panpanyaが描く世界はとても不思議です。登場する人物たちは、今日マチ子のコミックの主人公たちの様に、透明で全く厚みのない造形なのですが、背景になる町の様子は、徹底的に描きこんであります。新作「模型の町」(白泉社/新刊1070円)も、その世界に変化はありません。

表題の「模型の町」4部作は、同級生が自由研究で自分たちが住む町のジオラマをつくりあげたのを見て、主人公の少女が町を巡るもの。模型は、牛乳パックで家を、マッチ箱で自販機を、ティッシュの箱で団地を、それぞれ見立ててできています。この「町」が主人公のコミックといっても差し支えありません。何か事件が起こるわけでもなく、模型と、実際の町を比較するだけのお話なのですが、なぜか面白い。

この作家、ひょっとして町歩きオタクか?特徴のないどこにでもある町の情景を、全く新しい視点で描き出してくれます。近所の通りでも歩いてみようか、という気分にさせてくれます。

ほかに「ここはどこでしょうの旅」シリーズというのも、何作か収録されています。こちらは女の子と白い犬が、全く知らない町にひょっこりと現れて、ここはどこだ?何ていう町?ということを調べて、やはり町を彷徨うのです。

panpanyaの作品は、熱心な愛読者になるか、全く読まないかはっきりと分かれると思います。私は、最初から好きでした。「蟹に誘われて」「枕魚」「魚社会」とかタイトルだけでも??な作品など、のめり込みました。

シュールで、幻想的で、なのに何だか妙にリアルな世界。異次元の世界に迷い込んだ感じをぜひ楽しんでいただきたいものです。