上映時間70分少々、設定はSFのようでそうでないいい加減さ、誰もいない劇場の舞台のみで物語は進行し、登場するのは18歳の俺と48歳になった俺の二人と少し。なに?その映画??

しかしこれが、泣かせて、最後に大笑い、いや〜人生そうだよね〜と納得させてしまうというウルトラCの離れ業をやってのける。京都出身の谷健二監督「追憶ジャーニー」(京都シネマで上映中)は、基本人生応援歌的なつくりですが、お涙頂戴の湿度は0、乾燥度数は100、物語の吹っ飛ばし方は台風並みという作品なのです。

不思議な物語です。母親と喧嘩して自室でふて寝していた18歳の文也は、気づくと何故か舞台の上にいます。そして隣に見知らぬ中年男が立っていて、「ここがお前の正念場だ!ここ逃すと一生後悔するぞ」としつこく迫ってきます。すると舞台には、文也の幼馴染みで同級生のくるみと、ちょっとセクシーなユリエが登場して、文也にどちらと交際するか迫ってきます。

なんだこれは夢かと思う文也ですが、時代は進んでいきます。その場面転換はSF的、お約束を吹っ飛ばしていきます。なんせ中年男が「ここは次元がアレで、アレだから」と理解不能なことを言い続ける世界です。やがて、文也はこの中年男が自分の30年後の姿だということがわかります。

ははぁ〜これは未来からきた男が、現在の文也に向かって人生の決断を諭す映画だろうと思われるかもしれませんが、裏切られます。立場が逆転してゆくのです。うだつの上がらない未来の自分に向かって、高校生の文也が、お前こそどうなんだと迫っていくのです。48歳の現在を生きる男は、30年前の自分に、お前の今の人生はどうなんだと詰問される羽目になります。

そしてラスト、若い時に駆け落ちして家を飛び出した母が老いて、死が近いことを知った現在の文也は、病院でその母と対峙します。とてもいいシーンで涙が溢れます。が、しかし、そんなバカな〜ワハハと笑ってしまうエンドが待っています。(劇場内も方々で笑い声が聞こえました)最後のセリフで、あなたも私も自分の人生間違っていない!と確信に至るという離れ業を決めるのです。ここは言えません。ぜひ劇場で、そうだ!そうだ!と声をあげてください。素敵な70分になること間違いなしです。

監督の谷健二は1976年生まれ。映画の世界を夢見て上京し、数多くの自主映画に携わった後、2016年監督としてデビューしました。ワタクシ応援します!