東日本大震災の翌年2012年、3月6日にレティシア書房は開店しました。おかげさまで11年、なんとかやってまいりました。改めて御礼申し上げます。

12年目に入って最初のギャラリーは、山中さおりさんのペーパークイリング展です。山中さんはなんと開店の年から毎年、この小さな本屋のギャラリーで個展をしてくださっていて、今回で12回目になります。写真上の「花言葉を思う」は最新作。

展覧会の度に「ペーパークイリング」の説明をしているのですが、この紙工芸はもともと中世期にイギリスで生まれたもので、聖書を製本した際にできた細長い紙の切れ端を、鳥の羽根(quill:クィール)でクルクル巻いて宗教画や宗教道具に装飾したのが始まり。現代では、世界中でアート、ホビーとして楽しまれています。(現在は鳥の羽根の代わりの用具を使います。)

11年前、初めて「ペーパークイリング」を見たとき、気の遠くなるような作業の積み重ねに驚きました。そして、山中さんが技術力をつけてどんどん上手くなっていく姿を見てきました。振り返れば、初心者の域を出ない時期に最初の個展をして下さいましたが、その時の勢いのある可愛い作品を思い出します。次の年には写実的な花を作ることに挑戦したり、美しい色使いが命の「ペーパークイリング」の魅力を封じ込めて白一色で雪をイメージした作品を壁いっぱいに並べたり(第9回個展)と、意欲的な展覧会を続けて来られました。昨年の「私的クイリング植物図鑑」は、その集大成だったと思います。彼女の几帳面な仕事と、文学少女のまま大人になったような詩的なところが相まって、独自の路線を開拓されたなと思ったものでした。2〜3㎜の紙を巻いて作り上げる美しい花や果物。一体何十万個のパーツをクルクル巻いてきたことでしょう。

今回は、これまでの個展で発表した代表的な作品を並べています。各個展のメインを飾ったいわば4番バッターばかり。これらの作品は入札制で購入できます。もし買いたい作品があれば、値段をつけて申し込んでください。一番高値をつけていただいた方に作家からご連絡いたします。よろしくお願いいたします。

ミニフレーム(700円〜)、ウッドピンチ(300円〜)やキーホルダー(1000円〜)などのグッズ、アクセサリーなどは、もちろんすぐにお持ち帰りいただけます。人気のグリーティングカード(1200円〜)もたくさん出揃いました。ペーパークイリングを作るためのキット(1300円〜)もあります。ゆっくり手に取ってごらんください。

作り続けてきた作品を一堂に並べることで一区切りをつけて、山中さおりの紙の世界がまた新たなフェーズに入っていくことを期待しています。(女房)

 

「山中さおりクイリング10年間」は3月8日(水)〜19日(日) 月火定休 13:00〜19:00