があり、やってきた汽車は、喫茶店の椅子の上に彼を運びます。古風な街角を眺めながら、ゆっくりとコーヒーを口にする様が心に残ります。

途方もない時間と労力による木版画で構成された漫画は、扉の言葉にあるように「穏やかな懐かしさと柔らかい孤独を心地よい手触りで甦らせてくれる」ようです。

第七話「漂う日々」では、最初のページには「一コマ2秒間ずつ見てください」と書かれています。ゆっくり、ゆっくりと読んでくださいという作者の思いです。永遠に続く孤独を、穏やかに、穏やかに、遥か彼方に流してしまうような豊かな世界が広がります。描いた線はおしゃべりですが、彫った線は、実に寡黙です。

 

 

 

 

 

 

明治37年生まれの小説家随筆家の永井龍男は、東京を描いた良い随筆がありますが、まぁ、そんなに読みたい〜と思いませんでした。”オールドファッション”なイメージしかありませんでしたが、「青梅雨」(講談社/昭和41年発行500円)という短篇を読んで、そのイメージがコロリと変わりました。出だしはこんな感じです。

「十九日午後二時ごろ、神奈川県F市八三八無職太田千三さん(77)方で、太田と妻のひでさん(67)養女の春枝さん(51)ひでさんの実姉林ゆきさん(72)の四人が、自宅六畳間のふとんの中で死んでいるのを、親類の同所一八四九雑貨商梅本貞吉さん(47)がみつけ、F署に届けた」

え、推理小説?? 違うんですね。場面は一日前に戻ります。「九時少し前に東京駅を出た湘南電車が、F駅へ着いた。」。この電車には主の太田千三が乗っています。そして、我が家へと向かいます。出迎えてくれる家族、うん、まるで小津映画に出てくる幸せな中流家族の一コマみたいですが、ここから全員自殺へと向かっていくのです。しかも文章は淡々と進み、自殺を仄めかす雰囲気もありません。お風呂に入り、新しい浴衣に袖を通し、ちょっとお酒を呑みながら、歓談する場面が続きます。

しかし、「二人とも、けさから、死ぬなんてこと、一口も口に出さないんです、あたし、あたし、えらいと思って」

という台詞を最後に、場面は現場検証の場面になり、小説はそこで終ります。愛しい様な最後の晩餐がくっきりと現れ、静寂の中に、生と死を捉えた短篇でした。

この短篇集には、忍び寄る老いの孤独を描いた「冬の日」が収録されていて、こちらもお薦めです。夫に先立たれ、娘までも天国へ旅立った妻は、その娘の子供を世話していたのですが、娘の亭主が再婚することになり、子供を新しい母に返し、長年住んでいた家を手放します。立ち退きの迫った年末の数日を描いているのですが、深い孤独とやがて訪れる死を前にした、彼女の心情が簡潔な描写の中に浮き上がってきます。

「床の間に供えられた小さな鏡餅には、もう罅が入っているようであった。」

という文章で小説は幕を閉じます。年を重ねた我々世代には、ちょっと辛いけど、生きるってこういことなんよね、と納得します。

この静かな描写は、小津映画ファンの方にもお薦めです。

 

 

Tagged with:
 

河出書房新社発行の文藝誌「文藝」は、他の文芸誌「文学界」、「群像」、「新潮」と比較すると新しい文学を紹介している雑誌です。この雑誌主宰の「文藝賞」の近年の受賞者、例えば田中康夫「なんとなくクリスタル」、長野まゆみ「少年アリス」、現役高校生だった綿矢りさ「蹴りたい背中」という作品を見ればなんとなくお分かりでしょう。

この「文藝」が戦中、戦後どのような歴史を辿ったかを簡潔な文章で書いたのが佐久間文子「『文藝』戦後文学史」(河出書房新社1400円)です。

「文藝」は1933年に創刊されます。当時の版元は改造社で、初代編集の主任は、作家の上林暁。新しい文芸運動を盛り上げるために新人発掘に力を入れていきます。その中には「夫婦善哉」の織田作之助もいました。作家陣を充実させて邁進しようとしたところに、暗い影を落としたのが第二次世界大戦でした。1942年雑誌掲載の太宰治「花火」が公序良俗に反するとの理由で削除処分を受けてしまいます。官憲の圧力だけでなく、物資不足で用紙を集めるもの一苦労するようになり、さらに追い打ちをかけるように、反体制的と見なされた改造社は解散命令を受け廃業させられてしまいます。

その時「文藝」の権利を譲渡されたのが、河出書房です。増々激しくなる空襲と物資不足でしたが、当時の編集長、野田宇太郎は、爆弾の落ちる音を聞きながら、編集作業を続行。

「わたくしが爆死しない限り、東京中が焼野原になっても。『文藝』の発行には決して支障をきたさぬ覚悟」とカーキ色のショルダーバッグに原稿をしまい込み、空襲の中を逃げ回りながら、雑誌を発行し続けました。

そして、戦後を迎えます。焼跡から経済復興、バブルを経て今日に至るまで、一冊の文芸誌の変遷が描き込まれています。そうか、あの時はこんな作家が登場してきたのか、成る程、と思いながら読みました。

ところで、河出という出版社は何度も倒産しています。しかし、何とか雑誌の刊行を続けようと獅子奮迅の努力をします。そんな編集者の一人に坂本一亀という出版部から移動してきた人物がいました。野間宏「真空地帯」、三島由紀夫「仮面の告白」、高橋和己「悲の器」など戦後文学の名作を次々と手がけた編集者です。57年、一度目の倒産の時、再建要員として抜擢、編集長を務めました。何を隠そう、坂本龍一のお父様です。

堅苦しい文学史ではありませんので、読み物として楽しめる一冊です。巻末には「文藝」略年譜が付いていて、これが結構面白いです。

NHKで土曜日夜に放送している「漱石の妻」ってご存知でしょうか。今、はまっているドラマです。

このドラマで漱石の妻のことを、初めて知りました。漱石が結婚して、帝大の教授を経て、国民的作家となっていく様を描いています。漱石には「シン・ゴジラ」で獅子奮迅の活躍をしていた長谷川博己、その妻には尾野真千子。彼女は、NHKドラマで織田作之助原作の「夫婦善哉」の健気なヒロインを演じていました。

で、この芝居の上手い二人の、時にはエキセントリックな、時にはドタバタ喜劇風の、時にはペーソス溢れるやり取りが、実に見物。あくまでフィクションですが、感情の起伏の激しい漱石という作家の姿が、見事に立上がって来ます。先週は、漱石の養父役で竹中直人が登場、立派になった子供に金をせびる小心な男を、演じていましたが、これが絶品でした。ちょっと、漱石の生い立ちを調べてみたくなりました。ドラマの原案になっているのは、夏目鏡子・松岡譲著「漱石の思い出」です。

漱石といえば、「坊ちゃん」、「わが輩は猫である」以外は、何故か知識人の憂鬱と苦悩を描いた小説が目立ちます。漱石が生きた明治時代を描いた関川夏央原作、谷口ジロー漫画による「坊ちゃんの時代」(アクションコミックス全5巻2500円)は、お薦めです。

漱石を中心にして、鴎外、啄木、秋水等の多くの文学者を登場させて、明治という時代を描いた群像激です。文学だけでなく、変転してゆく社会の様と時代に翻弄される人々の姿を全5冊に描き込んでいます。明治43年、天皇暗殺を企てた容疑で、社会主義者幸徳秋水らが逮捕、処刑された「大逆事件」のことも、この本で学びました。この全集は是非とも、高校の現代史のテキストに使用していただきたいものです。

第二部「「秋の舞姫」は森鴎外と、彼を追いかけて日本に来た舞姫エリスの愛憎を中心に、日本とヨーロッパのはざまで苦悩する鴎外を、第三部「かの蒼空に」では、彗星の如く登場した歌人、石川啄木の青春。第四部「明治流星雨」では、先程の大逆事件に翻弄される秋水を描き、最終の第五部「不機嫌亭漱石」で、病に倒れた漱石と明治の終りを描いて完結します。各巻300ページあまりの力作を、じっくりとお読み下さい。

当店在庫の全5巻の中で、第2巻だけ本の帯が違っています。他は「手塚治虫文化賞受賞」と文字の入った赤い帯ですが。第2巻は初版出荷時の白い帯で「それは鴎外の青春であった。」のポップが印刷されています。

 

★★10月28日(金)『ネイチャーガイド安藤誠さんの自然トーク「安藤塾」』は、満席になりました。

尚、「安藤塾」は、10月29日(土)19時より「町家ギャラリー龍」にて開催します。こちらの方は、参加者募集中です。お問い合わせは直接 「町家ギャラリー龍」(075−555−5615)まで。

 

★カナダ在住で、ドールシープを撮影されている写真家、上村知さんの写真展を11月1日(火)〜13日(日)まで開催します。

尚、11月5日(土)の、上村さんによるスライドショー 「極北 カナダ・ユーコン&アラスカの旅と暮し」は満席になりましたので申し込みを終了いたします。ご了承ください。

 

60年代末、そのナンセンスな歌詞で物議を醸しだし、一世を風靡した「帰って来たヨッパライ」という曲を巡って、湯浅学はこう書いています。

「世の中は舐めるためにもある。ということを1960年代の大人はいろいろと子供に教えてくれていたと、当時まるっきり小学生だった俺が大人になってからつくづく思った。」

この文章に接して以来、彼の音楽評論には一目置いてきました。その彼の批評集「音楽が降りてくる」(河出書房新社1900円)の中身をぺらぺら捲っていると、「クレージーキャッツ」の、名トロンボーン奏者にしてコメディアン、谷啓について書いてありました。

谷啓のお葬式、式は進むのですが、何故かざわつく葬儀場。やがて、出棺…..と、その時、献花の花の山を突き破ってトロンボーン片手に飛び出す谷啓、そして「目をしばたたかせながら一同に向かった谷さん大きく息を胸に留め、何物かを掴むように軽く指を胸の前にゆっくりと押し出すと一声『ガチョーン!』」

こんな葬式だったら、と著者は彼の訃報に接した時に思ったらしい。クレージー世代の貴方ならわかりますね。そう、あの目をしばたたかせながらの決め台詞、目に浮かびます。

「言葉の意味ではなく。音そのものが説得力を持つ。笑いのエネルギーや創造力の素になる。ということを谷さんは長年我々に伝え続けてきた。」

その谷啓を擁した「クレージーキャッツ」の多面的な魅力を紹介した「ジ・オフィシャル・クレージーキャッツ。フラフィテイ」(河出書房社2200円)は、文句なしに面白い一冊です。先ず、本全体のデザインがカッコイイ!。ジャズのアルバム風であったり、マガジンハウスが発行するオシャレ雑誌風であったり、とても60年代の古めかしいコメディアンの懐古本ではありません。こ、こんなにクールでスタイリッシュなバンドだっけ?!と思わずにはいられないエディターの冴え渡るセンスに拍手です。クレージーなんて知らないよ、という世代にも手に取っていただきたい一冊です。こんなにもクリエイティブな、お笑い集団がいたんですよ、この国には。

そして、2枚組CD「クレイジーシングルス」(1800円)も聴いてください。「スーダラ節」に始まり、「ホンダラ行進曲」、「遺憾に存じます」そして「アッと驚く為五郎」まで全42曲。ナンセンス極まりない曲の連続に笑い転げていただきましょう。

私のお気に入りは「ハイ、それまでヨ」。湯浅学氏じゃないけれど、世の中舐めて生きてもいいんじゃないの、と思わせてくれた名曲です。

◉「ジ・オフィシャル・クレージーキャッツ。フラフィテイ」(河出書房社2200円  Sold Out)

★毎年恒例になりました『ネイチャーガイド安藤誠さんの自然トーク「安藤塾」』は、10月28日(金)7時30分より開催が決定しました。(要・予約 レティシア書房までお願いします) 

★★カナダ在住で、ドールシープを撮影されている写真家、上村知さんの写真展を11月1日(火)〜13日(日)まで開催します。5日(土)夜に、上村さんによるスライドショー 「極北 カナダ・ユーコン&アラスカの旅と暮し」(7時より)を予定しております

  (要・予約 同じくレティシア書房までお願いします)

巷には書評集やら、本の紹介本が溢れかえっています。仕事柄、なるべく目を通すようにはしていますが、買いたいという本は滅多にありません。

その中で、三浦しをん「本屋さんで待ちあわせ」(大和書房500円)は面白い一冊でした。もう、笑えます!書評を読んでいて、むふっ、ぶふぁ〜となるなんて珍しいのでは。入手可能な本が大半です。しかし、原民喜、藤枝静男、上林暁、中村真一郎等興味ある面々が揃った「戦後占領期 短篇小説コレクション4 1949年」(藤原書店2007年)は、探すのが大変かも(一応新刊でまだ出ていますが)

第四章は、なんと丸ごと「東海道四谷怪談」に割いています。鶴屋南北が書いた戯曲が舞台にかかったのが1825年。それから、今日まで延々上演されてきました。ご承知のように、「四谷怪談」は、「忠臣蔵」のパロディーです。南北は「主君のために仇討ちなんて、古くさぁ〜い」と考えていた、という話から始まり、「東海道」と名前が付いているのに、登場する舞台が、全然「東海道」じゃなかったり、話に方々に出てくるオヤジギャグの話など盛り沢山です。そして、無情かつ無常な色合いの濃いエンディングからこう締めくくります。

「むなしい。しかし、死に向かって生きるしかないのだ。『四谷怪談』の登場人物はみな、全身でそう物語る。彼らの哀しみとむなしさと迫力が凝縮したラストシーンは、こだまとなって、現代を生きる私たちの胸にも強く届く」

どちらかと言えば、オフビート気味のこの本に比べて、正統派の書評集としてお薦めは湯川豊「夜の読書」(ちくま文庫750円)です。梨木香歩、池澤夏樹、小川洋子、松屋仁之、など、私好みの作家が並んでいることもあるのですが、何回か江國香織を取り上げています。いわゆる、書評家さんと呼ばれる方々で、江國のような流行作家を何度も取り上げ、きちんと評価している人ってあまりいないと思います。それだけで、この著者の幅広さが理解できます。

話題となったジャック・ロンドン著、柴田元幸訳「火を熾す」(スイッチ・パブリシッング)を取り上げた中で、表題ではなく、収録されている「水の子」というハワイの漁師の話に心ひかれるとして、こう書いています。

「自然のなかに生きる人間の過酷な運命が冒頭の『火を熾す』にあるとすれば、自然のなかに生きる人間のまぶしいほどの輝きがここにはある」

この本の魅力を見事に言い切った批評です。

 

★毎年恒例になりました『ネイチャーガイド安藤誠さんの自然トーク「安藤塾」』は、10月28日(金)7時30分より開催が決定しました。(要・予約 レティシア書房までお願いします) 

★★カナダ在住で、ドールシープを撮影されている写真家、上村知さんの写真展を11月1日(火)〜13日(日)まで開催します。5日(土)夜に、上村さんによるスライドショー 「極北カナダ・ユーコン&アラスカの旅と暮し」(7時より)を予定しております。(要・予約 同じくレティシア書房までお願いします)