アフリカのポップスって、お聴ききになったことありますか?

余程、ワールドミュージックに興味のある方以外、ご存知ないかもしれません。しかし、家事のお供に、寒い日の外出などにも最適な音楽です。ヒョイ、ヒョイとカラダが動きだすサウンドは、やはりアフリカ大陸ならではのもの。もちろん、深く歌詞を読み込んでいけば、大陸に充満する貧困、差別、社会不安のリアルさを読み取ることもできるのですが、それは少し置いておいて、今日は怠いなぁ〜、とか腰が重いなぁ〜という気分の時に、ちょっくら踊りながらでかけませんか、という音楽をご紹介します。

先ずはセネガルのトップスター、ユッスー・ンドゥール。アルバム「ガイド」(700円)はのジャケは、踊っているンドゥールの後ろ姿。「踊るアホウに見るアホウ」の阿波踊りみたいなもんですね。一曲目から快調です。ほら、腕が上がり、足も上がってきますヨ。料理の最中なら、フライパン叩きながら、フンフンと夕食準備です。しかし、踊れそうな曲ばかりではありません。「7セコンズ」、これ、哀愁の演歌です。ネネ・チエリーという女性シンガーとデュエットしてますが、五木ひろしと石川さゆりにタップリと歌っていただきたいみたいな曲です。

もう一人、ザイールから世界へ、そのサウンドを広げたパパ・ウェンバ「エモーション」(700円)。哀愁を帯びたパパ・ウェンバの声とダンスビートが相まって、独特の世界を作り出していきます。アメリカのダンス音楽とは一線を画す音楽は、誰もが気楽に聴けます。アフリカの大地が叩き出すビートって、こういう音楽ですね。ご近所迷惑にならないボリュームで、寒い朝、洗濯物を干す時に鳴らしてください。洗濯物の彼方に、キリンやアフリカゾウが見えるかもしれません。どちらのCDも、日本語訳歌詞カードが付いています。

音楽に興味を持たれたら、雑誌Coyoteの「アフリカの南」(Switch/古書700円)、或は写真集”SAHARA”(洋書/中古1500円)を。CDは試聴できますので、聴きながらこれらの本を眺めれば、さらにアフリカが近づくかもしれません。(店内でのダンスはご遠慮くださいませ)全く知らない国の音楽を聴く楽しみをぜひ味わって下さい。

 

 ★お知らせ★

  レティシア書房 第5回「女子の古本市」2/21(水)〜3/4(日)

京都・大阪・兵庫・滋賀・岐阜・東京などから、出展者が女性という古本市です。お買い得の面白い本を見つけにお越しくださいませ。


 

レナード・コーエンは、1934年カナダに生まれ、2016年、82歳で亡くなりました。詩人、小説家としてそのキャリアをスタートさせましたが、67年歌手としてデビューしました。

もう、かなり前の話ですが、初めて彼の歌を聴いた時の感想は、「なんだ、この覇気のない、投げやりな歌い方は!!あぁ〜うっとおしぃ!!!」とレコードを蹴り飛ばしてしまいました。

その後暫く私の中では、絶対に聴かない歌手という位置づけでした。けれど、人間って変化するんです。それなりに人生経験を経て、「あぁ〜、オレって未熟、未熟!」と、ぐちゃぐちゃな気分のまま、酒場で意気消沈していた時、コーエンの歌が側に寄ってきたのです。なんて素敵なんだ!と、我ながら今までの自分の音楽センスの無さに茫然としました。

コーエンの歌は、しんどい時やさみしい時に、元気をつけてくれるわけではありません。その歌に勇気をもらいましたとか、元気づけてもらいました、とかいう意見をよく聞きますが、その逆です。しんどい時は、無理に元気なんか出すな、一緒にどよ〜んと意気消沈しましょう、みたいな音楽です。生きることは自己嫌悪の繰り返しだけど、まぁ、ちょっとは良いこともあるわなぁ〜、というようなコーエンの声が妙に心地良くなってくるのです。

中年の彼は、声も姿も男の色気に満ちていました。そして、老境に達してもなお、その色気が輝いていました。CD”Popular Problems”(写真右)のジャケの写真は80歳の時のものです。かっこいい!かくありたいものものですね。(輸入盤1400円)

因みにコーエンのCDは、当店の売上げナンバーワンです。センスの良い方が沢山おられるのか、はたまた人生に疲れた方が多いのか、とにかく、これからも頑張って仕入れます。

 

●レティシア書房のお知らせ●

 年始年末 12月29日(金)〜1月4日(木)休業いたします。


 

 

 

 

 

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ピエール・バルーというフランスの歌手をご存知だろうか。名前は知らなくても、映画「男と女」でシャバダヴァダァ、シャバダヴァダァとちょっとアンニュイにボサノヴァ調で歌っていた人物といえば、あぁ〜、あのヒト、と思い起こす方もおられるはず。

歌手として、俳優として、映画監督として活躍したバルーは、2016年12月にこの世を去りました。生前、彼が立ち上げたレコード会社が「サラヴァ」で、ここから多くのアーティスティックなシンガーが送り出されました。

バルーの人生とサラヴァの軌跡を一冊にまとめたのが、松山晋也「ピエール・バルーとサラヴァの時代」(青土社/古書1800円)です。バルーは、「男と女」の影響もあって、どうもお洒落なフランス人シンガーというイメージが日本にはありますが、そうではなかったことが、この本を読むとわかります。

先ず、彼は大のアメリカ嫌いです。「アメリカは、自分たちは常に正しいという思い上がりを持ち、自分の考えを他人に押しつけようとする。」と呟いています。「男と女」がアカデミー外国映画賞を取った時、アメリカの土を踏みますが、「アメリカ人はいつも自分を見ている感じ、つまり自意識過剰だと感じられた。何をしていようが、常にアメリカンドリームに向かっている自分というものを意識している」と違和感を感じ、アメリカ以外の世界への無知無関心を批判します。

その一方、日本へは深い愛着を示し、多くの音楽家、アーティストとの交流を深めていきます。例えば、青森在住の画家鈴木正治との交友です。90年代にはサラヴァのロゴ・マークに鈴木の一筆描きの墨絵が加わり、それまでのキャッチコピー「無為を志す時代」に「スロウビスの王様たち」というコピーが加わりました。

「ショウビジネスではなくスロウビズ。ゆっくりやるというのは、私にとっても大事なことだ。本物の宝石は磨き上げるのに時間がかかるからね」と、このレーベールのポリシーを語っています。

では、バルーの音楽はそんなテーマ主義かと言えば全く違います。多くの民族音楽を取り入れながら、心の奥底にゆっくりと響いてくるサウンドを作り上げています。素敵なハンモックにユラユラさせてもらいながら、世界を旅する感覚ですね。

生前最後のオリジナルアルバム「ダルトニアン」(CD+DVD/対訳付き1100円)では、戸川昌子がメインボーカルで参加、バックは、ちんどん音楽の新しいサウンドを模索する「ネオちんどん楽団」の演奏も収録されています。古希を過ぎて、自分の来た道を振り返るような滋味深い作品です。

因みにタイトルの「ダルトニアン」は「色盲」という意味ですが、ピエールは「肌の色が区別できない、つまり私には人種差別はできないという」意味を込めたと語っています。

彼自身が選んだ2枚組のベスト「森の記憶」(2400円/対訳付き)のジャケットには、フランスのベーグル市長であり、緑の党に加盟しているノエル・マメール氏が「ピエール・バルーは詩人である。」と明言しています。対訳を読みながら、彼の言葉を味わってください。

 

●レティシア書房のお知らせ●

 年始年末 12月29日(金)〜1月4日(木)休業いたします。

 

 

 

 

音楽評論家荻原健太の「70年代シティポップクロニクル」(P・ヴァイン/古書1300円)は、70年代前半が、日本のポップスシーンに大きな地殻変動が起こった時期だったということを、アルバムを紹介しながら論じた貴重な一冊です。

はっぴいえんど、南佳孝、吉田美奈子、シュガーベイブ等々、日本のシテイミュージック創成期でした。そして著者は、73年「ひこうき雲」でシーンに登場した荒井由美を、「流麗な旋律、新鮮な転調、鮮やかな歌詞表現などすべてが驚きだった。」と当時を振り返っています。翌74年には、ユーミンは傑作「ミスリム」を発表し、日本のポップス・シーンは飛躍していきます。

さて、この本からは離れますが、70年代後半にデビューし、山下達郎と結婚した竹内まりやは、1987年「リクエスト」を発表しました。このアルバムに収録されている曲の半数は、当時のアイドルシンガーに提供された曲で、それを楽曲提供者がカバーした、いわゆるセルフカバーアルバムです。中森明菜で大ヒットした「駅」も収録されています。先日TVで、こ曲を巡る番組を偶然に目にしました。番組では、竹内のバージョンと中森のバージョンの差異を取り上げていました。

歌の内容は、かつて付き合っていた男性を車中で見かけた女性が、あの時代をメランコリックに思い出すというものです。竹内は、そんな時もあったよね、あの人を真剣に愛してたんだねと思い出しながらも、でも今は、違う人と新しい生活を始めていて、懐かしい心情で歌います。しかし、中森の方は、今でも思い出を引きずって未練たっぷりに歌い上げます。どちらがいいかは、聴かれる方の好みでしょう。

「ラッシュの人並にのまれて 消えてゆく 後ろ姿が やけに哀しく 心に残る 改札口を出る頃には 雨もやみかけた この頃に ありふれた夜がやって来る」

というラストの歌詞を二人の歌手が、それぞれの解釈で歌うと、違う世界が立ち現れて来るのです。このアルバム「リクエスト」(2000円)が発売30周年を記念してリマスターされて、ボーナストラック6曲を付けて再発されました。80年代青春を送ったあなたに、どんな風にあの頃が甦ってくるのか、是非聴いていただきたいと思いました。 

プロの歌手に向かって「程好い」などという、レッテルを貼られるのは嬉しくないことかもしれませんが、あまりにも上手すぎるシンガーも、ひたすら情感たっぷりに歌い上げるのも、静かな夜に聴くのには相応しくありませんね。赤ちゃんが気持ち良さそうに眠っているそばで、程好い加減で寄り添ってくれるシンガーこそ、この季節の友としたいものです。

NY出身のステイシー・ケントの2007年発表の”Breakfast on the Morning tram”(1800円)、訳すると「市外電車で朝食を」は、適度なスイング感と都会的センスに溢れたアルバムです。それまでスタンダードナンバーを歌ってきた彼女が、オリジナルナンバーに挑戦しています。その中の4曲の作詞は、ノーベル文学賞受賞でマスコミが大騒ぎした、日系作家のカズオ・イシグロ。元々、彼がステイシーのファンという縁で、作詞を担当したみたいです。因みにその内の「氷ホテル」は、柴田元幸翻訳「SWITCHvol.29/新訳ジャズ」(500円)に収録されていますので、イシグロファンはお見逃し無く。

次にご紹介するは、リー・ワイリーの”Night in Manhatan”(紙ジャケ仕様国内プレス1400円)です。ハロウィーンからクリスマスへと、喧噪の日々が続きますが、そんなざわついた街に背をむけて聴くなら、これです。古き良き時代のNYの香りが、そこかしこから漂うようなアルバムです。リー・ワイリーは、ベテランのジャズシンガー。「洒落すぎず、野暮にならず」に適度な上品さで歌ってくれるこのアルバムは、何度聴いても夢見心地です。暫く前に、ご近所の本屋さんの誠光社で安西水丸の個展があった時、このレコードがカウンター側に置かれてました。あ、ピッタリ!と店主のセンスの良さに拍手でした。

三人目は、日本人でボサノヴァを歌い続けている吉田慶子の「パレードのあとで/ナラ・レオンを歌う」(1600円)です。ボサノヴァのミューズと言われているナラのアルバムは、ブラジル音楽好きなら必ず持っているはず。60年代の軍事政権下のブラジルにあって、ナラは美しいボサノヴァを歌うことなく、暗い時代の母国に向き合ってきました。吉田は、そんな彼女の「強く、凛とした歌声、その生き方」に憧れてきました。ナラの没後20年の2009年に発表したアルバムでは、彼女へのリスペクトが一つ一つの言葉にあふれています。1998年、東北の小さなライブハウスで歌い始めて、今日までブラジル音楽一筋に来た吉田慶子。大好きなものを歌っているのよ私は、という自信と喜びに満ちたアルバムです。

すべて試聴OKです。

 

★臨時休業のお知らせ

11月6日(月)7日(火)連休いたします。

先日、アメリカンフットボールの選手達が、トランプ大統領の黒人差別主義的態度に抗議して国家斉唱をボイコット。それに対して、単細胞のトランプが、非国民呼ばわりするという新聞記事を見ました。アメリカにいた時、このスポーツの魅力に取り憑かれて、地元「サンフランシスコ49ズ」の応援に出かけたものでした。フットボールで敵陣地に突っ込む選手たちの大半は黒人です。トップスピードでディフェンスラインを突破する彼らはもう最高でした。しかし、この競技に熱狂しているのは大半が白人です。今回の抗議にも、会場からブーイングや、罵倒する声が飛び交ったとの事です。アメリカの音楽、映画、小説で青春時代を過ごし、わざわざ現地の空気を吸いにいった身にとって悲しい記事でした。

何ごとにも幼稚な国家になってしまったアメリカですが、実は音楽業界でも、レコードジャケットを巡っても熾烈な戦いがありました。

ジャズの帝王マイルス・ディビスは、1957年「マイルスアヘッド」を完成させます。そのアルバムジャケットには、彼の意図に反し黒人を使用せずに、ヨットの上で寛ぐ優雅な白人女性が使用されました。ここから、彼のレコード会社との戦いが始まります。

そして、61年名作「サムディ・マイ・プリンス・ウィル・カム」(CD1050円)で黒人を起用することができました。こちらを見つめる女性の姿にマイルスの、ついにやったぜ!という気持ちがこもっています。65年「ESP」を経て、67年「ソーサラー」では、ぐっと前を見つめる女性の横顔をジャケにしました。

“Black is Beautiful”を象徴するジャケットでした。

話は変わりますが、店の棚に「人間だって空を飛べる アメリカ黒人民話集」(福音館900円)があります。この本は、アメリカの黒人民話を、バージニア・ハミルトンという文学者が語り直したものを集めています。たいていの民族が持っている民話同様に、動物、魔法使い、お化けなどが登場しますが、他民族のものとはっきり違うのは、白人の奴隷として酷使されてきた人々の間で語り継がれてきたものだということす。迫害された民族の悲しみが漂っていますけれども、その半面ユーモアもあり、陽気な話が見受けられます。翻訳した金関寿夫は、この本からジャズを連想したとして、こう書いています。

「ジャズの持つ楽しい、軽快なリズムの底には、いつもあの黒人ブルースの、悲しいむせび泣きの声が、はっきり聞き取れるのです。」

マイルス・ディビスは、そんな感傷的な気分なんか捨て去り、常に新しい音楽を模索していました。黒人であることなんかどうでもいい、オレはマイルスだ!という姿が生涯カッコ良かった。

トランプ大統領は、抗議した選手をつまみ出せ!と怒鳴ったみたいですが、くそ野郎はお前だ!と、マイルスなら言うでしょう。

 

 

 

★吉田篤弘の新刊「京都で考えた」(1620円)が発売されます。

全国発売は10月20日ですが、京都地区先行販売が決まりました。また、ご予約された方には先着でサイン本をお渡しします。先行発売は10月12日(木)です

クラフトエヴイング商會の著書に「じつは、わたくしこういうものです」(1300円絶版)という、人を食ったような楽しい本があります。

その中に砂針音楽師という職業(もちろんフェイクです)が登場します。彼女は「世界でいちばん小さな音楽をつくる人であります。演奏される時間も短ければ、音量、楽器、楽譜……..何もかもが小さく扱うテーマまでも小さい。ささやかなもの、静かなもの、かけらのようなもの……..。聴こえるか、聴こえないかという程に小さな音で奏でられる」ような音楽を「針の穴のために音楽」と表現しています。

「聴こえるか、聴こえないかという程に小さな音で奏でられる」とは単にボリュームを絞って聴くだけの行為ではありません。ボリュームの如何に関わらず、ほんの少しだけ体に染み込んでくる音楽のことです。

オランダの女性シンガー、レイチェル・グールドがトランぺッターのチェット・ベイカーと組んだ”ALL BLUES”(2000円)は、そんな音楽です。歌われているのは、所謂スタンダードナンバーですが、あからさまにスィングせず、静かに静かにアルバムは進みます。チェット・ベイカーって、最も”汗臭くない”やる気があるんだか、ないんだかわからないミュージシャンなのですが、そこが良かったみたいです。あっ、ジャズが鳴ってたな、いつ終わったんだろうみたいに煙の如く消えてゆきます。

スウェーデンの名ソプラノ歌手アンネ・ソフィ・フォン・オーターが、イギリスの元パンク小僧で、今や温厚な中年ロッカー、エルビス・コステロと組んだ”Otter meets Costello”(1400円)は、透明な空気に満ちあふれたアルバムで、ロックでも、クラシックでもない、この二人だけが作りえた音楽です。J・レノン。トム・ウェイツ、バート・バカラック、そしてコステロ自身の曲が散りばめられていますが、穏やかに、じんわりと、少しずつ心の中に溶け込んできます。ボリュームに関係なく慎ましく流れるところが、二人の音楽家としての技術力の高さです。

今年観た映画で、ベスト3に入るであろう「メッセージ」にも使われていた、作曲家マックス・リヒターが、英国を代表する女性作家ヴァージニア・ウルフの生涯から着想を得た”Three Worlds Music from Woolf Works”(2200円)。クラシックでもなく、環境音楽でもなく、一時流行ったヒーリングと呼ばれた安易なイージーリスニング音楽とも違う不思議な音楽は、ジャケット通り、まるで波が打ち寄せては、引いてゆくように心に染み込んできます。アルバムはヴァージニア・ウルフの3つの作品『ダロウェイ夫人』『オーランドー』『波』からインスパイアされています。静かな海原に包まれたような安らぎに満ちた音楽です。

この三枚の音楽を聴いていると、どれも深い精神性と音楽への深い理解を内包していることがわかります。だからこそ、大きさに関わらずにリスナーの心に響いてくるのです。

もちろん、読書に最適なことは言うまでもありません。

アメリカの音楽の原点といえば、奴隷として連れて来られた黒人が持ち込んだブルースと、スコットランドから移住してきた人達が作り出したブルーグラス、そしてニューオーリンズの酒場で生まれたジャズということになるでしょう。

そうした原点というべき音楽へのリスペクトを、色濃く反映させているミュージシャンのサウンドを「ルーツミュージック」と呼び、個人的には最も好きなアメリカンミュージックです。そんな、ルーツミュージックを日本人として追い求めているのが吉村瞳です。

1984年愛知県に生まれた彼女は、14歳のときエレキギター、18歳でスライドギターを始め、22歳でヴォーカリストとなります。アコースティックギターによるボトルネック、ラップスティール、リゾネイト・ギター等の、それぞれ個性的な音色を持ったギターを使い分け、アメリカ南部サウンドに根ざした音楽、ネイティヴ・アメリカンの音楽に影響を受けたロックンロールを、ソウルフルに歌いあげています。えっ?日本人が歌ってるの?と驚かれるかもしれません。

手元に彼女のアルバム「Isn’t it time」(1700円)があります。そのサウンドから見えてくるのは、どこまでも広がる青空とハイウェイ、そしてテンガロンハットを冠った男たちが牛追いをしている情景でしょう。

お馴染み「アメイジンググレイス」の最初で聴くことができる彼女のギターのブルース感覚を楽しんでいただきたいものです。多くの人がこの名曲を歌っていますが、乾いた大地の臭いと、大地に吹く風が、身体を駆け抜けるバージョンはないと思います。この曲に続く”Can’t Find My Way Home”で聞こえてくる、オルガンとギターのアンサンブルにも、やはりアメリカのルーツを垣間見ます。

乾いた大地の大空を舞うコンドルが歌う音楽とでも言えばいいのでしょうか。こんな音楽には、やはりバーボンウィスキーがピッタリですね。アルバムを最後を飾るのは、「テネシーワルツ」。南部の薫りの濃いサウンドで幕を閉じます。

 

 

★8月9日(水)〜20日(日)「レティシア書房 夏の古本市」を店内で開催します。個性的な28店のよりすぐりの古本が大集合です!(14日は休み)

暑い日が続きますが、お立ちよりください。


 

 

先日、「虹色の小舟」(2700円)という自主制作のCDを出された日高由貴さんが来店されました。ほぼ全曲、自作の詞で歌われた、あるジャンルにカテゴライズされない、素敵な作品です。

ジャズのようでそうではない、語りかけるようなシンガー&ソングライターでもない、ましてやクラシックでもなければ、ソウルフルなものでもない。こういう音楽って、上手く出来上がればオリジナリティーの高い作品になるのですが、どっちつかずで、失敗することにもなりかねません。

日高さんは、ジャズをベースにしながら、その世界に捉われることなく、良質のポップスを目指したことが良かったと思います。編成は、彼女のボーカルにサックス、ギター、ピアノ、ドラムス、ベースという典型的なジャズ五重奏団。

昨今、CDショップに並ぶべっぴんさん女性ジャズボーカルアルバムの、大げさな感情表現と無理にスイングしようとするアルバムとは逆の仕上がりになっています。大事なことは小さくつぶやくと言った詩人がいましたが、そういう世界です。

日本語で歌われている「マングローブの森へ」はこんな歌詞です。

「月夜のかなたで だれかが泣いている ただひとり いまこの想いを あなたのところへ ほらそっと ひとしずく 虹色の小舟にのせて ひとひらの花びらに 涙をのせて 流れゆく水のおく いまあなたからだれかへと 虹色のかなしみの向こう側 みどりの森へ」

サックスとピアノが静かに月夜に照らされたマングローブの森へと誘います。

私の最も好きなナンバーは、7曲目の「Shenandoah」です。19世紀から歌われているアメリカ合衆国の古い民謡で、歌詞から「オー・シェナンドー」(Oh, Shenandoah)とも、「広大なミズーリ川を越えて」(Across the Wide Misouri)とも呼ばれています。バージニア州を流れる大きな河で、西部劇「シェナンドー河」他でも使用されていて、何度か耳にした曲です。故郷への哀愁を思い起こさせるのですが、彼女は饒舌にならず静かに歌っています。この曲ではクラリネットも演奏されています。(出だしのクラリネットの音には涙が出そうです)

ゆっくりと、何度も味わってもらいたい音楽が、ここにはあります。

★試聴大歓迎です。本選びにも良い効果があるかも…….。

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個性派書店として様々なメデイアに取り上げられている誠光社。私は、本を見に行く、買いに行くというよりも、毎回、新着のCDを聴いては、店主の堀部さんと音楽のお話するのを楽しみにしています。先日、お邪魔した時、一枚のCDを推薦してくれました。それがJOHN to PAULの”Croquis”(1620円)でした。

不思議にリラックスできる音楽が流れてきました。で、このJOHN to PAULですが、誠光社のHP解説にはこう出ていました。

広島の宅録ミュージシャン「ジョンとポール」(お一人です)のニューアルバム”CROQUIS”のディストリビューションをさせていただくことになりました。

現代音楽的アプローチを出発点に、コンセプチャルなアルバムを幾つか発表したのち、次第にポップミュージックに接近していった理論派。昨年リリースされた本作への序章とも言えるアルバム”MY NAME IS…”は、玄人好みのソングライティングに、ごく自然な譜割りの日本語詞を乗せた傑作でしたが、そのエッセンスをさらに突き詰めたのが28曲入りの本作です。

 

スマートフォンのボイスメモ等を利用した、クイックで肩の力の抜けた楽曲群を「スケッチ」に例えたアルバムタイトル通り、クロッキー帳のようなアートワークに。ブックレットには歌詞とスケッチ、本人による簡単な楽曲解説が添えられています。

ポップスの酸いも甘いも知り尽くしたマエストロによる、ユーモアと知性あふれる傑作アルバムを是非お聴き逃しなく!」

あっ、春だ……..。とこの音楽を聴きながらつぶやいてしまいました。冬の風が去り、春の風が、久しぶりって感じ頬を撫でた瞬間のムフフという音楽です。ほぼ彼の楽曲が占めるのですが、おなつかしや「ブンガワンガソロ」のカバーが入っています。泣けてくるほど美しい。全28曲、詰め込んでありますが、途中で止めようととは思わない、心地よい手づくりサウンドです。26曲目「イズミさんに会いにゆく」では、外を走る救急車のサイレンもBGMとして入っています。

堀部さんから、このCDなら卸しできるよとのお声があり、早速店で販売開始。店で、かけてたら、たまたま店におられた大阪の有名古書店主が、いいなぁ〜とお買い上げ。あの店でも今頃鳴っているのかな?

試聴もできますので、一度春の訪れを「聴いて」ください。クロッキー帳を模した特殊ジャケット、36Pブックレット仕様で、最後のページに登場するうたた寝中の猫のイラストが、この音楽のすべてを物語っています。店を締めて、昼寝したい誘惑と闘いながら、鳴らしています。