文京建築会ユースは、東京建築士会・日本建築家協会の文京支部からなる「文京建築会」の若手有志団体として2011年に発足しました。その文京建築会ユースが、歴史的建造物などの記録保全・活用提案等の活動の中で、地域コミュニティ拠点として注目してきたのが銭湯でした。

京都もそうですが、文京区の銭湯もここ10年で半減し、数件しか残っていないそうです。解体される銭湯から、多くの道具や部品を回収したもののどう活用するか悩んでいました。

京都で行われた「京都銭湯芸術の祭りMOMOTARO二O一七」を視察したのがきっかけで、「祭り」の姿を借りて、銭湯を未来につなげようと企画。「銭湯山車巡行部」を立ち上げました。そして、2021年「令和三年度銭湯山車巡行」を行いました。本書はその公式記録集(1500円)です。

銭湯のあらゆる要素を一台の山車に詰め込む、という大胆な発想で、ユニークな山車を製作。そのプロセスも事細かに収められています。閉業した銭湯の写真と、その部品をどう活用していったかを見ることができます。出来上がった山車が表紙に使われていますが、立派な破風と下足箱が組み合わされ、タイル張りの水回りもついた楽しいフォルムは、可愛らしく、堂々としています。巡行を見たかったな、きっと大きな拍手を送ったことでしょう。

「祭礼における『山車』は、伝統文化や誇りを具現化し、精神を受け継ぐ依り代で、各地域の工芸技術の粋を集め永く継承するものでもある。今回の『銭湯山車』でも、東京の銭湯が培ってきた文化を建築や彫刻の要素も含めて色濃く再現することで、銭湯の『粋』が後世に伝わっていくことを期している。」

編集・デザインを担当された内海さんが、一緒にフリーペーパー「みんなの藍染大通り」を持ってきてくれました。この通りで行われている歩行者天国50周年を記念して出されたものだそうですが、1972年に始まった歩行者天国が今も続いているとは驚きです。こちらの編集も内海さんで、町の再生、失われてゆく文化の復活に努力されています。(フリーペーパーは10部ぐらいしかありません。お早めに)

いつだったか、大阪堂島にあった書店「本は人生のおやつです」の店主(現在は兵庫県朝来市で開店)に、きっとレティシアさんなら本を置いてくれるよと聞いて、「電気風呂」のミニプレスを持ってやってきたのが銭湯愛好家のけんちんさんでした。「私は電気風呂の専門家です」と自己紹介されて、京都の銭湯と電気風呂の関係などを熱く語ってくれました。その話があんまり面白かったので、けんちんさんの書かれた「電気風呂御案内200」と「蒐集 下足札」を販売することになりました。

その後もお風呂帰りに立ち寄って、話してくれる銭湯愛は尽きることがありません。写真や資料も沢山あるとの事だったので、じゃあ一度、その銭湯への思いをギャラリーで展示してみようか、よし!ということになりました。

そして、本日より「銭湯文化的大解剖展」(おしどり浴場組合)が始まりました。って、「銭湯文化的大解剖展」ってなに?おしどり浴場組合??

おしどり浴場組合は、銭湯をこよなく愛する七人のメンバーが2020年秋に結成したクラブみたいなもので、それぞれが、執筆、イラスト、撮影などを担当して「銭湯文化的大解剖!」という雑誌を作りました。(税込1980円)銭湯の「外観」「玄関」「脱衣場」「入浴券」そしてもちろん「浴室」など、細かすぎるこだわり。銭湯の歴史、電気風呂(これはもちろんけんちんさんの専門)、お風呂やさんのインタビュー、おしどり浴場組合員の推し銭湯など、読み応え充分です。

さて今回の展示は、大きな『ゆ』と染め上げられたのれんとメンバー紹介から始まって、①メンバーが撮った銭湯の外観や浴室の写真、②6月5日に惜しまれつつ閉店した京都の「錦湯」で最後まで使用されていた「料金表」や「湯ぶねに入るときの注意書き」「柳行李」「閉店挨拶文」など、③「電気風呂コーナー」、で構成されています。ちなみにけんちんさんによると、電気風呂は、昭和40〜50年代には京都のお風呂屋さんにフツーに設置されていた日本独自の文化だそうです。現在電気風呂を利用するのはお年寄りの方が多く、若い方には少し敬遠されているとか。けんちんさんが電気風呂を深掘りして広めたいと思うのは、このままでは大好きな電気風呂がなくなるかもしれないという危機感かもしれませんね。

そして、なんと今回の展示に合わせて作られたミニプレス「銭湯生活」第1号(2022年6月15日発行)が、「銭湯文化的大解剖!」とともに積み上げられています。ぜひ手にとってページをめくってみてください。「銭湯が好き!」で繋がったおしどり浴場組合員たちの銭湯愛が溢れ出てきますよ。オリジナルのマスキングテープ(715円)缶バッチ(550円)も販売しています。(女房)

「銭湯文化的大解剖展」(おしどり浴場組合)は6月15日(水)〜26日(日)

月火定休 13:00〜19:00

 

 

 

京都在住の漫画家、スケラッコさんの新作「みゃーこ湯のトタンくん」(ミシマ社/新刊1650円)が発売されました。(初回は著者サイン入り)

スケラッコさんの漫画との出会いは「大きな犬」でした。町のど真ん中にいる、どこから来たのかもわからない大きな野良犬。その大きさは、一軒家と同じぐらいなのですが、この町の住人は誰も気にしていません。町の風景としてそこに在るという世界でした。

その次が、お盆をテーマにした「盆の国」でした。おそらくお盆をテーマにした作品なんて、漫画も文芸作品にもなかったと思うのですが、その不思議な世界に驚かされました。

そして、今回は猫ばかりが出入りするみゃーこ湯のオーナートタン君を主人公に据えた作品です。実は、みゃーこ湯にはモデルになる銭湯があります。滋賀県の膳所の都湯さん。(先行販売をこの銭湯でした時は、多くの方が購入されたみたいです)

漫画ではみゃーこ湯のある猫の町に、人間の青年が紛れ込みます。え?なんでこんな町にいるの??なんで猫のおふろ屋さんがあるの??と思いながらも、まぁいいか、とこの銭湯の二階に間借りしてお手伝いを始めます。

ここでは、入浴前に猫たちはブラッシングして毛を落としてから入浴するのが作法なんです。スケラッコさん独特のほんわかした気分に浸れる物語です。猫のキャラも個性豊かで楽しい。圧巻は、大晦日オールナイト営業の銭湯のシーン。よくもまぁ、こんな多くの猫を描いたものです。猫好き、銭湯好きは必読の一冊です。

 

●レティシア書房からのお知らせ  12月27日(月)は、平常営業いたします。

                 12/28(火)〜1/4(火)休業いたします。

●私が担当の逸脱・暴走!の読書案内番組「フライデーブックナイト」(ZOOM有料)の3回目が、12月17日に決まりました。次回は「年の瀬の一冊」をテーマにワイワイガヤガヤやります。お問い合わせはCCオンラインアカデミーまでどうぞ。(どんな様子でやっているのか一部がyoutubeで見ることができます「フライデーブックナイト ー本屋の店長とブックトーク」で検索してください)

 

東京国際映画祭を始めとして、多くの映画祭で絶賛された映画「メランコリック」。劇場で見逃したものをDVDでやっと観ることが出来ました。監督、脚本、編集の田中征爾の才能に、もう拍手、拍手です。長編第1作で、東京国際映画祭監督賞受賞ですからね。

ストーリーだけ聞くと、血だらけスプラッタムービーみたいですが、そんなことはありません。

東大卒業後、アルバイトばっかりして、うだつの上がらない生活をしている和彦という青年が主人公です。たまたま行った銭湯で、アルバイト募集のチラシを見た和彦は、その銭湯で働くことを決めます。ある夜、銭湯は終わった時刻なのに、店内の照明が付いているのを見て不審に思った和彦は、とんでもない現場を目撃してしまいます。風呂場で、殺人が行われ、死体をボイラーに放り込んでいるのです。そして同僚は、実はヤクザに雇われた殺し屋だったのです。

そんな風呂屋のサイドビジネスになんとなく参加した和彦は、それから巻き込まれていくのですが、驚くべきことに映画のラストは大ハッピーエンドなんです。信じられます?

やばい事をやっているのに、どうしたことか登場人物全てが、極端なまでに淡白で危機感もなく、粛々とやっている感じ。むしろ脱力感があります。和彦の家族も、これまた飄々としていて、食事シーンなんか小津映画みたいな雰囲気です。

脇役として多くの作品に出ている村田雄浩が「いつの間にか登場人物に心を奪われている。最後には登場人物のその後が気になってしょうがなかった」と絶賛の文章を寄せています。和彦、和彦の恋人、同僚の殺し屋、風呂屋の親父、和彦の両親が、どうなってゆくのか私も心配してしまいます。こういう映画はどう考えても、最後は血みどろの悲惨な幕切れが待っているものですが、幸せ感いっぱいのエンディングなのです。それにしても風呂屋で飲むビールって美味しそう!

見終わってわかったのですが、映画が語っていたのは幸福って何だという事です。奇想天外な物語から、青春映画の眩しさを作り出した監督には脱帽しました。

本作品は、監督と二人の男性の三人のチームで製作され、クラウドファンディングで資金が集められて出来上がりました。なんとかして面白い映画作るぞぉ〜という熱意が作り上げた賜物ですね。ホント面白いし、めちゃ笑ってしまいました。オススメです。