想田和弘監督の「Peaceピース」を観ました。この人のドキュメンタリーは、観察映画と言われているのですが、その通り、ただただ事実を観ていくだけの映画です。(第1作「選挙」も面白かった!)

 ドキュメンタリーといえども、普通は脚本と、サンプルの映像等を企画にあげないと予算がつきません。お金を出して作る以上それは当たり前。ナレーションも音楽も入れて、落としどころを作っていくものでしょう。想田監督はそれがイヤみたい。音楽なし。説明なし。予定調和一切なし。突然終わるし・・・。

 「Peaceピース」の主な登場人物は、障害者や老人にヘルパーを派遣するNPOを運営する夫婦で、想田監督の妻の両親だそうです。もう一人、義母がヘルパーに入っている91歳の独居の男性。この人は末期の肺がんなのですが、タバコが唯一の愉しみで、愛用しているのは「Peace」。平和を意味するタバコを吸いながら、彼は戦争の思い出を語ります。しかし、これもすべて偶然。観察を続けているうち、こういう日常に行き当たるって感じで、映画はどんどん進んでいくのです。

 一方、義父が餌をやっている猫たちの、庭先で繰り広げられる様子が、この映画の大きな魅力です。淡々と映される猫の生活と、独居老人の生活と、老夫婦の生活。お互いの距離を保ちながら、尊重し、生を全うすることの不思議な温かさを感じました。それぞれが、それぞれの暮しを、同じ空の下で過ごしているっていうのかな。あ!これが、もしかしたら「Peace」ってことか?! (女房)

☆「Peaceピース」はただ今京都シネマで上映中です。

☆ 写真は、大家さんちの庭の南天。平和な晩秋の一コマです。

Tagged with:
 

「エイリアン2」。監督はお馴染み「アバター」のジェイムス・キャメロン。その彼の妻が、同業の映画監督キャサリン・ビグロー。この女が超1級のくせ者だ(これ褒め言葉)。彼女は2008年「ハートロッカー」というイラクの最前線に駐留を続ける米軍爆弾処理班の危険で過酷な任務の姿を冷静に、愛国主義的なアメリカから離れた目線で、描いた作品を発表する。

映画も壮絶だが、まだまだ、男性社会のハリウッドの職人達(スタッフ)を統率して灼熱のイラクでロケーションを敢行。劣悪な自然環境、戦場が近いという恐怖、そして自分の技術に自信を持つ男達の従えての撮影は壮絶で過酷だったはず。翌年だんなの「アバター」と並んでアカデミー賞候補に選ばれ、夫の作品の前評判をこてんぱんに叩きのめし、受賞をかっさらう。その受賞シーンの彼女。でかい!筋肉質!なるほどな〜このパワーと知性があれば、稚拙な物語「アバター」如き赤子の手をひねるより簡単。

で、話は86年発表のだんなの「エイリアン2」。ヒロインの名はリプリー。また、彼女がとてつもなくタフで強い。エイリアン軍団にへなへなに萎んでゆく海兵隊兵士を統率し、うじゃうじゃ出てくるエイリアンと戦う。おそろしくカッコイイ!この姿、だんなから見た愛妻の、日夜アホバカなハリウッドの貸本の亡者と奮戦努力する姿を投影した、愛妻へのオマージュに近いものと私は読んだ。

しかし、ナイーブな感じのだんなは、この強い妻に耐えきれなくなり、そして憎しみが芽生えた、と私は推測する。で、リプリーがエイリアンにバリバリ食い殺されるラストにしてしまおう、と考えた。しかしながら、はいリプリーはエイリアンに食べられました。めでたし、めでたし、なんて映画はハリウッドの論理では許されないばかりか、観客にも背をむけられてしまう。で、ラストは、クィーンエイリアンとリプリーの宇宙船での壮絶な殴り合いの末エイリアンが船から放り出され、一件落着となる。この落ちてゆくエイリアン、いつか、この妻に放り出される監督自身のみじめな姿が投影されている。

と思っていたのだが、再度データを調べると、この二人が結婚したのはこの映画の数年後だったことが判明した。つまり私の推論は見事外れたことになる。しかし、この時の彼の女房は、ゲイル・アン・ハードという映画プロデューサー。ハリウッドでは数少ない女性映画製作者。やっぱ、タフな女性なんだろう、と考えると私の推論はあながち間違ってないように思える.。

 この映画のラストを観るたびに、俺はなんて女に惚れてしまったのかと、苦しみながら堕ちてゆくキャンロンがオーバーラップされ涙を禁じ得ない、つらいSF映画になってしまった。(店主)

 

Tagged with:
 

最初のお断りしておく。いかなる理由でも、戦争は認めないのが私のスタンス。しかし、敬礼の出てくる映画ー即ち戦争映画は大好きなのだ。日頃はマイナーな映画ばかり追っかけているのに、DVDコレクションはその手の戦争映画ばかりなのだ。

 スピルバーグ作品「プライベートライアン」。亡き上官への深い追悼を込めた敬礼シーン近くなるともうだめ。じわ〜っと涙が(もう10回近く観てますが、毎度…)  

 あるいは「眼下の敵」。国こそ違えプロとしの力量を認め合った二人の艦長が交わす敬礼。「カッコイイ」。おそらく、その手を上げた瞬間の静かな佇まいに、少年時代からの艦長という職業への憧れと羨望がよみがえる。

 「ファイナルカウントダウン」という作品があった。アメリカ海軍の空母がタイムスリップして、真珠湾攻撃に向う日本軍と衝突する荒唐無稽なお話。そのラストで空母離陸する戦闘機のパイロットが、コックピット内からチラット地上支援員に敬礼しながら飛び立つシーンがあり、このシーンみたさに何十回も観てしまい、ビデオテープはぼろぼろになってしまった。

 と、おばかな行為を未だに飽きもせず、繰り返しているのだが、一つ教えられた事がある。それは、明らかな意志、気持ちを込めた身体行動、例えばお辞儀の所作。少なくとも、お店に来て頂いたお客様には感謝の気持ちを込めた敬礼、じゃなくお辞儀を忘れてはいけないという事を艦長や兵士から学んだこと。けだし、映画とはすごい存在ではある。(店主)

Tagged with:
 

「レティシア」と聞いて、フランス映画を思い起こしたあなた、そうです。レティシアとはロベール・アンリコ監督の『冒険者たち』(1967年)のヒロインの名前です。この映画は男二人、女一人の三角関係を軸に、彼らが夢を追いかける甘く切ない青春映画です。

それまで、イケメンのアラン・ドロンの切り抜きを空き缶にためていた中学生は、この映画から男は顔とちゃう!と、リノ・ヴァンチェラの魅力にはまりました。私にとっては、現在に至るまで40年以上映画を見続けるきっかけになった作品です。目を閉じれば、テーマ音楽の口笛が聞こえてきます。

そして、そして、あの時のジョアンナ・シムカスの可愛かったこと。素敵なジョアンナ・シムカスが演じたレティシアという名前は、それから長い間忘れることはできませんでした。

ジョアンナ・シムカスは『冒険者たち』や『オー』など4〜5作品に出演した後、輝いている真っ最中に、黒人俳優シドニー・ポワティエと共演したのをきっかけに同棲。さっさとスクリーンから去りました。私が高校生くらいのことだったと記憶しております。

数年前、アカデミー賞の授賞式で、シドニー・ポワティエが名誉賞かなんかをとった時、スピーチで、「美しい妻と子供達に感謝する」と言うと、カメラがその妻ジョアンナ・シムカスを捉えました。わ、まだ二人は一緒やったん!と画面に向って叫んだものです。(女房)

Tagged with: