山口智子は、役者業以外に様々な活動をしています。本も何冊も出していて、「手紙の行方 チリ」、「反省文 ハワイ」などは、当店でもよく売れていました。

近著「LISTEN」(新刊/生きのびるブックス4400円)は、今年読んだ本では最も分厚い(約4cm)620ページ余の大作でしたが、あっと言う間に読んでしまいました。

「元気な明日を手繰り寄せる『音』の力に惹かれ、2010年から地球の音楽映像ライブラリー” LISTEN”を作ってきました。10年に及ぶ旅で26カ国を巡り、250曲を越す曲を収録し、記録された写真は約20000枚。」

そして、その世界を回る旅の第二弾がこの本「LISTEN」です。本の半分を素敵な写真が占めています。本に掲載されている二次元コードで”LISTEN”の映像を見ることができます。

「地球の美しさに出会う旅に、音の精霊の導きがありますように。」と彼女は書いています。

我々の知らない土地で、小さな幸せを守って生きている人たちの姿と生活の中から生まれた音楽に耳を傾け、なんて素敵な!と驚きながらペンを走らせたであろう文章を読んだり、楽器を鳴らし踊る人たちの至福の瞬間を捉えた写真を眺めていると、最後のページに辿り着いていました。

旅は、2011年、ハンガリーから始まります。そして、最後はインドで幕を閉じます。民族の悲しい歴史、差別のことも折に触れて書かれています。その歴史の中で歌い継がれてきた歌や踊りが、いかに重要なものかが伝わってきます。旅をして、そこで暮らす人たちに溶け込み、ともに笑いながら、著者は生きるエネルギーを吸収していきます。

イヌイットと犬ぞりで大雪原を旅した時、雪の上に寝そべる犬たちを見ながら、感じたことをこんな風に書いています。

「私も犬たちの横に寝そべってみた。ふかふかと雪に包まると、不思議と温かかった。たくさんの命が形を変えて一面に降り積もっているようで、守られている安らぎと静けさの中に、風の息や地球の鼓動を確かに感じた。人間は、とても動物たちにかなわないけれど、彼らと学びながら一緒に生きてゆける。困難を乗る超える道はいつも、自然の中にある。」

登場する人たちの顔を見ていると、人間の持つ原始的な力強さと優しさが溢れています。そのことを追い続けた山口智子の好奇心と行動力、そして他者への、この惑星への愛に溢れた一冊です。

 

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