火曜日夜九時のTVドラマ「リーガル・ハイ」が終わってしまった。

こんな、毒のあるドラマを、民放で、しかも天下のフジTVで放映していたなんて、快挙ですな。最終回、ご覧になられましたか?

あのオチ笑ってしまいます。娘を殺された弁護士と、殺した弁護士の最後の対決。殴り合い、罵倒し合う二人。しかし、その娘が実は●●だったなんて、こんな脚本良く書けました。(多分、TSUTAYAでレンタルできるようになると思いますので、ラストはバラしません)

裁判劇の形をとりながら、私たちが隠している偽善をひっぺがし、笑い飛ばす。最後は視聴者の期待する感動のフィナーレさえ、あっけなく裏切るという快挙です。脚本は、以前にこの番組の事を取り上げた時にご紹介した古沢良太。水戸黄門こと里見浩太朗への愛情たっぷりのオマージュも見事です。

で、この人が脚本を書いた映画「探偵はバーにいる」。やっとレンタルできました。いやぁ〜最高に面白い映画です。コーネル・ウールリッチの「黒衣の花嫁」とロス・マクドナルドの創作した探偵リュー・アーチャーが活躍する「動く標的」あたりがベースになっていると思いますが、ギャグも満載のハードボイルドに仕上げています。北海道が舞台なんで、この地ならではのカーチェイスも用意。この人、きっと映画や、サスペンス小説が大好きなんだという事がよく分かります。直ぐに、続編製作が決定されたのも当然でしょう。そのうち、TVで放映されると思いますので、お見逃しなく。

ところ、TVと言えば、今日、双子姉妹のボーカルデュオ「ザ・ピーナッツ」の伊東エミさん死去(71才)のニュースを伝えていました。小学校時代、ザ・ピーナッツとクレイジーキャッツの「シャボン玉ホリデー」は欠かさず観ていました。エンディングで二人が歌う「スターダスト」。初めて覚えたジャズナンバーです。おそらく、この体験が後に洋楽指向へと向かわせたんでしょう。ブロードウェイのショーを日本に持ち込んだ革命的な番組で、まさに、TV黄金時代の幕開きでした。坂本九、青島幸男、前田武彦そして寅さん渥美清たちが駆け抜けたショービジネスの熱かった時代。小林信彦著「テレビの黄金時代」(文藝春秋1000円)を、再再読してみたくなりました。

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春田太一著「仁義なき日本沈没」一気読みだ!

以前、ブログでご紹介した「天才、勝新太郎」の著者の新作新書です。まぁ〜面白い。

戦後、日本映画界を引っ張ってきたビッグカンパニー東宝、東映のサバイバルゲームです。戦後直後の東宝を大混乱に陥れた労働争議、いわゆる東宝争議。その一方、大借金抱えて、映画製作が火の車で、超高速自転車操業で、何とかやり繰りする東映。どん底から、這い上る、もうしぶとさだけが武器の映画人の悪戦苦闘。「七人の侍」で大作の大ヒットを飛ばし、都市部中心で大型映画に活路を見いだす東宝、一方スターを抱え込んで、勧善懲悪時代劇を量産し、地方の映画館を傘下に収め、現状を突破していく東映。そして、映画黄金時代へ。

しかし、いい日は長く続かない。TV等の新しい娯楽の進出で、娯楽の王者から転落。試行錯誤を重ね映画製作に挑戦するも、どれも失敗。スタジオの身売りに、社内の権力闘争、莫大な借金。もう、瀕死状態ですね。

しかし、72年両者に、9回裏ツーアウト満塁で、逆転さよなら満塁ホームランが飛び出す。

東映の実録シリーズ「仁義なき戦い」、東宝の「日本沈没」(リメイクされたひ弱な出演者で固めた駄作ではありません)の登場だ。起死回生の映画が、同じ年に登場しているというのも興味深い。そして、日本映画は息を吹き返し、昨今の幼稚映画人の跋扈するハリウッドを追い抜く日本映画界を作ってゆく。

今日に至る怒濤の日本映画の歴史を描いたノンフィクション。誰か、映画にして下さい。東宝を引っ張った名プロデューサー田中友幸には三国連太郎、東映社長岡田茂は、今や農民となった菅原文太でキャスティング。今まで、東宝争議は映画になった事がありません。是非、映像化して欲しいものです。

ところで、先日古本市で、今まで二度に渡って逃げられた一冊をゲットしました。この写真集です。でも、店では売りません、朝に礼拝、夕べに感謝?して神棚に祀ります。

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善行堂さんのブログ読んでいたら、映画「マイバックページ」の事が載っていました。

川本三郎の、週刊朝日記者時代、自衛隊に乱入した過激派学生との関係から、朝日新聞退社に至るまでを綴った傑作ノンフィクションです。雑誌「Switch」に86年2月から、翌年12月まで連載された時からのファンでした。

川本三郎との最初の出会いは、映画雑誌「キネマ旬報」でした。小林信彦、渡辺武信、山根貞男そして川本の映画評は、映画を観る時の指針でした。観る前に読み、観た後に再度読み返しました。映画をめぐる思考の原型を作ったのは彼らの文章です。77年に発行された「朝日のようにさわやかに」は一番の愛読書でした。比較的、最近の著作ですが、「君美しく」(文藝春秋社1300円)は日本映画黄金時代の女優17人へのインタビュー集で、「銀幕」という言葉が輝いていた時代を生きた女性達の人生が見事に描かれています。その後、彼が映画評論だけでなく、都市論や、文学論、とりわけ永井荷風に関する本を出しているのを知り、新刊書店に立ち寄った時は映画コーナーだけでなく。文芸のコーナーもチェックしたものでした。

ところで、村上春樹との共作で「映画をめぐる冒険」という本があります。85年に発行されてから、一度も文庫化されておらず、絶版となったままの本です。古本でも価格は高く、5000円以上の高値が付いています。出た時に、買って購入したものの不純な動機で、私の手から離れてしまいました。春樹好きのうら若き女性のお部屋にお邪魔するための、出汁にしてしまったのだが、お部屋どころか、軒先100メートル前で討死、見事沈没。その後、本は彼女と共に去ってしまいました。こらぁ、ハルキ、弁償せんかぇ!という支離滅裂気分から抜け出せず、それ以降、今日に至まで、ハルキの本は買ったことがないし、読んだ事もありません。

お安く分けて頂ける方あれば、ご一報を

ところで、「マイ・バック・ページ」という題名はボブ・ディランの曲からですが、この曲のリフレインが素晴らしい。

「あのころの僕はいまより年をとっていた。今の僕はあのころよりずっと若い」

現在進行形で、「若い」といえる人生っていいもんですね。映画では、エンドクレジットで、爆風スランプが歌って、いい味出していました。

 

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「ル・アーブルの靴磨き」を観に行きました。大人の映画だ。

お話は簡単。不法入国してきたアフリカの少年を、逃がしてやる主人公と、その町の人々を描いただけ。満足なシナリオの書けないハリウッド映画や、おせっかいな日本のTVドラマならきっと、何故主人公と彼を取り巻く人々が、少年を救うかを延々説明して、は〜い、こんな美しい話です、感動しましょう!と迫ってきます。

しかし、この映画には一切その説明はありません。みんな、淡々と行動するのみ。主人公は港町のしがない靴磨き。彼の生活圏にあるパン屋も八百屋も、一杯飲み屋も、もう下町の質素なお店ばかり。そして、当然みんなお金はない。映画は、彼らの日々の暮しを、徹底的にリアルに描く。そこへ、飛び込んで来た少年一人。聞けば、英国の親戚に行きたいとの希望。ならば、お手伝いしましょう、とごく自然に行動する。リアルとファンタジーの同居みたいに映画は進行。皆が、フツーに、ハイハイ分かりましたとばかりに動く。理由の説明は一なし。

非現実的、と思われる方もおられるでしょう。でも、助けないより、助けた方がいいもんね、という個々の人々の判断が連帯し、やれる事やりましょ、という行動へと、大げさではなく、何度も言いますがフツーにつながるって、大人ですね。

そして、ラスト、絶対に並の監督ならこんなエンドは用意しません。あ、はっ、はっ、のハッピーエンディング。妻が不治の病で入院。無事、少年を脱出させて病院へ急ぐ主人公。ベッドはもぬけの殻。で、ラストは、フツーならこうは絶対、絶対にあり得ません!。

あっ、はっ、はっと笑う花さか爺さんの声が聞こえそうですが、なんとラストは爺さんが登場しそうな桜の花。こんな、人を喰ったような映画を作ったのはフィンランドのアキ・カウスマキ。久々にオフビート映画を楽しみました。

 

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いつ頃だったか、テレビをつけたら小林旭の映画「渡り鳥シリーズ」をやっていた。とんでもない映画ですよ!

舞台は一応日本ですが、なんと旭兄いは、馬にまたがり、白いギターをぶら下げて登場。しかも、町中に馬止めて、悪党がたむろする酒場(これが、西部劇そこのけの両開きドアで、長いカウンターまである)に入って、一曲歌ってから、殴り合い。おいおい、町中に馬なんて止めたら、道交法違反だろ。それに、歌ってる間に、なんで誰も殴りかからないの?まぁ、TV「桃太郎侍」で、主人公が『ひと〜つ」と長い台詞を言う間、誰も切り掛からないのと同じパターンですね。そして、ラスト、旭兄いは、テンガロンハット姿で、馬と共に去ってゆく。61年作「波濤を越える渡り鳥」では、なんとバンコクまで行ってします。ネクタイ&ワイシャツ姿にギターですよ。もう無茶苦茶。

小林信彦+大瀧詠一コンビによる「小林旭読本」(2002年キネマ旬報社3000円)で内館牧子さんが、「彼は『闇』を抱えている」というエッセイを書かれているが、どこに闇があんの?

しかし、後年「日本暴力列島 京阪神殺しの軍団」で、在日朝鮮人の武闘派やくざを演じた時は、成る程ね、と納得いたしました。日活退社後、東映で主にやくざの幹部を演じていて、それはそれで凄みがあって面白かったのだが、「渡り鳥シリーズ」みたいに、あっけにとられる展開、別に今、歌う事ねえだろうに、という所で、いや歌いますというストーリー無視の唐突さ等々、突っ込み所満載の「渡り鳥シリーズ」をきちんと?観てみたいですね。

こんなシュールな映画に、観客が詰めかけ笑い、楽しんでいた時代というのは、もう二度と戻ってこないだろうから。カラオケで彼のヒットナンバー「熱き心に」を歌う度に、そう思います。

店には、読本以外に、旭本人による自叙伝「さすらい」(新潮文庫200円)もございます。ミュージシャンとしては東京スカパラダイス・オーケストラと組んだライブCDが良いですね。もう往年の歌の歌詞も抱腹絶倒ですぞ!オーケストラとのアンサンブル無視して、一人突っ走る旭に、素敵なサウンドを作ってリスペクト表したスカパラの清々しい演奏を楽しめるCDでしたが、残念売れました。

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NYで最も愛された書店、イーストサイド74丁目にあったその名は「ブックス&カンパニー」。

恵文社一乗店店長の堀部さんの本「本を開いて、あの頃へ」(サンクチュアリ出版600円)を読んでいたら、「ブックストア ニューヨークで最も愛された書店」(晶文社700円)の事が書いてあった。ジャネット・ワトソンが始めた独立系書店「ブックス&カンパニー」。ポール・オースターらの作家に愛され、多くの朗読会を主催し、本好きの聖域となった書店。この書店を97年閉店の最後まで支えたのが、ウッディ・アレンだった。自身の監督作品「世界中がアイ・ラブ・ユー」にもちらっと登場する。(この人程、本屋がちらっと登場する映画を作る人はいない)

堀部さんは、この本のことを書きながら、こう言っている。

「本を愛好する者たちが、本屋に求める最たることは『そこにしかない店がそこにあり続けてくれる』ことである」

新刊、古本を問わず、真摯に本屋に取り組んでいる諸氏の思いだろう。そこにしかない店を保ち続けるのは並大抵のことではない。本のある空間が至福の時間を醸し出す事で、人は始めて、その人にとっての、いい本に巡り会うのかもしれません。

そういえば、日本映画「読書する女」のエンドタイトルで、ヒロインの書架一杯に置かれた本の部屋。あるいは、「森崎書店の日々」に登場する、小さな古書店の棚の間。どちらにも、本の静かな佇まいが至福の時を演出していました。

ところで、書店員時代、この映画見た?と回りの書店員に聞いて回りましたが、全滅でした。なさけない。本屋大賞受賞セレモニーで、受賞作品の自分で作ったポップ持って、キャッキャッしていた、そこのねえちゃん、そんな暇あったら映画館に行きなさい。

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東映は、私にとっての聖地です。

任侠、実録、エログロ路線の大量のプログラムピクチャーが、私をこのような真面目で、誠実な人間(笑い)にしてくれました。強きを助け、弱きをくじく。自分には甘く、他人には容赦しないという人生の指針はこの時出来上がりました。

戦時中、満州に作られた満映。傀儡政権のもと、とんでもないアナーキーで、ええ加減な映画を制作していた連中の生き残りが、日本に引き揚げて、設立した映画会社が東映です。よって、この会社のアナーキーな性分と、ええ加減さは大陸譲りです。人の騙し方、貶め方、下品な振る舞い方、そしてスケコマシのやり方まで教えてもらいました。売れる!とわかった路線は徹底的に、観客にそっぽ向かれるまでやり続ける。この経営方針でがんばってきました。そして、多くの職人肌のプログラムピクチャーの監督がいました。

今回、そんな監督の一人、小沢茂弘をインタビュー中心に捉えた貴重な一冊「困った奴ちゃ」(2000円)を入手しました。この本を出版したワイズ出版は、映画がほぼ専門の、しかも日本映画が専門のユニークで、愛すべき出版社です。

で、小沢監督。生涯113本の映画を監督。時代劇から、やくざ映画、果ては「人間魚雷回天特別攻撃隊」まで監督。まぁ、凄いです。作家主義なんぞ、どこ吹く風。もう、いてまぇ路線です。

でも、若山富三郎の後家ご開帳物や、大奥リンチ物や、梅宮パパの絶倫物や、不良番長物、そして頭の中身はぱっぱらぱぁ〜、マッチョだけの千葉ちゃんのゴルゴ13物等を、大学にも行かず、真っ昼間から見ていると、なんで、こんなとこに俺はいるんだという後悔の気持ちで、もう落ち込んだりもしました。

でも、東映社長岡田茂の葬儀で、弔辞を読んだ尊師菅原文太が、偽善にみちたこの社会を引っ剥がす映画を東映が作ります、という様な趣旨の事をおっしゃっていました。 この尊師のお言葉をどこかで信じて、映画館の闇に沈みこんでいたのかもしれません。

 

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ウッディ・アレンの新作「ミッドナイト・イン・パリ」は名人の落語を聴いた後の心地よい酩酊感に浸れる傑作だ!

アメリカ人好みのハイソな生活を求める女と、パリの街の文学的臭いにラリっている男のすれ違いドラマと言えばいいのでしょうか。仲違いした男が、真夜中のパリの街をフラフラしているうちに、ひょっとタイムスリップ。ヘミングウェイ、T.S.エリオッット、ダリにブニュエルまで登場する奇妙なお話ですが、その芳醇な映画作りとお話のもって行き方に、お見事!の一言です。そして、タイムスリップものの作品としてユニークなのは後半。ヒロインがなんと●●●●●●●●してしまい、こんな事を言ってしまう「●●●●●●●●●●●●●●●●●」で、主人公がそんなヒロインに対して、いやそうじゃない「●●●●●●●●●●●●●●●●●●●」。そう、映画のテーマはそこなんですが、言えません。このネタばらしたら、映画を見る意味がなくなってしまいます。ラストシーン、見事なオチで話は終わります。ホント、お後がよろしいようで、です。上映時間も90分。いいですねぇ〜。美味しい

なお、映画にはセーヌ川付近の古本屋の均一台で、本を見つけるシーンやら、一度は行きたい「シェイクスピア&カンパニー」書店も登場します。そういう意味では本好きもぜひ見るべき映画です。

ところで、お店に「洋酒天国43」が入ってきました。特集が「西部と拳銃」なつかしい西部劇の名シーンもあります。拳銃に因んで、カクテルの紹介も「ショット・イン・ザ・アーム」と盛りだくさんで、700円です。

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火曜日夜9時。堺雅人主演のドラマ「リーガルハイ」が断然面白い。

金のためにしか動かない弁護士が主演のドラマ。でも、よくあるパターンで、実は正義感を秘めていたとか、逆のパターンで悪の道の深みで喘ぐ男の孤独を描くとか、そういう二流センスは皆無のドラマです。

速射砲の如く飛び出す主人公の毒舌が先ず面白い。火曜の夜9時ってゴールデンタイム。その時間帯に、こんなに良識とか、社会正義をあざ笑うドラマをやるなんて!100人いれば、100人の正義があって、100人いれば、100人の悪があるのが当たり前。みんなが一緒の正義なんて、ちゃんちゃらおかしいよね〜と笑い飛ばす。もう、コミックの主人公ばりの奇妙なヘアスタイルとオーバーアクションで一気に加速する堺雅人が快調です。

しかも、この番組。制作はフジテレビ。フジといえば、日本は豊かな社会だという幻想を、数々のトレンディドラマでブラウン管につくりだした大御所ですね。女子アナを商品化して、マーケットに売り込んだ手法は見事でした。ドラマが提供するトレンディー追っかけてたら、きっと幸せになれますというテレビ局で、「ケッ、ケッ、ケッ」とその大嘘を笑い飛ばすドラマをやるとは、太っ腹というべきか。

ま、脚本を書いている古沢良太は、映画なら「キサラギ」(見事観客を騙します)、「探偵はBARにいる」(早く観たい!しかしいつも貸し出し中)。テレビは「ゴンゾウ伝説の刑事」(向田邦子賞受賞)、「外事警察」(見応え十分のNHKドラマ)そして、「相棒」を担当。なるほどね、そら上手いわなぁ〜と感心します。

この「ケッ、ケッ、ケッ」という感じは、西原理恵子様の「できるかな」(2003年扶桑社500円)シリーズで、税務署と大バトルするやり取りに似ていますと「がんばろう日本」みたいな、一直線にダーッと同じ方向に向くのが社会正義の風潮に、馴染めないお方には、きっと心安らかに??してくれる一冊です。

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「飛んだ!」ー「魔女の宅急便」でヒロインが箒に載って飛んだ瞬間に実況アナが叫ぶ台詞です。

宮崎駿は、もうこの言葉を動画で表現したくて、心血を捧げて来た作家というのが、私の宮崎観です。昨日、テレビで「風の谷のナウシカ」を放映していました。何度も観ましたが、やはりナウシカが大空へ飛び出す瞬間には、何度でも胸ときめきますね。翼を左右どちらかに傾け、一気に急降下する、急上昇する瞬間に、この人はすべてを注ぎ込んでいる。一気に変化する重力、温度の急激な降下まで感じる程までの一コマ一コマの緻密な動きには恐れ入ります。

本人は何も語らないけれども、この人はきっと空中戦映画が大好きだったと思う。私がアホみたいにくり返し観ている、第二次大戦のドイツとイギリスの空中戦を描いた「空軍大戦略」。ファーストシーンはドイツの輸送機が、ゆっくりとしたカーブを描いて降下していくシーンで始まり、もう後は華麗な空中戦のオンパレード。「ナウシカ」を観ていると、この映画が観たくなる程に、描写が似ている。宮崎は後年、自分の飛行機好きが高じて、「紅の豚」を作った。こういう趣味性で映画を作ってしまったことに対して、自己批判をしていたが、「飛んだ」という高揚感を味わえる希有な映画であるのは間違いない。

私にとって、宮崎映画は、その時代に対する洞察力や、思いとは別に「飛んだ!」という高揚感の味わえる映画がベストです。「ナウシカ」、「トトロ」、「魔女の宅急便」そして「紅の豚」の飛ぶシーンこそがすべてで、残念ながら、そういう高揚感のない「千と千尋」以降の宮崎はお呼びじゃなくなりました。

ところで、店にある「風の帰る場所」という12年間にわたるインタビュー集はぜひお読み下さい。スリリング極まりないインタビューです。(ロッキンオン900円)

 

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