店内で開催中のnakabanさんの「ことばの生まれる景色」原画展(14日まで)には、暑い中多くの方にご来店いただいております。

誠光社でも「nakabanの旅するブックシェルフ誠光社編〜もうひとつの『ことばの生まれる景色』」(15日まで)が開催中で、どちらも行かれている方が多いようです。どちらの書店にもnakabanさんデザインのスタンプを設置しておりますので、記念に栞に押していってください。

そんな折も折、ミシマ社から出来たばかりの新作絵本「ランベルコーヒー店」(2376円)が届きました。京都の老舗喫茶店「六曜社」のマスター、オクノ修さんが詩を書き、nakabanさんが絵を付けたもので、コーヒー好きな方には持っていただきたい一冊です。

夜が明け、人々が眠りから覚めて、仕事に向かうとき、そこに一杯のコーヒーがある。変わらない毎日の小さな幸せが、短い詩と、絵で描かれています。表紙の絵から淹れたてのコーヒーの香りが、立ち上ります。どこか架空の街、ランベルマイユ。

「ランベルマイユの コーヒー屋さんから 朝の香りがたちこめて 夢みていた 人たちが 今日の仕事を 始めるとき 来る日も来る日も また次の日も おなじ香りの コーヒーいっ杯 夢みていた 人たちに ふかい香りの コーヒーいっ杯」

nakabanさんの温かな眼差しが、まだ暗い夜明けから、やがて明るい朝に人々が動き出す情景を静かに見つめます。静かな幸せ感。「おなじ香りの コーヒーいっ杯」という詩に、きっと何年もこの街で毎朝コーヒーを入れてきた喫茶店のマスターが登場します。美味しそうな香りの立ち込める中、人々の声や新聞をめくる音が聞こえてきそうです。

詩を書いたオクノ修さんさんはシンガーソングライターとしても、音楽好きの間では人気の方です。「ランベルマイユコーヒー店」は、ランベルマイユというオクノさんの心の中の街の、コーヒーの香る朝の風景を歌っています。この作品に絵をつけることに対してnakabanさんは、「ミシマ社の本屋さんショップ」でこう語っています。

「長い人生のうちで一日の始まりがつらい日も多い。でも一杯のコーヒーのその香りに包まれているうちに、いつの間にかそのつらさから救われてしまっている、ということはないだろうか。僕にはある。それに、どこかで同じようにコーヒーをすすっているひとがいると想像すれば、不思議と呼吸は深くゆっくりになる。きっとこの歌は、そのようなことを歌っている。オクノさんは謙遜するに決まっているけれど、世界中のかけがえのない朝に贈る、これはとても大切な歌なのだ。 絵本版の「ランベルマイユコーヒー店」はそのようなことを思いながら制作しました。 だれかの朝からだれかの朝への贈り物になったら嬉しいです。 」

「だれかの朝への贈り物」という言葉がグッときます。

 

★明日13日は、ライブイベントのため、18時にて閉店いたします。ご了承ください。レティシア書房店主

 

東京の書店「Title」店主辻山良雄さんの「ことばの生まれる風景」(ナナロク社/2484円)は、とっても素敵な本です。辻山さんの文章は、本への愛情に満ち溢れています。そこで紹介されていた作家の多くは、うちの店長のリスペクトしている方々で、レティシア書房店長日誌に思いをこめて紹介しました。そのブログをコピーして辻山さんに送ったそうです。そうしたら、なんと辻山さんからご連絡をいただき、「nakaban(なかばん)さんの原画展を全国で巡回していますが、そちらでされますか」というご提案をいただきました。願ってもない話に我々は飛びつきました。

そうして実現したnakabanさんの原画展が、本日より始まりました。

ナナロク社の担当川口さんとメールのやり取りを重ね、「ことばの生まれる風景」の中の全ての原画を見てみたいという欲望を抑えて、選んだ12点の絵画。本の印刷もレイアウトも素晴らしいのですが、改めて原画の持つ力強さに、なんというか心打たれました。重ねられた色の深さ、筆の運び、ことばの中から一枚の風景を描くという力技。

店の扉の近く一番初めには、星野道夫「旅をする木」を飾りました。これは、星野道夫が大大好きな店長のたっての希望です。古本屋の本棚の前で手に取ったアラスカの写真集に見入る青年の姿。その周りにはアラスカの大自然が広がり、彼の未来が見えています。夏目漱石「門」は、都会の車窓の景色。原画で見るとより暗がりの深さが際立ちます。深沢七郎「楢山節考」の雪景色は寒さが滲みます(私はこの絵が大好きです)。エンデ「モモ」は、より身近に感じたくて柱に掛けました。夜、一人で建物の中に座り静けさに耳を傾けるモモを満天の星が見守っています。どの作品もいつまでも見ていたい。願わくはずーっとここに居て欲しい。

初日に辻山さんが来てくださって、一緒にゆっくり展示を見て「京都だから『方丈記』を入れても良かったですね」と言われ、迷った末にやめたことをちょっと後悔しました。

展示前の日曜日には、nakabanさんも立ち寄ってくださいました。実はnakabanさんの原画展(やはり辻山さんとのコラボです)は「誠光社」さんでも、昨日から同時開催中なのです。日曜日はそちらの搬入だったのだそうです。それにしてもnakabanさんの原画展を私たちの本屋で出来るとは思ってもいなかったので、とてもとても嬉しいです。さらに「ことばの生まれる風景」の著者お二人ともにお会いできて、幸せでした。店長日誌を辻山さんにお送りして本当に良かった。発信してみるもんですね。(女房)

●nakabanさんオリジナルスタンプを、しおりに押してお持ち帰りいただけます。このスタンプは、原画展をされた各書店のイメージに合わせてnakabanさんが作ってくださいました。ちなみにレティシア書房のデザインは女性の横顔。いいでしょ!

 

♫トーク&ライブのお知らせ  

7月13日(土)18時30分より 『澤口たまみ(語り)石澤由男(ベース)ライブ』

今年1月、当店で行われた「宮沢賢治愛のうた」(澤口たまみ著)出版記念イベントのお二人のトーク&ライブが再びやってきます。澤口たまみがさんが岩手のイントネーションで賢治作品を朗読。ベーシスト石澤由男が伴奏を添えます。 朗読作品は、岩手の自然を見つめ、野原や林からおはなしを貰ってきたという「鹿おどりのはじまり」他を予定。

●18時受付開始  18時30分より (2000円)ご予約ください。

                     075−212−1772(レティシア書房)

 

 

7月3日(水)より、「ことばの生まれる景色」原画展が始まります。この本は、以前ブログでも紹介しましたが、東京の書店「title」店主、辻山良雄さんが書かれた本です。店主が選んだ作家作品世界をnakabanさんが、描いています。

nakabanさんは、1974年広島生まれの画家。絵本だけでなく、本の装丁、アニメーション制作など幅広い活動をされています。最近の装丁では、山尾省三の二冊「五月の風 山尾省三の詩とことば」(野草社2484円)、「火を焚きなさい」(野草社1944円)が、印象的でした。

絵本も素敵で、今回ご紹介するのは、「ぼくとたいようのふね」(BL出版/古書1100円)と「よるのむこう」(白泉社/新刊1728円)です。「旅する」ことをテーマにしているnakabanさんらしい作品です。

「ぼくとたいようのふね」は、少年が夜中、小さな船を持って川に行くところから物語は始まります。「みずにうつった つきのうえにふねをうかべた」少年は、「いってらっしゃい ちいさな ぼく」と言いながら船を送り出します。少年の分身が乗っているかのように、船は川を滑りだします。波を越え、未知の世界へと向かいます。朝を迎えると、小さかった船は、不思議なことに大きな客船となって、さらに航海を続けます。爽やかな風が吹き込んでくるような空と海の絵がいっぱいに広がります。

「よるのむこう」は、帯に「静かな夜、旅に出るような気持ちで、そっとめくってください。ページという車窓を、宝石のように深く美しいシーンが流れてゆく大切な時間に開きたい、大切な人に贈りたい絵本です」と書かれている通り、幻想的な絵本です。「てがとどきそうな あお まよなか れっしゃにゆられ あおいゆめをみていた まどのそとに ひかりが ひとつぶ ふたつぶ」と詩的な言葉が、旅へと連れ出してくれます。「銀河鉄道の夜」のような不思議な世界の入口。深い緑と、濃い青色が支配する絵の中に溶け込んで、次元を超えた旅に誘われます。

nakabanさんの「青色」は、引き込まれるような魅惑的な夜の深い色合いと、夜明けの海や緑の大地に爽快な風が吹き抜けいくような透明な色合いが、どちらも本当に素晴らしいです。

原画展までには、あと数冊入荷予定しています。お楽しみに!

 

●なお、7月1日(月)〜15日(土)誠光社で「nakabanの旅するブックシェルフ誠光社篇〜もうひとつの『ことばの生まれる景色』〜」が開催されます。nakabanさんの世界をお楽しみください。

 

♫トーク&ライブのお知らせ  

7月13日(土)18時30分より 『澤口たまみ(語り)石澤由男(ベース)ライブ』

今年1月、当店で行われた「宮沢賢治愛のうた」(澤口たまみ著)出版記念イベントのお二人のトーク&ライブが再決定。澤口たまみがさんが岩手のイントネーションで賢治作品を朗読。ベーシスト石澤由男が伴奏を添えます。     朗読作品は、岩手の自然を見つめ、野原や林からおはなしを貰ってきたという「鹿おどりのはじまり」他を予定。

●18時受付開始  18時30分より (2000円)ご予約ください。

                     075−212−1772(レティシア書房)


 

一般の書籍流通ルートに乗らなくても、良書を出している出版社の本を、オープン時から置いて来ました。ミシマ社、夏葉社、土曜社、ビレッジプレス等々、いつもいい本を届けてくれます。

一方、小さいながら志のある本を作っている、出版社ともおつきあいの窓口を広げてきました。先日、左京区図書館で装丁家の矢萩多聞さんと、本についてのトークショーに参加させていただいた時、我が国の出版社の大半が数人で経営している実態をお話ししました。

ナナクロ社は、九州にある宅老所「よりあい」の悲喜こもごもの日々を描いた鹿子裕文著『へろへろ』(1620円)以来のお付き合いです。その後、谷川俊太郎『幸せについて』(1080円)『バウムクーヘン』(1404円)、熊本県にある「橙書店」店主田尻久子著『猫はしっぽでしゃべる』、東京の新刊書店「Title」辻山良雄著『ことばの生まれる景色』(2484円)、そしてコミック「ニューヨークで考え中」でブレイクした近藤聡乃著『不思議というには地味な話』(1404円)など、本好きには120%満足できる傑作です。書籍に携わる人たちの魂をすくい上げた作品ばかりで、もちろん私の本棚にも並んでいます。

屋久島に住み思索を続けた、山尾三省の著作を出している野草社とも取引を始めました。『火を焚きなさい』(1944円)を初めてとして、『新版狭い道 家族と仕事を愛すること』(2376円)、『新版 野の道』(2160円)も山尾の傑作でしょう。今回入荷したものでは、野上ふさ子著『アイヌ語の贈り物』(1944円)がオススメです。

当店で、トークショーをしてもらった澤口たまみさんの『宮沢賢治愛のうた』(1944円)を出している夕書房も、まだ数冊しか出していませんが、いい本ばかりです。がんばって欲しいと思います。

先程紹介した、橙書店の田尻久子さんの新作『みぎわに立って』(3月20日発売2052円)は、女性一人でやっている里山社という出版社が出します。これからどんどん仕入れていきます。

私は書店をチェックする時、このような志のある出版社をどういう風に扱っているかを見ます。全く置いていない大型書店もあれば、チェーン店でもきちんと平台に並べているところもあります。ロクでもないヘイト記事満載の書籍をどかーんと並べている書店が多い中、いい本を何とか読者に届けようとしている店を見ると、ホッとします。因みに新刊書店に勤務していた頃、この手合いの雑誌を一冊だけ出して、あとは全て返本してワーストの売り上げを記録しました。当時の商品部の皆さん御免なさい……。

 

⭐️「ことばの生まれる景色」で挿画を担当したnakabanさんの原画展を、ナナロク社主催で7月3日(水)〜14日(日)に当書房で開きます。同時にご近所の書店でも、nakabanさんの作品展の企画も進行中です。乞うご期待を!