久々に音楽の紹介です。取り上げるのはリアノン・ギデンズRhiannon Giddensのアルバム"Freedom Highway”(2017)です。タイトル通り、アメリカのマイノリティーたちの侵された自由の権利が色濃く出た作品です。
ノースカロライナ生まれで、名門オバーリン音楽院でオペラの学位を取った才女です。その後、キャロライナ・チョコレート・ドロップスのメンバーとして、4弦バンジョーとフィドルを弾きながら歌っていました。ご承知のように、バンジョーはアフリカ起源の楽器で、アメリカに連れてこられた奴隷が、故郷の楽器に似せて作ったものがアメリカでバンジョーとして使われてきました。
そんなバックグラウンドを持った彼女のソロアルバムは、アメリカの根深い黒人差別がテーマになっています。アルバムタイトル曲"Freedom Highway”は、1965年キング牧師の先導でアラバマ州で行われた歴史的デモ行進にインスピレーションを受けたステイプルシンガーズが歌った曲です。
歌詞の中にタラハチー川が登場します。1955年、白人女性に口笛を吹いたという理由だけで殺害され、この川に捨てられた黒人少年エメットの事件を歌ったものです。また、4曲目”Birmingham Sunday” は、63年、アラバマ州バーミンガムの教会が白人至上主義者によって爆破、聖歌隊の子供が犠牲になった事件をモチーフにした曲で、とてもいい曲です。鎮魂の歌です。
曲だけでなく、マイノリティ系のアメリカ人ミュージシャンを登用し、独特の音楽世界を創り上げています。
私は、このCDジャッケットの写真のリアノンの視線に惹かれて買いました。右斜め上の方向をきりっと見据えています。その先に何があるのか知りたいと思い、仕入れたのですが見事当たりました。
奴隷売買について表現した冒頭の曲では、「魂までは奪えない」と力強く歌っています。
“You can take my body,You can take my bones,You can take my blood but not my soul”