寒くなってきてなかなか寝床から出られない朝、目覚めに聴くと、しゃぁないなぁ〜起きよかと気合いが入るのが、憂歌団の「お政治おばちゃん」という陽気なブルースです。まずは、歌詞をご紹介。

「あたしゃ天下のお政治おばちゃん あたしゃ天下のお政治おばちゃん 心は正義の血で燃えている あたしゃ差別は許さない 女性差別は許さない 恋などしている 暇はない テレビに差別はないかいな ラジオに差別はないかいな レコードに差別はないかいな あたしゃ天下のお政治おばちゃん

こんなあたしも過去はある こんなあたしも過去はある 涙無しでは語れない 男をいびって50年 文句をたれて50年 いいたいほうだい50年」

と続いていきます。何やら、社会派の歌に聞こえてきますが、そこは憂歌団のボーカル木村秀勝のルーズでブルース感覚一杯の歌い方です。関西人ならではのノリで、ファン、ファン、ファンという気分にさせてくれて、憂鬱な気分もどこかへ消えていきます。

この曲の入った憂歌団の「セカンドハンド」がアナログ(1800円)、CD(2500円)を同時に入荷しました。独特のアイロニーと哀愁感一杯の彼らのサウンドは、誰にでも(特に関西人なら)するりと、あるいは、ゆるりと心の中に入ってきます。憂歌団初期の本場ブルースの名曲をカバーした「Blues 1973~1975 」(CD1600円)も入荷中です。こちらは、日常の雑事を片付けるときに最適です。思わず首をフリフリ、ステップを踏みたくなります。

 

 

★音楽専門出版社アルテスパブリッシングと取引を開始しました。藤井丈司「YMOのONGAKU」(2750円)、「ミシェル・ルグラン自伝」(3080円)、村井康司「現代ジャズのレッスン」(2090円)、岡田暁生「すごいジャズには理由がある」(1980円)、長谷川町蔵✖︎大和田俊之「文科系のためのヒップホップ入門」、「 文科系のためのヒップホップ入門2」(どちらも1980円)、そして、ピーター・バラカン「魂のゆくえ」(1980円)を入荷しています。

ミシマ社から「バンド クリープパイプ」(新刊2090円)が出ました。

これは、「インタビュー」(ミシマ社2420円)や「善き書店員」(ミシマ社1980円)等の著者木村俊介が、今年バンド結成して10周年を迎えるクリープハイプのメンバーに、インタビューしたものです。4人のメンバー一人一人から丁寧に話を聞き取り、インディーズアルバムの成功とメジャーデビュー、解散の危機、バンドへのバッシング、ミュージシャンとしての身体的トラブルなど、10年間の様々な困難の中で、彼らが何を感じたのかが語られています。

しかし音楽に限らず、表現の場で問題にどう対処し、乗り越え、時にはその渦中で自分自身をどう見失ってゆくのか、他者とのコミュニケーションの難しさ、表現者として、人間としてどう伸びてゆくのかを、インタビューから浮かび上がらせた本だと思います。

フロントマンの尾崎世界観(ボーカル・ギター)は、こんなことを話しています。

「他流試合のような場面では、とくに積極的に『自分のなにがダメなのか』を人に訊いたり、確認し たりしています。そのあたりの勉強は、必ず音楽に返ってくると思っています。 そうやって『知らない、わからないという自分の至らなさ』に向き合うプロセスのなかでは、気づくことがいくつかある。その新鮮さを、かつてそうだったように音楽で感じられるのが、ほんとうはいいのですが。でも、十代の頃からバンドばかりずっとやってきたなかでは、それなりに音楽というものの本質が見えてきています。」

これは、一人の若者がいかに謙虚に自分の表現に向き合っているのかを、木村が聞き出した場面です。尾崎は、この春から夕方の放送のラジオ番組でパーソナリティーを担当しています。リスナーの年齢層が高いところで、さらに研鑽しようとしています。初回のゲストは落語家の立川談春さん。立川の話し方を聞いて、彼はこう語っています。

「談春さんは『自分の言葉は、確実に伝わる』という確信を持ちながら喋っているように見えるんです。そこを見習いたいと思って、話をさせてもらいました。」

彼の学びへの姿勢はとても素敵です。「何事も勉強」こんな古臭い言葉が新鮮な輝きを伴って蘇ってくる一冊です。

クリープハイプの曲では「ただ」がオススメです。youtubeで聴けます。

 

 

 

音楽を聴きながら毎日製作しているという9cueさん。骨太なアコースティックなものが大好き。同じ趣味のレティシア店長と話が盛り上がり、本屋の壁いっぱいに9cueワールドが広がりました。お気に入りのアルバムから、想像の翼をガーンと羽ばたかせて、ユニークなヤツらが、レティシア書房に3年ぶりにやってきました。

9cueさんがチョイスしたアルバム、ミュージシャンはアメリカンロックに親しんできた人にとっては、よくご存知のものばかりですが、華やかな音楽業界から見れば、地味で渋めです。アメリカ音楽のルーツへのリスペクトと、アーテイストとしての表現力、作風でそれぞれに頑張ってきたミュージシャンばかりです。呑んだくれの音楽詩人が、深夜一人で人生の哀歌を歌い続けるトム・ウェイツ。生まれ故郷を一歩も出ずに愛する音楽を奏で、そのまま天国へ行ってしまったJJ.ケイル。女性シンガーとして時代の最先端を走り続け、独自の世界を表現してきたジョニ・ミッチェル。アメリカだけでなく、日本の多くのシンガーにも影響を与えてきたジェイムズ・テイラー。姉御肌なんだけど、キュートな魅力一杯のマリア・マルダー。ノーベル文学賞を受賞しても、ひねくれぶりとマイペースは変わらないボブ・ディラン。アメリカ南部の荒くれ魂と強い女ってこれよね、と豪快に疾走するテデスキ&トラックバンド。(写真上)そして御大ローリングストーンズ。

そんな彼らのLPアルバムの横に、9cueさんが作り上げた独自の作品がディスプレイされています。音楽への限りない愛と、そんな音楽を通してこんな作品を作れる幸せが、本屋全体に漂っています。音楽のこと知らなくても、9cueさんが作り上げたキャラクターを見ているだけで、楽しくなってきます。閉店後、店の中でヤツらが音楽に合わせて、体を揺らしているかも。

9cueさんの作品はなんだか男前でとてもカッコイイんです。ザクっザクっと直線的に切り出した木に、渋い着色を施し、蒐集している古釘やネジなどの金属や革で作った小物を組み合わせ、独特の全く見たこともないようなヒトや鳥や動物を作り上げます。彫刻でもない、人形でもない。可愛いけれど甘くない。ヤツらはしぶとくリズムを刻んで生きています。

「人生のレールは生まれる前からもう既に敷かれているように感じる部分もあれば自分の力で敷いているのだよ感じる部分もある。ー中略ーそして、レールの上を走る汽車は自分自身で動かす。乗車してくれるのはやっぱり愛する者達なのだと思う。このアルバムはやっぱり信仰心について深く考えさせられます。自分は無神論者なのですが、運命の赤い糸は信じます。何か見えない力のようなものも。」これは、ボブ・ディランのアルバム「SLOW TRAIN COMING」(写真右)につけた 9cueさんのコメントです。丁寧に生きて、創作してきた 9cueさんの世界に触れてみてください。きっと元気になりますよ。

なお、素敵なペンダント(写真下・11000円〜)も沢山作ってこられました。ぜひ手にとってみてください。(女房)

 

 

 

「暮らしのリズム」展は10月16日(水)〜27日(日)12:00〜20:00 月曜定休日(最終日は18:00まで)

 

 

 

 

 

 

ユニークな企画の本「平成日本の音楽の教科書」(新曜社/古書1200円)を読みました。著者は大谷能生。サックス奏者、作曲家、そして音楽評論を中心にした評論家、最近では東大でジャズ理論を教え、「東京大学のアルバート・アイラー 東大ジャズ講義」と題して本にしています。

そんな華々しい活躍をしている人が、この時代、義務教育の音楽の授業で何が教えられているかという、極めて地味な検証作業を本にしました。

ところで、小・中学校時代の音楽の授業が面白かったという記憶がありますか。私は死ぬほど嫌いでした。いけずな女教師に猛反発した覚えがあります。役に立たない授業=退屈、になってしまいました。そう思った人も多かったはず。だから本書は、本当にそうなの?と、「『音楽の教科書』をアタマからトータルに、予断を持たず、一つの読み物として、いわばひらたく読んでみる事」から始めます。

昨今の高校の音楽の授業で使用する教科書にどんな曲が載っているかご存知ですか?

シューベルト、ミスチル、嵐が歌った「ふるさと」、荒井由実、「新世紀エヴァンゲリオン」オープニング曲、宮城県の民謡、現代音楽の武満徹、朝鮮半島で歌われている「トランタリョ」等々、新旧ごちゃ混ぜの世界です。う〜ん、なんだか凄い世界です。

まず小学校の音楽から始まります。思い出してください。小学校時代、必ず歌わされた歌がありました。それは、文部省が選定しているのですが、明治から大正、昭和初期の曲ばかりで戦後の曲はありません。

つまり、「敗戦時の大人が子供の頃に学校で習った歌 ーそれが『尋常小学校唱歌』なわけですがー の中から、戦後の教育体系のなかでも問題がないと判断された歌を復活させたものが、現在の『歌唱共通教材』であり、ここにははっきりと戦前の、という事は明治初期からの音楽教育が引き継がれているという訳です」

だから、退屈なんですね。著者は徹底的に音楽の教科書を読み込み、そこに何が求められているのかを探って行きます。決して、この時代の音楽教科書を批判的に見ているわけではなく、私たちが何を学んでゆくかを論述して行きます、しかも極めて平易に。

ここで、興味深かったのは、いわゆる音痴についての著者の考え方です。

「自分で自分のことを『音痴だ』と思っている人の多くは、音程よりもむしろリズム、特に休符の位置できちんと音を休むことができていない(ということを自分でわかっていない)のが原因ではないか」

様々な発見が、この本にはあふれています。音楽の歴史や、理論に全く触れずに、私たちが受けてきた音楽授業の歴史を振り返らせてくれる本書は、ウルトラC級の離れ業的書物です。

「音楽は、社会的には、いまは完全に『売り物』として扱われています。しかし、学校のなかでは「崇高な芸術』であり、また、『取替えがきかないわたしの個性の表現』として教えられます。この三つは互いに相矛盾していますが、そのどれもが等しく、『音楽』の特質であるのです。」音楽をズバリ言い切った文章です。 

 

♫トーク&ライブのお知らせ  

7月13日(土)18時30分より 『澤口たまみ(語り)石澤由男(ベース)ライブ』

今年1月、当店で行われた「宮沢賢治愛のうた」(澤口たまみ著)出版記念イベントのお二人のトーク&ライブが再びやってきます。澤口たまみがさんが岩手のイントネーションで賢治作品を朗読。ベーシスト石澤由男が伴奏を添えます。 朗読作品は、岩手の自然を見つめ、野原や林からおはなしを貰ってきたという「鹿おどりのはじまり」他を予定。

●18時受付開始  18時30分より (2000円)ご予約ください。

                     075−212−1772(レティシア書房)


 

 

人に生きる希望を与える映画って、ブレット・ヘイリー監督・脚本の「ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた」みたいな作品のことだと思います。97分間、映画の中の父娘と共に人生を楽しんでください。

ニューヨークはブルックリンの海辺の小さな街レッドフックで、うだつの上がらないレコードショップを営む元ミュージシャンのフランクと、将来の夢のためにLAの医大を目指す娘サム。サムが幼少の時に、フランクの妻は事故で死亡したため、一人で娘を育ててきました。いい加減な感じでだらだらと、17年間レコードショップを経営してきましたが、赤字続きで遂に店を閉める決心をします。ある夜、サムが作っていた曲を見つけセッションを開始して、フランクは娘の音楽の才能に気づきます。映画のタイトルにもなっている”Hearts Beat Loud”という曲を、二人が完成させてゆく様が実にいいのです。疾走感溢れる音楽に身も心もうウキウキしてきます。

あまりの曲の良さに、フランクは勝手にSpotifyにアップロード。それが人気の曲を集た”New Indie Mix”にリストインされ、たくさんの人の耳に届くことになります。大喜びして、娘とバンドを組もうと動き出すフランクですが、サムにとって描く未来は医者であって、音楽家ではありません。映画は、二人のすれ違いを描きながら、レコード店を閉める日、たった一度だけのライブを行います。わずか3曲だけのライブですが、どの曲も素敵で映画館でステップしたくなりました。

店内でタバコを吸って、客から注意を受けるようなフランクでしたが、この一夜のライブで娘を送り出し、大切にしていた音楽から離れて新しい生き方を見つけていきます。それが、友人が経営するバーで働く事でした。ラスト、女友だちにお酒を出しながら音楽の話をするところで、カメラは、「良かったね」とでも言いたげに、ゆっくりと後退していきます。「いい加減な人生」が「好い加減な人生」になっていくんだというチャーミングな終わり方です。

私は過去3回、レコードショップを閉めた経験があります。二度目、三度目はチェーン店の閉鎖だったので、従業員の解雇という苦い思い出しかありません。
けれど、最初の10坪くらいの小さな店は、当時のロックファン、ジャズファン、ディスコのDJのたまり場で、営業最終日、店の仲間やお客様とレコードを鳴らして、ビールを飲み続けました。懐かしく、そして甘酸っぱい思い出です。この映画の中で、フランクとサムが乾杯をするシーンで、父がその瞬間「ロックンロール」と言って乾杯します。私の小さな店でも、同じことを言った青年がいました。彼は今どうしているんだろうと、映画館を出た時、ふと思いました。

どの世界にも、ワン・アンド・オンリー、もう二度と出てこないだろう人物がいますよね。野球なら長嶋、歌手なら美空ひばり、俳優なら高倉健。ジャズの世界でいえば、デューク・エリントン、マイルス・ディビス、そしてビル・エヴァンスです。そのエヴァンスの生涯を描いたドキュメンタリー「ビル・エヴァンス- タイム・リメンバード」(京都シネマ)を観てきました。

元来ジャズはダンス音楽であり、踊りながら綺麗なお姉ちゃんを引っ掛ける手段でした。ご機嫌な気分にさせて、ホテルにしけこむというようなスケベ根性一杯の音楽でした。しかし、映画を見ればわかりますが、彼の演奏姿勢は特異です。猫背でピアノに向かい、ひたすら鍵盤だけを見つめるその姿からは、どうぞ私のことはお構いなく感がいっぱいです。

その音楽は、極めて美しく、ジャズとかクラシックとかいうようなジャンルを超えて、胸に突き刺さってきます。ストイックな音楽は、時にはのめり込んだリスナーの心を貫くような狂気に変貌することがあります。レコード店に勤務していた頃、ソロピアノアルバム「アローン」を買った女性が、夜中に聴くと死にたくなると言ったことを今でも覚えています。

映画は、54年の生涯を追いかけるのですが、この人が自分の死を意識したのはいつ頃なのかということを考えました。ヘロイン中毒から脱出し、最愛の人と結婚するも、女グセの悪さから彼女が地下鉄に飛び込んで自殺した後なのか。再婚して子供もでき後半の人生を始めたものの、またクスリに手を出してしまい、妻と子供に去られた時なのか。或いは、愛する兄が拳銃自殺した後なのか。定かではありませんが、映画の後半に登場する彼の横顔には明らかに死神が取り付いています。しかし、自らが作り出した結晶のように美しい音楽は捨てませんでした。病魔に蝕まれた中で録音された”The Paris Concert “(中古CD/1000円)は、ツアーのピークを録音したものです。

エヴァンスといえば”Waltz for Debby”というアルバム(中古CD/1350円)を推薦する人はほとんどですが、私ならミッシェル・ルグランがオーケストラアレンジと指揮で参加した”From Left to Right”(中古CD/1600円)を推します。

ゴージャスさ、ロマンティシズム、美しいものへの憧憬が詰まった音楽がここにあります。

映画館に行かれる方は、満席で立見が出ていますので、早めにチケットを買い求められることをおすすめします。

 

★イベントのお知らせ

6月5日(水)より「世界ひとめぐり旅路録」展をされる小幡明さんが、14日(金)19時半より、FMひらかたパーソナリティー久保有美さんと一緒に「小幡明の旅の話アレコレ」と題したトークショーを当店にて開催します。(参加費1000円/要予約)

 

1983年7月24日、西武ライオンズ球場で大きなコンサートがありました。出演は、ラッツ&スター、大滝詠一、サザンオールスターズというビッグネームです。そこで二番目に出た大滝詠一のステージが、初めてCD化(1900円/中古)されました。彼の経歴や功績を、今更どうこう書くつもりはありませんが、彼と彼の仲間たちがいなければ、歌謡曲もポップスも、今日の音楽的進展はあり得なかったのは事実です。

コンサートは、意表をついた形でスタートします。山本直親指揮の新日本フィルハーモーニー・オーケストラが壇上に並び、フルオーケストラで、大滝のヒットナンバーを演奏し始め、全5曲、インストが続きます。おそらくサザンオールスターズのファンは退屈だったでしょうね。しかしインストでも、彼のラグジュアリーで叙情的なメロデイーを満喫できて、私は楽しく聴きました。「カナリア諸島にて」を飛行機の中で聞いたら、きっと旅の気分がぐっと上がる出来上がりです。

その後は、彼の代表曲の釣瓶打ちです。薬師丸ひろ子の「探偵物語」や、森進一の「夏のリビエラ」の英語バージョンなど、こんな曲も歌うんだなぁ〜という選曲で楽しませてくれます。そして、エンディングがまた大滝らしいというべきか、「夢で逢えたら」のフルオーケストラ演奏で終わるのです。普通なら、ラストナンバーで盛り上がるところ、いやはやのラインナップです。

さて、大滝と同じく日本の音楽界に多大な影響を与えている、細野晴臣もユニークなアルバムを出しました。彼が1973年に発表したソロアルバム「HOSONO HOUSE」をリメイクした「HOCHONO HOUSE」(中古CD2500円)です。73年発表のアルバムは、今でも若い世代から圧倒的な支持があって、じゃあもう一度リメイクしてみようか、となったみたいです。ただ、単なるリメイクではなく、全ての曲の歌唱、演奏、ミックス、プロデユースを細野一人でやっています。「HOSONO HOUSE」を愛聴していた人ならわかると思いますが、逆の順番で演奏していることに気づきます。全く逆の順序でスタートし、オリジナルで先頭に収録されていた曲が、ここでは最後に演奏されています。自分の音楽で盛り上がることを良しとしない、彼らしい盛り下がる音楽をお楽しみください。

なお、この二枚のアルバムのことを特集した「レコードコレクター」最新号も古書(400円)で入荷しています。お好きな方はまとめてどうぞ。

フランシス・レイ(18年11月死去)に続いて、ルグランも天国へ行ってしまったのか…….。若き日に観たフランス映画で、煌めくような音楽を届けてくれた方々でした。

誰もが知っているクロード・ルルーシュ監督「男の女」の、ブラジリアンテイスト溢れる音楽を作ったフランシス・レイ、ジャック・ドミー監督「ロシュフォールの恋人たち」でジャズテイスト一杯のスインギーなサウンドを楽しませてくれたミシェル・ルグラン。監督の力量はもちろんですが、この二人の作り出すサウンドは、おしゃれで華麗なフランス映画というイメージを、私に、いやあの時代フランス映画を観ていた人に、間違いなく刷り込んでくれました。

ルグランは、1932年作曲家のレイモン・ルグランの息子としてパリに生まれました。パリ国立高等音楽院で学び、1960年代に、ジャック・ドミー監督「シェルブールの雨傘」でカンヌ映画祭で最高賞を受賞して以来、映画音楽家として第一線で活躍しています。

「シェルブールの雨傘」は、ミュージカル映画としては異色で、セリフなし、全編歌と踊りで進行します。人気のある作品ですが、私はあまり好きではありません。それよりも、何と言っても「ロシュフォールの恋人たち」が断然いい。「バカラック、ルグラン、ジョビン」(平凡社/古書1300円)の著者、小沼純一は、この映画を「出会いと別れ、再会の物語だ。他愛もないといえば、充分すぎるほど他愛ないし、お伽噺めいている。ご都合主義と呼んでもいいかもしれない。」と手厳しい意見を書きながら、詳細にルグランの音楽を語っていました。

そうなんです、この映画はどこにでもあるメロドラマなんです。けれども、ドミーとルグランが、これ以上幸せになれない程の気分にしてくれるのです。私は映画館で追いかけ、ビデオを買い、ブルーレイを買い、さらに、CD、レコードまで買い集めました。

映画音楽の巨匠となってからは、ハリウッドにも進出して、多くの映画を担当。ベスト1は、ノーマン・ジュイスン監督スティーブ・マックィーン主演の「華麗なる賭け」でしょう。どちらかと言えば、無骨なイメージの強かったマックィーンが、憎めないやんちゃな少年がそのまま大人になったイメージで登場して、これ以上洒落た人物はないという姿を見せてくれました。ジュイスン監督の技巧的な画面処理と、やはりルグランの流麗なサウンドが大きかったと思います。

12月26日、ルグランが86歳でこの世を去った時、リステール文化相は「今朝、われわれはみな、ミシェル・ルグランの歌を口ずさんでいる」とTwitterに投稿しました。母国でもこんなに愛されていたのですね。

 

 

 

★レティシア書房 恒例「女子の古本市」は2/6(水)~2/17(日)です。出店者は女子ですが、もちろんどなたでもご来店くださいませ!今回も27店程にご参加いただきます。お楽しみに!

「女子の古本市」準備のため、4日(月)5日(火)はお休みいたします。


 

ビートルズの”ALL You Need Is Love”、邦題「愛こそはすべて」(1967年発表)という曲がかつて大嫌いでした。

リフレインで“All you need is love,All you need is love,All you need is love,love love is all you need love,love,love” と歌われると、「やかましい!」と叫びたくなったものです。多分、愛だ愛だ、とだけでええんかい?と単純に思っていたのが原因です。

ビートルズのアニメ映画「イエローサブマリン」に収録されている彼らの曲をすべて収録した「イエローサブマリン〜ソングトラック」が1999年発売されました。このアルバムに収録されている同曲を、何度も聴き直してゆくうちに、いや待てよ、この曲は奥が深いと思い直すようになりました。

音楽技術、表現、方法論どれを取っても、ビートルズ以上の音楽はないというのは衆目の一致する意見です。技術という点ではこの曲が、コラージュという美術的テクニックを見事に生かしています。作曲、リードボーカルは、J・レノン。最初にフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」が使われ、さらにバッハ「2声のインヴェンション番BWV779」、グレン・ミラー楽団の「イン・ザ・ムード」のイントロ部分が使われ、エンディングにはイングランド民謡「グリーン・スリーブス」が巧みにオリジナルメロディーにかぶさってきます。他にも使われているのかもしれませんが、私が言えるのはここまでです。

ところで、イギリス人のレノンが、わざわざフランス革命時に歌われた曲をなぜコラージュしたのでしょうか。「武器を取れ 市民らよ、隊列を組め 進もう 進もう!汚れた血が、我らの畑の畝を満たすまで!」という歌詞が象徴するような戦闘モード一杯の音楽です。多分、レノンはこのモードを皮肉りたかったのではないでしょうか。

「形にならないものを作ろうとしても無理さ 救いようのない人を救おうとしても無理さ そういう場合にには無力に等しい」と否定につぐ否定の後の「愛こそすべて 愛こそすべて 愛、愛があれば 何事もたやすくなる」と一転、ひっくり返る歌詞をぶつける不思議。その奥に光るレノンの平和への眼差しが見えてくる曲です。おそらく、異なった文化、人種など異種のものを否定しがちな今の世界で、最も歌われるべき歌でしょう。

このアルバムは、彼らのオリジナルアルバムではありませんが、複雑な音楽テクニックと多様な表現形態に満ちていて、ビートルズの傑作ではないでしょうか。今、当店にはCD(国内盤1300円)とアートワークの良さがよく分かるアナログ(レア!国内盤3000円)があります。

1970年にアメリカの雑誌「ローリング・ストーン」誌で行われたジョン・レノンへのインタビューをまとめた「ビートルズ革命」(片岡義男訳/古書500円)も入荷しました。ビートルズ結成から解散、小野ヨーコとの出会い、ポールとの確執等々、おそろしい数の質問に答えた一冊です。

フォーク・クルセイダーズのこの歌詞で、あぁ〜あの時代かぁ、と思い起こされる方は、まぁ50代以降の方ですね。深夜ラジオの「受験生ブルース」聞いて、寝ぼけた顔で学校に行っていたことを思い出します。

そんな世代の方に、ドンピシャの本が出ました。フリーペーパー「半径500メートル」を出している出版社union.aの、インタビュー集「京都のフォークソング」(山岡憲之著2160円)です。登場するのは、きたやまおさむ、杉田二郎、ばんばひろふみ、中川五郎、豊田勇造、瞳みのる(タイガース)、松本隆らのミュージシャン。そして60〜70年代にKBS京都で多くの音楽番組を担当し、高石ともや、フォーク・クルセイダーズ等を見出した河村輝夫等々、多彩なメンバーで、京都が関西フォークの拠点だった頃を懐古します。

中心にいたのは加藤和彦、きたやまおさむ、はしだのりひこの「フォーク・クルセイダーズ」でした。「帰ってきたヨッパライ」、「悲しくてやりきれない」、そして自主規制で放送できなかった「イムジン河」など、このバンドを知っている世代なら、今でも歌えますよね。

きたやまおさむは、本書でフォークをこう語っています。

「まずはフォークソングという思想。自然を歌うことや、『民衆が作った歌』っていうフォークの特徴、意味通り、それが思想として実体験とともに入ってくるわけだよ。『お前たちは自分たちの歌を歌えばいいんだ』みたいな話ですよ。」

普遍的なラブソングだけじゃなく、その時どんな風に時代を見つめていたのかが、重要になってきます、それが見事に昇華されたのが、北山修作詞/杉田二郎作曲「戦争を知らない子供たち」だと、私は思っています。

当時は、学生の数が圧倒的に多く、岡林信康や高田渡など多彩な才能を持ったミュージシャンが京都に集まり、そのうえ円山野外音楽堂や京都会館第二ホールのような受け皿がありました。歌う側にも、聞く側にもあった連帯感。京都の町はそれを支えていたのです。

豊田勇造が面白いことを言っています。「京都は京都の音楽を作ってた。東京のほとんどは、マイク眞木に代表される、スマートやけどあんまり現実味のないカレッジフォークでしたよ」

マイク眞木と言えば「薔薇が咲いた」。無味乾燥な音楽でしたね。KBS京都の河村輝夫も「東京はだいたい恋したの、夢だの、星だの、きれいすぎる世界を歌っていたけど、そういう歌詞は無難やね。」と振り返ります。

しかし、フォークの世界にも変化が起こります。「僕の髪が肩まで伸びて・・・」で始まる吉田拓郎「結婚しようよ」の発売です。この本の中でも、何人かがこの歌が変わり目だったと答えています。そして、時代はフォークからニューミュージックの時代へ。ユーミン、山下達郎、ハッピーエンド達が時代を引っぱります。アメリカンポップスの影響を大きく受けた彼らの音楽に、私もすぐさま飛びつきました。彼らの音楽の方が若く輝いていたと、今でも思っています。

 

★ 勝手ながら10月22日(月)23日(火)連休いたします。