今年も、様々な優れた長編小説に出会うことができました。先月読み終えた滝口悠生「水平線」もそんな一冊でした(10/7のブログに書きました)。本日ご紹介するのは、遅子建(チー・ズジュン)の「アルグン川の右岸」(白水社/古書2250円)。著者は1964年中国生まれの作家です。
中国東北部の厳しい自然の中で、トナカイの遊牧と狩猟で生きてきたエヴェンキ族の物語です。「私」と書かれている主人公はエヴェンキ族最後の族長の妻。文明の波と共に、部族の長い遊牧生活から定住生活へと向かわざるを得なくなるまでを語っていきます。
多くの家族の誕生と死を見つめてきた「私」は90歳になっても、森の中でトナカイと暮らす道を選びます。元来、彼らはバイカル湖周辺に住んでいましたが、ロシア軍の侵攻に伴ってアルグン川右岸に移動してきます。当時、中国は清国でしたが、やがて中華民国へと変わっていきます。その後、満州国を設立した日本軍が彼らの地域に入り、部族の男たちを軍事訓練に連れ出します。やがて、中華人民共和国の時代となり、国は社会主義体制のもと医療や教育の充実のため定住生活を推進していきます。
全体は4章から成っていて、「朝」「正午」「黄昏」「半月」というタイトルが付いています。トナカイとともに広大な大地を渡っていった時代から、モンゴル自治区の一住民になるまでの「私」の人生と部族の運命を、描き切った350ページ余の力作です。
「わしらのトナカイはな、夏は、露を踏みながら道を進み、食べるときは花や蝶がそばで見守り、水を飲むときは泳ぐ魚を眺めるのさ。冬はな、積もった雪を払って苔を食べるときに、雪の下に埋もれている赤いコケモモを目にすることができるし、小鳥の声を耳にすることができるんだ。」
と、彼らにとって、トナカイがいかに高貴で大切な存在であるかを語ります。彼らの生活はとても過酷です。大人も子供も関係なく、多くの人たちが死んでいきます。それでも、この上なく優しく美しい表情を見せるのも大自然なのです。
最初は、あまり聞きなれない登場人物の名前に戸惑いましたが、部族の家系図が最初に載っているので、それを見つつ戻りつ読みましたが、飽きさせない小説です。読み終わった後も、トナカイを放牧させているエヴェンキ族の人々の姿が心に蘇ってきます。
1987年から作家活動をされているハセガワアキコさんの銅版画展は、2015年、2018年に続きレティシア書房では3回目になりました。
ハセガワさんの作るマチエールはとても魅力的です。錆びた鉄や、廃屋の壁のような、時を経て醸し出される味わいがあります。昔どこかで見たことのある風景、映画の中だったか、夢の中で出会ったモノ、あるいは迷い込んだ路地の奥で触ったことのある古い塀の感触、よく覚えていないけれど確かに知っているモノ、そんな風に色々思いながら小さな作品に惹き込まれます。
「微細なウィルスが国境を超えてパンデミックと化し、ウクライナとロシア紛争は長期化の様相を見せるなど、どこかで何かが起きて波及すると混乱を生じる。良き波も悪き波もどこかで環が繋がり広がり続ける。形が無いように見えても存在する何か、ありふれた身の回りの風景や物体からでも生じてくる何か、そんな『モノ』を追い続けたい。」今回の個展に際して、ハセガワさんが書かれた「波のようなモノ」という文章です。
キャプションを手掛かりにして、作品を眺めるゆったりした時間を過ごしていただけたら、と思います。
今回は、額に入った作品とは別に、和紙に直接金具をつけて壁にかけられるような版画作品もあります。この仕様は、軽くて、個人的にとても気に入りました(写真左)。他にミニ額、ポストカードなど並べています。(女房)
☆ハセガワアキコ展 11月2日(水)〜13日(日)13:00〜19:00(最終日は17:00まで)
月火定休日
毎号楽しみにしている帯広発の雑誌「スロウ」(990円)。最新号の特集は「巡る道具、巡る記憶」です。
帯広にある骨董屋「グリーン商会」。数万点の在庫を誇る古道具屋さんで、店内の写真を見ているだけで行ってみたくなります。古いタイプの電灯や、地球儀など、どれも良さそうな雰囲気です。
次に登場するのは、廃校舎を直しながら古道具のリサイクルショップを十八年続けているその名も「豆電球」というお店。おっ〜と驚いたのは、特大のビクターの犬です。当店にも二体ありますが、比較にはなりません。デカい。ちょっともの寂しげば表情がぐっとくるところです。店の奥には、レコードプレイヤーも見えて、もうワンダーランド。一度入店したら一日中遊べそう。ここを経営されている宮口さんご夫婦は、ご高齢のために後継者を探しておられるとか。2022年9月現在、まだ候補者は現れていないそうですが、この濃密な空間をなんとか次世代に引き継いでもらいたいものです。
知床斜里町にある旧役場庁舎(旧図書館)。74年間使われことなく眠っていたこの場所が、「おもいでうろうろプロジェクト」という名前の企画で蘇りました。「おもいでおあずかりします」の言葉通り、タンスの奥に眠っていたような物を受け入れて、図書館に展示するという企画です。
「昔の斜里にまつわる本や地図から、どうしても片付けられない思い出の品、みんなに見せたい宝物まで、かたちのない思い出、地域の人々の声。行き場がなく、『うろうろ』しているそれらを、図書館としての記憶も持つこの建物の空っぽの本棚に集めたい」という言葉通り、面白いものが集まっています。忘れ去られたような旧役場庁舎の外観もこの企画にぴったりです。イベントの実行委員長・川村喜一さんは、写真集「 UPASKUMA-アイヌ犬・ウパシと知床の暮らし」(売切れ)の著者です。先月斜里町へ行った時、知床自然センターでお会いしたばかりでした。知っている人が出ていると嬉しいですね。
最新号は、他にも興味深い記事や素敵な写真で一杯です。人里離れた峠道にある一軒の古民家に若い女性たちが集まり、それぞれ個性的な店を出している「カミヤクモ321」。カフェや、マフィン専門店、ウィスキーを飲みながらボードゲームが楽しめる店、木彫り熊と本を売る店などが入居しています。今度、北海道に行くときはぜひ寄ってみたいものです。
文芸・映画評論、鉄道旅や町歩きのエッセイをいつも楽しませてもらっている川本三郎。「ひとり遊びぞ我はまされる」(古書/2050円)は、コロナ禍2018年〜21年の日記をまとめた一冊です。
「2022年七月に七十八歳になった。古希をとうに過ぎている。昨年は喜寿を迎えた。2008年に家内を癌で亡くして、以後、ずっと一人暮らしを続けている。正直、この年齢での一人暮らしは大変で、食事、掃除、洗濯など日常の仕事が充分に果たせない。油断していると家のなかは乱雑になり足の踏み場もなくなってしまう。 体調もいいとはいえず、いろいろな病院の診察券がたまってきている。ホームドクターからは血圧と腎臓に気をつけるようにいわれている。そんな暮らしでも、なんとか無事に仕事を続けていられるのは、好きなことだけをしているためかもしれない。」
「まえがき」で、ひとり暮らしの老人の日常を語っていますが、「なんとか無事に仕事を続けていられるのは、好きなことだけをしているためかもしれない」という文章は、歳をとった者の仕事をする極意であり、ぜひ守っていきたい教えですね。
彼にとって、好きなこととは「映画を見ること、本を読むこと、音楽を聴くこと、町を歩くこと、ローカル線の旅に出ること」です。私とあんまり変わらないので、なんだか安心してしまいます。
コロナ流行のために、泊りがけの旅に出にくい状況が続いています。そんな中、彼は近隣の散歩に熱心に出かけます。
「冬の青空はあくまで澄んでいる。 日暮里から谷中、千駄木を経て白山に向かう。文京区のこの辺り、坂が多い。登ったり、下ったりする。さすがにつらい。」
とか言いながら、永井荷風に関連する場所や神社に出かけていきます。78歳にしてはフットワークが軽い。よく知っている街並みでも、一つ違う通りを曲がればまた別の風景が見えてくる楽しみ。
もちろん、文学や、映画、美術について知らなかったことを教えてもらえます。「意外に思われるかもしれないが、荷風は日本でもっとも早くドビュッシーを紹介した文学者。明治四十一年に『早稲田 文学』に発表した『西洋音楽最近の傾向』のなかで、詳しくドビュッシーを紹介している」と書いています。ヘェ〜荷風がドビュッシーを?
また、ブログでも紹介した台湾文学の旗手、呉明益の翻訳を手がけた天野健太郎の書いた、こんな文章を紹介しています
「三食をつましく作って食って、近所を散歩して俳句作って、あとは家にある本とCDを消化するだけの人生で別にいいのだが。」
これって川本の目指す人生でもあり、私もかくありたいと願っています。
2020年冬、渋谷区幡ヶ谷のバス停を寝場所にしていたホームレスの女性が襲われて亡くなる事件が起きました。この事件を基に梶原阿貴が脚本を書き、高橋伴明が監督をした「夜明けまでバス停で」(京都シネマにて上映中)は、切実な映画でした。
主人公の三知子(板谷由夏)は、焼き鳥屋で住み込みアルバイトとして働いていました。決して職場環境は良いものではありませんでしたが、それなりに生活していました。しかしコロナ禍で、いきなり店は閉店、即刻解雇、その上退職金もピンハネされてしまいます。あてにしていた次の職場もやはり閉鎖。彼女は職も住む場所も一気に失ってしまいます。所持金は数千円。生理用品一つにしても、一番安く多く入っているものを必死で探して買わなければなりません。
行くあてのなくなった三知子は、最終バスが出た後のバス停のベンチを寝ぐらにします。「東京オリンピック」の旗がいたるところではためき、一方で多くのホームレスが街のあちこちに寝場所を作っているシーンが何度か登場します。偽物の繁栄の下、貧困生活を強いられる姿が対比して描かれます。
そこで三知子は公園を住処とするホームレスの、不思議な老人(柄本明)に出会います。かつて爆弾を作り、企業爆破をしていた男です。老人は、警察に捕まったとき、映画館で「仁義なき闘い第4部『頂上作戦』」を観ていたと話し出します。そして、その名ラストシーンを再現します。あ、これ、監督は意図的にやっているなと思いました。(ワタクシ、仁義なき闘いは繰り返し見ているのでかなり詳しいのです)
仁義なき闘いは、戦争に駆り出され、戦後は国に見捨てられて男たちの映画。主人公は、修羅場を生き抜き、てんでバラバラに弾ける組織をまとめようとしたものの失敗、刑務所に収監されるところがラストです。戦後のヤクザ社会を生きた男が、老いた身を振り返りながら、やはり刑務所に収監される同士から、長い刑務所暮らしを「辛抱せえや」と言われて映画は終わります。もし、こんな男が辛抱して真面目に社会に復帰したとしても、生きる道が残っていたでしょうか。きっとこのホームレスの男になっていたはずです。
本作品のファーストシーンは、バス停で眠る三知子の頭に、男がレンガを持って襲いかかるところから始まります。定石どおりなら、彼女に起こる悲劇へ突き進むのですが、監督は、安易な正義や社会的メッセージをかざすことをせず、また同情に走ることもなく、ささやかな連帯に希望に託します。そしてエンディングに登場する国会が爆破されるシーン。これは、彼女の妄想か、監督の怒りか。
社会の矛盾や歪みを、ズバリ直視した作品でした。オススメの一本です。
村上春樹が通っていた映画館の写真や大学在学中に読んでいたシナリオ、彼のエッセイや小説に登場する数多くの映画、そして小説を映画化した作品等に関する豊富な資料から、春樹文学と映画の世界を辿る「村上春樹映画の旅」(新刊/フィルムアート社2420円)。
監修は早稲田大学坪内博士記念演劇博物館で、ここで開催された「村上春樹|映画の旅」展覧会の公式図録です。全5章に分けられていて、第2章「映画との旅」では、小説以外の作品で言及してきた映画を取り上げ、第3章「小説のなかの映画」では、作品に登場する映画を調べ上げ、映画のワンカットやポスターなどを紹介しています。この二つの章を読んで、こんなにも映画作品が登場してきていたことに驚きました。もともと、シナリオライターになるつもりだったから、多くの作品を観て本の中に登場させていたのは当然かもしれませんが。
「1973年のピンボール」の「マルタの鷹」、「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」における「第三の男」、「ノルウェイの森」における「卒業」、「国境の南、太陽の西」における「カサブランカ」等々、ハリウッド黄金期の映画がポンポン登場しています。最近の「騎士団長殺し」には、恐怖映画「シャイニング」まで出てくるみたいです。(すみません、読んでません)春樹の多くの作品から映画に言及している文章だけを抜き出しすなんて、並大抵の努力ではありません!
後半には様々な人たちによるエッセイが掲載されいますが、あ、これよくわかると思ったのが長谷正人による「サブカルチャーとしての村上春樹と自主映画」でした。
「1979年、村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』が発表されたとき、私は大学一年生だった。それを読んだときの、あの新鮮な衝撃をどう説明したら分かってもらえるだろうか」
ハイ私も大学生でした。胸にグッと食い込んでくるとでもいうのか、この小説が運んでくるアメリカ西海岸的な雰囲気に酔っ払っていた気がします。数年後、大学をほっといて西海岸へ行ったのは「風の歌を聴け」のせいかもしれません。
春樹ファン、映画ファンに一読をお勧めします。
京都在住の絵本作家Junaida(ジュナイダ)は「Michi」、「の」、「街どろぼう」、「EDEN」と近年発行した絵本がいずれも高い評価を受け、人気も一気に高まりました。ヨーロッパ風の景色の中に出現するおとぎ話のような謎めいた世界。細密に描きこまれた人物が、鮮やかな色彩の中を泳ぐように動いてゆく様を描き出します。明るさと闇が共存する独特の世界観は、一度見たら忘れられません。
「IMAGINARIUM」(新刊/ブルーシープ3850円)と題されたこの作品集は、現在東京の美術館「PLAY!MUSEUM」で来年1月15日まで開催されている個展の公式図録です。
14歳の時に耳に飛び込んできたパンクロックの影響が今も続き、エレキギターが絵筆に変わっただけで、そのパンクのスピリットは今も一緒だと彼は言います。
「Junaidaの絵をパッと見て、いわゆるパンクを思い浮かべる人はあまりいないかもしれないけど、こういうパンクの表現もあるんだなって、だんだん理解を深めてもらえたら嬉しいです。これまでオマージュしてきた宮沢賢治だって、ミヒャエル・エンデだって、僕にとってはパンクスピリットをビリビリ感じるシビれる存在です。」とインタビューで語っています。
もともと、パンクはサッチャー政権下のイギリスの下層階級の若者たちが、社会への怒りをぶちまけた音楽です。音楽業界からはバカにされ、孤立無援になりながらも、自らの音楽だけをやり続けたミュージシャンたちのスピリットは日本にも輸入され、大きなムーブメントとなりました。不協和音と暴走するメロディーがJunaidaの絵と結びつくかといえば、そうなの?と首をかしげる人も多いかもしれません。しかし、妙にねじれた空間や、可愛らしさを兼ね備えつつ、奇怪な形態にデフォルメされた作中人物や背景を眺めていると、私たちの心の中にある既成概念を吹っ飛ばす力があると思います。
一見すると、可愛らしい少女や少年たちや動物たちが、私たちを見たこともない世界へと連れて行ってくれるのです。その魅力が本書から伝わってきます。
「代表作の『モモ」や『はてしない物語』はもちろん大好きですけど、影響されたとはっきり自覚しているのは『鏡の中の鏡ー迷宮』です。この作品には答えや正解のようなものが一切なくて、読者の数だけ合わせ鏡の世界が増殖していくような、なんともいえない不思議な魅力があります」
そして彼は「 EDEN 」を発表します。「本の中で絵と言葉が立体的に共鳴し合う、特別な本になりました」とインタビューで答えています。
これを機にJunaidaを知らない方は、ぜひ彼の絵本を手に取ってください。「街どろぼう」「Michi」「EDEN」を店頭に置いています。
久々にミニマリズムに徹した映画に出会いました。登場人物は4人ほど。舞台は森にある二軒の家。音楽もなし。そして上映時間は約80分。減らせるものは全て減らしたような映画「秘密の森の、その向こう」(アップリング京都にて上映中)です。
味も素っ気もない家に佇む二人の少女を捉えるだけの映画といっても過言ではないのですが、その映画に流れる時間の豊かなこと。恐ろしく端正な美を生み出す全てのカットに、セリーヌ・シアマ監督の魂が宿っていると思います。
不思議な物語です。8歳の少女ネリーの大好きだった祖母が亡くなります。このシーンも病院の空のベッドをワンカット見せるだけ。ネリーと母親は、家財の整理のために森の奥にポツンと建つ祖母の家を訪れます。しかし、祖母の持っている品々を見るにつけ、その思い出に苦しめられる母親は不意に姿を消します。これも父親の「お母さんは出て行った」の一言だけで描かれます。
一人残されたネリーは、母親が幼かった時に遊んだ森に出かけます。そこで、同い年の少女に出会います。彼女の名前はマリオン。ネリーの母親と同じ名前です。マリオンはネリーを自宅に誘います、ここも森にポツンと建っている家で、ネリーの家同様なんの装飾もない家です。そして、そこで彼女はマリオンの母に出会います。それはネリーのおばあちゃん。
マリオンはネリーの母親の幼い姿であり、ネリーは、会えるはずのない幼少の時の母と仲良くなっているのです。え?なにその話??でもそれはあくまでも象徴的な存在でしかありません。
祖母、母、娘の三代にわたる女性の救済が根底にあると思います。監督は、そのテーマを削いで削いで作り出した映像で届けてくれました。まるで宝石のような映画です。一緒に森を走り、ボートで湖に乗り出し、二人でご飯を作る。それだけなのに、とても心が穏やかになる不思議な映画です。
コラムニストの山崎まどかが「幼心だけが理解できる悲しみがあり、かけてあげられる優しい言葉がある。二人の少女の交流に、こんがらがった関係のままでいるたくさんの母と娘が救われるはず。」とコメントを寄せています。
本日は京都三大祭りの一つである「時代祭」です。当番が回ってきた町内では、朝早くから大忙し。古式豊かな飾りをつけた馬が、近所の公園でスタンバイ。街の中を馬が歩くなんてなかなかお目にかかれない風景です。幼なじみが行列に参加するというので、公園まで見に行った女房が、写真を撮ってきました。
さて、今回は馬の本をご紹介いたします。戸張良彦(写真)、鎌田武雄(文章)による「どさんこの夢」(共同文化社/新刊3300円)です。
こんな牧場あるのか!と驚きました。
「北海道の十勝・芽室町、日高山脈、剣山の麓にその牧場はあります。 80haを超える広大な草原と森林。そこには100頭近くの馬が放牧され、馬達は自分達の社会を保ちながら、いつでもそこを訪れる人間たちを歓待し、希望すればその背に乗せて山を登ってくれる。それが乗馬経験者でも未経験者でも、観光にやってきた子連れの家族でもカップルでも、東京のIT企業の社長でも、一人でやってくる私のようなサラリーマンでも。 並みの牧場や乗馬クラブではありえない、馬にとっても人にとっても楽園のような自由で広大な戊放牧場『剣山(ツルギサン)どさんこ牧(マキ)』」
もともと外資系企業の営業をされていた著者の鎌田武雄さんは、ご本人によれば、この牧場と出会ったことで、それまでの価値観が一変したとか。
写真は春夏秋冬それぞれの季節の中で、走り、眠り、仲間と寄り添う馬たちを捉えています。こんなに接近して大丈夫?と思われるアップ写真の中には、どう見ても笑っている顔がありました。どこにも柵が見えず、自然の中で自由気ままに暮らしている彼らの、生きていることが楽しいという表情がありありと浮かんでいます。
ところで、「剣山どさんこ牧」の名前の後に付いている「牧」という言葉ですが、古代から軍馬や牛を放牧し、飼育する場所を「牧」と呼んでいたそうです。ここで放牧されているどさんこ馬は、乗馬に適さない頑固な性格を人とうまくやってゆく温和な性質を育てるために、十数年かかって馬の選抜、繁殖、育成を繰り返してきたそうです。ゆっくりと育て上げられた馬は、どんな初心者でもホーストレッキングに連れて行ってくれるまでになりました。
この広大な馬と人の楽園をたった一人で作り上げたのは、川原弘之さん。川原さんと帯広在住の写真家戸張良彦さんと鎌田さんで作り上げた素晴らしい写真集です。ここに行ってみたい!写真集を見ながら思いました。
「知床財団は1988年の設立以来、野生生物の調査や対策、森づくり、国立公園利用の適正化、環境教育など様々な事業を通して世界遺産知床の生態系と生物多様性の保全、そして自然と人がともに生きる知床を目指して活動している公益財団法人です。」
ワシの巣の調査、野生動物の保護、クマの調査、シカの頭数調査など幅広い活動をしています。この夏、知床斜里町にある「知床自然センター」にお伺いしたことは、ブログにも書きました。
その時に、知床財団の山本さんとお話をする機会があり、財団および自然センターを多くの方に知ってもらうために、センターで販売されているグッズを当店で販売することになりました。オリジナルロゴバッジ、ステッカー、ハンカチ、ロゴバック、そして北海道に生息する動物を表紙にあしらった「シレトコ野帳」などです。
「シレトコ野帳」は、表紙に日本を代表する動物画家田中豊美氏の線画を高精密な箔押しで再現したもので、スケッチやメモ帳に自由にお使いいただけます。表紙の動物は、エゾシカ・エゾタヌキ・ヒグマ・キタキツネなど7種類から選んでください。(605円)自然に関心のある方へのプレゼントにも最適です。
センターに案内してくださったのは、知床在住の絵本作家のあかしのぶこさん。先月、当店で3回目の個展をして頂きました。もともと、福音館から出ていた彼女の絵本「しれとこのきょうだいヒグマ ヌプとカナ」、そして新しい絵本「しれとこのみずならがはなしてくれたこと」も、財団オリジナル絵本としてハードカバーで再発行されました。
「ヌプとカナ」は、親子のクマの暮らしを通して、人間とクマの悲しい関係を描いています。そこから、今後私たちは彼らとどう共存してゆくのかを示した素晴らしい一冊です。都会にクマが出た、怖いですね!的な報道しか流さないメディアの姿勢に疑問をお持ちの方にも、ぜひ読んでほしい絵本です。知床自然センターのグッズと並べて販売しておりますので、ぜひ手にとってご覧ください。
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