著者のモトムラタツヒコは、福岡を拠点に活動しているグラフィックデザイナー。動物をモチーフにした点描画の作品展も行なっています。2018年、東京で個展を開いたとき、荷物が増えるので少しでも軽くするために、いつもなら最低二冊はバッグに入れる本をやめて、「断読」状態で過ごします。ところが、心が落ち着かなくなり、活字が読みたいという渇望が大きくなってきたのです。

「僕は読書という行為が、いかに我が身にとって日々の精神の安寧を、思考の柔軟性を支えているかを思い知ったのであった。」その後間もなく、「読書の絵日記」を描き始め、一冊の本になりました。それが「モトムラタツヒコの読書の絵日記」(書誌侃々房/1650円)です。

読んだ本の表紙が独特のタッチでイラストになっています。まずイラストをじっくり眺めてください。書物への深い愛情が伝わってきます。そして、書名の横にジャンルが書かれていていますが、「プロレス」というジャンルでアカツキ著「味のプロレス」が取り上げられています。表紙絵の横に「まず猪木の延髄斬りを『この角度』で描くことに大いなる味わいを感じてしまう」と註釈が入っています。プロレスの本にはあまり興味ないので、これが延髄斬りなのかと思いながら、手書き(そう、文章は全て手描き文字なのです!)でぎっしり書き込まれた文章を読んでみると、著者のプロレス愛をしみじみ感じます。

ジャンルは多種多様です。「画文集」の安野光雅「らんぷと水鉄砲」があるかと思えば、「漫画」の白土三平の「シートン動物記」があります。「文芸」として、ケストナーの「飛ぶ教室」とスタインベックの「赤い子馬」が両面びらきで並んでいたりします。

所々に、番外編として映画や音楽の紹介が挟み込まれています。その中に、農場に生きるブタの日々を追いかけたドキュメンタリー「グンダ」を見つけました。私もこのブログでご紹介しましたが、モトムラさんも傑作だと評価していて、距離が縮まった気がしました。当店に最近入荷した、パオロ・コニュッティの「フォンターネ山小屋の生活」も取り上げられていました。私も読もうと思っていた一冊。

パラパラとめくっているだけで、実に楽しい読書案内です。