毎週欠かさず観ているTV番組に「いぃ、移住」(NHK・Eテレ毎週木曜)があります。都会から地方へ移住して、新しい生活を始めた人たちをドキュメントする番組です。先日、滋賀県長浜市の、女性だけで立ち上げたミニプレスを発行するイカハッチンプロダクションが出演していました。

企画・編集を行うイカハッチンプロダクションの出した雑誌「サバイブユートピア」。1号は2年ほど前に発行されていて、当店でも完売しました。第2号(1100円)の特集は、ズバリ「嫁」です。結婚後、それぞれの事情で長浜にやってきた嫁たちの座談会「サバイブな嫁たちの座談会」が巻頭を飾ります。本音で語っていて面白いです。さらに、イカハッチンプロダクションのメンバーによる「母達の井戸端会議十人十色なお産のハナシ」へと続きます。

「移住者」は辞典によれば「よその土地に移り住む人」と定義されています。では、嫁もまた移住者のはずですが、「●●のお嫁さん」であって、「移住者」とは認識されていないのだといいます。「お嫁さんという言葉は『よその土地に移り住む人』という意味よりも、『女が生まれた家から夫となる人の家にゆくこと』という意味の方が大きいのかもしれない」と、埼玉県出身のイカハッチン、ほりえさんが答えています。

長浜市の山間、渓流沿いにひっそりと古民家が立ち並ぶ大見は、三十人ほどが住んでいるいわゆる限界集落です。そこへ東京から引っ越してきたイカハッチンメンバーの一人船崎さんが、文章と写真を担当した「限界集落ラプソディー」というエッセイも載っています。

また、仏像に魅せられた「観音ガール」對馬さんによる「かわそ信仰」の考察は興味深い。「かわそ」さんというのは「川で濯ぐ」「川のすそ、しりにある」に由来し、男女とも腰下の病に効くとされていますが、特に女性は、子を産むことへの強いプレッシャーに悩み、自分を責めたりしたのでしょう、信仰を寄せたのは女性が多かったそうです。さらに、ヨガ講師MUTUMIさん(イカハッチンメンバー)による出産を控えた人のためのマタニティヨガ、小さな出版社が惚れ込むちいさな古い私設図書館にまつわるお話など、魅力溢れる内容です。

日々思っていることや疑問が、まさに井戸端会議のノリで語られているところが素敵です。最後のページに、イカハッチンプロダクションのメンバーの写真入りのプロフィールが掲載されています。経歴も仕事も出身地も趣味も様々だからこそ、それぞれに滋賀の暮らしに楽しみを見つけ深堀りしています。ちなみに表紙の写真は、イカハッチンメンバー八人の個性あふれる白い割烹着姿で気合いが入ってます。